小説『魔法先生ネギま ロマンのために』
作者:TomomonD()

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第十七話 仮契約の目的


Side クロラージュ


ネギ君とエヴァの戦いも無事に終わりを告げたらしい。

ビデオでは、原作通りくしゃみの差でエヴァが押し負けて、その時に停電が復旧したようだった。

まあ、復旧時間はジャスト24時だったからエヴァと茶々丸のミスだったんだが……。

とにかく、無事にネギ君がエヴァを助けてめでたしめでたしだったようだ。


「おい何度そのビデオを見るつもりだ――!!」

「飽きるまで、そろそろエヴァの脱げシーンが…」

「き・さ・ま……」

「うん?どうした、エヴァ?」

振り返った先に、巨大な鬼がいた。

いや、巨大な鬼のようなオーラを持ったエヴァがいた。

「ちょ、ちょっとまて! 話せばわかる、だから…」

「安心しろ。OHANASHIしてやる」

まてー、それはお話ではなく拷問だー! もしくは殲滅……。


別荘でかなりの拷問を受けた。

ひどい目にあった。


今はエヴァハウスでのんびりお茶をしてる。

ただし、目の前にちうちうがいるけどね。

「まあ、ここに来たということは…」

「ああ」

「ちうちうのコスプレショーを生放送でやってくれるんだな!」

「やらねーよ!!! てか、ちうちうって呼ぶな!」

そうそう、このつっこみだよな。和む。

「さてと、冗談はいいとして……いや結構本気だったんだがそれは置いといて、やっぱり異常現象に耐えられなくなったのか?」

「まあな。あんたならこの状況が説明できるって言っていたからな」

「いいのか平和で平凡な日常は帰ってこないぞ。たぶん」

「いい。今の状況が続く方がつらい。というか、たぶんってなんだよ!」

「まあいいさ。じゃ、簡単に話そう。魔法がある、以上!」

「?」

「どうだ、納得できたか?」

「出来るか――――――――――――!!!!!」


その後、かなり丁寧に説明してあげたので納得してくれた。

「つまり、魔法が存在するとばれないように結界が張ってあり、なぜか私にはそれが効きにくかった、というわけか」

「そんなとこだ」

「はぁ〜、信じられなかったが実演してもらったからな…」

「まあ、知らないふりをするのも手だぞ。相手に気が付かれなければいいだけだしな」

「たぶん私じゃ無理だ。これ以上ストレスのたまる行為はしたくないからな」

そりゃそうだ。

じゃ、しょうがないな。

こっち側に引き込むか。

「それでだな…」


「ただいまです……千雨さん?」

「ん、綾瀬? なんでここに?」

「こちらの台詞です…って、まさか!」

夕映がこっちを見てるけど、何か誤解してないか?

「クロロさん。一般人を巻き込んでしまったですか?」

「いや、それは誤解だ。それに、ちうちう……いや、長谷川千雨は一般人じゃないぞ。実はな、かつての魔法の大戦で大型戦艦を57隻撃ち落とした伝説級の魔法使いなんだ」

「!!! 57隻……し、知らなかったです」

「ってオイ!!!! 嘘を教えてるんじゃね―――――!!!」


(誤解解消中)


「なるほどです。確かに、それはつらそうですね」

「いや、私からすれば、クラスメートが魔法使いだった方が驚きだよ」

「ま、ほかにもかなりいるんだがな」

「まだいるのかよ!」

「このログ豪邸の持ち主も有名な魔法使いだ」

「持ち主って……誰だ?」

しかたないな、呼ぶとするか。

「まず、このビデオを…」

と、俺がビデオを出すと氷の矢がそれを貫いた。

「き・さ・ま〜……」

「ほら、きた。彼女がこのログ豪邸の持ち主であり、かつて600万ドルの懸賞金を懸けられた悪人であり、俺の妹でもあるエヴァンジェリン・A・K・マグダウェルだよ」

「おいおい、吐くならもっとましな嘘を…」

「いや、最後の妹以外は本当だ。なぜここに長谷川千雨がいるんだ?」

「……まじかよ」

「本当です。私も初めて聞いた時は同じ反応をしたです」


エヴァに事情を説明すると…

「なるほどな。認識阻害魔法が効きにくい体質か」

「そんなのあるのか?」

「ないわけではない。現に一十はその類だろう」

たしかに…

「まあ、ここに来たからにはそれなりの覚悟はしてきたのだろう」

「まあな。で、私はどうしたらいい?」

「「クロロさん(貴様)、なんとかするです(しろ)」」

うが、協力はしてくれないのか。

まあ、仕方ないな。

「まあ、夕映みたいに魔法使いになるのが簡単なんだが、あえてここは別の道を目指してもらおうか」

「別の道?」

「そうだ。ゲームとかで後衛の魔法使いを守る前衛の騎士のようなものだ」

「まて、貴様! 長谷川千雨を従者にするつもりか!!」

さすがエヴァ、理解が早いな。

「そうだ。問題はないだろう」

「なんのことです?」


「ただいま〜」

「こんにちは〜」

あれ?

今の声は、一十百と…さよか。

「ちょうどいいな。エヴァ以外の人は仮契約について知らないから、この機会に教えておくか」

ほんとうなら佐々木まき絵もいてくれればよかったんだが、まあ今度でいいな。

「あ、皆さんお揃いで……え!!」

「どうしたんだ、一十?」

一十百がちうちうの前に真っ直ぐ向かってったな。

どうしたんだろうな?

「う〜ん」

「な、なんだよ」

「もしかして、某ネットアイドルさん?」

「「え゛」」

あ、ちうちうとハモった、じゃなかった!

なんでそのことを知ってるんだ!

「ちょ、ちょっと待て!一十百、お前『ちうのホームページ』知ってるのか?」

「はい! 会員ナンバー11番です」

「な! 二桁、それも十番台!!」

「お、おい。それって、かなりすごいよな」

「あ、ああ。十番台って言ったら私が始めたころだろ…。まじかよ」

「うわ〜、本物だ〜。サインがほしいです!」

あ、でた。

瞳の中に瞬く星を宿した目の一十百。

あの状態はエヴァですら断れない、悪を封殺する最強兵器(アルティマアーツ)だからな…。

「うっ…。一枚だけだぞ」

「やった〜!!」


どうやら、会員ナンバー11番っていうのは本当だったらしい。

会員カードにちうちうの直筆サインをもらってたからな。

しかし…ファンだったのか。

「それじゃ、そろそろ本題に入るか」

そう、仮契約の話だな。

……詳しく知らないんだが、まあいいか。

「魔法使いはパートナーがいるもんなんだよ。それで、そのパートナーを決めるのが仮契約と呼ばれる儀式なんだ、そんな感じだ」

「詳しくわからないのですね」

覚えてないんだ、気にしないでくれ。

「まあ、とにかくだ。仮契約することで魔法使い側の魔力で強化されたり、アーティファクトがもらえたりするんだよ」

「アーティファクトってなんだ?」

「便利アイテム、だな。エヴァ、何か間違ってることはないか?」

「かなり省いているが、大体あってるからいいんじゃないか」

よし。我ながらよく覚えてたな。

奇跡としか言えないな HAHAHA。

「それで、どうやってやるんだ」

「ああ、魔法陣の上で……ちょっと待った!」

「どうしたです?」

肝心の魔法陣がかけない。

どうしたものか……。

「エヴァ、仮契約用の魔法陣ってできるか?」

「無理だな。私は人形との契約用の魔法陣しか描けん」

「そうか。これは困ったぞ」

あと、誰ができるんだ?

ネギ君、に…そうか!

ヤツか!

「いた!この魔法陣を描ける人材が!」

「誰です?」

「アルベール・カモミールだ」

「エヴァさん、知ってるですか?」

「いや、聞いたことも……カモミール? …あ」

エヴァは思い出したな。

ネギ君の良き……いや微妙な使い魔、だよな。

「あのオコジョか!」

「そうだ。さすがエヴァだ、よく思い出せたな。さて、そうとなれば呼びに行くか」


「アルベール? それって、白いオコジョ君のことですか?」

「「へ?」」

あれ?

一十百、いつの間に会ったんだ?

エヴァも驚いてるぞ。

「お、おい。いつの間にアレと出会ったんだ?」

「ほぁぇ? えとですね、お酒がどうとかでワインセラーを見学させてって言ってました」

そうか、ワインセラーの見学ね〜。

……あれ?

どうやって、意思疎通したんだ一十百?

まあいいか。

「とにかく連絡を取らないことには始まらないな。エヴァ、妖怪に電話できるか?」

「そこの電話が直通だったはずだ」

よし、では……

「クロロさん。学園長には近衛近右衛門と言う名前があるです。電話のときくらいちゃんと名前で呼ぶべきですよ」

「そうだな、よし」


「何事じゃ?」

「黙れ妖怪」

「ほっ、クロラージュ君じゃったか。それで、何のようじゃ?」

「ネギ君と連絡を取りたいんだが、そっちにいないか?」

「うむ、少し待ってくれい」

仕方ない、待つとするか。

「クロロさん。いくら妖怪に見えても名前で呼んであげるべきですよ」

「……やっぱ無理だった」

「はぁ、学園長も災難ですね」


「はい、ネギです」

お、繋がったな。

「わざわざすまないな。アルベール・カモミールってそこにいるか?」

「カモ君ですか? はい」

「ちょっと、電話代わってもらっていいか?」

「代わったっすよ」

「ちょっと話したいことがあるからエヴァハウスまで来てもらおうか」

「う゛……。何の話っすか?」

「まあ色々だ。とにかく待ってるぞ」



「そういうことで呼ばれたんすね」

なんだか勘違いをしていたようだな。

エヴァハウスにきた時のカモミールの表情は、こう決戦前の覚悟みたいな感じだった。

それで、仮契約について話を聞きたいと言ったら心底ほっとした表情になってたもんな。

「そうだ。確かだか、お前にもいいことがあるんだろ?」

「う、よく知ってるっすね」

当たり前だ。

とはいえ…

「今回は俺のわがままだから、お前さんに利益がなくっちゃなんとなく不公平だろ」

「うう、そんなとこまで気をかけてくれてるなんて、オレっち感動っす」

いやいや、君はあまり良い印象をもたれてないからな。

おもに下着泥などのせいで。

「あの闇の福音(ダーク・エヴァンジェル)と一緒に生活してるからどんな極悪人かと思ってたんすけど、十百さんといい、いい人が多いっす」

「そうだった。そのことも聞こうと思ってたんだ、いつ一十百と知り合ったんだ?」

「この前いきなりお茶会に誘われたんすよ。何の前触れもなくだったんで驚いたっすね」

ああ、一十百ならありそうだな。

たぶん、なんとなく気が付いたんだろうな。

確証なくだろうけど、そこら辺の勘はいいからな〜。


それで、カモミールの協力を得て準備は整ったわけだ。

「仮契約についてのやり方を説明するぞ。簡単だ、魔法陣の上でキスをする」

「簡単で……キス!!」

「な、なんでそうなるんだ!!」

あらら、夕映とちうちうは驚いてるな。

「まあ簡単な方法だから。ついでに頬とかだと失敗するから」

「マジかよ」

「……誰とするつもりです? クロロさん」

おいおい、夕映。

怖いぞ。エヴァが可愛く見えるほどの黒いオーラが出てるって。

「誰とするって…、う〜ん。最初はエヴァと仮契約をしたかったんだが」

「ブホォァ!! な、なぜ私なんだ?」

「いや、もしかしたらそれで呪いが解けるかもと思ったんだよ。でも他の方法もありそうだからやめておいた」

「そ、そうか」

「マスター、残念がる必要はないです。頼めばすぐにでもOKしてくれそうですよ」

「残念がるか、ボケロボ―――――!!!」


「で、いまは誰と仮契約するつもりなんです?」

だから夕映怖いって。

「え、っと、そうだな。少なくとも千雨は仮契約しておきたいな。いろんな意味で」

「だ―――!!なんでそうなるんだ!!」

「まずは護衛のようなのだ。さっきも言った通り術者からの強化があるから最悪の事態は避けられる。あとは……俺的な好みだ!」

「何サムズアップしているですか!!」

グボハッ…。

エヴァにも匹敵する綺麗な鳳凰飛燕脚だな。

「まて、夕映。話せばわかる」

「安心するです。しっかりとOHANASHIするですから」

だからそれは……グギャ―――――!!!



Side 千雨

アイツも随分と不憫だな。

契約とはいえ…キスか。

確かに恥ずかしいと言えばそうだが、もっとつらい契約方法じゃなかっただけましか。

「クロラージュさんのために包帯を用意しておいた方がいいでしょうか?」

「ああ、用意しといてやれ」

しかしな、聞けば聞くほど、ここが常識のかけらもないことがわかる。

目の前にいる金髪少女、というよりクラスメイトのエヴァンジェリン。

吸血鬼の真祖でかつて600万ドルの賞金首らしい。

その横にいるのがクラスメイトの絡繰茶々丸。

ガイノイド……つまりロボットだろ。

はぁ〜、私の平和な日常はどこに行ったんだよ。


「あ、紅茶が入りました〜」

それと、会員ナンバー11の一十百か。

あれだけは唯一の一般人だな。

「エヴァンジェリン、あの一十百って一般人だろ? いいのか、契約とかしなくて」

「ああ。確かに一十は魔法も気も使えない一般人だが…」

なんだ、言いにくいことでもあるのか?

「このログ豪邸を3日で完成させたんだよ」

そうか……は?

「待て待て、聞き間違いか? 3か月とかじゃなくて3日?」

「ああ、そうだ。更にだな、時速120kmで走れるんだよ。もちろん何にもなしにだ」

「つまり、単純に走ってその速度か?」

「そうだ」

………

………

……???

「人間……だよな」

「そうだ。正真正銘の人間だ」

「どうなってやがるんだ―――――――!!!」

「お、落ち着け長谷川千雨…」

「あ、ああ」

最後の常識人が最も常識から離れたところにいたから、少しパニックっただけだ。

くそ…。

あ、この紅茶、おいしいな。

「まあ、お前のためを思ってクロラージュはこういう方法を持ち出したのだろう」

「魔法使いの道じゃなくてか?」

「あの道はかなり……辛い道になる。本来なら夕映とも仮契約するつもりだったのだろう」

そうなのか…、意外だな。

もっと自分のために動くタイプかと思ってたからな。


「どうしました?」

ああ、忘れるところだった。

幽霊の相坂さよか。

体は茶々丸と同じようなものでできていて中に魂みたいなのが入ってるらしい。

ついでに、もうすぐ同じクラスに通うらしい。

また一つ常識が消えていく。

「お茶菓子は何にしますか?」

「カステラで頼む」

「は〜い」

はぁ、諦めるか。

そのうち、慣れるかもしれないしな。



Side クロラージュ

なんとか死なずに済んだ。

夕映は疲れて寝てしまったがまあいいか。

結構ちうちうのため思ってやってるんだが、どうやら下心で動いてるように見えたらしい。

否定はしないが……下心だけではないぞ。


「それで、どうするか決めたのか?」

「ああ……というか、よく無事だったな」

「いや、三途の川が見えたよ。地獄の鬼も真っ青な雷の雨あられだった」

「よく生きていたな。ある意味すごいんじゃないか?」

「悪いが美少女もしくは美幼女の攻撃では死なないから」

ん?どうしたちうちう?

そんなに冷たい目をして。

「あ〜、なんか、仮契約は後でいいや」

「? そうか、む〜。かなり残念だ」

「いや、私の事よりも自分の心配をした方がいいぞ」

「だから、死なないって」

まあ心配してくれたのはうれしいけどね。

だけどこれからどうするかな。

魔法の事は黙ってられるだろうけど、限界はあるだろうし……

「ああ、そのことなんだが、ここに少し通わせてもらうわ」

「愚痴を言いにだな」

「ぐっ…」

「まあいいんじゃないか? いっそのことエヴァに部屋を貸してもらえばいい。これだけ広いんだ余ってる部屋くらいあるだろ」

「いや、さすがにそこまで…」


「貸してやってもいいぞ、長谷川千雨」

「さすがエヴァ……ってどうした?」

なんか、エヴァがちうちうに対して尊敬のまなざしを送ってるような……。

まさかな。

「いや、一十から某ネットアイドルの話を聞いてな。そのアイドルは初めのころはかなり酷い発言や評価をされてたらしいんだが、それを乗り越えて今まで頑張ってきたらしいんだ。その話に感化されて……な」

「なぁ!! ちょっとまて!! 何でそんな詳しく知ってるんだ?」

「一十はその気高い精神のファンらしいな。あれだけ熱く語られては……、いや普通に感動できる話だった」

どんな話をしたんだ一十百は。

エヴァがハンカチもって感動してるなんて……。

いや、もしかするとちうちうの過去の話がそれほど感動できる話だったのかもしれないな。

「すごい過去だったんだな」

「いや、そんなことはないはずだ。ちょっと……尾ひれがついてないか?」

「それはないだろう。一十はありのままを話すタイプだからな」

確かに…。

ってことは、かなり辛い時代を乗り越えてここまで来たのか。

偉いな。どんな話かは聞いてないが、多分下手な映画よりも感動できるものだったんだろう。

「お、おい。本当にどんな話をしてたんだよ?」

「一十本人から聞け。私ではあそこまで上手くは語れないだろうからな。それと部屋は勝手に使っていいぞ」

「よかったな、ちうちう」

「だ――――!!!その名で呼ぶな!!!」

こうしてエヴァのログ豪邸に新しい家族が増えたようだ。


後に一十百から自分の過去の話を聞いたちうちうは、ハンカチを片手にパソコンに向かってたそうな。


「おれっちの来た意味って……」

「あ! カモさん、せっかくなのでお茶でもどうですか?」

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