小説『魔法先生ネギま ロマンのために』
作者:TomomonD()

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第二十四話 白雷の魔道士の誕生


Side クロラージュ

どうやら、本屋ちゃんが勝ったらしいな。

やはり、な。

「夕映どうした?」

「いえ、ノドカの事をすこし…」

親友がこれから大変なことに巻き込まれないか心配なんだな。

「安心しろ。ネギ君だから、あえて危険な道を教えることはないだろうからな」

「そうですね」

今日は三日目か……。

千本鳥居の罠で小太郎君と戦うんだよな。

「夕映、今日ネギ君はちょっとばかり大変な戦いに巻き込まれるんだよ」

「…なぜわかるですか?」

「いつものあれだ」

「そうですか」

「それでだ。確実に本屋ちゃんが巻き込まれるんだよ」

「!! なぜです」

「ネギ君を追いかけて、罠にはまって…」

「なるほどです」

さてと、ここで本屋ちゃんを止めちゃうと、ネギ君がヤバそうだから…

「だから夕映、そっと本屋ちゃんを追っかけてくれないか?」

「…巻き込まれることを阻止してはダメなのですか?」

「実は本屋ちゃんのアーティファクトがかなりレアな能力を持ってるはずなんだ」

「レアな能力?」

「相手の心を読む」

「すごい能力です!!」

「だから、本屋ちゃんをそっと守ってやってくれ」

「分かったです!!」

うん、さすがだな。さすが我が弟子だ。

さてと、俺は先に…

「待ってほしいです!」

「なんだ?」

「その…あの…」

いったいどうしたんだか?

「か…仮契約をしてほしいです!!」


!! やべ、フリーズした。

「いきなりどうした!! まあ、俺は構わないが……」

「え…その…」

あ〜、夕映がフリーズしてるし……。

言った本人がフリーズしちゃだめだよな。

「まあ、ちょっと待ってろ。少なくともカモを連れてこないと魔法陣が書けない」

「…はいです」

カモ、待ってろ――――!!


「と言うわけで、お前さんにもう少し稼がせてやろうと言うわけだ」

「うう、いいんすか? 昨日の今日で…」

「細かいことは気にするな。俺が仮契約の代金を支払ったと思えばいい」

「クロラージュの兄さん、アンタ漢だよ! ネギの兄貴がいなかったらついて行っちまってるところだ!」

なぜかわからんが、そうとうカモに好かれたな。

まあ、これからも仮契約の時に世話になるだろうから、この関係を続けるのも悪くないな。


「じゃ、始めるっすよ」

「ああ。じゃ、夕映、一応聞くが後悔しないか? 別に仮契約だからそれほど重要な事ではないが、一応な」

「後悔は……しないです。それに……いえ、なんでもないです」

? 何か言いたかったんだろうが、まあいいか。

そのうち本人から言ってくるだろう。

そう言って、仮契約は成功した。



Side 夕映

…仮契約してしまったです。

「どうだ?」

「確かに成功っす。クロラージュの兄さんが主人の方っすよ」

「じゃ、これ。コピー仮契約カード」

そう言って渡されたカードには白いとんがり帽子に純白のローブをきた私がいたです。

「ほう、純白の魔法使いか…ん?」

「ど、どうしたですか?」

「いや、たいしたことじゃないんだが…このカードの夕映の目が…」

「目?」

私が自分のカードの目に注視すると…。

何か、違和感があったです。

「何か変ですね」

「ハイライトが…ない」

よく洗脳された人や一般的にヤンデレと呼ばれる人に発生するあの目ですね。

「なんでそうなってるんですか―――!!!」

「俺に言うか! とにかく、任せた。いろいろと」

放任主義ですか?

仮契約してくださいと言う勇気がどれほどのものだったかわかってないですね。

まあ、いいです。

「私はノドカの後を追うです。このアーティファクトもきっと…」

「力になってくれるよ。なんたって俺との仮契約で出てきたアーティファクトだからな」

うう、改めて言われると、かなり恥ずかしいですね。

とにかく、ノドカを追うです!!



Side クロラージュ

まさか、夕映が仮契約を頼むなんてな……。

いや、なにか…こう、場の雰囲気に流されたような気がする。

「まあいいか、一応これで夕映と仮契約できたし」

「ほう、聞き捨てならないセリフが聞こえたが?」

背中からゾッとするオーラを放ったエヴァが現れた…。

いやなんでそんなに怖いオーラを出してるんでしょうか?

「エ、エヴァ? え〜と、怒ってる?」

「ナンノコトダ。貴様がダレト仮契約しようが私ニハどうでもいいことだガ」

おいおいおい。

エヴァの話し方がチャチャゼロみたいになってるし!

てか、目が反転してる!!

「待て! その……」

うぁ、いいわけが出来ない…。

コレハマズイ、ヤヴァイ…

「おい、クロラージュ!」

「はいいぃ!!」

「いつか、私とも仮契約してもらうからな…///」

そう言うとエヴァは顔を伏せて走って行ってしまった。

「………?」


あれ?

しまった、今のエヴァの言葉を聞きそびれた…気がする。

まさかエヴァが仮契約してほしいなんて言うわけないしな…。

「おい、クロージュ」

「なんだちう…千雨か? どうした」

「いまさらだが、お前ってかなり罪作りな男だよな」

「え? なんの話だ。てか、なぜにそんなことを?」

「これから先、大変そうだと思って同情しただけだ」

そう言ってちうちうは去って行った。

いや、なにが言いたかったんだ?

って、しまった!!

いつの間にかネギ君たちがいない!!

先に行ったのか――――!!!



Side エヴァ

私としたことが…

「エヴァさん? どうしました」

一十百か…。

出発の用意とか布団の整理とかを頼んでおいたんだったな。

「いや……なんでもない」

「エヴァさん。その…よく頑張りました!」

「え? な、なんのことだ?」

「なんとなくそう言うべきだなぁと思って…。こういうのをクロラージュさんは天の意思って言ってました」

天の意思か…いやそこじゃないな。

「別に私は何もしていないから…」

「? そうなんですか? エヴァさんの今の表情…やり切った、というより勇気を出して何かをやり遂げた、って感じだったんで」

う、表情でそこまでわかるものなのか?

と言うよりも、一十はそう言うのに鈍感だったはずだが…

「主の表情一つで何を次にすればいいのか、それくらいはできないといけないみたいです」

執事の心得と書かれた本を指さしながら一十はそう言った。

ふ、コイツもコイツでだんだん成長しているといるわけか。

「一十、そろそろ出発するぞ。バックの中に入ってろ」

「ひぁぁ、やっぱりそうなるんですか?」

「フン、当たり前だ」


「エヴァンジェリン、用意はできたのか?」

「ああ」

「どこに行きましょうか?」

「マスターは東大寺に行きたいそうです」

「大仏か? よく飽きないな…あれ、綾瀬がいないんだが?」

そう言えば、どこへ行ったんだ?

「お、六班も出発か?」

「クロラージュ、夕映はどこに行った?」

「あ〜、個別行動だな。色々とあって、な」

「おい、キサマ。まさかキサマのせいで夕映が個別行動になったわけではないだろうな!」

「それはない。てか、変な誤解を招くような言い方をするな!!」

さっきの事があるからな…。


「それじゃ、出発するぞ!!」

「マスターのテンションが上がり続けています」

「ま、まあいいんじゃないか? せっかくの修学旅行だし」

「私も楽しみです。六十年ぶりですから!!」

夕映よ、一緒に来れなかったことを後悔しても知らないからな。

「オイ、御主人。イイカゲンニココカラ出セー!!!」

「………?」

「イヤ何言イタイノカ、ワカンネエヨ十百」

「………」

「…セメテ、話シ相手クライ欲シカッタゼ」

バックの中がうるさいな。

蹴りの一つでも入れてやろうか?



Side ネギ

「ネギ、前!!」

「くっ!」

親書を届けようと本山に向かったのに鳥居を使った罠にかかってしまったんだった。

なかには…

「西洋魔術師、お前の力はこんなもんか!」

僕と同じくらいの年の狗族?の男の子がいたんだ。

かなり強くて……さっきから、何回か障壁を抜かれてる。

「いったんここは引くっすよ!」

カモ君が投げたジュースが爆発して煙幕の代わりになってくれた。

「ネギ! はやく!」



Side 夕映

ノドカが千本鳥居でしたか、とにかく鳥居をくぐって行ったのを見たので追いかけたのですが……。

いつの間にか出口が無くなっていたですね。

ノドカは…道の横で本を読んでいるですけど……。

あの本は…アーティファクトでしょうか?

「と、言うよりノドカ…あなたの後ろで先ほどまで激戦が行われていたことに気づいてください」


ノドガが前に進み始めたですね。

そっと追いかけるです。

「ネギ先生も何か策があると言っていた…らしいですから」

まあ、何とかなるですよね。


ネギ先生のところまで着くと、さっき戦っていた狼のような男の子が……獣化していたです。

いえ、あまり驚かないですけど…

「ネギ先生右です!」

ノドカがあの速さの攻撃を先読みしたです!!

あれがノドカのアーティファクトで間違いがないようですね……。

他人の意思を読む、とかそのようなところでしょうか?

「確かに強力なアーティファクトですね」

しかし、ネギ先生の受けているダメージもなかなか多そうですね。

撃ち返しているネギ先生の方が先に倒れてしまいそうですね……。

仕方ないです。ここは、親友の恋人のため私が出るですか。


「待つです!」

「え、ゆえ?」

「夕映さん! なぜここに?」

「なんや、増援か?」

全く、この人たちは…

「クロラージュさんに聞いたです。ノドカが巻き込まれるらしかったのでそっとついてきたです」

「クロラジュさんが…」

「おい、嬢ちゃん。俺はネギと戦ってるんや! だから…」

「五月蝿いです。来たれ(アデアット)!」

私の服の上から白いローブととんがり帽子と長い木の杖が現れたです。

「なんや! アーティファクトかいな!」

この少年がいなければノドカは普通の日常を送れたはずです。

ネギ先生がもう少し気を付けていればこんな状態にはならなかったはずです。

ふつふつと怒りがたまってくるです。

「夕映さんの周りに雷が爆ぜている気がするんだけど…」

「いや、兄貴。実際バチバチいってるっすよ!」

この怒りの矛先は……少年あなたです。

「…なにか言い残すことはあるですか?」

「なっ……俺に勝つつもりかいな? ハッ、そんな…」

「ないのなら、黙ってるです」

私の中の怒りが何か冷たいものに変わったのを確信できた瞬間でした。

私にも見えるくらいローブから稲妻がほとばしっていたです。

「避けられるなら、避けていいですよ。手加減などする気はないですから」

「その前に気絶させればええのや! くらえぃ!!」

「フォア・ゾ・クラティカ・ソクラティカ…」


少年の姿が消えた…いえ私では見えなくなったと言った方が正しいでしょうか。

私に向かって拳打でも打つつもりだったのでしょう。

しかし…

「ぐぁあぁあ…」

この身にまとう雷は飾りではないのですよ。

来れ(ケノテートス) 虚空の雷(アストラプサトー) 薙ぎ払うです(デ・テメトー)…」

「くっ、一旦距離を取らんと…っか、体が痺れて動け…」

「 雷の斧(ディオス・テュコス) 」


かつて、クロロさんに放った雷の斧とは比べ物にならないほどの巨大で密度のある雷の斧が少年に襲い掛かったです。

「な……」

轟音と共に目の前が白と黒のモノクロームに塗り分けられたです。

静寂が戻った時には、少しえぐれた石畳みとその中央にうつ伏せになって倒れている少年がいました。

「形は残ったですね…去れ(アベアット)



Side クロラージュ

今…小太郎君がひどい目に……というか、たぶん今後のトラウマになるような一撃を受けた気がするんだけど……。

「まあいいか」

千本鳥居で何かあったな。

残念ながら俺はそこに行けなかった。

なぜなら…

「こっちや!」

「なんで転回が……こんな展開みとめん!!」

「なにつまらんことを言ってんのや!」

げ、結構渾身のギャグだったんだが……。

さすが大阪…いや京都と言ったところか。

「とにかく、なぜお前がここに!」

「ちょうどよかったん! まず新しい主人をフェイトはんに紹介せんと!」

どうやら、西側にいるときもしくはその仕事中はなるべく標準語を使わないようにしてるらしい。

いいんじゃないか、別に標準語だって。フェイトだってそうだし…。

「て、フェイトはマズイ! 頼むからやめてぇ!!」

「僕がどうしたんだい?」

……なんでいるんだよ。

おいしそうに団子食べて…

「…転回さん、彼はターゲットではなかったのかい?」

「フェイトはん!これがウチの新しいご主人さまや!!」

「フェイトお前、教育方針変えた方がいいぞ。絶対にずれてる」

「彼女は僕が育てたわけじゃないから…」

「いや、たぶん今の西側でお前が一番まともだから、ストッパーかけて」

「…できたらやっているよ」

ああ、どことなくフェイトの表情が曇ってる。

大変なんだな、お前も。

「とにかく転回さん。彼は東側の人だから、今は連れてきてはいけないよ」

「いちおう顔合わせのつもりやったんやけど、知り合いだったん?」

さてと、どっちの方がいいのかな?

フェイトも困ってる? みたいだし、ここは…

「ああ、よく知ってる。昔よく遊んだとかそんなのだ、な?」

「…そんな記憶がなくもないな」

「なんや、幼馴染だったんか〜。あ、ウチまだやることあるから先行くわ!」

そう言って転回は去って行った。

「おつかれ、フェイト」

「君もお疲れ」

「帰っていい?」

「君をここで石にしてしまうと、転回さんが何するかわからないから…」

「ああ。その、お互い頑張ろうじゃないか?」

「…敵側から言われてこれほどうれしい言葉はないよ」

うんうん。

お前も大変なんだな。

これから戦うことになるだろうけど、なんとなく気が楽になったよ。

さてと、俺は…

「本山に向かうつもりかい?」

「まあな、仕方ないだろ」

「君なら次僕たちがどう出るかわかるんじゃないのかい?」

おいおい、何だか過大評価されてないか?

俺そこまですごくないよ。

一応は…

「まあ、戦うことになったら…運が悪かったという事で。それじゃな」

どうしたものかな。



Side エヴァ

ここが東大寺か。

いや、何度か来たことがあるのだが…

「やはり、何度来ても感動するな」

「そうか? エヴァンジェリンの好みがどうも…」

「マスターは古い建造物に並々ならぬ執着心を持っているので」

おい、茶々丸。

「お前は生まれてから二年くらいだからこの良さがまだわからないのだ!」

「…お〜い、さよ。どうだ、感動できるか?」

「はい。ここに来ると心が現れます」

ほら見ろ。

さよにはこの良さが分かるんだ。

歳を取っていないお前たちにはこの良さは分からないさ。


「外に出してもらえましたね」

「御主人ガ上機嫌ダカラナ」

「………!」

「ドウシタ?」

「千本鳥居?」

「ナンダソレ」

「エヴァさ〜ん、千本鳥居ってなんですか?」

ほう、あれを見たいのか。

一十お前もなかなかいい趣味をしてるじゃないか。

「千本鳥居か、少し遠いぞ。しかし、いきなりどうした?」

「クロラージュさんがそこに向かってるらしいです」

なぜわかるんだ?

「まあ、お前が言うならそうだろう。さて、どうやって向かうかだが」

「あ! あれを使えば…」

「! ほう、確かにいいな」

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