小説『魔法先生ネギま ロマンのために』
作者:TomomonD()

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第四十三話 戦える? 守れる? 新たな戦力


Side クロラージュ

一十百がつれてきた中でスライム三人衆は戦力になりそうだ、ってエヴァに言ってみたら…

「確かに戦力になりそうだな。まだ、弱すぎるが…」

「容赦なしカヨ…」

「圧倒的すぎマス…」

「…過剰戦力…」

エヴァが直々に相手をしていた。

エヴァ対スライム三人衆、結果エヴァ圧勝。

始めのほうはスライム三人衆がコンビネーションを生かしてエヴァに着々とダメージを与えていたようだ。

でも、一箇所に固まった瞬間エヴァの魔法が炸裂して……。

一瞬で負けたようだった。

「コンビネーションはいいんだが、各々の実力が弱すぎる。三人がかりでやっと一人じゃ少しばかり分が悪い」

本来だとネギ君と小太郎君の二人をスライム三人衆が抑えるはずだったから、エヴァじゃなかったら結構強いと思うんだけど…。

「まず魔力が低すぎるのが問題だ。体術…おもに打撃は無効化、いやほぼ通常の物理的な攻撃は全て無効化できるのは確かに強力だが、守りに特化していても勝つことは出来ん」

「なあエヴァ、スライム三人衆って魔力とか上がるのか?」

「訓練すれば確実にあがるはずだ。まあ、人間よりも成長が遅いからすぐとはいかないがな」


今、別荘には俺、エヴァ、夕映、スライム三人衆、がいる。

夕映は何でも新魔法の練習らしい。

雷の暴風だけじゃ満足できなかったらしいな…。

エヴァは休憩といってのんびりいすに座っている。

俺はとにかく魔力量の上昇を図っている。

「ゼイゼイ……、まだまだぁ!! 白の炎!」

今までは集中するだけで魔力量が増えていたんだが、このごろまったく増えなくなったので実戦形式を想定して訓練している。

エヴァに手合わせしてもらおうと思ったが、休憩中のエヴァを動かすとハードな訓練になるからやめておいた。

「ただいま戻りました〜」

どうやら一十百が帰ってきたみたいだ。

「こんにちは〜」

おや?

「今の声は…さよか?」

「さよ〜です」

「……つまらないぞ」

「が〜ん」

いつからこんなテンションになったんだ地味幽霊。

「しかし珍しいな、ここにさよがくるなんて」

「エヴァさんに来るようにって言われまして」

エヴァが?

なぜに?

「やっと来たか。まあ、楽にしていろ」

「エヴァ、なぜにさよを?」

「相坂の実力を知りたくてな。かなりの霊格であることには間違いないはずなんだが、実際どれほどのものなのかはっきりさせておこうと思っただけだ」

「はっきりって……さよって戦闘経験ないだろ?」

「そうじゃない。ポルターガイスト…念動力とでも言った方が分かりやすいか? どれほどの力を有するのかの確認だ」

え〜と、たしか学校の机を浮かせられるくらいだっけ?

エヴァの話じゃタンスくらいは浮かせられるって言ってたな。

「で、どうやって調べるんだ?」

「簡単だ。相坂、私を動けなくしてみろ」

「え? 動けなく、ですか?」

「念動力で私の身体を固定すればいい。後は私が抜け出せるか試す」

エヴァ自身が試すのか……ずいぶん期待してるのか?

「そ、それじゃあ…ううう、え〜い!」

何か気合を入れてさよが手を前に出した。

……いや、何も起こらないけど。

手から魔力とか気とか、こう霊っぽいのとかも見えないし…。

「やっぱりダメなんじゃないかエヴァ……? エヴァ?」

あきらめて、エヴァのほうを見るとエヴァが瞬き一つしない状況で立っていた。

かすかに腕が震えているみたいだけど……。

その瞬間エヴァの魔力が吹き上がった。

「うぇぇぇ! ちょ、エヴァ?」

「……くぁっ!!」

エヴァが何かを振り払ったようなしぐさと共に膝を突いた。

「え? いま、何かしていたのか?」

「キサマには見えなかったか。さよの力を侮っていた、まさかここまでとは…」

「はぁはぁ……こ、こんなに疲れるポルターガイストも久しぶりです」

くたぁ…とさよが座り込んでしまった。

額に汗を浮かべているところを見ると、相当頑張ったようだ。

「エヴァ、さよの実力ってどのくらいだ?」

「そうだな、もし普通の……一般の人間が今の念動力を正面から受けたのなら…」

「受けたのなら…」

「体の動きはおろか、呼吸……いや心臓まで完全に停止していたな」

「うぇぇ!! そ、そんなにすごいのか!」

「私でも息をするのがやっとだった。力を一瞬でも抜いたら意識を持っていかれてたな」

し、知らなかった……。

さよってすごい霊だったんだ……。

「どうやら、さよのポルターガイストは範囲内の物質に作用するようだな。簡単に言えば広範囲念動力…といったところか」

「でも、今はエヴァしか作用してなかったぞ? 俺無事だったし」

「意図的に範囲を狭めたんだろう。そのため念動力が集中し、あれほどのものになったのだろうな」

なるほど。

「とはいえ、いくら集中させようが雑多の霊ならまったく意味がない。少なくとも霊格だけなら祀られてもおかしくないほどだ」

「そ、そうだったんですか! 自分のことなのに知らなかった…」

「私が鍛えるつもりはないが、もしも実力を上げるようなことをしたければ一十に頼むといい。少なくとも私よりも霊とかについて知っているだろう」

「はい!」

さよはそういうとふわふわ浮きながら一十百のほうに向かっていった。

う〜ん、さよまでも裏の世界入りか?

「エヴァ、なんでわざわざこんなことをしたんだ?」

「…この前のように一般生徒が巻き込まれることがある。そのときのためだ」

「なるほど…」

このごろエヴァは自分のクラスの人に対してかなり優しくなったように感じる。

特に裏のことに対する被害をなるべく軽減させるように動いている。

何だかんだ言って今のクラスが楽しいのだろうな。

「…なんだニヤニヤして?」

「いや、エヴァはやさしいなぁと思ってね」

「///ダ、ダダ、黙れー!!!」



Side 一十百

「へ〜…なるほど」

すらむぃ、あめ子、ぷりんの話を聞いています。

魔力量とか魔法に関してはあんまりアドバイスできないんですよね…。

「何かいい方法ねえカナ」

「私たちの実力は伸び難いデスカラ」

「…別の方法が必要」

う〜ん、困りました。

何かいい方法があれば…

「ソイツラニ魔法陣デモ組ミ込メバイインジャネエノカ?」

僕の上にいたゼロさんの提案です。

でも…

「ゼ、ゼロさんそれは危ないですよ〜。魔法陣を身体の上に書くと言うのは確かに効果的ですけど、反発する魔力が発生した場合とても危険なんですよ」

「ソウナノカ? 魔法陣ッテノハ魔力ヲ増幅スルダケジャナカッタカ?」

「ええと、増幅した魔力と身体に流れてる魔力だと少し違うんです。その違いが反発力を引き起こしてしまう事がよくあるんです。そのため、魔法陣を身体に書いた場合その部分が弾け飛んでしまったりするんですよ」

「ズイブン詳シイナ…」

「危険なことから先に勉強しましたから。でも……」

う〜ん、魔法陣を組み込むかぁ……。

僕みたいに魔力がなければ大丈夫なんだけど、魔力がなくちゃ魔力の増幅は出来ないし…。

「モウイッソノコト杖デモ持タセレバイインジャネエノカ?」

「杖ですか? ……え! 杖! そうです、その手がありました!!」

「オイ、本当ニ杖ヲ持タスノカヨ!」

「いえ、そうじゃないんですけど……。えと、あとは簡単な演算をすれば…」

よし!

これなら…

「すらむぃ、あめ子、ぷりん。これで上手くいくはず、だからちょっと待ってて!」

この閃きが薄れないうちに、終わらせなくっちゃ!!



Side クロラージュ

魔力が尽きたので休憩がてら夕映の様子を見に行くことにした。

この頃、夕映の訓練を見に行ってなかったから少し気になる。

「しかし…さっきから鳴り止まない雷の音が響いているんだが……」

夕映がいるほうに進むにつれて雷の音は段々と大きくなっている。

どう考えても夕映の訓練で放たれてるものなのだろうな。

「う〜む、完全に置いてかれてる気がするんだが…」

弟子に置いていかれる師匠って……。

ううう、グスン。

まあ、泣いてもしかたない。

気合を入れて見に行くとしよう。


「我が弟子〜、頑張って…」

と顔を覗かせた瞬間、桁違いに大きな雷の槍が俺の顔の真横を通過していった。

「うへぁ!!」

「クロロさん! いきなり現れると危ないですよ。ケガは……ないみたいですね、安心したです」

「夕映……今の、何?」

「新しい魔法です。たしか雷の投擲という魔法でしたが…」

雷の投擲……か。

本物を見るとすごい迫力だ。

「いつから使えるようになったんだい?」

「数日前から練習してるです。エヴァさんから貰った本に書いてあったのですが……ラテン語だっため解読するのに時間がかかりました」

「よくラテン語読めたね。俺じゃ無理だ」

「私も読めなかったです。十百さんが手伝ってくれてやっと読むことができたですよ」

「……一十百ってラテン語も読めるのか」

「精霊言語、ゆっくり語に比べれば楽なのでは?」

「…確かに。納得しちゃいけない気がするが、納得できた」


せっかくなので夕映に雷の投擲を唱えてもらうことにした。

「な、何だかクロロさんに見られると少し緊張するです」

「そんなに緊張することでもないだろう。さっきみたいなのを撃ってくれればいいよ」

「それではいくです! フォア・ゾ・クラティカ・ソクラティカ 影の地 統ぶる者 スカハサの 我が手に授けん 三十の棘もつ 愛しき槍を 雷の投擲!!」

夕映の右手に雷で編みこまれた巨大な槍が現れた。

ブンと手を振り下ろすとかなり速い速度で飛んでいった。

たぶんかなりの威力なんだろうな、うむむ、すごい。

「ど、どうでしたか?」

「いや、すごいとしか言えないな。初めから才能あると思っていたけど、ここまでやるなんて思ってなかったよ」

そういって頭を撫でてみた。

「///ど、どうして撫でるですか…」

「いや、なんとなく。やっぱりいい弟子を持ったなぁと思ってね」


夕映の訓練……というよりも雷の投擲を見たあとエヴァのところに戻ってきた。

「エヴァ、ちょっといいか?」

「すうすう……」

珍しく別荘で昼寝をしているエヴァがいた。

基本的に別荘だと訓練をしていたり、ネギ君の相手をしていることが多い。

故に昼寝をしているエヴァを見るのは久しぶりだ。

「珍しいな……」

こういうときは、そっとしておくことにしよう。

エヴァだって疲れることもある、昼寝をしたいときもきっとあるだろう。

「しかし、手合わせの相手がいなくなったな…」

「お望みとあらば?」

「いや、お前は呼んでない」

別荘の石畳からネコトモモが現れた。

どうやって入ったとか、石畳からどうやって出てきたとかは聞かないでおくことにした。

たぶん理解できない。

「…と言うか、たぶんお前弱いと思うし」

「人を、いやいや猫を見た目と中身で判断するのはどうかと思うよ、キミ〜」

「あとどこで判断しろって言うんだよ…」

「そこまで言うのならお相手いたそう。さあ、構えたまえ」

フッと不適に微笑んだネコトモモ。

まあ、こういうのってギャグ補正がかかって大ケガをしないはずだよな。

ならまあ……、多少全力でかかってもいいか。

「よし、やるからには覚悟しろよ!」


俺とネコトモモが距離をとって対峙する。

「さあいくぞ!」

「ムッフッフ、あちしの強さとっくりと分からせてやるにゃ〜」

まあ、魔法の射手くらいで倒せるだろう。

「焔の27矢!!」

無詠唱で放たれる擬似魔法の射手だ。

飛距離は短いが十分当たる距離だ。

速さもなかなかある。

これが当たって終わりだな、たぶん。

「にゃ、にゃ、にゃにゃ」

「え゛…」

ネコトモモは焔の矢を次々とかわしていった。

ギリギリでかわしたのではなく、余裕を持ってかわされた。

動きが……速い!

かわすたびに残像が残るような感じだ。

まさか…

「こんな物が当たるとおもっているのかにゃ〜?」

「ば、馬鹿にするな。今度はそうはいかないぞ!! 焔の54矢!!!」

さっきの倍の量の焔の矢がネコトモモに降り注ぐ。

これは避けられまい!

「フッ…」

ネコトモモは降り注ぐ焔の矢をサイドステップで次々かわしていった。

それも、サイドステップのときに不敵な笑みを浮かべてかわすという余裕まで見せつけられた。

「は、速いだと!!」

「見た目どおりとは限らないのだよ」

この速度と回避率、一十百レベル…か?

こんなギャグのくせに強い!

「そろそろ攻めさせてもらうにゃぁ」

タンと地面を蹴るとネコトモモは俺の目の前に来ていた。

速いが……、大丈夫だ。

こんな小柄の、ましてやギャグっぽいのが強いはずはない。

「にゃー!!」

軽くジャンプをして片手を握ったようだ。

なるほど、アッパーでもするつもりだな。

でも残念だな、この俺の身体能力でも簡単に避けられる!

「見切った!」

そういってバックステップでかわす。

ネコトモモの拳…にくきゅうは空を切った………はずだった。

「にゃにゃー!!」

「ぶべらっ!!」

なぜかネコトモモの足がロケットのようになっており、ミサイルみたいにネコトモモが飛んできた。

そして、見事にアッパーを食らった。

おのれ、人外!!

「ぐはっ、このっ!! 白の炎!!」

放たれる白の炎!

この至近距離なら確実に当たる!!

「フッ…」

目の前にいたにもかかわらずバックステップで白の炎の範囲から離れられた。

そして、不敵な笑みのおまけつき……。

「あ゛あ゛あ゛!!!」

「そう熱くなるとサバ缶を見失うよ、ぶらざ〜」

「こんのぉ!!」

こうなったら意地でもアレに勝つしかない!

覚悟してもらおうか!!

「コル・コスト・ラス・ラージュ・エスタルロージェス 来れ火精 焔の精 炎よ渦巻いて 焼き払え 爆炎の都 火の爆風!!」

爆炎が渦となってネコトモモを巻き込んだ。

消し炭になってなければいいんだけど。

「どうだ! これが俺の実力だ!!」

「いやはや、すごい。あちしが黒こげになってるよ」

「そりゃそう………うん?」

視線を俺の足元に移してみると、ネコトモモが両腕を組みながら頷いていた。

………?

………?

………(゜д゜)アルェ

「あちしもそろそろやってやるにゃぁ」

し、しまった!

わけの分からない状況でフリーズしてしまった!!

ま、まあ、しょせんアッパーがとんでくるくら…

「おぷばっ!」

「えっ、ぐばぁぁぁぁぁあああ!!!」

ネコトモモのカットインが一瞬背景に現れ、両目からビームが飛び出した。

もちろん直撃。

そして、かなりの高威力だった……。

「にゃにゃにゃ、身体は猫で出来ている〜」



「おい、なぜここで寝ている」

う……あれ?

ここは…

見上げるとエヴァがこちらを覗いていた。

「あれ、エヴァ?」

「まったく…訓練をしているのかと思えば昼寝か?」

「いや、そうじゃないんだけどな…」

さすがにアレに負けたとは言いたくない。

「うん? なにやらこげた匂いがするが……」

「き、気にしなくていい。ちょっと訓練でこがしただけだ」

「そうか、まあいい。そろそろ一十が夕食を作っている頃だろう」

どうやら、かなり長い間気絶していたようだな。

くそう、あんなのに負けるなんて…。

「どうした?」

「いや、もっと訓練しないとな…と思っただけだ」

「ほぅ。少しは向上心があるのだな」

「当たり前だよ」

どこからか美味しそうな香りが漂ってきた。

「エヴァさ〜ん、クロラージュさ〜ん、夕食が出来ましたよ〜」

「一十がお待ちかねだ。いくぞ」

「おう!」



「にゃにゃにゃ、身体は猫で出来ている〜」

「うるさいんだよ!!」

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