小説『魔法先生ネギま ロマンのために』
作者:TomomonD()

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第四十一話 一十百と楽しい仲間達


Side クロラージュ

悪魔襲来が終わって、少しばかり平和で暇な日が続いていた。

続いていた……はずだった。

「エヴァさん、これ飼っていいですか!」

「いったいなん………」

隣の部屋でのんびりといすに座っていたらエヴァの声が途中で止まった。

大方、一十百が何か珍しい動物でも拾ってきたんだろう。

エヴァがいる部屋まで行ってみることにするか。


「一十百はいったい何を拾ってきたんだ? よし、予想するか!」

そうだな、まずエヴァが驚いて声が出なくなってるところを考えると、ただの動物じゃないな。

もし、犬とか猫とかだとしてもポチみたいに桁違いに大きいとか、どう見ても白虎みたいな猫とかだろうな。

他の可能性は……竜とか不死鳥とかを拾ってきたというのも考えられるな。

まあ、猫耳の亜人とか犬耳の狗族を飼うとかは言わないだろうから、たぶん獣のようなもののはずだ。

う〜ん、もしかしたら幽霊とかかも知れないな。

唐傘お化けとかならペットに見えなくも無いからな。

一十百ならありえる。

……なんだかかなり緊張してきたな。

ペットを拾ってきただけの事なのに…。

ごくりと息の飲み、ゆっくりと扉を開ける。

「いったい何を拾ってきたんだ?」

「あ、クロラージュさん」


そこにはなぞの生物“達”がいた。


いや、知ってはいる。

似たようなものを見た事もある。

でも、いないはずの生き物のはずだ。


一十百が拾ってきた生物は5匹……てか匹って数えていいのだろうか?

まず理解できるのから……

「ペットにするつもりかヨ」

「それは少し辛いデスネ」

「……でも放浪してるよりはイイ」

半透明の少女が三人いた。

大きさは一十百の膝より下くらいだな。

短めのツインテールの子と、メガネをかけた帽子の子と、髪の長い子の3匹…いや三人だな。

そう、本来なら封じられるはずだったスライム少女達だ。

ええと、確か……ツインテールがすらナントカで、メガネがナントカ子で、髪の長いのがゼリーだったか?

いや、こんなのの名前覚えてないし!

ま、まあ…この程度ならよかった。

普通なら唖然としてフリーズするところだけど、一十百にしてはまともな方だ。


問題はあとの2匹……。

まず片方は、一十百が二頭身にデフォルメされたような感じで、手はにくきゅう、頭には猫の耳、そして二足歩行をしている猫目の生物。

大きさはスライム少女より少し大きいくらいだ。

「いや〜、まさかこちら拾ってくれるとは思ってにゃかった。まあ、日ごろの行いがよかったということだね、まいぶらざ〜」

いや、どこのUMAだ?

ここは猫の王国じゃないぞ?

そして世界観的にここじゃないだろ生息地……。


そして最後の1匹……。

ぱっと見るとチャチャゼロか茶々丸に見える。

緑の髪、機械的な角……てかアンテナか?

そう、丁度チャチャゼロの顔が大きくなった感じだ。

ただ……顔以外が無い。

まんじゅうのようなふっくらとしたチャチャゼロの顔のみ。

手も足も身体もない、顔のみ!

どことなく馬鹿にしたような感じの表情。

それが一十百の足元で跳ねている。

大きさは、クッションとか枕くらいだ。

「ゆっ、ゆっ、ゆ〜」

気力をそがれるような声だ……。


一十百がつれて帰ってきたのはこの5匹だ。

正直言って、部屋から逃げ出したくなったが……、フリーズしかけているエヴァが涙目でこっちを見たので仕方なく横に座る事にした。

どう、切り出そうか……。

「え〜と、何がどうしてこうなったんだ? 願わくば、ゆっくりとわかりやすく教えてくれ」

「ゆっくり聞きいていってね!!!」

おうぁ!

ゆっくりに反応したか!

「え〜と、ですね……難しそうなので…」

「回想いってみよ〜」

すでにペット候補と息ぴったりだ……。



Side 一十百 回想

今は学校の帰りです。

部活は今日はお休みでいつもより早くエヴァさんのお家に帰れそうです。

「オイ、真ッ直グ帰レヨ。面倒ゴトガ起キル前ニナ」

「ふぇぇ、そんなに頻繁には起きませんよ〜」

「クロバカホドジャナインダガ、十分スギルホドとらぶるめーかーダカラナ」

「はうう、そんなぁ…」


帰る途中不思議な水溜りを見つけました。

ぐねぐね動いてるような、気がする…。

「ゼ、ゼロさん。あれって……」

「面倒ゴトダナ。避ケテ通レヨ」

「は、はい…」

横を知らない振りして通り過ぎようとしたときに……声が聞こえました。

「オイ。このままじゃ干からびるだろうガ」

「でも、このあたりでふらふらするのは危険ですヨ」

「……我慢も大事」

……気になります。

「オイ、面倒ゴトニ巻キ込マレルノガオチダゾ」

「でも、話せるんですから何とかなりますよ、きっと」

と言う事で……

「あの〜、水溜りさん? 何か困った事でも?」

「水溜りじゃネエヨ!」

「ふぇ?」

ざぶんと水溜りがはじけて、三つの水の塊になりました。

それらが段々と形になり始めて…

三人の女の子の姿になりました。

「ふぇぇ! 君たちって、もしかしてスライム?」

「そうだゼ。一応自己紹介ダナ、すらむぃダ」

「私はあめ子デス」

「……ぷりん」

「えと、一十百です。こちらは主のチャチャゼロさん」

「ヨロシクナ」


一通り自己紹介が終わったので、お話を聞いてみると……

この前のヘルマン伯爵と契約をしていたけど、倒されて魔界に帰ってしまったので行く当てが無く、干からびる危険性がある…ってことでした。

「う〜ん、なるほど……。スライムって水だけじゃ生きていけないんですか?」

「本来、肉食だからナ。人間も食べることができるんダゼ」

「ふええ!」

「デモ、そういうことをしてしまうと退治されてしまいますカラ…」

「…かなり困ってる」

なるほど……。

「よし! エヴァさんに頼んでみましょう! 三人くらいなら大丈夫ですよ、きっと!」

「オイ! イイノカヨ! ……マア、御主人モ丸クナッテキタカラナァ、ナントカナルカ」

「じゃあ、一緒に行きましょう。ええと、すらむぃ、あめ子、ぷりん」

三人が干からびないようにペットボトルに入ってもらいました。


う〜んエヴァさん了解してくれるかなぁ…。

たぶん大丈夫だよね!

「コレ以上面倒ゴトニ巻キ込……」

「ゼロさん、あれって…」

「マタ面倒ゴトカヨ」

そこにはダンボールに入った猫のようなものがいました。

あれ?

僕と気のせいか似てる…気がする。

ダンボールには“SOSきゃ〜と”と書かれていました。

「え…っと…」

「このあわれなネコにサバ缶でも?」

「サ、サバ缶ですか…」

「ソノ前ニ、二足歩行シテ喋ル猫ガドコニイルンダヨ…」

「むぅ、あちしはかの有名な九つの魂を持つネコなのだよ、キミ」

「イヤ、説明ニナッテネエヨ…」

「えと……もしかして猫の手も借りたい状況くらい困ってますか?」

えへへ、猫だけに。

「そうですな〜、あたたか〜い宿とおいし〜い食事が待ってるところに住んでみたいと思ってたのだよ」

「…放ッテオクカ」

「だ、ダメですよ。助けられるなら助けてあげないと!」

と言うわけで……

「ぜひ家にいらしてください!」


エヴァさんならたぶん了解してくれると思うんですけど……

「ちょっと、多くなっちゃいましたね…」

「マア、御主人ニ頼メバナントカナルダロ…タブン」

「そうですね! じゃあ、ゆっくり帰りましょう」

「ゆっくり帰っていってね!!!」

「ふぇえ!」

急に声が聞こえたので辺りを見回すと……

「あれ…って、ゼロさん?」

「オイ! 俺ナラ上イルダロウガ!」

そ、そうでした…。

でも、似てるなぁ。

ゼロさんのクッションみたい。

「ゆっ、ゆ〜」

「えと、どうしたの?」

「ゆっくり迷っていってね!!!」

「ふええ、迷っちゃったんだ…。住むところある?」

「ゆっくり住んでいってね!!!」

「そっか、じゃあ家に来る?」

「ゆっくりしていってね!!!」

「うん、じゃ行こう!」

「……ナンデ今ノデ通ジルンダ? イヤ、ツッコマネエヨ」



Side クロラージュ

「…というわけです」

どうやら、困っていたからつれて帰ってきたらしい。

いや、でもさ……つれてくるなよ。

主にスライム少女以外。

「エヴァさん、ダメでしょうか…」

「ダメ…と言う事ではないが、その足元にいるゼロみたいなのをこっちによこせ」

「ほぇ?」

どうしたんだろうか、チャチャゼロや茶々丸に似てるから気になったのか?

「ゆっ?」

「………」

エヴァがゆっくりゼロ…とでも呼んでおくか、ゆっくりゼロの頬をプニプニ押している。

「エヴァ? どうした?」

「……うむ! よし、飼ってもいいぞ!! むしろ、飼え!!」

「はぅあ! やったぁ」

あれ〜、エヴァなら反対すると思っていたのになぜだ?

「エ、エヴァ反対しないのか?」

「いや、このゼロが、な……」

「ゆっくりしていってね!!!」

「…癒されるだろ?」

エヴァが満面の微笑みになってる!

こんな笑顔が見られるなんて……ハッ!

俺は急いで部屋を見回す。

すると、窓の外からサムズアップした茶々丸が覗いていた。


“マスターのレア笑顔ゲットしました”

“さすがだ。ぜひ焼き回しを頼む”


一瞬で伝わった気がする。


さてと、まあペット騒動もなんとかなってよかった。

「いやいや、これは混沌への導きなのかもしれぬよ」

いつの間にかネコトモモがいた。

「お前が一番カオスだろ!」

「こう見えても、あちしの料理は死んだ魚の目のようになると評判なのだよ」

「ぜってー美味しくないだろ!!」

はあ、こういうのがいるから厄介ごとが起きるんだよなぁ。

「おい、何か食い物ヨコセ!」

「少し空腹デスカラ」

「……間食希望」

うぁ、スライム三人衆まで来たよ。

俺だけかもしれないんだが、スライムってこう…人型とかにはならないんじゃないのか?

ほら、こう溶けてたり、でっぱりのある楕円のようなものじゃないか?

まあいいか、スライムって言うくらいだし。

で……

「え〜と、そっちのツインテールがあめ子だっけ?」

「あめ子は私デス」

「アレ? じゃ、そっちのロングはすらむぃ?」

「……ぷりん」

「すらむぃはこっちダヨ!」

………。

「わかりにくいんだよ、軟体生物!」

「「「ゼッタイお前のせいダロ!!!」」」

スライム三人衆からつっこみと言う名の蹴りやら拳打やらをくらった。

結構痛い……、軟体生物のくせに。

「ゆっくり食べていってね!!!」

なぜかゆっくりゼロまでこっちに来ていた。

「あれ? クロラージュさんもおやつですか?」

その後ろに一十百が来ていた。

どうやら間食と紅茶でも作ってくるように言われたみたいだ。

「なんだかエヴァがゆっくりゼロを気に入ってたみたいだけど…」

「そうみたいですね。エヴァさん、がんばってゆっくりの言葉を理解しようとしてましたよ」

「ゆっくり理解していってね!!!」

理解って…、別に聞き取れないわけじゃないんだけどな。

「ゆっくり語は“ゆっくり〜していってね!!!”としか聞こえないですから、理解するのが難しいんですよ」

「じゃあ、今のもゆっくり理解していってね!!!って意味じゃないのか?」

「はい。今のは“頑張れば二ヶ月くらいで話せるようになるよ”って言ってましたよ」

そ、そうだったのか……。

うん?

「ちょっと待った! じゃあ何で一十百はゆっくりゼロの言葉が分かるんだ?」

「ほぇぇ? 主要五カ国語みたいなので、主要七種族語というのがありますから!」

なんだよそれ……、てかマスターしてるのかよ。

七種族ってゆっくりが一つだろ、あとはなんなんだ?

気になる…。

まあ気にしちゃダメなんだろうな、うん。


一十百がおやつを作ってる間にスライム三人衆とネコトモモに詳しい話を聞くことにした。

一十百の回想シーンではかなり省かれててさっぱり分からなかったからな。

「スライム三人衆はヘルマンとの契約でこっちに来たんだろ? 契約が切れたなら帰ればいいじゃないか」

「帰れれば苦労しねーヨ」

「魔界の近くから来たのでヘルマンさんの力がないと帰れないんデス」

「…帰ろうと試したものの失敗に終わッタ」

そうだったのか。

まあ、原作なら瓶に封じられるところが自由になっただけよかっただろうな。

「それで、このまま日差しの中を歩く訳にもいかないカラナ」

「丁度、通りかかった一さんに助けてもらった訳デスヨ」

「……かなり命の恩人」

なるほどね。

「それでこれからどうするんだ? ここでエネルギーをつけて一気に帰るのか?」

「そう簡単に帰れるものじゃネエヨ」

「当分はここに住まわせてもらいマス」

「…当初の予定と違うけど、問題ナイ」

一十百のことを恩人といってるわけだから、暴れたりはしないだろう。

それに、一応水の牢を作れるわけだし魔法も使えるだろうから、いざと言うときに戦力になってくれるだろう。

打撃もスライムだから効かないし、逆にこっちに対しては拳打とか打ち込めるからな。

鍛えれば三人の連携に拍車をかけて強くなる気がする。

もしかしたら、俺よりも……いや、そこまではならないか。

まあだいたいスライム三人衆のことは分かった。

でだ……

「え〜と、ネコトモモ…でいいか? お前はなぜここに?」

「あちしはふらふら〜と流れてそして安住の地を見つける。これが渡り猫のロマン、お代はサバ缶で」

「いや、さっぱり分からん。つまり野宿はイヤだと」

「よくわかってるね、ブラザー。つまり、アレなのだよ。旅なのだよ」

いつの間にかトレンチコートを着ながら葉巻を吸っているネコトモモになっていた。

いや、過剰演出だろ。

なんか波の音とか出向間際の船の汽笛とかも聞こえるし。

「で、どうするんだ?」

「まあ、ここに当分ご厄介になるでしょうなぁ。なかなかの豪邸に美味しい食事、贅沢は敵ですなぁ」

「そこまでいって何故いる」

「旅人に秘密はつきもの、ミステリアスだよ、若いの」

ああ、コイツ面倒だ。

話がまったく進まない。

まあいいか、別に悪い奴ではないだろうし。

一応、強いのか?

「なあネコトモモ。お前って、強い? てか、戦えるのか?」

「ムッフッフ、こう見えてもあちしの身体にはいくつもの力が隠されているのだよ」

おお!

これは、意外な戦力に…


「まずこのにくきゅう。柔らかなさわり心地を提供する癒しの拳、もれなく豆腐を粉々にできる。次にこの爪。鋭さに磨きをかけて風船なら一撃の下に破裂させられる脅威の武器。さらに、ビームという尋常ならぬ技。あえてジェットまでつけたという豪華さ。あちしの実力わかってもらえたかね」


……なるわけなかった。

「……すまん、一割たりとも分からん」

「なんと!」

いや、いまので理解しろってほうがむりだろ。

もういいや、たぶん戦力にならん。

「ゆっ?」

「そういえばお前もいたな、ゆっくりゼロ」

「ゆっくり聞いていってね!!!」

たぶん目的を尋ねてほしいんだな。

よし。

「じゃあゆっくりゼロ。お前さんの目的はなんだ?」

「ゆっくりしていってね!!!」

「なるほど…そうか」

まったく分からん。

ゆっくりしていきたいんだな、多分。

まあゆっくりゼロは目的を聞いてもらえて喜んでるからいっか。

この5匹……いや五人は一十百に任せるか。

ポチですらしっかり従えてるんだから、問題ないだろ。


「おやつできましたよ〜」

カートを押して一十百がこっちに来た。

どうやらクッキーとカステラを作ったらしい。

「はい、どうぞ」

普通に美味しいな。

あれ?

そういえば、エヴァがいないな。

「一十百、エヴァは?」

「そ、それが……ゆっくり語を覚えているから後にしろだそうです」

「お、覚えられるのか?」

「僕の持っていた“ゆっくり語辞典『ゆっくり覚えていってね!!!』”を読破しようと頑張ってました」

う、う〜ん、いいのか?

まあエヴァがやりたいようにやればいいか。

「このマイルドな紅茶、旅の疲れを癒す、わかってるね〜」

「えへへ、褒められちゃいました」

あの二人が並ぶと厄介だな。

空気が混沌としてくる、シリアスさんがどっかに行ってしまう感じだ。

これからは今以上に面倒ごとが増えそうだ。



「ゆっくり覚えていってね〜、いや、ゆっくり覚えていってね! こうか?」

「マスター、意味が分かりません」

「絶対に私はあのゼロの言葉を理解してみせる!」

「マスター、ゆっくり頑張っていってね!!!」

「!!!!!」

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