小説『魔法先生ネギま ロマンのために』
作者:TomomonD()

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第三十六話 悪魔襲来に備えて


Side クロラージュ

結局、一日たってから西に報告することになってしまった。

まだ朝が早いから、昼ごろに連絡するか。

「クロ、私……、戻らなきゃダメかな?」

「いや、転回は大丈夫なんだが、月詠はダメだろうな…」

「なんだかかわいそう。うまく説得できないかな?」

どうやら、西側にいる間に友情っぽいものでも芽生えたようだな。

まあ、月詠もそこまで悪い奴じゃないから何とかしてあげたいんだが…

「あ、おはようございます。それじゃ、僕は学校に行ってきます。朝ごはんは出来てるんで〜」

「ジャ、行ッテクルゼ」

すさまじいスピードで一十百とチャチャゼロが走り抜けていった。

「い、いってら〜」


居間にはしっかりと朝食が出来上がっていた。

「まったく……、今日は朝から部活だと?」

「十百さんも大変ですね」

すでにエヴァと茶々丸が席についていた。

「おはよ、エヴァ」

「す、すごい朝食だね。茶々丸さんが作ったの?」

「いえ、一十百さんに作っていただきました」

「キサマらの分もある。さっさと食べるがいい」

月詠は朝が辛い〜とかでまだ寝ているそうだ。

人里はやる事があるとかで昨日の夜に出かけたまま帰ってきてない。

「それじゃ、いただきます」


朝食後……

「私たちは学校に行ってくる」

「いってら〜」

さてと、エヴァと茶々丸が学校に行ってしまったので……やる事がなくなった。

「ねえクロ〜、やる事が無いよ」

「俺も無いの。何か考えて」

平日は毎回こうなっている。

まあ今回は転回という話し相手がいるだけまだいいほうだ。

いなかった時は一人で魔力量を上げる訓練を黙々とやっているだけだったからな。

「ふぁ〜、おは〜」

「月詠、おはよ……頭がすごいことになってるぞ」

こう、ライオンみたいになってるぞ。

「あ〜ん、枕が変わるといつもや〜」

そういって洗面台のほうに走って行ったな。

「クロ〜、暇だよ」

「もういっそネギ君のクラスに転校したらどうだ?」

「……ありかも」

うぇい!

「マジか?」

「ちょっと、頼んでみる!」

「誰に?」

「学院長?」

……まあ、手伝ってやるか。


て、ことで…

「西で脱獄した人の報告と、転入できるか聞きに来た」

「またもや、イキナリじゃのう…」

「で?」

「転入するのは…無理ではないが、どうするつもりじゃ? この時期の転入生となるといろいろと……」

確かに、何かしら理由がないと面倒だな。

どうしたものか…

「遠い親戚とか、でいいだろ?」

「私はあのクラスに入れればそれだけで十分だよ」

「ふ〜む、まあ体験入学という形で明日から…」

「さすが妖怪だ! 見直した、ほんの少しだけ」

「ヒドイ……。そうじゃ、忘れるところじゃった。これが届いたぞい」

黒い小さな箱を出してきた。

おお!

「やっと届いたか! よし、代金は次の警備の給料から引いておいてくれ!」

「うむ。これ、お主が使うのかのぉ?」

「いや、ちょっと渡したい相手がいてな」

「クロ、それ何?」

「ああ、指輪型魔力媒体。つまり指輪型の杖だよ」

「へ〜……、誰にあげるの?」

うん?

なんか、少し不機嫌みたいな表情だな。

「……やきもち?」

「少しはね。でも、それよりもクロがそれを渡す相手が誰なのか気になってね」

さ、さすが寛大な転生者。

「まあ、渡す相手に好意も確かにあるけど……、これはロマンのほうが大きいかな」

「ふ〜ん。ま、クロが渡す相手って大体想像つくからいっか。私は明日のために用意があるから先に帰ってるね」

そういって、転回はエヴァハウスに戻っていった。

「それで妖怪、西にはどう報告するんだ?」

「うむ。前にも言ったが、転回君はこちらで預かっていいそうじゃ。月詠君のほうは追って連絡をするそうじゃな」

「そうか」

転回のためにもうまく説得できるといいんだけどな。

さてと、俺はこれを渡してこないとな。


ネギ君のクラスまでやってきた。

授業が終わって丁度休み時間か。

まあ、別に入ってもかまわないだろう。

ガラッとドアを開ける。

「え? 誰?」

「あ、お兄さん」

「クロロさん、なぜここに?」

知ってる人は知ってるよね。

意外とこのクラスの人とも知り合いになってるよな。

たぶん三分の一くらいは俺のことを知ってるはずだよな。

「何しに来た、クロラージュ」

「お、エヴァが真面目に授業を受けてるのか……。屋上でサボってるのかと思った」

「ひ、否定はしないが、私だって真面目に受けているときもある」

いや、常に真面目に受けようね。

「それで、何をしに来たんだ?」

「そうだった。夕映、ほいっ!」

俺は夕映に向かって黒い箱を投げ渡した。

「おっと……。何ですかこれは?」

「まあ、近々それを使う機会があるからな。まあプレゼントといったところだな」

「///プ、プレゼント…ですか?」

「まあ、中身は期待するなよ。どっちかというと、性能を取った気がする」

「せ、性能?」

「ああ。まあ使い方がわからなかったらエヴァに聞くといい。それじゃ、長居するわけにもいかないからな」

そういって俺はエヴァハウスに戻った。

これで、悪魔襲来に向けての準備はほぼ整った。

あとは、もう少し訓練をすれば……完了だ。



Side 夕映

「ゆえ、何もらったの?」

「わからないですけど……、性能がどうとか言っていましたから機械類でしょうか?」

そういって、そっと黒い箱を開けてみたです。

!!

バタン…!

「ちょっと、ゆえっち…。何でいきなり閉めるの?」

「いいいい、いえ、これは…いろいろ事情が…」

な、なんで指輪が……。

渡すものを間違えて……?

そんな感じはしなかったですけど…

「なにが入ってたのさ?」

「こ、これは…その…いろいろ事情が……」

クロロさん、こ、ここで渡すのはいささか間違っていませんか?

///た、たしかにうれしいですけど……

「夕映、どうした? クロラージュの事だ、面倒ごとでも持ってきたのだろう?」

「エヴァさん…、その、ちょっと…」


教室では大変なことになるので……、屋上までついてきたもらったです。

「どうした、そこまで慌てるものでもないだろう?」

「その、エヴァさんこれって…」

そういってエヴァさんに黒い箱を渡したです。

「なにが入って……なぁっ!」

「ど、どう思うですか?」

「……ん、これは……。なるほど、これは指輪型魔力媒体か。クロラージュめ、紛らわしいものを…」

「指輪型魔力媒体とは?」

「簡単に言うと指輪型の杖だ。長い杖を持ち歩かなくてもすむように作られたものだ。接近戦をする魔法使いなら持っておくべき物の一つでもある」

「つまり、クロロさんが言っていた性能というのは…」

「見たところ装飾が少ないからな。見た目より性能を重視したんだろう」

……なんだか、落ち着いた気がするですね。

少し残念でもあるですけど…

「しかし、奴もなんでこんなものを夕映に渡す必要があるんだ?」

「そういえばそうですね…」

エヴァさんが考え込んでいるようですね。

「ふ〜む、クロラージュのことだ、大方ロマンがどうとかだろうが…」

「他に理由があると?」

「……夕映、本当にお前に対してのプレゼントの可能性もあるぞ」

「/////ふぇっ…いえいえ、ままままさか」

「クックック、本人に直接聞いてみたらどうだ?」

「その、それは……」


クロロさん……、どういう意図があったかはわからないですけど……。

せめて、一人のときに渡してほしかったです。



Side 一十百

授業が終わりました〜。

「オイ、コレカラ部活カ?」

「はい。今日もいろいろ覚えないといけませんから」

魔法使いのことや魔法のことについていろいろ学んでいけば、きっとエヴァさんの呪いを解く手がかりのようなものもあると思うんです。

それに、クロラージュさんの魔法のお手伝いとかも出来るようになるかもしれないですから。


「ふ〜む、魔法陣さえ描ければほんの少しの魔力で魔法を使うことができるみたいですね」

部室に行ってもネカネ先生がいなかったので、僕の持っている本で勉強中です。

「魔法陣ッテノハ、魔力運用ヲ簡単ニスルタメニ作ラレタ物ダカラナ。マア、魔法陣ヲ描クノニ魔力ガ必要ダケドナ」

僕には魔力がないんで魔法陣を描くことすら出来ないんですよね……。

「あら、もう来ていたのね」

「あっ、ネカネ先生。こんにちは」

「魔法陣の勉強をしていたの?」

「はい。少ない魔力で大きな事を成す為には絶対に必要かなぁって」

「マア、魔力ガ無イ時点デ魔法陣ヲ描ケナインダケドナ」

「そうね……。魔法触媒に魔力を込めてもらって、それを保存しておければ回数は制限されるけど、魔法は使えるんじゃないかしら?」

あっ、なるほど!

「え、と……魔力の無い僕でも…」

「たぶん使えると思うわ」

「やったぁ! その魔力触媒って、簡単に作れるんですか?」

「簡単ではないけど……、材料さえそろえば出来るわ」

そういってネカネ先生は魔力の運用と書かれた本のページを見せてくれた。

「これが材料よ。マンドラゴラや竜の骨を薬草から取れる香油に浸したものが多いわ。これらの材料が集まれば…」

「あれ? 意外と簡単なもので出来るんですね」

「簡単……ではないと思うけど」

「コイツカラシテミレバ簡単ナンダロウナ」

「では、早速材料を集めてきます」

そういって僕は駆け出していった。


「部活は……?」

「マア、帰ッテクルノヲ待ツカ」



Side クロラージュ

「なあ、月詠」

「なんどす?」

「西に帰るつもりあるか?」

「ないです〜」

……だよな。

まあ、ここで帰るつもりですわ〜……とか言われたらどうしようかと思った。

じゃ、なんとしても西の長を説得しないといけないよな。


「「「ただいま」」」

おや、エヴァと夕映とちうちうが帰ってきたようだな。

「おう。おかえり……、ってどうした?」

三人の表情がまったく違ってるな。

エヴァは少し不機嫌なような感じで、夕映は視線をそらして顔を赤らめていて、ちうちうはやれやれといった感じだ。

「ク、クロロさん。その……これのことなのですけど」

おずおずと黒い箱を出してきた。

確かそれは、今日渡した指輪型魔力媒体だよな。

「それのことか? エヴァから聞かなかったのか?」

「聞いたです。そのことではなくてです……、その、なぜ私に?」

「まあ、3割はロマンだ」

「あとの7割は?」

「まあ、仮契約者兼優秀な弟子へのプレゼントだ。まあ、ぜひ使ってみてくれ」

「////あ、ありがたく使わせてもらうです」

顔を赤らめながら指にはめてくれたな。

くすくす、可愛いじゃないか。

まあ、これで夕映の戦略の幅がさらに広がるから、師としてはうれしく思えるな。

さてと…

「エヴァ…、少し話がある」

「何だ?」

「……ちょっと、他人には聞かれたくないことなんだが」

「////なっ、わかった」


エヴァの寝室で話すことにした。

「まあ、それほどのことじゃないんだけどな……」

「ほう…。その表情を見ると、甘ったるいような話ではなさそうだな」

少し顔を赤らめていたエヴァが一瞬にして真顔に戻った。

ここがさすがと思えてしまう。

カリスマ性あふれる女性といったところか、まあ今は少女だけどね。

「もうすぐ招かれざる来客が来る」

「招かれざる客…だと」

「ああ。子爵級の悪魔で、ネギ君の村の仇でもある……。まあ仇といっても石化させられてるだけだけどな」

「子爵級か、ぼーやの手には余りそうだな」

「そうなんだけど……、エヴァは手を出さないでほしい」

「…いいだろう。格上の相手との戦いもさせておきたいと思っていたところだ」

おや?

もっと…無理だとか猛反対するかと思っていたが…

「いいのか? 大切な弟子だろ」

「それまでに鍛えればいいだけの話だ」

…ネギ君、がんばれ。

「話はそれだけか?」

「まあ、そうだな」

「そうか」

そういってエヴァが立ち上がる。

どことなく鋭い気配を漂わせてるな。

どうやらネギ君をかなり強化するらしい。


「そうだった、もう一つあった」

「なんだ?」

「いや〜、いつになったらデートをするのかと思ってな」

「/////なぁっ! なぜそんな話を…」

「ほら、京都での約束。俺が忘れないうちにと」

「そ、そうだな、よし! キサマが言う悪魔が来た次の休みを開けておけ」

「了解」

さてと、エヴァとも話ができたしこれで本格的に準備が整ってきたな。

俺も最終調整でもするか。


それで、別荘に行ってみたんだが…

「遅いですよ! フォア・ゾ・クラティカ・ソクラティカ 雷の精霊82人! 集い来るです 魔法の射手 雷の82矢!!」

「くっ、ラス・テル マ・スキル マギステル 光の精霊 82柱 集い来たりて 敵を射て 光の82矢!!」

なぜか夕映とネギ君が手合わせをしていた。

エヴァはそれを見ている。

「エヴァが訓練するんじゃないのか?」

「今は茶々丸とチャチャゼロがいないからな。それなら夕映と手合わせさせたほうが効率がいい」

「でもさ、夕映って……実戦経験少ないじゃん。ネギ君の相手には…」

「私もそう思っていたが、そうでもないようだ」

エヴァが指差す方向を見ると…

「かはっ…」

「吹き飛ぶです。魔法の射手 雷の1矢!」

ネギ君の腹部に拳打を打ち込み、さらに無詠唱で魔法の射手で吹き飛ばしている夕映がいた。

いつからそんな動きを出来るように…

「あれは…、もしや」

「エヴァ、何か知ってるのか?」

「前に一度見せた連携をするつもりか?」

「それって、サウザンド・マスターが得意としてたやつか?」

「そうだ」

ネギ君は吹き飛ばされて態勢を立てなおすのがやっとだ。

確かに絶好の連携チャンスだけど……。

夕映が果たしてそれを覚えているかどうか…

「いくですよ! フォア・ゾ・クラティカ・ソクラティカ 来れ 虚空の雷 薙ぎ払うです 雷の斧!」

「えっ…」

ズドン、とすさまじい音がした。

ネギ君は無事だろうか?

「うう、しびれる〜……」

「まったく、ネギ先生は足を止める癖があるですね。戦闘中に足を止めたら的になってしまうです。特に魔法の射手を撃った後が必ずとまってるですよ。ですから今回のようなことになってしまうのです」

おいおい…、ネギ君の師みたいな状態になってるぞ。

それにしても、今の連携見事だった。

「エヴァ、今の……エヴァ?」

「な、何だ?」

「どうした、唖然としちゃって」

「いや、私の言いたいことをすべて夕映が言っていたから驚いただけだ。それに、今の連携も目を見張った」

「やっぱりすごかったのか?」

「ああ。キサマの渡した指輪型魔力媒体のおかげで、今まで出来なかった接近戦が出来るようになったからな。夕映は強くなる」

接近戦はあんまりしてほしくないけど……。

まあ、今の動きを見ているとなんだか心配する気持ちが減るな。

体術とか習ってないのに、よくあれだけの動きができるな。


「お疲れ、夕映」

「クロロさん。これ、とても使いやすいです」

右手の人差し指にはまった銀色の指輪をそっとなでながらそう言ってくれた。

渡したほうも、ありがたい一言だよ。

「それはよかった。そうそう、その指輪を少しの間、肌身離さずつけておいてほしい。ちょっとしたアクシデントのときにそれがあるだけで状況が変わるからね」

「だ、大丈夫です! これからも大切にするですから!!」

手をぶんぶん振りながらそう言われると笑ってしまうよ。


さあ、俺もがんばりますか!

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