小説『魔法先生ネギま ロマンのために』
作者:TomomonD()

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第二十九話 終結の魔法


Side クロラージュ

俺の声が聞こえたのかネギ君、アスナ、刹那がそばまで来てくれた。

フェイトからの追撃が気になったが……こないな。

アイツ……ずいぶんと余裕じゃないか。

一泡吹かせてやる。

「作戦って何!」

「まあ、そんな大げさなもんじゃない。刹那、そろそろいいんじゃないか? その背の禁忌を使っても?」

「!!! なぜ、その事を!」

驚いてるな。

まあそりゃそうだよな。

なんたって今までばれないように隠し続けてきたんだからな。

「今は緊急事態だ、そのことはスルーしとけ。とにかくその力で木乃香を助けろ」

「し、しかし…」

だ〜、まだ迷ってるのか?

「お前の役目はなんだ! 桜咲刹那!」

「わ、私の役目は…木乃香お嬢様を守ることです」

「そうだ! まあ今悩んでるのは、その姿を木乃香がどう思うかとか考えてるんだろ?」

「………」

「かっこいい! もしくはきれい! そう思うだろうな」

「え……。そんな…そんなことは…」

「信じられないんなら試してみろ。それに、いま木乃香を助けられるのはお前だけだろ?」

「…そうですね」

そういって刹那は白い羽を広げた。

普通にきれいな羽だった……。

お世辞とかではなく、月夜に映える綺麗な白い羽だった。

「どう思うアスナ?」

「綺麗な羽だとおもう」

なんか見とれてるけど…まあいいか。

「ほれみ〜、さっさと木乃香を助けてこい」

「はい!」

そういって、刹那は夜空へ飛び立った。


「さて、ネギ君……右手無事か?」

「すこし…かすっただけです」

しっかり石化が進んでるな。

急がないと…

「よし、フェイトをどうにかする作戦だが…」


――作戦伝授――


「という作戦だ」

「無理だと思うわ」

「難しいと思います」

なんか二人から反対された。

「いや、いけるって。ネギ君のを当てるだけでいいんだから…」

「そうですけど…」

「よし、なら行くぞ!!」


「作戦会議は終わったのかい?」

こいつ、やっぱ余裕だな。

「おい、あんまり甘く見るなよ。こう見えても……そこそこ強いんだからな」

「比較対象がいなかったみたいだね」

うがぁ……。

しょうがないだろ!

周りにいる魔法使いが異様に強いんだから!

ネギ君だろ、夕映だろ、エヴァだろ…。

どう考えても俺のが弱いし。

「まあ、お前との実力差も同じくらいありそうだからな…」

「それでも挑んでくるのかい?」

「足りない分は、作戦で補う!」

いくぞ!


まず
作戦1:瞬動術からのゼロ距離白の炎

「もらったぁ!!」

俺の瞬動術は完璧。

止まれないが、ぶつかればいい!

そして…

「まさか瞬動術を使えるなんて思わなかったよ」

あっさりと避けられた…。

どうやら出だしを読まれたらしい。

もちろんブレーキは考えてないので…

「うああ……」

ごろごろ

転回を同じ動きをしてしまった。

いたい。


「君の作戦はそんなものかい」

「馬鹿を言え! 他にもある!」


作戦2:遠距離からの魔法の射手、そのあとに白の炎

「くらえ! コル・コスト・ラス・ラージュ・エスタルロージェス 魔法の射手(サギタ・マギカ) 火の12矢(デュオディシム・イグニス)!」

あまり無駄な魔力は使いたくないからこの程度で…

「さあ、かわして見せろ! フェイト!」

そしてかわした先に向けて俺が動く。

そう、相手の行動を先読みする高度な作戦だ!

「かわさなくても平気そうだね」

あ、そういえば曼荼羅障壁があるんだった。

俺の放った魔法の射手は障壁に当たって消えていった。


「君の作戦はそんなものかい」

「まだ、まだ…」


作戦3:白の炎から無詠唱白の炎につなげる

この作戦は背水の陣になる。

なんたって俺の魔力のほぼ全てを使い切る計算だ。

「いくぞ! コル・コスト・ラス・ラージュ・エスタルロージェス 闇夜を照らす(エリネス・フェルゴル) 一条の炎(コンギテンス・イグニス) 我が手に宿りて(イン・メア・マヌー・エンス) 敵を喰らえ(エルミーンス・エダット) 白の炎(フランムルス・アルビカンス)!」

そういえば白の炎のリーチが伸びてかなり使いやすくなった。

魔力が上がってる証拠だな〜、うんうん。

とにかく、1発目の白の炎を避けたフェイトに向けて残りの魔力を使った白の炎をたたきつける!

「さすがに避けさせてもらうよ」

よし、作戦通り!

ここで一気にフェイトに近づく!

「この距離なら障壁はかなり無視できるだろ! もらった! 白の(フランム)…グフッ」

体の芯に来るような衝撃が俺を襲った。

そう、フェイトは意外と体術を使えたんだった……。

重い拳が俺の腹のあたりに打ち込まれたようだ。

くそ…、俺より小柄のくせに、なんて思い一撃だ…

「君の作戦はこんなものだったようだね」

「ガフッ…かかったな、フェイト」

「なに」

打ち込まれた拳をグッとつかむ。

「今だアスナ!」

「言われなくたって!!」

スパァン!

アスナのアーティファクト、ハマノツルギ(ハリセンバージョン)がフェイトの障壁を吹き飛ばす。

「今よネギ!」

「はい! 風の精霊17人(セブンデキム・スピリトゥス・アエリアーレス) 縛鎖となりて(ウィンクルム・ファクティ) 敵を捕まえろ(イニミクム・カプテント) 魔法の射手・戒めの風矢(サギタ・マギカ・アエール・カプトゥーラエ)!!」

フェイトの周りに風の矢が纏いつく。

そう、フェイトの動きを止めるために俺が一撃くらう。

まあ悪くない作戦だ。

ネギ君たちに言った作戦は“ネギの魔法でフェイトの動きを止める”だったけど、まあうまくいった。


「これで僕を封じたつもりかい?」

「ゴホッ…悪いなフェイト。地平の果てまで飛んで行ってもらうぞ」

「…どういう意味だい?」

召喚(エウォコー・ウォース)! 転回巡(メグル テンカイ)!」

俺の目の前に目を回した転回が召喚される。

「世界が回る〜…」

「転回! 今だ!」

「あ、そうだった! フェイトさん、ゴメンね」

「転回君、君の一撃じゃ僕には効果がないよ」

「それは、ちょっと前の話。今の私は…ちょっと違うから」

そういって、転回がフェイトに向かって正拳を打ち込む。

その拳打がフェイトに当たった瞬間…


ズガッ!


とてつもない音とともにフェイトは…いや、フェイトが立っていた橋もろとも、地平の彼方まで飛んで行った。

「「「………」」」

「あ………」

なんて威力だよ……。

橋もろとも吹っ飛んだぞ。

「て、転回……、その何回転くらいした?」

「た、たぶん74回転だと思う…」

そうか、そんなに回ったのか。

フェイト…、粉々になってないよな?

今後のこともあるから…再起不能とかはやめてくれよ。


「グッ…」

「クロ!」

やば…結構いい一撃だったみたいだな。

結構痛い……てか、普通に痛い。

叫びたいくらい痛いが…耐えるか。

「大…丈夫、じゃないけど…今はそれどころじゃないからな。木乃香は…」

そういって空を見上げると、三日月をバックに刹那が木乃香を抱いてゆっくり降りてきていた。

「よし。後は…エヴァにまかせるか…」


そういって俺は意識を手放した。



Side エヴァ

ほう、リョウメンスクナノカミ…。

近くで見るとかなり大きいじゃないか。

まあ、今の私の敵ではないがな。


それにしても、ついさっき橋の一部が地平線の向こうまで飛んで行ったんだが……。

いったい誰がやったんだ?

クロラージュではないな、かといってぼーやだとも思えん。

あとは…夕映や神楽坂明日菜の可能性もあるが…

≪マスターそろそろリョウメンスクナノカミ上空に到着します≫

「わかった、すぐ行く」

このあたりの式神も大方倒したし、向かうとするか。

さて、ぼーやの影を使わせてもらうとしよう。


私が影を使ったゲートの先には…

気を失っているクロラージュと片手が石化しているぼーやがいた。

「な…なにがあった!!」

「エヴァさん! なんで、僕の影から?」

「そんなことはどうでもいい! 何があった」

「エヴァちゃん、実は…」


「なるほどな。まあコイツにしてみればいい作戦だったな」

自らを囮にか……。

まあ、私がここにいたら止めてしまったかもしれないが、いい作戦だ。

「しかたない、本当ならクロラージュにも見せつける予定だったが、ぼーやだけでいいか」

「見せつけるって、何をですか?」

「私の本来の実力だ! よく見ているがいい!」

そういって空へと舞いあがる。

いい月夜だ。

満月の夜じゃないのが少し残念だが、まあいい。


さあ、見せてやろう闇の福音(ダーク・エヴァンジェル)の真の力を!

≪結界弾セット完了しました≫

「やれ!」

茶々丸の放った結界弾はリョウメンスクナノカミをしっかりと包み込んだ。

スクナの肩に乗っている奴が叫んでるようだが、まあ無視していいだろう。

「リク・ラク ラ・ラック ライラック 契約に従い(ト・シュンボライオン) 我に従え(ディアーコネートー・モイ・ヘー) 氷の女王(クリュスタリネー・バシレイア) 来れ(エピゲネーテートー) とこしえのやみ(タイオーニオン・エレボス)! えいえんのひょうが(ハイオーニエ・クリュスタレ)!!」

この魔法は150フィート四方の空間をほぼ絶対零度に陥れる魔法…。

この魔法だけでも十分な威力となるのだが、まあこの魔法は前座だ。

さて、本来ならここで“おわるせかい”につなげるはずだが……。

アレを試してみるか。

まだ未完成だから少々威力に不安があるが、まあいいだろう。

「さあ、見せてやろう! 最強の氷魔法を!!」

私の周りの大気が凍りつく……。

アイツにも見せてやりたかったが…いや完成したらでいいか。

ぼーやたちには特別だ!

全ては終わり(フィニス・オメネシス) 告げる(ディク) 汝は(トゥ) 舞い落ちる(カディテ・コーロラ) いのちのかけら(フラグメントゥ・ヴィーティア) 永遠の力の吹雪(エターナル・フォース・ブリザード)!!」

私の手から放たれた冷気はスクナを包み込むと、そのすべてを凍らせ……。

そして、一瞬で粉雪のように散らせた。

おわるせかいとなんら変わらないな。

良い点を言うなら、砕くではなく散らすだな。

かけらも残さずデカブツが消えるのは壮観だ!

まだ、改良の余地がありそうだ。

クックック、まあ良い実験台になってくれたな。



Side 転回

エヴァちゃんが使う魔法って…おわるせかいだったはずなんだけど。

永遠の力の吹雪? ってなに。


それより今はリョウメンスクナノカミが倒されたことに喜ぶべきだよね。

西側の私は喜んじゃダメなはずだけど……。

あれ?

いま私ってどっちの立場にいるんだろう?

クロに聞きたくても気を失っちゃってるし…

「アスナさん、この状況って…私喜んでいいのかな?」

「え? う〜ん、クロラージュに乗り換えたんなら喜んでいいんじゃないの?」

乗り換えたって……。

そういうのじゃない…と思うんだけど。

まあ彼、カッコいいよ! うん。

転生者としてじゃなくて、何となく人がいい……。

そんな感じがする。


「ふん、まあこんなとこだ」

「エヴァちゃんって、厨二?」

「なぁっ!! どういう意味だそれは!! というより貴様は誰だ!!」

「あれ? 知らない? クロの仮契約者の…」

「ほう、貴様もそうなのか」

うう!

なんかこの“クロの仮契約者”って言っちゃいけないセリフなのかな?



Side 一十百

どうしよ〜。

思ったより月詠さんが速い。

「オイ、アイツカラ刀ヲ取ルナンテ無理ジャネエノカ?」

「でも……、でも…」

取らなくちゃいけない。

あの刀は月詠さんが…ううん、人が使っちゃいけないような気がする。

僕にもう少し力があればなぁ〜。

そんなことを考えてると黒い剣閃が目の前から飛んできました。

「ひぁぁ!」

あぶなく真っ二つになるところでした。


「むむ、よし! こうなったら…」

「ドウスルンダ?」

「折っちゃいましょう!」

「アレヲカ!! 無理ダロ!」

「大丈夫ですゼロさん! 水で岩に穴が開くのと同じ理屈でどうにかします!」

「……イヤ、ムリダロ」

「でも、そうしないと月詠さんが…」

月詠さん、さっきから何も言わずに僕たちを斬ろうとしてくるんです。

顔は笑ってるのに(黒い笑いですけど)、なんだかあの時と違って見える。

まるで僕のアーティファクト見たいです。

冷たい、感じがします。

人形のゼロさんよりも人形に見えてしまいそうなくらい…

「ゼロさん! これ1本借ります!」

そう言ってゼロさんのナイフを握りました。

「十百、オ前ソレ使エルノカヨ!」

「無理かもしれないんですけど、持てるんで使えると思います!」

「シカタネエナ、少シダケ狙イヤスクシテヤル!」

そう言ってゼロさんが地面すれすれを飛ぶように月詠さんに向かっていきました。

「………」

あ!

月詠さんの黒い刀がゼロさんに向かって振り下ろされました。

「今ダ!」

ゼロさんが地面と刀のわずかな空間で無事なのを確認できた僕はその黒い刀めがけて駆け出しました。

「やぁあ!!」

カンカンカン…

黒い刀身に出来る限りナイフを打ち付けたつもりなんですけど…。

この黒い刀にはヒビすら入らなかったみたいです。

「オイ! ナイフノ意味ガネエダロ!」

「ふえ?」

「………」

ヒュン

僕のほんの数センチ先に黒い剣閃が通り抜けて行きました。

「ひぇ!」

「………」

あうう、尻もちついちゃった。

黒い刀が振り上げられて今にも振り下ろされそうです。

うう〜、どうしよ〜。

「セメテ突キニシロ! ソッチノガ速イ!」

そっか!

「………」

無言で振り下ろされる黒い刀身に向けて僕は出来る限りの突きを打ち出しました。

「腕ガミエネエ……。残像スラ残ラネエノカ!」


振り下ろされた黒い刀は僕の目の前で止まっていました。

そこには短くなった黒い刀身がありました。

「折れてないのに…なんで?」

「削リキッタノカ! マサカ、ソノナイフ1本デ! アリエネエ!!」

そう言われて僕の持っていたナイフを見るとナイフの刀身はなくなっていました。

えと…

「ゼロさんごめんなさい。ナイフ1本壊しちゃいました…グスン」

「ソノコトカヨ!」

「うう……」

「あ! 月詠さん、大丈夫ですか?」

「気ヲ失ッタミタイダナ」

どうしよ〜。

「背負ッテイクシカネエヨ。ツイデニ乗セロ」

そう言ってゼロさんが僕の頭の上に乗りました。

仕方ないですね。

背負ってエヴァさんのとこまで行きましょう!

「よいしょっと」


僕が遠くを見ると大きな鬼みたいなのが雪の破片に変わっていくのが見えました。

エヴァさんがやったのかな?

すごい!

僕たちも行かないと!

-30-
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