小説『魔法先生ネギま ロマンのために』
作者:TomomonD()

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第四十二話 約束の日


Side クロラージュ

吹き抜ける風、五月ごろの気持ちのいい風だ。

今日という日をずっと待っていた俺にとってはこの風がとても気持ちいい。


今は世界樹の下で人を待っている。

そう、悪魔襲来の次の日曜日……。

つまり、エヴァとデートの日だ!!!

かなりテンションが上がってるぜ!

デートなんてものやった事は無いんだが、たぶんなんとかなるだろ。

確か毎週日曜にエヴァにかけられた呪いが一部軽減されるらしく、学園の外にまで行けるようになるらしい。

「そう考えると、ちょっと遠出して美味しいお店やエヴァ好みの古い神社とかを探しに行くってのがいいな」


しかし、エヴァも面白いことを言っていたな。

“い、一応形式的にデート…なのだろう? なら、世界樹広場で待っていろ///”

どうやらエヴァは形から入るパターンのようだ。

待ち合わせはデートの代名詞のようなものだからな。

さてと…

「お、思ったより早くからいるんだな。私だって二十分の猶予を持ってきたのに」

後ろから声をかけられた。

どうやら、俺の見ていた方向とは逆の方向から来たようだ。

むぅ、気がつかなかった。

「まあ、相手を待たせる……」

振り返ってエヴァの姿を見て一瞬言葉が出なかった。

「な、何だ?」

「いや、その……ずいぶん力が入ってるなぁ、と思って」


今のエヴァの格好を俺の少ないボキャブラリーを使って全力で説明しよう。

まず髪型、いつもはストレートだが今日のエヴァの髪型はツインテールっぽい髪型だ。

ストレートとツインテールを足して二で割った髪型だ。

次に服装、上着は白を主体とし青いバラが所々に描かれたフリルのついた洋服だ。

フランス人形とかが着てるような洋服からリボンとかフリルを少しとって、派手すぎず地味すぎず絶妙なラインを行く服装だ。

スカートは学生服くらいの長さでこちらも白色主体の青いラインの入ったものだ。

腰の辺りにワンポイントで青いリボンが結ばれている。

そして、白色の日傘を差して蒼い靴を履いている。

どこからどう見てもいいとこのお嬢様にしか見えない。

そして、めっさ可愛い!!

ふわりと香るブルーローズの香水もその可愛さを引き立てている。


「…一十がな“せっかくなんですから、おしゃれしていきましょう! 任せてください、エヴァさんに似合う洋服を作っておきます!”と昨日言っていたんだ。まさかここまで力を入れるとは思ってなかった」

一十百の裁縫レベルが高すぎる件について……。

いや、今日だけはその破格のレベルに感謝しないとな!

「その髪型も?」

「そうだ。“いつものでも似合いますけど、今日はイメージチェンジで!”といって、一瞬で変えられた」

「……なんだか俺が力を入れそびれた感がある。エヴァだからいつもどおりの格好で来ると思ってた。その、すまない」

「こ、ここまで力を入れる必要もないと思うが……。まあいい、わざわざ一日割いたのだからな、楽しませてもらおうか」

おずおずと手を出してきた。

うぁ、いつものエヴァじゃない。

何だこの小動物は!!!

ふぅ、よし落ち着くんだ。

「まあ、任せとけ!」

そう言って俺はエヴァの手をとって歩き出した。


そういえば、夕映や転回、茶々丸とかが来てもおかしくないんだけど……。

近くにいる気配がない、どうしたのだろうか。



Side 一十百

「マスターの可愛い姿を録画しなくては!!!」

「クロロさん、エヴァさんをがっかりさせた場合、覚悟するですよ!」

「いいなぁ、私もアタックしてみようかな?」

エヴァさんがクロラージュさんとデートらしいので、僕たちは邪魔をしないように家でお留守番です。

茶々丸さんがデートのときのエヴァさんを録画したいと言っていますけど、今回だけはダメです。

「ケケケ、今日ノ御主人ハイツモノ威厳ガナカッタナ。アレジャタダノ小娘ダナ」

「エヴァさんだって普通の学生としての楽しみがあると思うんですよ」

「ソウカ? マア、御主人モ飽キタラ帰ッテクルダロ」

う〜ん、たぶん夕方ごろにならないと帰ってこないと思うんですけど。

「ゆ〜?」

「今日はエヴァさんお出かけなんですよ。帰ってきたら遊んでくれるから待ってようね、ゆっくり」

「ゆっくり待っていってね!!!」


「こんにちは〜、エヴァちゃんいる?」

あれ、朝倉さんがいらっしゃいました。

「こんにちは。エヴァさんは今日はクロラージュさんと外出です」

「え! ま、まさか、デート?」

「えへへ、秘密です」

「こんにちは。師匠(マスター)いらっしゃいますか?」

ネギ先生とアスナさんもいらっしゃったみたいです。

「エヴァさんはクロラージュさんとお出かけ中です」

「そうなんですか」

「クロラージュと一緒にねぇ……」


「やっぱり心配です!」

「そうだね!」

転回さんと夕映さんが立ち上がりました。

「どうしました? 転回さん、夕映さん」

「き、気になるですよ! クロロさんがちゃんと出来ているのか」

「たぶん大丈夫だと思いますけど…」

「ちょっと面白そうじゃん」

アスナさんまで……。

「やはり、マスターの思い出をしっかりと録画しなくては!」

「いいスクープになりそうじゃん!」

「ダメですってば〜」

皆さんが席を立って出て行こうとしています。

な、何とかしてとめないと!

こうなったら……

「今回のみ奥義! 影縫い(シャドウ・アスターラレンス)!」

カッ カ カ カ カッ!

僕の投げた銀色のフォークが転回さん、夕映さん、茶々丸さん、アスナさん、朝倉さんの影に突き刺さりました。

「えっ…!」

「体が…」

「動かないです!」

「いつの間にそんな技を!!」

「あれ? 一十百君って一般の人じゃなかったっけ??」

ふぅ、これでエヴァさんとクロラージュさんの楽しい一刻を邪魔されずにすみそうです。


「……オイ」

「どうしました、ゼロさん?」

「今ノッテ……イヤ、ツッコマネエト決メタンダッタナ」

「ほぇ?」

「マア、ナンデモネエヨ」

「そ、そうですか」

では、僕はお昼寝をしながら二人の帰りを待つことにしましょう。


「あの〜、行かないから抜いてくれない?」

「すぅすぅ…」

「「「「「寝てる!!」」」」」



Side クロラージュ

無事学園の外に出ることは出来たようだった。

学園結界の外に出るときエヴァが一歩踏みとどまったので、軽く手を引いて連れ出してみた。

効果は……まあ、うん…

「どうした?」

「いや、その、なんでもないよ」

さっきから腕にしがみついて離れない。

う〜ん、いいのだろうか?

まあ、甘えたい日くらいあるのだろう。

一応少女だからな。


さてと、今向かってるのは亞心神社……というところらしい。

一度は見ておきたいとエヴァが言ったので向かっている。

到着してみると……

「こ、ここか?」

「石碑を見るにここのようだな」

確かに亞心神社と石碑に書いてある。

てか、縦書きで亞心だと悪って字に見えてしょうがない。

悪神社って読む人のほうが多い気がする。

それで、問題の神社の状態なのだが……。

木が生い茂って薄暗く、鳥居も半壊状態。

異様にカラスが多く、少し遠くに見える境内は苔むしている。

参拝客なんてものは全くいない。

「エ、エヴァ…。どうしてここに来たかったんだ?」

「この神社には多くの言い伝えがあるからな」

「言い伝え?」

「万病に効くとかではないぞ。黒い翼を持った少女に会った、大きなリボンの巫女にあった、桜も咲いてないのに花びらが舞っていた、大きな目がたくさんこちらを覗いていた、と不思議なものが多かったからな」

………うん?

微妙に、知ってるような…。

まあ、いいか。

「それでエヴァも見てみたかったのか、その言い伝え…てか噂みたいなの」

「まあな。それに、人の全くいない神社と言うのも風流があっていいものだ」

エヴァがゆっくりと境内に向かって進む。

おいて行かれないように俺もあとを追う。

境内の前には古い賽銭箱が一つ置かれていた。

神社特有の大きな鈴のようなものもなく殺風景だった。

もしかしたら前はあったのかもしれないな。

「しかし、近くで見ると……ずいぶん古いと言うかぼろいと言うか…」

「人の気配はしないな。まあ、コレはコレでいいものだった」

そういって、エヴァはお賽銭を指で弾いて入れた。

カランと乾いた音が響いた。

エヴァが何か祈ってるみたいだから俺も何か祈っておくか。

……げ、五円がない。

てか百円もない、五百円しかない……。

まあ、仕方ないか。

ちょっと勿体無い気もしたけれど五百円玉を賽銭箱の中に入れた。


さて、何を祈ろうか。

う〜ん、俺のロマンが少しでも成就されますように……。

ちょっと、自分のことしか考えなさすぎだな……。

少しでも俺の周りの人が幸せに……なんか偽善過ぎるし…。

祈ることが思いつかない!

ええい、こうなったら……。

楽しい毎日がこれからも続きますように!!

よしっ、これでいいか。

「お、おい…なんだかずいぶんと祈っていたが、それほどまでに叶えたい願いがあったのか?」

「え? そんなに長かったか?」

「いや、確かに時間も長かったが…ずいぶん硬い表情をしていたぞ」

それは、何を祈ろうか考えてただけで…とは言えないよなぁ。

「私に手伝えることがあるなら気軽に言うといい。力になってやれるはずだ」

「…なんだか今日のエヴァ、優しいな」

「なっ/// た、たまにこういう日があってもいいだろう!」

顔を赤くしながら睨まれてしまった。

しかたがない、撫でておこう。

「サンキューな」

「…フン」

「さてと、次はどこに行こうか?」

「そうだな、小腹もすいてきたところだし軽食店でもさがすか」

「でもさ、この前エヴァが餡蜜食べたときに一十百の作ったほうが美味しかった…って言ってからそういう店に入ってない気がする」

「うっ、たしかに。一十のせいでほとんど外食する楽しみが無くなっている。まあ、奴の作った料理が反則的に美味しいから文句はないんだがな」

さすがに今から帰るのもどうかと思うしな……。

せっかくのデートだ、もっと楽しみたいからな。

「しかたない、目的地なしで歩いてみるか?」

「何だそれは……。まあ、たまにはいいか」

そういって亞心神社を後にした。



Side 人里

私が帰ってくると、転回君、綾瀬君、茶々丸君、それとアスナ君と朝倉君が不思議な格好のまま止まっていた。

「…なにをやっているか教えてくれないかい?」

「ちょ、丁度よかった!」

「動けないのです!」

動けない?

よく見たら影にフォークが突き刺さっている。

「影縫い、高等技術だね。でも、いったい誰が…」

「十百君よ」

…彼にそんな力があったとは思えないんだけれど。

アスナ君がそう言っているならそうなのだろう。

「仮に一十君にこの力があったとして、いったい君達は何をしようとしたんだい? 一十君がわざわざここまでするんだ、それ相応の理由があるはずだ」

「それは…」

「ふぁぁ…あれ? 離お姉ちゃん?」

珍しいな、彼が昼寝なんて。

「戻ったよ」

「お帰りなさい!」

「それで…これは君がやったのかい?」

「ふぇっ! あ、忘れてました」

「「「「「ええっ!!」」」」」

どうやら本当に一十君がやったらしい。

「珍しいね、いつもならここまで強制はしないはずなのに」

「エヴァさんとクロラージュさんの楽しい一刻を邪魔するのは悪いかなぁ〜と思って」

そういえばデートの約束をしていたらしいね。

なるほど、見に行こうとしたから止めたわけか、彼らしいね。

「まあ、彼女たちももう追うつもりは無いらしいから解いてあげるべきだよ」

「そうですね」

そういって、一十君は目を閉じる。

集中しているのか、それとも気を高めているのか……いや彼に気は無いんだったね。

「あの……、どうやったら解けるんでしょうか?」

「解き方を知らないのかい?」

「えへへ……」

「普通、解き方を知ってるからこそ使えるもののはずなのだけどね」

「なんとなくやったら出来ちゃいました」

そういうところがあるから驚くよ。

「まあ、あのフォークを抜けば解けるんじゃないのかい?」

「なるほど! 離お姉ちゃんさすがぁ!」

そのくらい気付くものじゃないのかい?

いや、一十君なら気付かないものなんだろうな。


「よしっと、これで全部抜けましたよ!」

「つ、辛かったぁ〜」

「ト、トイレです!!」

「せっかくのマスターの録画…」

「というか、ネギ! なんで助けないのよ!」

「スクープネタになるかなぁ、影縫い?」

まあ彼女たちもそれなりの使い手のはずなのだけれど……。

ふむ、一十君の影縫いはそれほどのものだったのだろうか?

よし。

「一十君。その影縫い、私に試してくれないか?」

「ふぇ? 離お姉ちゃんに? できるかなぁ…」

そういって銀のフォークを構える。

影も出来ているし、絶好の状態だ。

「てい!」

放たれたフォークは床に当たると、キンという金属音を残して床に弾かれた。

「……あれ?」

「サッキノハマグレダッタミタイダナ」

「そうみたいだね。本来、影縫いは強い気を影を通して流し込み、金縛りにさせる技だから一十君には出来ないはずだよ」

「ふぇっ! そうだったの?」

どうやら知らないでやったらしいね。

それで出来てしまってるところがさすがと言うところかな。

二人は…まだ帰ってこないようだね。




Side クロラージュ

亞心神社の後かなりいろんなところに行ったと思う。

当ても無く歩いてたら、美味しそうな和菓子店を見つけて入ってみた。

確かに味もよく深みのある店だった。

……店員がお茶をひっくり返さなければ。

まあエヴァの魔法が即座に発動して氷付けになったお茶が転がったのは驚いた。

一番驚いてたのは店の人だったけど。


一息ついて別のところを目指すことになった。

次に見つけたのは古い映画館。

まさか今時になって白黒のサイレント映画をやるとは思わなかった。

客は勿論ガラガラで…てか誰もいなくて、閉館してるのではと思ってしまうくらいだった。

まあ、しっかりと映画は見れた。

吸血鬼の映画だったけどね。

エヴァが映画に向かって、血の啜り方が歪だの、動きが生ぬるいだの、吸血鬼としての誇りは無いのか!だの、かなり叫んでいた。

周りにお客がいなくて助かった。

見るに耐えん映画だ!とか言うのかと思いきや、感動の再開シーンではしっかり涙を流していた。

エヴァが感動ものに弱いとは思って無かったよ。


「ぐすっ、いい話だった」

「そ、そうか。まあサイレント映画という貴重な体験ができたから俺も楽しめたよ」

映画館を出ると赤い日差しが差し込んできていた。

「おお、もうこんな時間か。むう残念だ」

いきたいところは無いが、もう少し楽しみたいってのはある。

「全てを今日やることも無いだろう」

「え?」

「毎週日曜は私の呪縛が解ける。気が向いたらまた…その、誘ってやる」

腕組みをしてツンとした表情をしているエヴァ。

普通に、いやとても可愛いです、ハイ!

「ぜひ誘ってくれ!!」

「……はぁ、キサマのそういうところがな……。まあいいか」

「? さてと、そろそろ戻りますか。美味しい食事が待ってそうだな」

「一十のことだ、私たちが帰ってくる時間くらい予測しているだろう」


エヴァハウスに戻るころには星が瞬いてる時間になっていた。

「お帰りなさい、クロラージュさん、エヴァさん」

黒い執事服に身を包んだ一十百が出迎えてくれた。

「お食事の用意できてますよ」


一十百が通してくれた場所はいつもの食堂ではなく、三階の今まで使っていなかった部屋だった。

扉を開くとそこは…

「……うわ、これまたずいぶんと力が入ってるな」

「それはそうですよ。レストランによらず真っ直ぐ帰ってきたのですから、高級レストランにも負けない対応をしなくてはいけないですからね」

薄暗い部屋のなか蝋燭の明かりが主で幻想的な空間を作り出しており、真っ白のテーブルクロスの上に銀色の食器と豪華な料理が並べられている。

氷水に入ったワインボトルや青色の薔薇の花瓶などが置かれ、天井がガラス張りになっている。

星空の下で豪華なディナーを食べるような雰囲気になっている。

どこの高級レストランだよ……。


一十百は氷水からワインボトルを出しグラスに注ぐと退出していった。

「デートの最後を締めくくるには十分な我が家(レストラン)だ」

エヴァはそういうと軽くグラスを持ち上げた。

俺もそれにならいグラスを持ち上げる。

「今日一日、とても楽しかったぞ」

「俺も十分すぎるほど楽しめたよ」

「またいつか…」

「このような楽しい日が来ることを祈って…」


「「乾杯」」


リンと涼しげな音色をならし、今日一日を締めくくる豪華な夕食を食べ始めた。


「皆さんは、こちらでお食事です」

「エヴァちゃんとクロいいなぁ。私も豪華なディナー食べたかった」

「こちらも十分すぎるほど豪華です」

「確かに。やっぱり料理習おうかなぁ〜…」

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