小説『魔法先生ネギま ロマンのために』
作者:TomomonD()

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第二十六話 夜桜の決戦


Side クロラージュ

今は夜…。

夜桜鑑賞と洒落込んでるわけです。

隣にいるのが…フェイトなんですけど……。

「おい」

「なんだい」

「どうしてこうなった」

「スクナの力を試そうと思ったんだけど、ちょっと儀式に時間がかかるらしい」

「結局、木乃香をさらうんだな」

「まあ、そうなるね」

…どうしたものか。

今の俺じゃ、勝てない。

いや、今ここで戦えば被害を多くしてしまうだろう。

「はぁ〜、どうしたものかね」

「時間が来たら行動するよ」

「それまでは、夜桜鑑賞ですか。余裕だね〜」

「失礼かもしれないけど、君じゃ相手にならないからね」

悪かったな、弱くて。

「クロラージュさんと、え〜と…」

「ああ、フェイトだ」

「はい、フェイトさんこんばんは。一杯どうですか?」

一十百が杯と酒のビンのようなものを持ってきた。

「未成年じゃないのか?」

「あ、これ砂糖水ですから」

「「なんてものを飲ませるつもりだ」」

「ふぇ…、二人いっぺんに言わなくても…」

ああ、なんだよ。

和んでしまうじゃないか。

「まあ、気分だけでもどうぞ」

そういって二つ分の杯に酒…あ〜砂糖水を注いでくれた。

「飲まなくてはいけないのかい?」

「結構おいしいですよ」

「マジか。どれ…」

くっ と飲んでみると…ただの砂糖水じゃなかった。

甘いが、どことなく辛く、後味もすっきりの疑似酒ともいえるものだった。

「うぁ、これはやられた。さすが一十百だ」

「…本当に砂糖水かい? なかなか上等な日本酒の様だけど」

「僕が作り上げた鏡酒っていうお酒みたいな飲み物なんです」

「アルコール…入ってるのか?」

「ふぇ? 未成年はお酒を飲んじゃだめです!」

入ってないんだな。

「しかし、美味いな」

「ああ、たしかに」

なんだよ、フェイトも人間味があるじゃないか。

どこぞの筋肉バカが言ったとおりだな。

しいて言えば、敵にはしたくないんだけどね。

それは無理か。

「何からできているんだい?」

「えと、ですね…」

フェイトめ、気に入ったのか?

コーヒー派のくせに。


「世界樹の朝露に麒麟の涙と鳳凰の爪を砕いていれたものを鈴炎の鍋で煮込んで、冷ましてできたものです」


「「…………」」

「? どうしました」

「いや、その…エヴァとかにも注いできてやってくれ」

「は、はい。クロラージュさんは優しいですね〜」

そういって一十百は走って行った。

「フェイト、その、すまん」

「え゛…、今の本当だったのかい?」

「一十百はそういう嘘はつかないから」

「これ、飲むのがとてももったいなくなったんだけど」

「ま、まあ決戦前夜…というか直前の清め酒と思えば、まあいいんじゃないか」

「すこし上等すぎるね。ありがたくいただくとしよう」


鏡酒とかいうなんか高級砂糖水を飲みきると……、フェイトがゆっくり立ち上がった。

そうか…、もうそんな時間か。

「時間だね。僕は一度、千草さんと話があるから」

「ああ、次あったら覚悟しておけよ」

「そうさせてもらうよ」

そういって、フェイトは夜の闇の中へ消えて行った。

やはりいいやつじゃないか。

ずっと先になるが、いつか和解してやるか。

さてと…

「俺は俺で作戦を立ててあるからな。そうやすやすとはいかないぞ」



Side 夕映

六班全員がここに来ているなんて少し不思議ですね。

「綾瀬…」

おや、千雨さんが起きたようですね。

「気分は大丈夫ですか?」

「まあまあだ。まだ少しクラクラするが…」

「千雨さん?」

なんだか、申し訳なさそうな顔をしてるですね。

「クロロさんに運ばれたのを気にしてるですか?」

「……少しな」

「そこまで気にする必要はないです」

「…はぁ〜。意外に大人なんだな綾瀬は」

どういう意味でしょうか?

「普通な、思い人が親切心とはいえ別の女性を抱きかかえて運んだらそれなりに腹を立てるもんだろ?」

「もしも、それがクロロさんじゃなければ腹を立てていたと思うです」

「………」

「………」

「プッ。確かにそうだな」

なんだか、千雨さんが諦めたような笑いを浮かべているですね。

なんとなく、ほんとになんとなくですけど、千雨さんはクロロさんに好意を持ってると思うです。

たぶんそれは、千雨さんのせいではなく、クロロさんにある何かに惹かれたんだと思うです。

うむむ、ライバルになりそうですね。

全くイヤな気にはならないライバルです。


…!!

「千雨さん!」

「なんだいきなり!」

間に合うですよ!

「フォア・ゾ・クラティカ・ソクラティカ 風よ(ウェンテ)!!」

その扉の向こうにいた誰かが放った魔法……。

煙のようなそれを散らすのが私の精一杯でした。

「なんだよ、この煙みたいなのは!」

「それに触れてはだめです! たぶん、触れてしまったら…」

煙が触れた布団や洋服が石になっていくのが見えたです。

「石化…してしまうですよ」

「…なんだよそれ」

しかしこの風だけでは、飲み込まれてしまうです。

こうなったら…

「千雨さん、私の合図とともに真っ直ぐ走って部屋を出るですよ!」

「走って、ってどうやって」

「私の魔法で道を作るです!フォア・ゾ・クラティカ・ソクラティカ 雷の精霊45人(クアトラリーギンタ・スピーリトゥス・トータンラル)! 集い来るです(コウエンテース) 魔法の射手(サギタ・マギカ) 連弾・雷の45矢(セリエス・フルグラーリス)!!」

放たれた雷の矢は石化の煙を散らして廊下までの道を作ったです!

「今ですよ!!」

「あ、ああ!」


まさに間一髪でした。

千雨さんも私も石にならずに済んだです。

「た、助かった…。綾瀬サンキューな」

「いえ。しかし…」

いつの間にか他の人たちの声が聞こえなくなってるです。

もしかすると、今の煙に…

!! ノドカ!

「お、おい、どこへ行くつもりだよ」

「ノドカが心配です!」

ノドカお願いだから無事でいるですよ!



Side クロラージュ

さて、石化の煙は俺の爆炎の前に白旗を上げたわけだ。

フェイトめ、さては俺程度ならこの魔法でどうにかなると思ったんだろうけど、そうはいかないぞ。

まあ、風上だったことも運がよかったな。

「あ!クロラジュさん、無事だったんですね!」

ネギ君じゃないか。

まあ、君が石化しちゃったら大変だったよ。

「まあな。一応俺も魔法使いだから」

「ネギ先生!」

おお、刹那も無事か。

さすが。

「刹那さん! 本山に対して石化の魔法が使われたようです!」

「いったい誰がこんなことを…」

フェイトで〜す、とは言えないよな。

どうしたものか…

「あ、そういえば…ネギ君、刹那、アスナと木乃香は?」

「それがどこにいるかわからなくて…」

「仮契約カードって話せなかったっけ?」

「あっ…」

「兄貴忘れてたんですか?」

全くネギ君は〜…。

あ、というか、俺の弟子大丈夫か?

まあ、夕映だから切り抜けてくれるといいんだけど……。

よし、この仮契約カードの力を使ってみるか!

「念話!」



Side 夕映

≪お〜い、我が弟子夕映〜きこえるか〜≫

クロロさん!

「どこにいるですか!」

返事がないです……。

それよりも今、直接頭の中に声が聞こえたような…

≪聞こえたなら、仮契約カードを額に当ててみろ≫

仮契約カードをですか?

まあ、言われたとおりにするです。

「当てたですよ」

≪おお、本当に話せるのか! 便利だな≫

「クロロさん、これはいったい…」

≪仮契約カードを使った念話、つまりカードを使った電話みたいなもんだろう≫

「なるほどです……ってそれどころじゃないですよ!!!」

≪わかってるって、石化の魔法だろ? 無事か?≫

「私も一緒にいた千雨さんも無事です」

≪やるな、さすが我が弟子≫

こ、こんな時まで褒めなくても…

≪それでな夕映、なるべくでいいから千雨を守ってやってくれないか?≫

「わかってるですよ」

≪本当なら俺が二人を守りたいんだけど、ちょっとばかし手が回りそうにないんだ≫

私と千雨さんを守ることより大事なことがあるのでしょうか?

少しばかり、イジワルしてやるです。

「気をつけるですよ、クロロさんは少しばかり実力に不安があるですから」

≪グバァ…≫

お、思った以上の効果でしたね。

≪ま、まあまた連絡するから。それとな…≫

「まだ何かあるですか?」

≪…本屋ちゃんのことだが、しっかり石化させられてた≫

ノドカが!

私が走り出そうとすると…

≪まて! 慌てるなよ、夕映。親友のことになると少し前が見えなくなるのは悪い癖だぞ≫

「見てないのによくわかるですね」

≪? まあ、今は見てないがいつも見てるから行動パターンはわかるんだよ≫

///ちょっと、うれしい一言です…。

≪いいか、石化は治る。今は落ち着いてそこらへんで待機しててくれ≫

「ずいぶん曖昧な指定ですね…」

≪とにかく、変に動かないでくれよ。正直、二人にケガされたら大変だからな≫

私たちのことが心配のようですね。

心配しすぎではないですか?

「一応私も魔法使いですから、安心して事を終わらせるといいです」

≪そうだな。よし、ちゃんと待機出来たら後でなでなでしてやろう≫

「べべべ、別にそれはいいです!!」

そういうと、クロロさんからの念話は切れてしまったです。

「クロージュからだろ、なんだって?」

「二人にケガをされると困るから待機しててくれ、だそうです」

「そう思うなら助けに来いよな」

「いろいろやることがあるそうですから」


クロロさん、気を付けるですよ。



Side クロラージュ

夕映とちうちうは無事か…。

一安心だな。

しかし……、さっき俺が部屋をいくつか見て回ったとき、朝倉、本屋ちゃん、パル、佐々木まき絵がしっかり石化されてたんだよな。

くそ……。

せめて、佐々木まき絵だけでも助けたかった。

後のフラグのために!!!


「ネギ君、それでアスナと木乃香は?」

「はい、無事なようでした」

「それはよかった。じゃ、すぐに助けに…」

あ、西の長だ。

完全に石化してる。

あれ? なんか、大事な話をしてくれなかったけ?

まあいいか。

「まさか、長まで石化させられてるなんて…」

「刹那、まあ、あれだ。実戦から離れすぎたんだろう」

「長、お嬢様は必ずお守りします!!」

うんうん、さすが刹那。

立派な騎士…というか侍だな。

さてと、ネギ君も走り出したみたいだし、追いかけますか!


で、お風呂なわけです。

でも、原作と違うのは…

「ひえ〜、だからウチ、木乃香さんの居場所なんて知らんて〜」

「私が気を失ってる間につれってったんでしょ!! 正直に話しなさい!」

転回巡…。

だから、なんでここに?

「あ、ターゲット…。ちがった、もうご主人さまだった。というよりこの誤解を解いて〜!!」

「アスナ、まあちょっと待とうか」

「何よ!」

「せめて服を着ろ。露出狂か?」

「え…、イヤァァァ―――!!」

ガフクゥ…、障壁抜きの蹴りを食らった。

なんでこうなる。


「とにかく落ち着いたな。じゃ、話してもらおうか?」

「え〜、ここは標準語の方でっと」

それはスイッチで切りかわるものじゃないだろう…

「私がここに来たのは、まあ木乃香さんを捕縛し次の作戦の礎にしようと…」

「貴様…斬る!」

「待った! MATTAAAA! 斬ったらこの先のこと聞けないだろう」

「そうでした…、続けてもらおう」

ふう、危うく俺の契約者が三枚下ろしになるとこだった。

「クロ…、刹那さんが私の知ってるのよりも怖い…」

そういうこと言わないの。ややこしくなるだろうに…

「それで、何があったんだ?」

「私がここに来た時には、アスナさんが裸でハリセン持って倒れてて、風邪をひきそうだったからタオルをかけてあげたら…」

「目覚めたアスナにハリセンの乱舞を食らったと…。悪いのアスナじゃね?」

「えええ! 今のって私が悪いの!」

「ま、まあ。しかし、貴様が本当のことを言っているとも限らない」

「あ、それは大丈夫だ刹那。転回は嘘をつけるほど器用じゃない」

「クロ、それほめてないよね」

ほめてないから大丈夫だ。

「では、お嬢様はどこへ…」

「刹那さん! 外から巨大な魔力の放出が!」

おお、ネギ君が気が付いたか。

ネギ君の後に刹那、アスナと続いて出ていく。


このあとは…

「広い草原の中、召喚された式神に襲われるんだったな」

「分かってて、止めないんだ」

「止められないだろうし」

「そのことについて、一言くらい言ってもよかったと思う」

「まあ、一応俺もそこに行くから大丈夫でしょ」

「え……あ、あぶないよ?」

そんな顔をするなって、転生者だろ?

あ、転生者だからか?

まあ、可愛いじゃないか…。

「そ、危ないんだよ。だから転回はここで…」

あ、いいこと思いついた。

「ちょっと転回頼まれてくれないか?」

「え、なに」

「綾瀬夕映、長谷川千雨の二人は覚えてる?」

「覚えてるけど…」

よし、さすが転生者、特徴あるキャラは忘れないもんな。

「その二人がこの屋敷……どっかにいるから、一緒にいてくれないか?」

「どっかって、曖昧だね」

「仕方ないんだよ、その辺で待機って言っちゃったんだし。とにかく合流してやって」

「別にいいけど…」

よし、じゃ俺はネギ君の後を追いますか。

まだ無事だよな?



Side 転回

行っちゃった…。

一応ご主人の頼みだし、二人を探さないと。


意外と早く見つかるもんだね。

私が幸運持ちなのかな?

「綾瀬夕映と長谷川千雨、やっと見つけました」

そうそう、私の好きなポーズがあるんですよ。

左手は腰に、足は肩幅に、そして右手の人差し指を相手に向けてビシッと……。

あれ?

なんか、杖を構えられてませんか?

「西からの刺客…、いえ、状況確認といったところですか?」

「え、た、確かに大丈夫かどうか確認しなくちゃいけないけど…」

「なるほどです。石化されていればどうにでもなるという事ですね」

あれ?

なんか、険悪なムードに…

「フォア・ゾ・クラティカ・ソクラティカ 雷の精霊27人(クインキムリーギンタ・スピーリトゥス・トータンラル)! 集い来るです(コウエンテース) 魔法の射手(サギタ・マギカ) 連弾・雷の27矢(セリエス・フルグラーリス)!!」

え、魔法!!

これは、よけられない!

私の転生人生もここで…

≪お〜い、夕映。そっちに転回って人が行く予定なんだよ。味方だから仲良くしてやってくれ≫

クロの声が頭の中に……。

ああ、多分これが走馬灯っていうやつだ。

「言うのが遅すぎるですよ!! 曲がるです!!」

目の前まで飛んできていた雷の矢はギリギリのところで空へと飛ぶ方向を変えていった。

あ、助かった……。

そう思った瞬間、腰が抜けちゃった。

「まったくクロロさんは、あと少しで大変なことになってたですよ!」

≪え、もう会ったの。転回って幸運スキル持ちか?≫

知らないけど…、もしかするとそうかもね。

「何はともあれ、よろしく。クロの仮契約者の転回巡です」

「……仮契約者?」

あれ…、なんか黒いオーラが……。

「ああ、事故で仮契約をしてしまった人ですか」


あの、クロ……。

私をここに向かわせたのは間違いだとおもうよ。

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桜風に約束を−旅立ちの歌−
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