小説『魔法先生ネギま ロマンのために』
作者:TomomonD()

しおりをはさむ/はずす ここまでで読み終える << 前のページへ 次のページへ >>

第三話 月下の決戦


Side クロラージュ

輝く満月。

頬をなぶる風。

そして………


「ほう、私の力が封じられているとはいえ、本当に満月の夜に来るとは……」

満月に照らされて可愛さ7割増しになったエヴァンジェリンがいた。

「グフア!」

「いきなり吐血だと!!! キサマ何をしてきた!」

「き、気にするな。この血は精神的にダメージを受けたためのものだろう」

「問題ないのか?」

「ああ、満月をバックにエヴァを見るのはつらい。お持ち帰りの衝動に駆られる」

「……心配という言葉はキサマには二度と使わないようにしよう」

なんかため息をつかれた。


「キサマと戦う前に一つ聞きたいことがある」

「なんだ?」

「なぜわざわざ満月の夜を選んだ? 他の日なら簡単に終わらせられるだろう……」

「容姿が反則的に可愛かったから、ちょっとね」

「///さっきから言っているが、その、可愛いと言うのは本気なのか?」

「美少女に嘘はつかん主義だ!」

ん?

暗くてよくわからんが、今エヴァンジェリンの屈託のない微笑が見えたのは気のせいか?

まあいいか。

「さて始めるとするか、闇の福音!」

「かかってくるがいい!キサマの力が私に届くかはわからぬがな!」



Side 一十百

あれから二日たっちゃったけど、まだクロラージュさんには会えてない。

あの公園に行ったのに、やっぱりいなかった。

「いなくなっちゃったのかな……」


なんか魔法使いがいなくなった安心感より、いなくなってしまった残念さの方が大きいのかな?

「これ、返せなかったなぁ」

クロラージュさんの学生証だと思う物。

これを返す時に“友達になって下さい”って言いたかったな。

魔法使いだからとかじゃなくって、なんとなく優しそうだったから……

「僕に一欠片の勇気があれば、あの時に友達になれたのにな」


空を見上げる、今日は満月。

たまに悲しくなるほどの輝きを見せる満月。

月は太陽の光を受けて輝いてるんだよね………

「僕にも“太陽”の様な友達がいれば少しは……」


その時、僕の目に映ったのは、遥か彼方。

本来なら見えなかったはずくらいの遠いところ。

そこからたった一本の火の矢が見えた………


気が付いた時には、僕は走り出していた。



Side クロラージュ

「ハハハ、こんなものか小僧!」

くそ〜、エヴァめ。

力を封印されてるからって甘く見てた。

かなり強い。茶々丸もいないのに……

今の俺って原作ネギよりかなり弱くね?

ネギ>>>俺 くらいじゃね。 HAHAHA!

「コル・コスト・ラス・ラージュ・エスタルロージェス 魔法の射手(サギタ・マギカ) 火の7矢(セプテム・イグニス)!」

今の俺からすると、大体…中の上くらいの魔法。

そう、かなり本気に近い魔法なんだよ。

けどさ、笑いながら、同じような魔法で相殺され続けてるんだ……

ハハハ、ヤッテランネー。


「どうした、こんな初級の魔法で私を倒せると思うのか!」

「だまらっしゃい! ならいくぞ、これが今俺が一回に放てる最大本数!」

くらえ、エヴァンジェリン!

「コル・コスト・ラス・ラージュ・エスタルロージェス 魔法の射手(サギタ・マギカ) 火の20矢(ウィギンティ・イグニス)!」

放たれた火の矢はエヴァに当たる……と思ってた時があったよ、戦う前は(泣)

「リク・ラク ラ・ラック ライラック 魔法の射手(サギタ・マギカ) 氷の10矢(セリエス・グラキアリース)!」

俺の魔法とエヴァの魔法は中間地点で相殺した。 いや、されたのか。

て言うかさ、矢の数半分だったよね?

なんで相殺されてんの?

「なんだキサマの魔法は? 中身が入ってない、まるで風船の様ではないか」

「うっさいんだよ! 魔法が使えるようになってからまだ3日なんだよ!」

「……よく私に挑む気になったな」

「いや、エヴァなら、何とかなると思ってた。封印されてるし」

「ほう(怒)。そうか、私程度なら3日で勝てると」

ヤバ、なんかエヴァの周りに黒いオーラみたいのが見える。

これヤバい、いやヤヴァイな。

「まてエヴァ、それはヤヴァイ気がする。今の俺だと100%死んじゃうから!」

「安心しろ。99%殺すだけだ」

それって、ほぼ死んでるよね。

うん、助けてくれる気ないね。

どうしよ? よし、こうなったら………

「エヴァちょっと待った、やっぱ出直すわ。次の満月まで待って(涙目)」

「フフフ、断る」

「俺に死ねと! この幼女めが!」

「ピキッ…」

「やば間違えた、この合法ロリめが!」

「なるほど、そこまで死にたいか(激怒)」

「いやや、わかった言いなおす。この美幼女めが!」

「キサマ、幼女を取る気はないのか!」

え、君は正真正銘の幼女兼合法ロリですけど、なにか?

「待て待て待て! ここで死ぬわけにはいかない! 俺のロマン“エヴァにお兄ちゃ…」

「プチッ(死確定だな)リク・ラク ラ・ラック ライラック 来たれ氷精(ウェニアント・スピーリトゥス) 闇の精(グラキアーレス・オブスクーランテース) 闇に従え(クム・オブスクラティオーニ) 吹雪け(フレット・テンペスタース) 常闇の氷雪(ニウァーリス) 闇の吹雪(ニウィス・テンペスタース・オブスクランス)!!!」


ちょっと待とうかエヴァさん。その魔法は魔法初心者に使う魔法ではないですよ。

原作版ネギ君の雷の暴風とほぼ同じ威力でしたよね。

本気で殺すつもりですか。そうですか、遺書書いてないですのでちょっと待ってほしいのですが(錯乱)。

「死ね。この、大馬鹿者が―――――!」

エヴァからとてつもない吹雪が解き放たれる。

本格的に避けられない。火の矢も打ち止め。

バッドエンドか……


その時!

俺は何かに突き飛ばされた。車にはねられたような感じだ…

そして、俺は気を失った。

死んだんだろうな……



Side エヴァ

何があった、私が放った闇の吹雪は確実に奴をとらえた。

奴も動けなかったはずだ。

なのに何故、奴はあんな所にいる!

十メートルほど動いてるではないか!

「なにが……」

ん?

あの馬鹿に乗っかってるのは誰だ?

「キサマは誰だ?」

その姿が立ち上がった。

奴に比べれば小柄な、小娘と思えてしまう容姿だな。

フッ、私も人のことは言えんが。


「僕は……その、この人と友達になりたくてここまで来たんです」

「ほう、そいつを庇うのか? ならキサマもろとも殺すまでだ」

「はぅぁ! 殺すって……本気ですか!」

「本気だ!」


「………嘘……ですね」

「なに!」

いったい何を根拠に……。

それよりもこの小僧、魔法使いではないな。

身のこなしから見て一般人か?

ならば、何の力も無いのになぜ私の前に平然と立てる?

先ほどの闇の吹雪を見てないわけでもないだろう、他人のために命を捨てるというのか!

「キサマ……、そいつをなぜ庇う」

「ふぁ、えと、友達になりたいからです」

「そんなくだらない理由で、自分の命を捨てられるのか?」

「はぅぅ、“くだらない”って言われた。ぐすん、結構勇気がいるんですよ」

「友達になりたいという事は、今は赤の他人だろう。なぜ庇える!」

「………わからないです」

この小僧、おびえている割に自分の譲れない一線を守ることが出来るタイプか。

いいだろう、その志を圧し折ってやろう。

「まあいい、最後の忠告だ。消えろ」

「…………いやです」

「そうか、ならもろとも死ね!」

氷の矢を小僧に向けてはなった。避けなければ串刺しだ。

さあ、避けろ!


「……きっと、あなたはクロラージュさんを殺さない」


ここでなぜそんな微笑みを浮かべられる!

今まさにお前は死ぬ! なのに何故!

「クッ……」


気が付いたとき私の氷の矢は、小僧の目の前で大きく曲がって行った。



Side 一十百

………死んじゃうかと思った。

今まで事故に合いかけたりしたけど、こんなに怖かったのはなかった。

でもやっぱり、この人はちゃんと僕たちを生かしてくれた。

なんとなくそんな感じがしたんだ。

優しさとかじゃなくて、暖かさみたいのがある人だし。なんとなくだけど。

「よかった、僕の思ってるくらい優しい人で」

「私が優しいだと………ハ! 笑わせてくれる。」

「?」

「私は闇の福音(ダーク・エヴァンジェル)とまで言われた吸血鬼の真祖だ。冷酷さ残酷さはあっても優しさなどは毛ほども持ち合わせていない!」

「ほぇ………。違うと思います」

「なにを………」

「優しさっていうより、暖かさがある気がします。それは、どんな人にもあって“本当の優しさ”だと僕は思うんです」

「……………」

「きっと、クロラージュさんもそこに気づいていたと思います」

「言い切らせてもらうが、それだけはないと思うぞ」

「はうぅ。その、理由はきかないでおきます」


でも、この人ならきっと…

僕は一欠片の勇気とともに次の言葉を言えたんだ。

「僕と友達になって下さい!」

「断る」


カシャンと心が割れる音がしたような気がした。



Side エヴァ

「気を失ったか」

言いたいことだけ言って気を失うとは………


「マスター どういたしますか?」

「なんだ茶々丸か、放っておけ」

「よいのですか?」

「………何の話だ」

「マスターがあれほど静かに誰かの話を聞いていたのは初めてでしたので」

「う、うるさいこのボケロボ!」

放置するつもりだったが………

まあ、いいだろう。

この小僧はともかく、馬鹿の方はいろいろとやってもらうことがあるからな。

「茶々丸」

「はいマスター」

「……部屋に運んでおけ」

「了解です」


しかしこいつらは一体何なんだ。

片方は魔法を使えるようになって3日で私に挑んだ馬鹿。

………いろいろ私のことを言っていたが///

はっ、そんな事より、少なくとも別荘の事を知っている。

この事だけははっきりさせておかなくては。

もう片方は他人のために命を捨てる気でいた狂人。

私が暖かいか……、馬鹿な事を。

友達の申し出を断ったのは、小僧からしてみれば死刑宣告と同等だったんだろう。

まあ、下僕程度なら考えてやろうか?


暇だったこの生活も少しは楽しくなりそうだ。

「マスター」

「なんだ茶々丸」

「珍しく笑顔でしたので録画しておきました」

「なにを録画しているんだ、ボケロボ―――――!!!」


 少しずつだが、ずれた物語が始まろうとしていた。

-4-
<< 前のページへ 次のページへ >> ここまでで読み終える




ネギま!? DVD1 スペシャル版
新品 \666
中古 \1
(参考価格:\7350)