小説『魔法先生ネギま ロマンのために』
作者:TomomonD()

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第二話 月夜の約束


Side クロラージュ

いま俺はかなりの分岐点に立ってると思う。

この分岐点を間違えると、一生変質者扱いになる………と思う。


「少年。まず一ついいか?」

「はぅ、えと、なんでしょうか?」

「俺は変質者でも変態でもない。ただの魔法使い(練習中)だ!」

「ひぅ。そ、そうだったんですか……」

よしこれで、変質者のレッテルは貼られずに済む。なんて言ったって魔法使いだからな。

………あ。


「うぅ、ほ、ほんとに、魔法使いさんですか?」


ウギャー! しまった! 何でばらしてるんだ!!!!

「待て! 忘れてくれ少年! 魔法使いだなんて忘れろ!」

「はうぃ! や、や、やっぱり記憶を………」


いま気が付いたが、どうやらこの男の娘(おとこのこ)は相当俺を恐れてるらしい。

これなら、黙っているようにさせられるのでは?

「よし。お前に選択権をやろう。俺の事を黙って普通の生活をするか、俺の呪いで束縛された人生を送るか、二つに一つだ。さあ選べ」

「ひぅぅ、えと、えっと……黙ってます」

「よし。黙っていろよ、さもなくばお前をヒキガエルに変えてやる(できないけどね)」

「ふえぁ! ヒキガエル………ガクガク」


ヤバい。誰かを怖がらせるのって楽しいかも………ってドSか!

これ以上、変なことになる前に逃げるか。

「さて。これで俺は帰らせてもらう。ただし、名前だけは聞いておこう。変な噂(変質者のお兄さんとか)が広がったら、わかってるな」

「はわわぁ、大丈夫、です。黙ってます。えと、ぼ、僕の名前はヒトトモモです」

「人と桃? 変わった名だな」

「多分、字が違います。“一十百(ひとともも)”です」

「そうか。俺の名はクロム・クロロ・クロラージュだ」

さて行くか、これ以上墓穴を掘らないうちに……


さっきの公園まで帰ってきて、気が付いたことがある。

「あ! 連絡の取りようがない。てか完全に逃げられた?」

……オワタ

オレハ、オコジョニ ナル ウンメイ ダッタノカ(号泣)



Side  一十百

記憶は無事でした。

ううう、びっくりした。

袋小路になったときはカエルにされるかと思った。

「でも、そんなに悪い人では無さそうだったな」

昔話の魔法使いは悪いイメージがあったからちょっと驚いた。

こんなに遠くまで来ちゃった、学校は遅刻かな……はぁ。


「あれ? これって?」

拾い上げたのは学生証のような物。

「えと、クロム・クロロ・クロラージュ………さっきの人のだ!」

どうしよ〜。また会いに行くのは怖い、でも学生証って大切だよね。

でも……。どうしよ〜。


−10分経過−

「やっぱり返しに行こう。無いと大変だもんね」

そして僕は気が付いたんだ。

「あれ? あの人、どこに住んでるんだろ」

しかたがないから学校終わったら探してみよう。

「それくらいは待ってもらえるよね」


 少年は走り出す。その学生証が大きなうねりになって少年を飲み込むその日まで。



Side  クロラージュ

そうか、始動キーを考えてなかったんだ!

わすれてた。

てかさ、そんなに魔法使えんよ(泣)

「さて、どんなのにするか……」

長けりゃ良いってものじゃないな。

せっかくだし、自分の名前でも入れるか? 

クロラージュの一部分でも……。


−構想に30分経過−

「よし! いくぞ! コル・コスト・ラス・ラージュ・エスタルロージェス 魔法の射手(サギタ・マギカ) 火の1矢(ウナ・イグニス)!」

ボッ!

出来たよ! やったよ! これで何とか魔法使いらしくなったな。


「よし。ここまで来ればいい。次は………エヴァンジェリンか」

そう、俺のロマンには彼女は必要不可欠! といっていいだろうな。

ラブコメ? 

バカめ! そんなのはおまけだ!

「エヴァンジェリン、待っていろ! 氷の使い手であるお前しかできない役目がある!」

そのためなら俺はお前の呪いを気合いだけで解いて見せよう!

待っていろ! 闇の福音(エヴァンジェリン)



来た。

とうとうここまで来た。

森の中に建つ、二階建てのログハウス。

たった30分程度の旅だったけど……まあいいか。

よし。いける!

「吸血鬼の真祖 エヴァンジェリン・A・K・マクダウェル! 出てきてもらおうか」


少なくとも、話し合いができる状況を期待していた。

そんな時期が昨日まであった。

「なんだ、貴様は? こんな時間に…」


目の前に現れた少女エヴァンジェリンは、原作で知っているよりずっと………

可愛かった。

反則だ。

「…………」

「いきなり呼び出しておいて返答もなしか」

「……ッハ! しまった、予想以上の美少女だったから思考が一瞬停止した」

「//// い、いきなり現れて何を……」

さて困った。

正直、力ずくでも俺の条件を呑んでもらう予定だったが……

この容姿では、無理だ!

俺にこの少女は殴れない……。気が付かなかった、俺はロリコンだったのか。

「おい、どうしたんだ? さっきから突っ立ったままじゃないか?」

「無理だ」

「なにがだ?」

「俺はお前を倒すことが出来ないー!!!」

「いきなりなんだ――――!!!!」


ひと通りつっこみも終わったようなので、可能な限り頼んでみることにした。

「エヴァンジェリンだな」

「ほう、少しは真面目な感じになったな」

「お前に一つ言う事がある」

「なんだ?」

「“俺の妹になれ”いや、なって下さい」

「あほか―――!」

げふぅ……

見事なドロップキックだ。

「くっ…… だめか。俺のロマンノート第六頁 『エヴァにお兄ちゃんと呼んでもらう』が成就されなかったか」

「なんでそこまで残念がる!」

とまあ、なかなか友好的な関係(笑)が作れたので実際の話に戻るか。

「さてエヴァンジェリン、お前の今の状況は知っている。だからこそ俺が来たわけだが……」

「(立ち直るのが速いな)なにが言いたい……」

「今ここで、俺と戦ってもらう! アンティールールでな」

「なに! キサマ、いったい何が目的だ!」

どうやら、相当警戒されてるようだな。

仕方のないことか……。

だが、悪いなエヴァ、俺も引くわけにはいかないのだよ。

「仮に、仮にもし俺が勝ったとしたら……」

「なぜそこまで勝てる可能性が低く設定してあるんだ!!」

いいつっこみだな。うん、和む。

「いろいろと事情があるんだよ(魔法初心者だし)。さて話を戻すか、もし仮に俺が勝ったら三つ……いや五つほど条件をのんでもらう」

「(ん?なぜ二つ増やした?)ほぅ、それで私が勝ったらどうするんだ?」

「……別荘の掃除と家事全般、四日に一度の吸血くらいでいいだろ」

「話にならん……ん!? 待てキサマ、なぜ別荘の事を知っている!」

「まあ、唯一のアドバンテージとだけ言っておく。とにかく戦ってもらう」

「くっ……」

「と言いたかったが、その容姿だから……な。満月の夜まで待とう、それなら少なくとも公平だろ?」

「……満月の夜か、明日だぞ」

え! そうだったんですか?

準備とかしようと思ってたのに……。

時間がない、これはマズイ。

下手すると死んじゃうかも、テヘ(泣)

「そ、そうか明日か。ま、まあ準備くらいできるだろう」

「……何が目的だ? 正義を語る魔法使い(バカども)とは違うな、それに条件とはなんだ?」

「さすがに条件を言わないと不公平だな。いいだろう、教えてやる」

俺はロマンノートを取出し、エヴァにその内容の一部分を語る。


「まず一つ目、別荘の使用許可だ。どうしてもあそこを使わせてほしい!」

「……まあいいだろう、他には」

「二つ目、屋根裏でもいいから住まわせて、野宿はつらい(泣)」

「キサマは今ホームレス状態か!」

「三つ目、お古でもいいから魔法媒体がほしい。この星の杖ヤダ」

「ずいぶんと安い条件だな……。後二つもそうなのか?」

その時、俺の目に光が宿った……と思う。

たぶんオーラっぽいものが違ったんだと思う。

とにかく、エヴァの表情が真剣になったくらいだしね。

「なるほど、後二つが本当の目的か」

「そうだ! 四つ目、氷を使う優秀な魔法使いと見込んで会得してほしい魔法がある」

「会得してほしい魔法だと? なぜ私にそれを?」

「俺は火の魔法しか使えなかった。この時自分の才能を心底呪った、どうしても氷と雷のかなり優秀な魔法使いが必要だった。雷の方は用意できた、いや何とかなる。でも、氷の魔法使いで優秀なのはお前だけだ! これだけは頼む。俺の生涯を費やしてもいいくらいの願い……ロマンだ!」


何だか条件なのに頼んでしまった。

まあそれくらいこの魔法を会得してほしかったんだ。

俺のロマンノートの重要度5位以内確定のロマンだ!

「そこまでの物なのか……(と言うよりこいつ条件なのになぜ頭を下げる)」

「そして、五つ目! やっぱり妹になって下さい(_ _)」

「キサマ諦めてなかったのか―――――!!!」

ドロップキック2ヒット目。

「がふ……。ついでに重要度は 4≧5>1=2>3 だな」

「どこまで私を妹にしたいんだ―――――!!!」

いや結構本気ですよ。可愛いし、つっこみ上手いし。

「とにかく、条件5以外なら考えてやろう」

「本当か!」

「まあ、私に勝てたらだがな」

「……そうだな。まあいい、明日の夜もう一度来る、足を洗って待っていろ!」

「洗って待つのは首だろ! 私に悪の魔法使いでもやめろと言うのか!!!」

いいつっこみだ。

なにがなんでも勝たなくちゃな。

そう言って俺はエヴァハウスを後にした。



「あ、名乗り忘れた……」

-3-
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