小説『魔法先生ネギま ロマンのために』
作者:TomomonD()

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第四話 吸血鬼との交渉


Side クロラージュ

俺が気が付くと朝の光が差し込んでいた。

「ここは……」


どうやらソファーの上に寝かされていたようだ。

ん、そう言えばたしか昨日は……


闇の吹雪を食らって……死んだ?

「ここは天国か?」

「なにを下らんことを言っている」


振り返ると眠たそうな表情をしたエヴァがいた。

「……テイクアウトで」

「何の話だ――――――――!!!」

目覚まし代わりのドロップキックが飛んできた。

「ガフゥ……。で、ここは?」

「私の家だ」

「俺を連れ込むとはいい度胸だな、本格的にお持ちか…」

「リク・ラク ラ・ラック ライラック 来たれ氷精(ウェニアント・スピーリトゥス) 闇の精(グラキアーレス・オブスクーランテース) 闇に従え(クム・オブスクラティオーニ) 吹雪け(フレット・テンペスタース) 常闇の(ニウァ)…」

「待て待て!!! つっこみにそんな魔法使うな」

あ、朝だから使えないはずじゃないっけ?

でも今たしかにオーラが出ていたな、コワイ。


「キサマは私に負けた。アンティールールだったな」

「ウガァ、やっぱり負けたのか。てかさ、なんで俺助かってんの?」

「お前を突き飛ばした小僧に感謝しろ。そうでなければ死んでいた」

「小象? まさにエレガント(エレファント)な奴だな HAHAHA」

「消すぞ」

「待て! 冗談だ。でも誰だそれ?」

「お前と友達になりたい一心で私の前に立ちはだかったんだ。少しは知っているだろ」

そう言って案内された部屋には誰もいなかった。

と言うよりこの部屋、白い。

他の部屋は木の色で茶色く見えたけど、ここの部屋は新しいのか木が白い。

「この部屋新しいのか? きれいに掃除してあるな」

「………」

どうしたんだ、ってエヴァが放心状態になってる。なんで?

仕方ない、揺すってみるか。

「おーい、エヴァ〜。どうした〜」

「はっ、キサマこの部屋に何をした!」

「はい? 俺? いや何もしてないし」

俺は今来たばかりですよ。

まったくどうしたんだか。

「この部屋、こんなに白くはなかったはずだ」

「俺のいた部屋と同じ感じだったんだな」

「そうだ、そういえばあの小僧がいないな」

あの小僧?

さっきの話の俺の命の恩人か。


「茶々丸!」

「はいマスター」

エヴァが呼ぶと茶々丸が歩いてきた。

原作版よりも人間味があるな。

美人なのは変わらないな。

「あの小僧はどうした?」

「はい“寝ているだけでは失礼だと思うのでお掃除をしてます”と」

「ヤツのしわざか――――!」

エヴァがかなりのスピードで走ってたよ。

裾踏んでこけてるし…

「ううう…」

うわ、こっちを涙目で見てから走り去ってったよ。


「茶々丸」

「なんでしょう?」

「ゼンマイまかせて!」

「……考えておきます」

「ぜひ!」

そんなこと言ってると目の前を尋常じゃないスピードで何かが通り過ぎて行った。

通り過ぎた後の廊下は新築同様の白い光を放っていた。

「ゼイゼイ、まて…」

「あ、マスターお疲れ様です」

「大丈夫か? 息上がってんぞ」

「あれを止めないと…」

きゅう〜、と言ってエヴァが倒れてしまった。

眼がバッテンマークになってる。結構、いや普通に可愛いな。


「茶々丸」

「はい」

「このエヴァの写真、後でちょうだい」

「焼き回ししておきます」

「さんきゅー」

さてと、さっきの何だか分かんなかった速いのが戻ってくるまで、エヴァを膝枕して待ってますか。


「う〜ん」

「マスター気が付きましたか」

「ここは、そうだ私は……ってなぜ膝枕をしている――――!!」

「いや、大丈夫。可愛かったから無問題(もうまんたい)

「そういう事ではない! 茶々丸なぜやめさせなかった!」

「いえ微笑ましい光景でしたので」

「そういう問題か――――――!」



――20分後――

「はい、お掃除おしまいです」

「おつかれさまでした」

「わ、私の家が…」

「いや良くないか。新築ログハウスみたいだぞ」

昨日見たログハウスが立て直されて、新しいログハウスを建てました〜、と言われても信じるしかないな。

いや、だってさ、掃除ってゴミを取ったり、ほこりを掃いたり、モップで拭いたりするくらいだよね。

目の前のログハウス、白木で作ったようになってるし…。

なんか木のいい匂いがするし…。

これって、どうやったんだ?


「センサー確認、ほこりと思われる物質は(ナノ)サイズまで取り除かれております」

「なにを使ったキサマ…」

「ほぅぁ、このモップだけです」

「どうすればこうなるんだ――――――!!!」

つっこみはエヴァに任せるか。

てか、この()どっかであったような…。

どこだっけ?

あれ? 俺の前にきた、なんだろう?

「あの……これ……」

これは、そうか落としたのか。

いつだ? まあいいか。

「サンキューな、わざわざ」

「それと……」

「ん、なんだ?」

顔を伏せてどうした?

お! 顔あげた。

あれ、確かこの()は……


「僕とお友達になって下さい!!」

天文学的精神破壊力の微笑だ……。

俺は……終わった。

「グファ……」

「ひぅぁ!! だ、だ、大丈夫ですか!!!」

「俺が見た微笑の中で間違いなく君がトップだ……ガクッ」

「はゎゎ、クロラージュさん。戻ってきてください〜」

「マスターどうします」

「放っておけ、馬鹿にはかかわるな」


ああ、思い出した。

この男の娘(おとこのこ)は、あの時俺が追っかけた()だな。

まさかこんな所で知り合うとは。

そして、なんて微笑だ、死んだ人間も蘇りそうだ。

俺は死にそうだけどな……。



その後気が付いたらソファーに寝かされていた。

「やっと起きたか」

「エヴァか……ん?」

エヴァの服装が違う。

いや、同じ服なのに違うように見える。

綺麗に洗われたとか、そんなのじゃなくて、質が良くなったそんな感じだ。

そして、エヴァの魅力も3割増しだ。

「俺、満足だわ。神に感謝だ」

ヤベ、合掌ぉ〜う。

眼福、眼福。

「さっきからお前はなんなんだ――――!」

綺麗にドロップキックを食らい俺の意識は飛んで行った。


さてと、意識が戻ってくる速度も段々と上がってきた気がするな。

たぶん10分かからずに復活できるようになった気がする。

それでだ……

「頼むエヴァ! 負けたけど、別荘を使わせてくれ!」

「断る」

「いいじゃないか、減るもんじゃないし」

「何のために昨日戦ったと思っている」


くそ〜、エヴァのけちんぼ。

まあ、負けちゃった俺が悪いんだけどね。


「屋根裏の提供だけでもありがたいと思え」

そう、野宿は脱出しました。

エヴァが俺の事を憐れんだのか、生暖かい目で

「屋根裏なら使っていい」

と言ってくれたんだよ。

優しいね〜、さすがエヴァだ。


とはいえ、別荘とあの魔法だけは外せないんだ。

俺の生きている意味の20%が消滅しちまうからね。

「それよりもキサマ、四日に一度吸血させてくれると言ってたな」

「ああ、そうだったな」

「ちょうどいい、少しもらうとするか」

「……ちょっと待った、どれくらい取るつもりだ?」

「安心しろ、200mlくらいだ、死にはしない」

「そうか、でだ……。やっぱり首筋から血を啜るのか?」

「いや、別に腕からでも構わん」

「くっ……」

「なんでそんなに悔しがっている――!!」

いやだってさ、腕から血を飲まれるのって、何もなくね?

首筋だとさ、この美少女に合法的に密着できるんだぞ!!!

そんなおいしい話、俺が逃すと思うのか!

「いや首からの方がいい、なんとなく吸血鬼らしいじゃん」

「そうか、まあ私は血が飲めればいい」

そう言ってエヴァが俺の前に来た…。

あれ?

まさか、このままじゃ届かない?

「オイ」

「なんだ……プッ」

「座れ(怒)」

「分かった、分かった。そんなに怖い顔するな」

俺が座ると、ちょうどいいくらいか。

「では、いただくとしよう」


首筋にチクッとしたけど、大した痛みじゃないな。

血を抜かれるのも……あれ?

だんだん目の前が暗くなってきてるんだけど…。


「ふう、こんなものでいいだろう。どうした?」

あれ、エヴァの声が遠くに聞こえる…。

ヤバい、座ってるものキツ……


そうして俺は気を失った。



Side 一十百

エヴァさんのログハウスのお掃除は終わりました。

次はお洗濯をしようと思ったんだけど、その時不思議な人形を見つけたんだ。

どことなく茶々丸さんに似てる人形で、生きているみたいな感じがする。

……とっても欲しくなった。

「うわ〜、欲しいな〜」

「ケケケ、イキナリソレカ。歪ンデンナ」

「はうぅ、別に歪んで……あれ? しゃ、喋れるんですか?」

「アタリマエダ、コレデモ御主人ガイチバン最初ニ…」

僕は最後まで話を聞けなかった。

話せて、この容姿で、なんとなく自己的で……。

がしっと、この人形を抱え上げるとエヴァさんのところまで走った。

今までで一番速く走れた気がする。

「エヴァさん! この人形……」


そこで僕が見たのは、クロラージュさんと抱き合ってるエヴァさんだった。



Side エヴァ

「ふう、こんなものでいいだろ。どうした?」

いきなり力が抜けたかと思うと、この馬鹿は倒れてしまった。

まさか、たった200mlで貧血か!


「まったく、ん?」

いつの間にか後ろに小僧がいた。

なんだ、そんな風に顔を赤くして…

「あうぅ。えと、その、あの…」

「なんだ」

「その、お、お楽しみのとこ、だったんですか…?」

「///なっ! なんの話だ!」

「ひぁ、でもどう見ても抱き合っているようにしか……」


……しまった――――!!!

気が付かなかったが確かにそう見えなくもない。

変に誤解される前に、理由を…

「ケケケ、サスガ御主人ダナ。昨日ノ今日デ手ヲダシタカ」

「ひあぁ。エヴァさんって、そう言う人なんですか…?」

「ち、ちがう! 断じて違う! チャチャゼロ、紛らわしいことを言うな!」

クッ。

チャチャゼロのせいで一歩弁解が遅れた。

しかし…

「おい小僧。なぜチャチャゼロを持っている」

「ふぇ? あ、そうでした! と、それよりですね…」

小僧が私の前に立つ、何か言いたいのか?

ふん、どうせ下らんことだろう。

「ぜひ、僕を名前で呼んでほしいんです!」


うぅ…。なんて目で私を見るんだ、吸血鬼の真祖である私が一歩引かされるだと…。

瞳の中に星が瞬いているからな…、断りきれないか。

「分かった。なんて呼べばいい?」

「あ、じゃあ……一十百なんで、そこから適当でいいです」

一十(ひとと)でいいな、それでなぜチャチャゼロを持ち歩いている?」

「はい、その、この人形ください!」

「………」


はっ!

一瞬フリーズさせられた。

一体何なんだ、どいつもこいつも…

「おい小…一十、お前の持っているそれが何か知って言っているのか?」

「はうぁ? 話せるお人形さん?」

「そいつは私が一番最初に作った殺人人形(キリングドール)だ」

「はうう、殺人人形ですか?」

「そうだ、それに、チャチャゼロは私の魔力が無ければ動けん」

「ほぁぅ、そう、ですか…。グスン」

な、なんだ、この罪悪感は。

今まで誇りある悪を貫いてきた私が罪悪感を感じるだと…。

「まあくれてやるとは言えんが、使う分には構わないぞ」

「はゎ! ほんとですか!」

「オイ御主人、オレノ意思ハ無視カ!」

チャチャゼロが何か言ってるが気にする必要はない。


「それでエヴァさん。さっき、クロラージュさんと何をしていたんですか?」

ブッ!

そうだった、本当の理由を話さなければ……。



Side 一十百

「アンティールール? ですか」

「そうだ」

「えっと、掃除と、輸血パックの代わり、ですか?」

「そうだ」


エヴァさんの必死さが伝わるお話を聞きました。

でも、びっくりした〜。

エヴァさんがクロラージュさんを襲ってるのかと思った〜。

結構ドキドキしたよ〜。

「それで、クロラージュさんの血を吸ったら倒れてしまったですか?」

「たかが200mlで貧血になるとは思っていなかったからな」


でも、毎回貧血になっちゃうのは危ないとおもうんだ。

さっきだって、“綺麗な川が見える〜。あれ、ひいおじいちゃん?”とか言ってたし。

このままじゃ、クロラージュさんが冷たくなっちゃいそうで。

よし! お友達としてここは僕が!

「そのアンティー僕が引き受けます!」


それで、うん。

なんかとんとん拍子にオッケーされちゃった。

「チャチャゼロを貸しているから、一十からでもいいだろう」

だそうです。

今度別荘を見せてくれるんだって。

早く見てみたいな〜。

-5-
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