小説『魔法先生ネギま ロマンのために』
作者:TomomonD()

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第二十七話 伝える気持ち解かれる捕縛


Side エヴァ

私としたことが、不覚だった。

まさかいきなり石の息吹が来るとは……。

本来なら、力を封印された私は石になっていただろう。

だが……

煙が私を包む直前に、私を突き飛ばしたヤツがいた。

一十が私をかばったため完全に石化することは防げた。

足の先が軽く触れてしまったようだが……。


「ック、やはり触れた部分から石化していくのか!」

つま先から確実に石化が進んでいる。

まあ、一十が突き飛ばした方向に私のバックがあったのは運が良かった。

いざという時のために魔法薬を入れておいた。

おかげで何とか石化の浸食スピードを緩めることができた。

今の私なら一分もしないうちに石化してしまっただろう。

「せめて茶々丸が石化しなければ…」

あの時、石化の煙、茶々丸、チャチャゼロ、一十、私の順になっていた。

ギリギリのところだったんだな。

だが……これでは…。

既に脹脛の部分まで石化が進んでいる。

このままでは…

「う……。あれ?」

!!ばかな……。

目の前の一十がゆらりと立ち上がった。

今さっきまで、石化していた。

それなのに、今私の目の前で…

「エ、エヴァさん……!! あ、足が石に…」

目の前で…泣きそうになっている?

「うぁぁぁ、どうしよう、エヴァさんがこのままだと石に〜!」

「まて、一十。落ち着け!」

「はい」

おお、どんなに錯乱していても、ちゃんと大主である私の命令は聞くんだな。

うむ…、良い下僕だ。

じゃなかった…

「なぜ石化が解けている! 今さっきまでそこで石になっていただろう!」

「え、その、よくわからないうちに…」

「元に戻っていたか」

一十はそういうところがあるからな。

すこし考えてみるか。


まず、魔法を無効化する魔法完全無効化能力者(マジックキャンセラー)ではないな。

一度石になっていた時点でこれはない。

次に、一度石化した後、解除した。

これもない。もともと魔力や気が無いんだ、解除なんてものはできないだろう。

それに全身が石化した状態なら自らの力で解除することはできない。

あとは……前もって石化解除の魔法を自分にかけておいた。

まさか、だが…、クロラージュは少し未来なら見えると言っていた。

もしかすると、一十も……。

いや、考えすぎか。


「エヴァさん、足が……」

「しまった! 石化していたのを忘れてた!!」

いつの間にか太腿まで石化が進んでいた。

本格的にこれでは…

「エヴァさんがぁ…」

このくらいで錯乱するな!

おい一十、石化した足を磨いたところでどうにも…


!!

「待て、一十」

「ふぁい?」

今確かに足を触られた感覚があった。

石化しているのに、感覚が戻った…だと?

それにいつの間にか石化の浸食が止まっている。

「一十、いま何をした?」

「え、その、石になった足を磨こうと…、もしかしたら元に戻るかもとおもって…」

そういって一十は私の石になった部分に手を当てていた。

手を当てていたの部分だけ確かに触れられている感じがする。

「一十、その手をどけてみろ」

「ほぇぅ、はい」

一十が手をどけると…

「石化が……解けているだと!!」

「ふぇぇぃ、な、なんで!!」

本人にも分からないか。

確かに手が乗っていた部分の石化は解けていた。

他の部分は石のままなのになぜ……。

いや、考えるのは後でいい。

「一十、石になっている場所に手を当てていけ」

「は、はい」

これで、私の石化は解けるだろう。

しかし……、なぜだ……。

一十本人にもわからないということは、いわば呼吸のように自然と起きているものだろう。

これがどういう仕組みかわかれば…

「エ、エヴァさん……とりあえず、終わりました…」

「む…そうか」

立ち上がれるな……。

本当に石化を解除したのか…。

一十は自分の手を見ているが何もないぞ。

お前は手から光があふれてたり白い靄が出てたりするのを考えてたようだが、それがあれば私でもこの状況は分かる。

それがないからまったくわからないんだ。

「もしかしたら……、他の人の石化も…」

「待て一十。お前の石化解除は部分的にしか効果を示さない。変に石化を解除すれば…そうだな、呼吸が出来ない状態になってしまったりする」

「……ふぃ」

「だから、ここは耐えろ」

「…はい」

そうだな…

「だがチャチャゼロ、茶々丸なら解除しても大丈夫だろう」

「あ、はい! でも、ゼロさんはすぐに解除できても茶々丸さんは…」

確かに、時間はかかりそうだな。

「どこぞのゲームみたいに針で石化が瞬時に解ければいいのだがな」

「針……で?」

「なんだ知らないのか?」

意外とゲームとかはやらないようだな…

「思い出しました!! たしか…」

何やら、自分のポケットをあさりだしたぞ。

「あ、よかった〜。まだあった、これです!」

一十の手には白銀に光る針が…

「…聞きたくないが、まさかこれで石化が解けるとか言い出すなよ」

「え……その…」

本当に針で石化が解けたら苦労しないわ!!

まったくこの下僕は…

「この針、白金の針っていって…オリハルコーンとミスリルって金属を半々で合成した針なんです」

「…どこでそんなものを」

「福引で当たりました!!」

何の福引だ――――――――!!!

まて、ここでつっこんだらダメだな。

よし、落ち着け。

「それで、この針には不思議な力があって……、動けない人に対して刺すと動けるようになるらしいんです」

そうか、そうか。

そこまで言うなら…

「いいだろう、茶々丸に刺してみろ。どうせもとには…」

「てい!」

サクッ…

パリン!!

「マスターお逃げ下さ……おや?私は…」

「もどりました〜!!」

「何―――――――――――――――!!!!」

ゼイゼイ……。

そうだった、こいつの前では常識など紙屑同然だったんだ。

「茶々丸、その……体に異常はないか?」

「はい、システムオールグリーンです」

ハハハ……。

石化を解除する針…か。

「おい一十、今の針あと何本ある?」

「ふぇ、その…今のしか持ってなくて……、その使ったら溶けて消えちゃいました」

くっ…そうか。

だが茶々丸が元に戻った、これだけでも十分すぎる功績だな。


西の総本山が落ちたか…。

今思えばそれだけ強力な魔法使いだったのかもしれないな。

力の出せない私が無事なのが不思議なくらいだ。

「ゼロさん……その、大丈夫ですか?」

「オイ、サッサト手足ノ石化ヲ解除シロ」

「ふぇ、はい!」

チャチャゼロの石化も解除できるのか……。

あの力は、白金の針の力ではなかったのか。

では、何の…

「エヴァさん……今の状況って、その、結構大変です…よね?」

「そうだな。関西呪術教会の総本山が敵の手に落ちたんだ、一大事だろうな」

今頃クロラージュやぼーや達がかなり慌てているころだろう。

手伝ってやりたいが……。


!!

かつて闇の福音(ダーク・エヴァンジェル)と呼ばれた私が手伝ってやりたいなどと一瞬でも思うとは……。

私もずいぶん変わったな。


「エヴァさん。もしもエヴァさんの実力が戻れば……何とかできますか?」

「少なくとも多少は好転するだろうな。戻ればの話だが」

「…わかりました。任せてください!!」

「そうか…、ん! 何をする気だ?」

「何とか……してみせます!!」


無理…。

そう、無理、不可能、出来るわけない、そんな言葉は何度もこいつに言った気がする。

そのたびに、覆された。

今回も……覆すのか、一十?

「やれるなら、やってみろ!!」

「はい!」

魔力も気も持たないお前がどこまでやれるのか見せてもらうぞ!



Side 一十百

エヴァさんの力が戻ればきっとみんな助かると思うんです!

だから僕はそれのお手伝いをしないと……。


まず月の出ている下に行きます。

つまり外に出ます。

きれいな夜桜です。

「きれいですね〜」

「おい……」

あ、エヴァさんをお待たせしてるんでした。


じゃ、ここからが本番です!



Side  エヴァ

目の前の一十がゆっくりと両腕を横に開いていく。

そっと、目を閉じ……不思議な言葉を紡ぎだした。

魔法とは違う…、何か。

届いて(リリアス)

なんとなく、この光景をどこかで見たことがある。

思い出せないのは悔しいが…今は、そんなことを気にしている場合じゃなかったな。

届いて(リリアス) 僕の声(サスティルコー)

呪文とはやはり違う、誰かに話しかけようとしているそんな声だ。

届いて(リリアス) 僕の声(サスティルコー) 初めての友達である君になら(サテス・フィエンジェ・アスラトレ)

一十の初めての友達?

誰だ?

どこまで離れていようと(エントアオルディ) 僕は(メァ) 君に語りかける(ヤゥテロシューレ) 千里万里を越えて(サコル・デ・アセンセイソン) この声が君に届くその時まで(ラスタフォーリジオ)

祈り……、そう、祈りとも思えるな。

だが、いったい誰に向けて…

だから(ダカラ) 届いて(トドイテ) 僕の声(ボクノコエ)


「!! 届いた!」

「何!!」

そうか、あの時さよに使ったテレパシーのようなものか!!

一体誰に…

「ポチ!!」

ポチ―――――――!!!

待て、落ち着け。

私は闇の福音(ダーク・エヴァンジェル)だ、こんなことですっころんでは威厳というものがなくなってしまう。

ふう、落ち着いた。

大丈夫だ。

「ポチ、世界樹の前まで行って。学園精霊さんとお話ししたい」

なるほど、ポチを使って学園精霊と話すのか。

なかなかいい方法じゃないか。

「はぁはぁ…」

「ん?」

一十が息を上げている?

今までどんなに速く走っても、無音拳の連撃を避け続けても上がらなかった息が上がっている……。

「お、おい一十。大丈夫か、お前が息を上げるなんて…」

「え、えへへ……ちょっと…」

そういって、微笑んで見せているが……。

あからさまに疲労している。

この、テレパシーのようなものはそこまで消耗するものなのか?

「着いた? よ〜し、僕の言葉をそのまま伝えて」

しかし、学園精霊とポチが話せるかどうかが問題だな。

「●◆□*▼◎○−(Σ°ゝ°)/ ?」

何を話しているか全くわからないが……おかしい部分がないか?

いや、前話していた時もこんなのがあったから気にしてはいけないな。

「…え〜と………てことは……らいとにんぐぼると……なるほど」

いやまて、今確かに変な部分があったぞ!!

いやダメだ。今、一十は相当集中している。

もしこれで集中を途切れさしたら、それこそ意味がない。

「つまり…じゃきがんかいほう……で……しゃいにんぐふぁいあ〜…で………みろひとがごみのよう…で………せかいのはんぶんをおまえにやろう…ということですか……」

オイ――――――――――――――――!!!!!

今のはすべてがおかしかったぞ!

「茶々丸、つっこんでいいはずだよな今の」

「マスター、一十百さんが集中しています、お静かに」

「落チ着キノネエ御主人ダナ」

こいつら……。

今の一十の言葉はどう考えてもおかしいだろう!!


「わかりました…ありがとうございます。ポチ、ありがと」

どうやら、一通り終わったようだな。

さて、どんな結果が…


パタッ…


一十がふらりとしたかと思うと、力なく倒れてしまった。

なっ…

「おい一十!」

「まだ…です……紙とペンを……」

視点があってない……。

それほど消耗していたのか…。

話の内容があんなのだったから少し気楽に構えていた。

「エ、ヴァさん、紙とペンを…」

「ああ、わかった!」

「マスターこれを」

茶々丸がメモ帳とボールペンを持ってきたようだな。

よし!

「一十これを使え」

「…は、い」

おぼつかない手つきで何か書いていってるが……。

……書くスピードが速すぎないか?

体力……いや精神力を消耗してふらふらの状態のヤツが書くスピードじゃないだろ!

ペンが何本にも見える…、残像か?

「エヴァさん……これを」

書き終わったメモ帳を渡そうとした瞬間一十は気を失った。

しっかりとやることはやって気を失ったようだな。

「オイ、十百ハ大丈夫ナノカ?」

「どうやら精神的に限界だったのだろう。特に問題はない」


しかし、このメモ帳にはいったい何が書かれているんだ?

私の力を戻すことが出来る秘策でも書かれていれば少しは……。

そう思ってメモ帳を開く。

そこには…


【エヴァさんの封印を今回限定的に解除する方法】

必要なもの:学園長の印鑑・特別な紙(なるべくたくさん)

方法:? まず、エヴァさんの京都行きは学業の一環であると書かれた紙をたくさん用意する

   ? 次にそれに学園長が印鑑を押して了解する

   ? 印鑑を押してから5秒間だけエヴァさんの封印が解ける

   ? つまり、5秒ごとに印鑑を押し続ければエヴァさんの封印は解けたまま

   ? 魔法とかエヴァさんの吸血鬼の真祖の力も戻ってくる

注意事項:印鑑を押すのは学園長がやらないと効果がない

     また、これは修学旅行中にしか効果がない

     たぶん全力の状態にはなれないけど、8割から9割くらいの実力は戻せる

     学園精霊の制約を誤魔化すことで一時的に力を戻します

                       頑張ってください エヴァさん


…と書かれてあった

「マスターこれは…」

「ク、ククク……フハハハハ!! 最高だ、一十百! お前ほどよくできた下僕はいない!!」

「せめて執事、召使いと言ってあげてはどうでしょうか?」

「そうだな……クックック」

お前には驚かされるよ…。

急いで爺に連絡だ!


「むう、西の本山が落ちたとな!」

「そうだ! これから私が直々に加勢しに行ってやる!」

「おお、それは…」

「だからな爺、少し用意してもらうものがある」

「ふむ、用意できるものなら可能な限りは用意するつもりじゃが…」

「よし。用意するものは二つ…いや、二種類だ。一つは印鑑、学園行事とかに押すやつでいいはずだ」

「それならここにあるぞい」

「もう一つは“エヴァンジェリン・A・K・マクダウェルの京都行きは学業の一環である”と書かれた紙を可能な限り作れ」

「なんじゃそれは?」

「私にもよくわからんが、学園精霊の制約を誤魔化す効果があるらしい。その紙に印鑑を押してから5秒間だけ封印が解けるらしい」

「つまり…なんじゃ…押し続けろと?」

「ああ、そうだ! 孫が心配なら急ぐことだ!」

「むむむ……わかったわい」

「用意が出来たら勝手にはじめろ。封印が解けしだい私が加勢しに行く」


どうやら、用意が出来るまで少しかかるようだな。

これで、封印が解ければ…

「マスター、一つよろしいでしょうか?」

「なんだ茶々丸」

「一十百さんが書いた方法でもし封印が解けなかったらどうするつもりですか?」

「……あ」

そうだった、コイツは何でもできるような万能人だと思っていたが……。

魔法に関しては、他のものよりも不得手なはず。

この方法で封印が解けるかどうかはまだわからないのか…。

「確かに解けるかどうかはわからん。だが…」

気を失っている一十を見てなんとなく…

「コイツは私たちの考えの外側にいるやつだ。今回も、うまくやったのだろう」


しばらくして、私の中に懐かしい感じが戻ってくるのを感じた。

「懐かしいな。そうだ、これでこそ闇の福音だ(ダーク・エヴァンジェル)!!」

一十、礼を言うぞ。


私がこの戦況を変えてやる!!

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