小説『魔法先生ネギま ロマンのために』
作者:TomomonD()

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第三十一話 弟子と修行と邪霊人


Side クロラージュ

修学旅行も無事に終わったな。

次は……悪魔襲来か。

あ、その前にネギ君の弟子入りがあるんだった。

「う〜ん、なんだかんだ言って忙しいな」

「朝から椅子に座ってるだけのキサマが何を言う」

「これでもいろいろ考えてるんだよ」

……先に聞いておくか。

「なあエヴァ。弟子をとる気ないか?」

「弟子? 面倒だ」

だよなぁ。

エヴァならそう言うと思ったよ。

「それに弟子なら夕映がいる」

「夕映は俺の弟子だろ! 取るな」

「キサマが何もしないから私が教えているんだろう!」

だって俺、雷とか使えないし……。

「なぜ今更弟子の話をした?」

「ネギ君が弟子になりたいって言ったらどうする?」

「ぼーやがか? ……面倒だな」

だよなぁ〜。

「まず、ぼーやが私の弟子になりたがる理由がわからん」

「修学旅行でスクナを倒しただろう。あれをみたら弟子になりたがってもおかしくないだろう」

「…いや、そうか?」

「それに、フェイト相手に善戦できなかったんだろうからその事もあるだろうな」

「フン。自分の無力さが少しは分かったということか」

「それでエヴァに弟子入りしたい…と思うかもしれないだろ」

「クックック……、そうか」

なんだかうれしそうだな。

結局弟子にしたいんじゃないのか?

「まあ、もしぼーやが弟子になりたいと言ってきたら考えてやるか」

上機嫌じゃないか。

さてと、俺は…

「ちょっと気になることがあるから学園長の所へ行ってくる」



「おい妖怪、ちょっとマホネットをつないでくれ」

「いきなり来たかと思えば…」

「きりきりつなげ妖怪!!」

「わしの扱いひどくない?」

しぶしぶながらマホネットにつないだようだな。

「しかし、マホネットで何を頼むつもりじゃ?」

「指輪型の魔力媒体だ。まあ、俺用のじゃないんだがな」

ちょっと試したくなっただけだが…。

もしかしたら面白いことになりそうだからな、見てみたいロマンでもある。

しかし、同じ指輪型でもいろいろあるんだな。

「おい妖怪。どれ買えばいいと思う?」

「わしに聞くのか!」

「少なくとも俺より長い間魔法使いやってるんだから、俺よりはわかるんじゃないか?」

「そうじゃな…、その上から3番目のがいいと思うのう。かなり長い間使えそうじゃし」

この妖怪、なかなか買い物上手とみた。

不覚にも俺も同じのを選んでいた。

値段的にもお手軽だし、何よりも丈夫そうだ。

まあ、装飾がさみしいがそこは妥協しよう。

「まあ、これにするか。よし」

ポチッとな。

「じゃあ届いたら俺に連絡してくれ。代金はその時渡すから、先に払っといてくれ」

「ちゃんと払うのじゃぞ」

「疑うのか? 妖怪の分際で」

「ひどい」


学園長室から出てエヴァの家に戻ろうとすると偶然ネギ君とアスナに出会った。

これはチャンスじゃないか。

ネギ君も俺を見ると走ってきた。

「よう、ネギ君」

「こんにちはクロラジュさん。その、いきなりなんですが頼みたいことがあって…」

頼みたいこと?

弟子の事か?

俺に弟子入りしたい…なんてことはないだろうから、大方エヴァの説得と言ったところか。

「説得、か?」

「え! なぜそれを!」

「弟子入りしたいが断られそうだから身近な人物である俺からも推薦してほしいと…、まあそんなとこだろう」

「そ、その通りです!!」

「ちょ、ちょっと、なんでアンタそんな事までわかるのよ!」

「アスナ、こう見えても俺もいろいろ考えてるんだぞ。この前の修学旅行で相手に実力の違いを見せつけられてしまった、なら修行だ! とネギ君なら考えそうだと思ってな」

「す、すごいわね…。少し見直したわ」

そうだ、クロラージュお兄さんはすごいんだぞ。

周りが派手すぎて目立てないが、本当は結構すごいんだぞ。

魔力的にもそこらへんの魔法使いくらいにはなったからな。

「まあ、とにかくネギ君の選んだ師の所に向かうとしますか」

「はい」


そう言ってエヴァのログハウ……ログ豪邸だよなぁ、何度見ても。

まったく、建てたやつ出てこいやぁ!!

「あれ? ネギ君とアスナさんこんにちは。クロラージュさんお帰りなさい」

なんというタイミングだ…。

恐るべし一十百。

「今日は誰が来てないかわかるか?」

「え〜とですね、茶々丸さんは夕食のお買い物です。千雨さんは洋服が届いたとかでお店まで行っています。他の人は全員居ると思います」

なんだか、もうここの執事やっていけるんじゃないのか?

「僕はお庭掃き掃除が終わったら戻りますので」

「ん、じゃ頑張れよ」


広間ではエヴァと夕映が紅茶を飲んでいた。

「ほう、やっと来たか」

エヴァがこっちを向いてにやりを微笑んだ。

うわ〜、完全に期待してる目だ。

「その、今日僕がここに来たのは…」

そう言って1歩ネギ君が前に出た。

「あなたの弟子にしてほしいからです!!」

にやりと笑うエヴァ、驚くアスナ、何のことかと首をかしげる夕映。

さて、なんて返事がエヴァから…

「夕映さん! 弟子にしてください!!」

ズコ――――!!!

俺がこけた。

エヴァは椅子もろとも後ろにひっくり返った。

アスナは目が点。

夕映は…やれやれといった表情。

「ま、待てぼーや。なぜ夕映なんだ?」

「はい、修学旅行で僕が苦戦した小太郎君をあっさりと倒したほどの実力者ですから。エヴァさんでもよかったんですけど、同じ雷属性の使い手だったので夕映さんに頼もうと思って」

よ、予想外すぎる…。

いや、エヴァそんな顔で見られたって…、俺だってこけたじゃん。

「ネギ先生。弟子の事ですが、引き受けるわけにはいかないです」

「な、なぜですか!」

「簡単なことです、私はクロロさんの弟子なのです。まだ弟子がとれるほど上達もしていませんし……。それに修学旅行で見せた雷はエヴァさんから教わった魔法とクロロさんがくれたアーティファクトがあってやっと使えるものなのです」

「そ、そんな…」

「私はエヴァさんに教わるのをお勧めするです。こう見えてエヴァさんはとても良い教え方をするです。私が言うのだから間違いないです」

「あれ? ユエちゃんってクロラージュに習ってるんじゃないの?」

「あ〜、俺よりも夕映の方が上達しちゃってな…。今はエヴァが教えてるんだよ」

「まあ私もほぼ見ているだけだがな。基本的に夕映は一人で練習しているぞ」

あらら、そうだったのか。

今度練習風景を見に行くとするか。

「まあ俺もエヴァをお勧めしようと思ってたからな。ここはエヴァを師にするといい」

そうしないと、エヴァが可愛そうだ。

あれだけ期待させておいて、これじゃなぁ。


「では…エヴァさん改めて…」

「断る!!! 断じて断る!!!」

あ〜、エヴァがへそを曲げてしまった。

どうしたものかな?

「掃き掃除終わりました〜」

「一十ご苦労」

お、一十百が戻ってきたな。

…なんか紅茶持ってるし。

「せっかくですからネギ君を弟子にしてみてはどうですか?」

紅茶を注ぎながら一十百がさらっとそういった。

なんだか、わがままな主人を諭すようなメイドに見える。

なんだか微笑ましいな。

あれ? 一十百って男だから執事だよな……。

執事に見えない。

なんで? まあ一十百だからいいか。

「……面倒だ」

「ふぇ、そうですね、だったら何かテストしてはどうですか? 合格出来たら弟子にしてあげるということで」

「…なるほど」

あ、なんだかエヴァが説得された。


「十百さんはエヴァさんの扱いがうまいですから(ヒソヒソ」

「俺も習おうかな(ヒソヒソ」

「僕も…(ヒソヒソ」

「そこ何を話している!」

いやいや、ちょっとね。

「まあいい。ぼーや、今度の土曜の夜に簡単なテストをしてやる。それに合格出来れば弟子の件考えてやろう」

「本当ですか! ありがとうございます」


ネギ君はニコニコ顔で、アスナは少し心配したような感じで帰って行った。

しかし、あの名台詞が来なかったか。

「エヴァ、ネギ君に“私の足を舐めろ、全てはそれからだ”とか言わないのか?」

「……横に一十がいなければやったかもしれないな」

「一十百いるとまずいのか」

「ヤツの教育方針的にマズイ」

確かに。


まてよ、仮に俺がエヴァに弟子入りしたら原作のネギ君同じことを言われたか?

…惜しかった。

「なぜそこで悔しがっているんだ―――――!!!!」


さてと、ネギ君の方はたぶん自分で何とかできるな。

俺もそろそろ…

「エヴァ、ちょっといいか」

「なんだ」

「実戦形式で手合せしてほしい」

「…ほう。ぼーやに感化されたか? まあいい、少し暇になりそうだったからな」

修学旅行でわかったんだが、魔力量が少ない俺は考えて魔法を使わないとすぐガス欠になってしまうんだよな。

つまり、戦いの駆け引きみたいのを会得しないと…ずっと弱いままなんだよ。

このあたりで、自分自身を強化しないと置いていかれるからな。


「おい、あれだけ大見得きってもうダウンか」

すみませんでした。

四方八方から飛んでくる氷に終始押されっぱなしでボコボコにされました。

茶々丸もチャチャゼロもいないのに…

「5分休憩…」

「1分だ」

スパルタ〜。

これをネギ君がやるのか…。

大丈夫か? 原作ではふらふらになる程度で済んでいたが…。

「時間だ、さあ立て!」

「マジ……あと1分」

ニヤリとエヴァが笑ってる。

あ、これはヤバい、ヤヴァイ。

「クックック、なら力ずくで叩き起こしてやろう!」

エヴァの振り下ろさせた手から魔法の射手が次々と放たれた。

「待てマジで当たるから!!」

「さあ、死にたくなければ避けろ! 打ち返して見せろ!!」

誰かー、助けて――――。

マジで死んでしまう〜!!

へ―――――ルプ!!



Side 一十百

暗くなってきました。

この頃は夜になると気分がいいです。

特に月の綺麗な夜は屋根に上ってお月見をしてます。

エヴァさんとクロラージュさんは修行らしいです。

ゼロさんはお休み中、茶々丸さんはメンテナンス、夕映さんは自主練、さよさんはお昼寝、千雨さんはホームページの更新中だそうです。

≪燃え盛る日が落ち、血染めの赤い月が空を照らす≫

僕の読んでいる吸血鬼の出てくる小説の一節です。

「本当に赤い月が上ったら驚きますけど、見てみたいですね」

そう言えば、吸血鬼に血を吸われると吸血鬼になってしまうっていうのを聞いたことあるけど…。

間違いなのかな?

今日も僕はエヴァさんに血を抜かれましたけど、異常なしだそうです。

エヴァさん曰く“一十、お前の血は…そうだな水とよく似ている。魔力が通わない分味気はないが飲みやすい”だそうです。

「あ、月が上りましたね」

さてと、そろそろ夕食の準備をしないと。



Side ?

「まさか…そんな」


私は長い旅をしてきた。

麻帆良学園に向かって長い長い旅をしてきた。

それは、私がエヴァンジェリンを超える存在だと証明する為。

人々に語り継がれる…そんな風な存在になる為。


そしてついにたどり着いた、と思っていた。

原作を知る者が一度は目指す場所。

そう、エヴァンジェリンのログハウス。

しかしそこには大きな屋敷がそびえ立っていた。

転生する時代を間違えた、いやそんなはずはない。

「つまりここには私と似た存在がいるということか」


今まで私は私以外の転生者に会ったことはない。

転生したシリーズは結構好きでよく読んでいた。

チート…、そう圧倒的な力を持って物語を掌握できるほどの力。

その力を持った存在には会ったことがなかった。

私にはチートと呼べるほどの力は、ない。

人より少しだけ…いや、人と比べるのは間違いだな。

どちらにせよ、ここまで来て退くつもりはない。

たとえここで私の2回目の物語が終わっても悔いは、ない。

どうせ……、いや私の今生の目的は、ただ1つ。


“エヴァンジェリン・A・K・マクダウェルを超える”


これだけのために今まで生きてきた。

「私という存在が消えてもいい。この扉の向こうにいる転生者とは覚悟の重みが違う!!」

そう言ってチャイムに手をかける。

ピンポ〜ン


「は〜い」

可愛い声が聞こえてきた。

「どなたですか?」

扉を開けてくれたのは私よりも背が低い少年だった。

少女ではないのはわかる。多少迷いそうだが、少年だろう。

彼が……転生者なのだろう。

「頼みがあるんだ、聞いてほしい」

「ふぇ?」

…見た目で判断するのは良くないが、彼は……強くない。

触れたら壊れてしまいそうなくらいだ。

もし彼が私の前に立ちはだかってしまったら、それはそれで困る。

「エヴァンジェリンに会わせてほしい」

「エヴァさんですか? えと、1時間ほど帰ってこれないですけど…」

帰ってこれない? そうか、別荘か。

「そうか…。中で待たせてもらってもいいか?」

「はい! お茶を飲みながら帰ってくるのを待ちましょう」

そう言って彼は私を客間…だろうか、とにかく案内してもらった。


話を聞くと彼はエヴァンジェリンの従者の従者らしい。

彼のほかにクロラージュと呼ばれる炎の使い手がいるらしい。

この紅茶は神々すら忘れてしまった紅茶の葉を使っているらしい。

どこでそんなものを? いや、彼の力なのかもしれない。

この大きな屋敷を立てたのも彼なのだから。

「君は転生者かい?」

「ほぇ? テンセイシャ、ってなんですか? えと、生まれ変わりみたいなのでしょうか?」

「いや…なんでもない。たまに変なことを聞いてしまうんだ、忘れてくれ」

「???」

彼は転生者ではない。

歪によって生み出された存在か、もしくは原作ではページにすら乗らないほどのモブだった、そのどちらかだな。

「あ、そろそろ帰ってきますね」

彼がそう言ったすぐあとに屋敷の中に魔力が満ちたのが分かった。


「まったくだらしがない。キサマ、もう少し粘って見せろ」

「ムリ…俺には……これが限界だ」

私の前に現れたエヴァンジェリンは生ごみ? いや、ぼろきれを担いでいた。

「おい一十。あの女は何者だ?」

「はい、エヴァさんに会いたいそうでしたので」

「ゴホ、誰だ? ……え、誰だ?」

ぼろきれだと思っていたのは人間だった。

オレンジの髪が目立つ…そうか。

「クロラージュ、といっていたな。お前がそうなのか」

「え、確かにそうだが…君は?」

「近い存在、と言えばわかるか?」

「マジかよ。ついこの間会ったばかりなのに、またか」

どうやら、彼は正真正銘の転生者のようだ。

彼も身構えてくれたようだ。

だが…

「すまない、用があるのはエヴァンジェリンだけなんだ」

「エヴァに何の用だ?」

「エヴァンジェリン、頼みがある。私と本気で戦ってほしい」

「断る、面倒だ」

「…頼む」

「……私怨ではないな。なにか戦いたい理由があるはずだ、それを言え」

「エヴァンジェリン、ただ貴女を超えたい。それだけだ」

「クックック……。悪魔、いや邪精霊といった存在がそこまで真っ直ぐなものだとは思わなかったぞ」


一瞬で見抜かれたか。

そう、私は人間ではない。

転生したときに人間ではない、人間に忌み嫌われるものとして転生させられた。

私が持つことを望んだ力の対価なのだそうだ。

「正確には邪霊人という種族…いや私1人だから種を名乗るのはおこがましいな」

「エヴァ、なんだか彼女…」

「ああ。キサマ、私と戦い勝利したら、消える……消滅するつもりか?」

「そこまで見抜かれたか。私は存在じたいが害になる者だ、貴女とは違う…人にとってもっと厄介なモノなのだ」

そう、禍・災い・厄を引き寄せる、無意識のうちに。

そして引き寄せたモノを近くに存在する人間に渡してしまう、無意識のうちに。

私に関わる人間はそうやって消えていってしまう。

だから私はこの戦いの後、自らを消滅させるつもりだった。

私がいたという証明を残したら消えるつもりだった。

だからエヴァンジェリンを超えたい。

彼女は長い間生きるだろう。彼女の中に記憶として私の姿を焼き付けたかった。

それが私の生きる道だから…

「もう一度頼む。お願いだ、私と全力で戦ってくれ」

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