小説『魔法先生ネギま ロマンのために』
作者:TomomonD()

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第四十四話 新たな決意


Side クロラージュ

「つまりですね……」

「え〜と…」

「ヤッパリワカラネエジャネエカ」

今ネギ君の持ってきた地図…サウザンド・マスターの手がかりがある地図を一十百が解読して、いろいろネギ君に教えている。

まあ、原作どおり“オレノテガガリ”って書かれてるところはまったく気がついていないみたいだ。

あれか、天才って簡単なところを見落とすのか?

「…と言う事です。わかりましたか?」

「は、半分くらいは…なんとか」

「ふむぅ、まあ半分わかってくれれば大丈夫です」

「でも、父さんの手がかりはなかったですね」

「そうですね…」

本当に気がついてないみたいだな。

「何をしてるですか?」

夕映もこっちに来たようだな。

「ネギ君の父親の手がかりがあるらしい地図を一十百とネギ君が解読してるところだ」

「手がかりですか……。私にも見せて下さい、力になれるかどうか分かりませんが」

そういって夕映が地図を覗き込んだ。

少しして……

「あの、ネギ先生、十百さん。たしか手がかりを探しているんですよね…」

「はい」

「解読は出来たんですけど、手がかりは依然つかめず…」

「……ここに」

そういって夕映が例の部分を指差した。

「えと“オレノテガカリ”?」

「………あっ!」

「「手がかりだ―――!!!」」

一十百とネギ君が同時に声を上げた。

本当に気がついていなかったのか…。

「あ、あれ〜?」

「カタカナだったから見落としたのかなぁ?」

「二人とも頭がいいのか悪いのか…」


何はともあれ、手がかりを探しにいくことになった。

メンバーは、ネギ君、俺、夕映、一十百……だけだったはずなんだけど……

「なぜに本屋ちゃんがいるんだ?」

「ゆ、ゆえが歩いてるのが見えたから…」

「そうか。で、バカレッドは?」

そう言った瞬間に思いっきりハリセンで叩かれた。

「ちゃんと名前で呼びなさいよ! ネギが歩いてるのが見えたから来ただけよ」

「なるほど。まあ、こういうのは人数が多いほうがいいからな」

でも、ドラゴンがいるんだよね〜。

どうしたものか……。

そんなことを考えているうちに図書館島についてしまった。

そういえば来るの初めてだな。

「ここが図書館島か……初めて見たけどすごいな」

「その…クロロさんがもしよかったら……今度、図書館探検部に来てみるといいです。もう少し別のところを案内できるですよ」

「うん? そんな部活があるのか…。よし、今度顔を出すことにするよ」

確かにここに一人で来るのは結構危険だからな…。

図書館探検部の人の力を借りて探検してみようかな。

(ゆ、ゆえ度胸あるんだね…)

(ノドカもちゃんと誘いたい相手にはしっかり言わないとダメですよ)

なにやら夕映と本屋ちゃんがそっと何か話してたみたいだけど……、う〜ん聞こえなかった。

「十百君もネギの父親に興味があるの?」

「ふぇ? そうではないんですけど……。もしかしたらエヴァさんの呪いをもう少し軽減できる方法が見つかるかなぁ〜と思って」

「主思いなのね。エヴァちゃんもいい執事を持ったわね」

「えへへ…」


結構下のほうに降りてきたな。

周りには滝とかがあって、正直言って本を保管する場所には適さないと思う。

「ここに結界が張ってあります」

「通れそうかいネギ君?」

「ちょっと待ってください」

ネギ君が杖を振っている、どうやら結界を上手く解いているらしい。

俺には全くわからん。

「ネギ先生、右側の魔法陣の上部とその隣の魔法陣を解除すれば解けますよ」

「は、はい!」

一十百の目を見てみると青色の光が宿っていた。

まだスクナの力が残ってるみたいで、魔法陣とかが見えるようだ。

「十百君って魔法使えないのにいろいろ詳しいわね」

「一十百は部活で魔法の勉強をしているらしいぞ…」

「……なに部に入ってんの?」

「さあ?」

とにかく結界が解けたらしく先に進めるようになった。

地図によるとこの先に手がかりがあるらしい。

手がかりってアルビレオだよな……。

「クロロさん、少し気になるのですけれど」

「どうした夕映?」

「この“DANGER”とかかれた物が気になって…」

「犬…いや、何だこれ?」

ドラゴンとは言えないから、はぐらかしておくか。

「どうしたの?」

「アスナさん、これ何に見えますか?」

「なにこれ? らくがき? ダンガーって何?」

「……おいバカレッド、デンジャーって読むんだぞソレ。ついでに危ないって意味だからな」

「え? そ、そうなの? あ、あはは……」

「ネギ君、この探検が終わったらしっかりアスナに英語を教えておくんだぞ」

「あ、はい」

はぁ……。

この前の勉強会では結構頑張ってたのに、所詮はバカレッドだったか。


「あ……」

「どうしま……」

先を歩いていたネギ君と一十百の声が途中で止まった。

何があったか見てみると…

「グルルル……」

ドラゴンがこっちを見ていました。

そして、なぜだか舌なめずりをしてる。

あれっ?

これってまずいんじゃ…

「……ドラゴンですか。いえいえ、まさかこんな巨体がここに存在するというのが既に可笑しいのです。まず食料などのことを考えると…」

「夕映、ちょ、フリーズしないで!!」

「こういうのは絵本には…」

「本屋ちゃんも戻ってきて〜!!」

おうぁ、まさか原作どおり夕映と本屋ちゃんがフリーズするとは…。

本屋ちゃんはともかく夕映なら大丈夫だと思ったんだが、ダメだったか。

「むむっ、これはドラゴン科・翼竜目・ワイバーン類に属するものですね。一般的なワイバーンとは違った感じで、ブレスを吐くことからガルドワイバーンと呼ばれる種族ですよ」

「一十百、今そんな豆知識いらないから!!」

どこで仕入れたか分からない本を読みながら一十百がのんびりと解説をしていた。

「ネギ君、撤退するぞ! さすがにドラゴンには勝てん!」

「は、はい」

「あれ? 撤退するんですか? ワイバーン種はそこまで強くないんじゃ…」

「無理だろ! どう見たって無理だって!!」

もしかしたら勝てるかも、と思っていたが……実際に直接対峙してみると絶対に無理だと分かった。

「でも背を見せて逃げるのは危ないですよ。ブレスが…」

一十百がそういった瞬間に、ワイバーンが大きく息を吸い込んだのが見えた。

「まずい! ブレスがくる!!」

「この位置からじゃ、僕は避けられてもアスナさんとネギ君が避け切れません!」

そういって一十百がポケットからペットボトルを一つ取り出した。

いったい何を…

「三人とも出番だよ! 力を貸して!!」

ペットボトルのふたを開けると水がうねりながら一十百の前に流れ出た。

その水は三つに別れ人の形を取り始めた。

「出番みたいダナ」

「相手は…ドラゴンですカ」

「…勝てないと思ウ」

どうやらスライム三人衆をペットボトルに入れて持ち歩いていたみたいだ。

でも、さすがに力不足だろ。

てか、ブレスすらとめられないと思うが…

「三人ともこの前練習したやつ!」

「「「了解!!」」」

練習したやつ??

そういえば、別荘で何かやってたみたいだけど……。

いったい何をやっていたんだ?

尋ねようと一十百のほうを見たときには既に一十百の足元には大きめの魔法陣のような複雑な文様が描かれていた。

「い、いつの間に!!」

広角三角(ウォールティト・デルタ)! 間に合って!!」

一十百の掛け声と共にスライム三人衆が魔法陣の上に乗り、一十百の前にくの字を描くような感じで並んでいた。

「「「スラミル・アミメミル・プリムルム」」」

「ま、魔法!! それも、始動キーありのか!!」

いつの間にかスライム三人衆は始動キーを必要とするほどの魔法を使えるようになっていたらしい。

恐るべし…。

流るる水は(アキュアム・フレンテル) 壁となる(エセート・ミュルス) 厚き盾を(クラシュース・スクトゥエム) ここに導く(デュキシ・ボクス・ヒェム) 水門の盾(クライペウス・キャタラクタ)!!」

「えっ?」

魔法を唱えたのは…一十百だった。

唱え終わるのと同時にドラゴンがブレスを放った。

一十百がパチンと指を鳴らした瞬間に魔法陣の前に巨大な水の壁が作られた。

「い、一瞬でこれだけの水の壁を…」

ネギ君も唖然としている。

それ以上に俺が唖然としてると思う。

今まで一十百は魔法が使えなかったはず、魔力がないはずだ。

それが今、覆された。

「間に合った! あとは耐えてくれれば!!」

ドラゴンの放ったブレスは水の壁にぶつかると段々と威力が落ちていった。

水の壁も段々と小さくなっている。

これは、ギリギリか?

…いや、大丈夫そうだ!

ブレスが消えるのと、水の壁が消えるのとはほぼ同時だった。


「あ、あぶなかったぁ〜…」

「まだ気を抜くには早イゼ」

「あちらがまだ戦うみたいデス」

「…勝ち目は薄い、ドウスル?」

「……う〜ん、試してみようかな?」

「「「……アレをやるツモリ!!!」」」

「うん!」

なにやらいやな気配がする。

既にスライム三人衆が驚いてる時点で、マズイ。

「危険ダ!」

「危険デス!」

「…危険」

「でもそうしないと、皆さんが無事に帰れないじゃないですか」

そういって一十百は俺たちのほうを見てきた。

なんとなく、大丈夫ですよって言っている気がした。

う、う〜ん、一十百に守られるって……今までにない敗北感なんだが…。

三柱三角(トラムスエティル・デルタ)!!」

「仕方ネエナ」

「やれるだけやってみるデスネ」

「……ダメモト」

スライム三人衆が一十百を中心として正三角形状に並ぶ。

「「「スラミル・アミメミル・プリムルム」」」

荒れ狂う水の精(フレンス・アキュア・ニンフィア) うねり狂う海域(フリブンダ・アキュアス・イントゥメセクント) 汝は(トゥ・エ) 流れ荒れ留まらぬ者(アスペラ・フルエレ・クィノセム) 抗えぬ水撃を(アキュアメレース・アラガネス)! 海流神の激流(リヴァイァ・ド・ラグーン)!!」

一十百が両手を上にかざすと、そこに巨大な水の塊が現れた。

水の塊は巨大な海蛇のようになり、そして……

「できた!! コントロールはたぶん出来ないけど、これだけ近ければ当たるよね…たぶん」

なんか恐ろしいコメントが聞こえた気がするけど……。

一十百が腕を振り下ろすと巨大な海蛇が周りの石柱とかを飲み込みながらドラゴンに向かっていった。

「今のうちに逃げましょう!」

「「「了解」」」

「え? 逃げるのか?」

なんか、このままいけば勝てそうな感じがするんだけど…

「あの魔法……その、無差別攻撃型なんで……ここら辺一体が攻撃範囲なんです」

「…つまり、アレ戻ってくる可能性があると」

「……はい」

「………」

「………」

「大至急! 大至急撤退!!!」


俺たちがなんとか外に出たとき、とてつもない音が図書館島の奥のほうから響いてきた。



「じゃ、いろいろ説明してもらおうか……って」

一十百にいろいろ聞きたかったんだが、ぐったりしているのでスライムから聞くことにした。

夕映と本屋ちゃんはダウン。

ネギ君とアスナが今横にいる。

「分かる範囲でいいから教えてくれないか?」

「マア、いいか。さっきの魔法は…」

「私たちの力があって初めて使えるものデス」

「…協力魔法のようなモノ」

つまり一十百の力だけじゃ無理なんだな。

「でも、一十百には魔力がないはずだろ? なんで魔法を使えたんだ?」

「ソレハ、足元の魔法陣が関係しているラシイ」

「あのときの魔法陣か」

「一さんはあの魔法陣を一瞬で書き上げる練習をしていまシタ」

確かにいつの間にか出来上がってたもんな。

「でも、魔法陣を作るのにも魔力はいるはずなんじゃないんですか?」

ネギ君もあの魔法について知りたいらしく質問をし始めたな。

「…水晶に魔力を溜めて、鉛筆のようにした物をつかって描いたラシイ」

「そんなものできるのか?」

「デキルゼ。部活デ作ッタノヲ使ッタノカ」

チャチャゼロも話に入ってきたな。

ついでにエヴァを連れてきてくれればよかったのに…。

「つまり、一十百は魔法陣を書く訓練をして、魔法陣をかけるようになったってのは分かった。それで、なんで一十百が魔法を詠唱してるんだ?」

「何でも杖ラシイ」

「杖?」

「一さんは魔力がないので魔法陣で増幅された魔力も反発せずに使えるのデス」

「…ダカラ、一さんが魔法陣の中央で私たちの増幅した魔力を自分の身に宿し、ソレを魔法として使ってるミタイ」

「ええと、つまり簡単に説明すると……、スライム三人衆が魔力タンク、一十百が杖、魔法陣が魔力タンクと杖をつなぐ回路兼増幅装置、で杖である一十百が唱えることによって魔法が発動と言う訳か」

「タブン…そうだと思ウ」

……すごいこと考えるな、一十百も。

てか、危険じゃないのか?

「危険だな」

「エヴァ!」

いつの間にかエヴァも来ていた。

あれ?

今、心を読まれたか?

まあいいか。

「やっぱり危険なんだよな」

「ああ。まあ、一十のことだ、魔法陣に細工がしてあって負担や反発をギリギリまで軽減しているのだろう。だが、強い魔法を唱えれば…ああなる」

ぐったりしている一十を指差しながらそういった。

「もともと一十は魔力に対して耐性がない。それなのに自分自身にそれだけの魔力を注げばどうなるかは言わなくてもわかるだろう」

「……一歩間違えたら、死んでいたのか?」

「そこまではならないだろうが……、最悪、年単位で眠り続ける可能性もあった」

うぇ……マジですか。

一十百が気がついたら教えといてあげよう。

「しかし……自らを杖にか。クックック…」

「エ、エヴァ? 何を考えてるんだ?」

「今まで一十には実践訓練をさせてなかったが、これで口実ができたな」

「おいおいおい、一十百に何をさせるんだよ……」

エヴァが邪笑をうかべてる。

これも教えといてあげよう、うん。


「父さんの手がかりを得るには、あのドラゴンをどうにかしないといけないんでしょうか…」

ネギ君がかなり思いつめているようだ。

まあ、あのドラゴンを倒せなんて言われたらさすがに思いつめるか。

「ネギ君、確かにあのドラゴンを倒せばサウザンド・マスターの手がかりがあるかもしれない。でも、それには実力が必要だ」

「…ドラゴンを倒せるほどの実力…ですか」

「そうだ。だからこそ今以上にエヴァの訓練に力を入れるんだ。エヴァだってネギ君の成長を楽しみにしているんだ、師をガッカリさせてはダメだぞ」

「クロラジュさん…」

「それに、俺だってこのままやられっ放しという訳にもいかないからな。少なくともあのドラゴンに一泡吹かせてやりたいのさ」

勝てるかどうかはともかくとしてね。


ネギ君には言っていないが、正直言って魔力のない一十百に守ってもらったのが精神的に辛かったな。

戦えないはずの人を守ってやりたいはずなのに、そいつに守らせてしまったみたいな感じだ。

そのせいで一十百がそこでぐったりしている。

二度とこういうことがないようにしたいからな。

俺はグッと拳を握った。

「なんだかクロラジュさんが燃えてる…」

「珍しく真面目な顔をしてるわね」

「ほっとけ!」

俺の仮契約者、仮契約者候補たちを守ってやれるくらいの力がほしいからな。

多少の訓練なら耐えてみせる。

「ほう、多少の訓練なら耐えられるんだな?」

「あ、れ……エヴァ、いつの間に? てか、声に出ていたか?」

「クックック、練習した甲斐があったな。読心術」

……ナゼ、ソンナモノヲ練習シテルンデショウカ?

「キサマの発言は含みがあるようなものが多いからな、一十に訓練してもらった」

「そんなことまで出来るんですか!!」

「一十に不可能の文字は無い。常識の文字は消えた。理の文字は捨てられていた」

いや、確かにそうかもしれないけどさ……。

一十百が気を失ってるのをいいことに…。

「まだ完璧ではないが、キサマのような奴の読心は七割ほど出来るようになった」

いや、さすがに無理だろ。

まあ、エヴァのことだから読み違えるのが目に見え…

「ほう、読み違えるのが目に見えていると言いたいのか?」

「イエ、ソンナ訳あるはず無いじゃないですか。アハハハ…」

一十百め、なんてことをエヴァに教えているんだよ!!

「さてクロラージュ、ぼーや、何をしてきたかは知らないが敗走してきたようだな。訓練のやり直しだ! 覚悟するがいい!!」

「うぁぁあ!!」

「ひえぇぇ!!」



「エヴァさ〜ん、ヒドイですよ〜、う〜ん……」

「気を失ってるのにしっかりと反応してやがるナ」

「さすが一さんデスネ」

「…ある意味天才的」

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