小説『魔法先生ネギま ロマンのために』
作者:TomomonD()

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第三十七話 疑問と事件と実験


Side 一十百

「ただいま戻りました」

「は、早かったわね」

「材料はばっちりですよ、えへへ」

これで、魔法使いっぽいことができるかなぁ?

「では、魔法触媒を作ってみましょう」

「はい」

「オイ、材料ハ何ヲ取ッテキタンダ?」

「え〜と……、マンドラゴラ・巨竜の骨・三日月草・賢者の実……と念のためにクリスタライザ・天竜の血・冥界の百合を持ってきました」

「「………」」

「あれ? その、足りませんでしたか?」

「オイ、何カ言ッテヤレ…」

「ま、まあ、足りると思うわ。じゃ、作ってみましょうか」

「は〜い」


―触媒製作中―


魔力触媒の本通りに作ってるんですけど…

「う〜ん、思ったよりもうまく出来ません……」

「そ、そうかしら? どう見ても、すごい触媒が作られてないかしら?」

本の通りなら、もっと薄い色の水のようなものが出来るはずなんですけど……。

僕の作ったものは、ドロッとしていて、色も透明なの油のような物……。

グスン、上手くいかないなぁ。

「まあ、魔力を込めてみるわね」

ネカネ先生の手からきれいな緑色の光があふれてる……。

その光の色がそのまま透明な魔力触媒に色をつけていくようでした。

「オイ、随分溜メ込メルジャネエカ…」

「これ、どこまで魔力が入るの? これだけ入れてるのに…」

ネカネ先生がふらっとしたかと思うとそのまま倒れちゃいました。

間一髪、抱えることができたので地面にぶつかりはしませんでした。

「ネ、ネカネ先生大丈夫ですか?」

「あ、ありがとう一十百君。でも……この魔力触媒」

「やっぱり失敗でしたか?」

「いえ、これはすごい魔力触媒ね……。たぶん、普通の魔法使いじゃ満たすことが出来ないくらい、魔力を溜め込むことができるわ」

「ふぇ、普通の魔力触媒じゃ出来ないんですか?」

「アタリマエダ。普通ノヤツナラ魔法ノ射手・一矢クライダロ。デモ、オ前ガ作ッタコレハ魔法使イガ気ヲ失ウマデ使エル魔法ノ量ノ魔力ヲ入レラレルンダ。ドレダケスゴイカワカルダロ?」

「ほぇぇ、それはすごいです」

すごい物が出来ちゃったみたいですね。

でも、これって…

「この液体の中にこれを入れれば……」

「一十百君、それって……たしか、クリスタライザって言う水晶でしたよね。それを入れるとどうなるのかしら?」

「たぶん、クリスタライザの中にこの魔力触媒が入るはずです」

ポチャン

ビンの中に落としたクリスタライザは周りの触媒をすべて吸収しきるとカランとビンの底に転がった。

「やっぱり! これなら持ちやすいです」

「……その水晶の中には私の魔力がそのまま入ってるの?」

「はい、たぶんですけど…」

「結構魔力を入れたと思うから、気をつけてね。衝撃で魔力が噴出したら大変だから…」

ピシッ…

「オイ! ヒビガ入ッタゾ!」

「まずいわ、一十百君それから離れてっ!」

「ふぇ?」


クリスタライザのヒビからでた薄い緑色の光が僕を包み込んだ……。



Side クロラージュ

今は別荘で休憩中だ。

体から煙が出ているのは…夕映に負けたからだ…。

無詠唱で俺のペースに持ち込めるはずだったんだが…

「なぜ負けたんだ?」

よし、思い出してみよう。


まず、俺と夕映が距離をとって向かい合う。

そして、エヴァの声で戦いが始まった。

「始め!」

「雷の斧!」

「えっ?」

チュドン

「ぐば〜」

「無詠唱ではこれくらいの威力ですか……。ダメ押しです、もう一度 雷の斧」

ズドン

「がばぁー」


……いつの間に無詠唱なんて。

わかったことがある、夕映は訓練すればするほど伸びるタイプだ。

たぶん、そういう才能なんだろう。

だって…

「フォア・ゾ・クラティカ・ソクラティカ 雷の精霊54人! 集い来るです 魔法の射手 雷の54矢!」

「リク・ラク ラ・ラック ライラック 闇の精霊54柱 集い来たれ 魔法の射手 闇の54矢!」

すでにエヴァと一対一で戦っていけるレベル。

今の魔法だって二人の中間地点で完全に相殺してる。

まあ、エヴァのほうがずっと強いのはわかるんだが、結構白熱する場面も見れる。

ネギ君は唖然としながら見てる。

いつから夕映はこんなに強くなったんだ?

「このままではジリ貧ですね……。なら、使えるかわかりませんが…!」

夕映はグッと足に魔力を溜め込むと一瞬にしてエヴァの懐に飛び込んだ。

瞬動術か!

「なっ、見事な瞬動術だが…甘い」

「かはっ…」

エヴァは夕映の動きを見切っていたようだ。

懐に飛び込んできた夕映に向けて見事な掌底を腹部に叩き込み、夕映の体が宙をまった。

「まあ、こんなところだ」

「……ティカ 来れ雷精 風の精 雷を纏いて 吹きすさべ 南洋の嵐 雷の暴風!!」

「なにっ!」

吹き飛ばされ、着地をした瞬間に雷の暴風が放たれた。

瞬動術は囮で、本命がこっちだったようだ。

カウンターを食らうことは予想済みで、吹き飛ばされるのと同時に詠唱を行ったのだろう。

雷の暴風はエヴァを直撃し、完全にエヴァを包み込んだ。

暴風が晴れると服が所々破れたエヴァが立っていた。

「ぐっ…、まさか、ここまでのダメージを受けるとは…」

エヴァが片膝をつくなんてな…。

「やはりエヴァさんは強いですね。今ので私は打ち止めです」

倒れながら夕映がそう言った。

「ふ、二人ともお疲れ…」


今はエヴァと魔力の上昇について話し合っている。

ネギ君はダウン、夕映も少し眠るらしい。

「なあ、魔力って簡単に伸びるのか?」

「簡単には伸びないだろう」

「だからこその訓練なんだろうけど……。夕映の成長率が尋常じゃない気がする」

「まあ、あれは才能だ」

才能ですか……。

俺にも才能がほしかったな。

まあ、無詠唱魔法とオリジナルの完成度がまあまあってのはありがたいけど……。

「そういえば、エヴァってフラスコを投げて魔法を使ってるときがあったじゃん。あれって何?」

「ああ、あれは魔法触媒だ。魔法を発動させやすいようにいろいろな材料を混合させて特殊な薬品を作る。それを媒体に魔法を使うと少ない魔力でも発動できるようになる」

「俺がそれを使うってのはダメなのか?」

「触媒は一度きりだ。それに、それほど大きな魔法には効果がない」

なんだ、残念。

少しは楽できるかと思ったのに…

「キサマの魔力量はそこらの魔法使いと比べるとかなり低い……時期があった」

「あった? 今って結構多いのか?」

「……気がついていなかったのか? よし、このエヴァンジェリンがわかりやすく数字を使って説明してやろう」

そういって黒板のようなものに何かを書き出していった。

ラカンが書いていた表のようなものを書いていってるようだ。

「まず、基本的な人間……まあこの屋敷に来るものだと、千雨が丁度いいな。千雨の魔力量を1とする」

ここでも、ちうちうが基準ですか…。

「それで一般的な魔法使いはだいたい20〜200といったところだ」

「随分幅があるんだな」

「これは大まかな数字だ。仮に千雨が魔法を使えたとして、魔力が200の奴が千雨の200倍の魔法を唱えられるというわけではない」

「俺にわかりやすいように数字を使ってるだけなんだな」

「まあそうだ」

くそう、馬鹿にされた気がする。

「それで、出会ったころのキサマはだいたい13くらいだ」

「ず、随分とシビアな数字だな…、恐ろしい説得力だ。まあいいや、それで今は?」

「400…いや500と言ったところだ」

「え…普通の魔法使いの倍?」

「数値的に言えばだ。キサマはすでにそこらの魔法使いを楽に倒せるくらいの魔力を持っているぞ」

知らなかった……。

魔力量って自覚するの難しいんだな。

昔よりは上がってるくらいしかわからなかった。

「ついでに、夕映は800、今の私が1200、ぼーやは4000と言った所か」

「え? なんか変じゃないか?」

ネギ君より夕映の方が今は強い気がするけど……。

「これは魔力量であって強さの表ではないからな。いくら巨大な魔力を持っていても使い方が下手ならただのタンクに過ぎん」

「なるほど……。あくまでも、魔力量か」

強さになるときっと変わるんだろうな。


そういえば悪魔襲来の日程は覚えてなかったが……、確か雨が降っていたな。

「エヴァ、天気に詳しいか?」

「イキナリなんだ? 明日の昼から雨だ、夜にはやむと言っていた」

「うぇ、じゃあたぶん明日……来る」

「ほう、悪魔襲来か。思っていたより速いがまあ大丈夫だろう」

どうやら、ネギ君のほうは大丈夫のようだ。

問題は悪魔が一人でくるかどうかだよな……。

俺や転回、人里がいるからな……。

一十百のように新たなキャラとして悪魔が増えたりすることもある。

気を引き締めていかないとな。



Side 一十百

僕が気がつくと、天井が見えた。

あれ?

何があったんだっけ……。

思い出せないなぁ。

「一十百君、気がついた?」

「ネカネ先生……。あの、僕は何で…?」

「……覚えてないの?」

「はい…」

「魔法触媒を作ってたのは覚えてる? その触媒に魔力を込めたの、それを水晶に入れようとしたんだけど……」

「あっ……」

そうだった、クリスタライザにヒビが入っちゃって…

「思い出した? その魔力が暴走して、とても危険な状況になってしまったの」

「それで、どうなったんですか? 僕は、何で無事なんですか?」

あの時、一番近くにいたのは僕だったのに……。

緑色の光に包まれてからの記憶がない…。

どうなったんだろう?

「……一十百君が、守ってくれたのよ?」

「えっ?」

「ナンダ、覚エテネエノカ?」

あ、ゼロさん。

よかった無事だったんだぁ。

でも…

「僕が、守った?」

「ソウダゼ。アノ水晶ヲ握ッテ暴走シタ魔力ヲ止メヨウトシタンダゼ」

「ふぇえ! そんなことを…」

「危険だから、って私が言っても聞こえてないみたいで、水晶を握り続けたのよ」

「そうだったんですか……」

そういって僕は手を見る。

う〜ん、いつもと変わってないなぁ。

怪我もしてないみたいだし…

「その後どうなったんですか?」

「……ホントニ覚エテネエノカ?」

「ふぇ?」

「一十百君の握っていた水晶の光が段々と弱くなっていったの。暴走した魔力が尽きるまでまだ長い時間がかかるはずだったのに…」

「ソレデ、水晶ノ光ガ消エルト安心シタミタイニ気ヲ失ッタンダゼ」

「そうだったんですか…」

「どうして魔力がすぐ尽きたのかは分からないけど、無事でよかったわ」


その後、部活を終えて帰るころには暗くなっていました。

「オイ、御主人ニ一度相談シタ方ガイイナ」

「ほぇう? 相談ですか?」

「前ニ石化ヲ解除シタ事ガアッタダロ。アノ時カラ、少シ変ダト思ッテイタケドナ」

「そうですね、エヴァさんに聞いてみましょう!」



Side クロラージュ

「エヴァ〜、おなか減った」

「私もだ」

一十百が帰ってこない。

たぶん部活が大変なんだろう。

一十百も中学生だからな〜。

「何で今日に限って茶々丸がいないんだ?」

「メンテナンスだ。学園祭で忙しくなる前にやっておきたいそうだ」

まあハカセと超は学園祭で忙しくなるからなぁ〜。

でも、真面目におなかが減った……。

腹ペコキャラじゃないけど、おかなが減った。

「エヴァ〜……」

「それ以上面倒なことを言うなら、今日の夕食がキサマになるだけだ」

「はい、黙って待ってます」


「クロ、おなか減った……て言いたかったけど我慢するよ。エヴァちゃんが怖いから」

「エヴァの機嫌が悪くなる前に一十百が帰ってきてほしいんだが…」

「私、料理できないからなぁ……」

ほう、それは知らなかった。

転回って料理上手そうなんだけどな…。

「それで、出来ないってどれくらい出来ないんだ?」

「卵かけご飯を失敗するくらい……かなぁ」

絶対に料理をしてはいけない人種の一人だな。

すでに卵かけご飯が料理に入ってる時点でアウトだな。

せめて目玉焼きならセーフだけど…。

「そうだ、エヴァって料理できないのか?」

「面倒だ」

そうですか。

たぶん出来ないんだろうな。

「そういえば月詠は?」

「もう寝てるよ。つかれました〜って言ってた」

「何もしてないだろ……」


「おや、そろそろ夕食かと思ってきてみたのだけれど……まだのようだね」

人里が降りてきたけど……。

「まだなんだよ」

「一十君がまだ帰ってきていないのか…。茶々丸君……もいないみたいだね」

「おかけで空腹に耐えることになってる」

「エヴァンジェリン、転回君、君たちは料理をしないのかい?」

あっさりとそう言った。

今それって地雷なんじゃ……

「ほう、それはどういう意味だ?」

「料理が出来ないのかと思ってね」

「私……出来ない、グスン」

「そうか。エヴァンジェリン、貴女は?」

「面倒だ」

「出来ないようだから、一十君が帰ってくるまで何か作ろう」

「待て、出来ないなどとは一言も…」

エヴァが言い切る前に、人里は軽くエヴァの肩に手を置き一言こう言った。

「貴女は私が目標にするべき存在なのだ。その目標が料理と称してダークマターを作ったなんて事があっては私が困る。だから、待っていてほしい」

そう言うと、人里はキッチンのほうに向かっていった。

「おい、今のは料理が出来ないと馬鹿にされたんだよな」

「ど、どうだろうな? 人里って自分の意見をはっきりといいすぎるからなぁ…、馬鹿にしたかったわけではないと思うぞ」


少しすると人里が戻ってきた。

大きなお皿に野菜炒めを盛り付けてくれたようだ。

「今ある材料の中で作れる料理がこれしかなかった。まあ軽食としては十分だろう?」

「たしかに、しかし……美味しいな」

「私も練習しようかな…」

「料理くらい……私にもできる…」


野菜炒めを食べ終えて…

「遅い、一十は何をやっているんだ!」

とうとうエヴァが怒り出してしまった。

あ〜、これは大変だ。

まあ、いつもなら午後5時には帰ってくる一十百がまだ帰ってきてない。

すでに午後7時を過ぎようとしている。

「夕食の材料を買いに出ている可能性もあるけれど…」

「一十百にも忙しい日くらいあるさ。もう少し待ってあげよう」

「奴のことだから“星がきれいですね〜、少しゆっくり帰りましょうか?”とか言ってるに違いない!」

確かに言いそうなセリフだ……。

「以外に大きな事件に巻き込まれていたりしてな」

「キサマと同等のトラブルメーカーであることは否定しないが、そう巻き込まれるものでもないだろう」

「なんか、エヴァひどい……」


「ただいま戻りまし…」

「遅い!! 空腹だ!!!」

「ひぃぅ、ごめんなさい…」

「帰ッテ来テ、イキナリソレカ御主人」

エヴァが腹ペコキャラになってるぞ。

まったく、エヴァ……ん?

なんだかエヴァの表情が硬くなってるな、どうしたんだろうか?

「…一十、部活で何かあったな」

「は、はい。でも、なんで…」

「“なんでわかったんですか?”と言いたいようだな。それだけ魔力の痕跡が体中にあれば気がつかないほうがおかしいというものだ」

え?

俺、気がつかなかったんだけど……。

「転回、気がついた?」

「私、魔法使えないから…」

「人里は?」

「私の魔法はここの魔法とは少し違うからね、気がつかなかったよ」

よかった、俺だけじゃなかった。

「特に、両手……。よく無事だったな、手の形をしているのが驚きだ」

「ふぇぇぇ!!! そ、そんなに危なかったんですか…」

「何をしたかは知らないが、両手が吹き飛んでもおかしくないほどの魔力量の痕跡だ。まあいい、夕食の後に話してもらおう」

「はい。では、夕食作ってきますね!」

そういって一十百はキッチンに走っていった。

「チャチャゼロ、何があった?」

「マア、詳シクハワカラネエヨ。御主人ナラ何カワカルカト思ッタンダガナ」

「直接見たのだろう?」

「アア」

「なら十分だ。夕食を食べ終えたら一十と一緒に話を聞いてやる」


なんだか一十百に何かがあったみたいだな。

まあ、元気そうだから大丈夫だろうけど……。

「夕食の準備できましたよ〜」

「「「「はやっ!!」」」」

まさかレトルト……か?

そう思って居間に行ってみると…

「お待たせしました〜」

どこのレストランのフルコースを思わせる料理が並んでいた。

「あれ? 帰って来て、まだ3分もたってないような…」

「クロラージュ、気にするな。気にしたら、負けだ」

「夕映が言ってたのか?」

「そうだ」

……よし。

気にしないことにしよう。


夕食はとても美味しいものでした。

「私、料理習おうかなぁ…」

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