小説『魔法先生ネギま ロマンのために』
作者:TomomonD()

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第四十六話 計画を進める者、手伝う者


Side クロラージュ

「どういうつもりだ?」

「そのままの意味のつもりヨ」

今、超と一対一で話している。

どうしてこうなったかというと……。

作業をして疲れたから間食用に超包子の肉まんを持ってくるといって超が教室から退出した。

すぐに戻ってきて、量が多いから手を借りたいということで俺を指名した。

で、今の状態に戻る。

「大方、俺の麻帆良祭での動きが気になるんだろ?」

「こちらの情報が筒抜けというのがよくないネ。少しくらいアドバンテージがあてもいいものダヨ」

「残念だったな。その計画は失敗する……はずだ」

「……結果は分からないようネ」

「そりゃわからんさ、未来のことは誰にもわからん。たとえ未来人でもね」

「ソウ…。未来はわからないネ、だからこそ協力を…」

「残念ながら俺には俺なりの考えがある。今回の計画には敵対させてもらおう」

どちらかというと、あの三時間先に飛ばす銃弾をかわしつつ敵を撃つようなことをやってみたいんだよ。

このままいけば、たぶんネギ君が勝つだろうし。

だからこそ、俺は俺なりに楽しみたいんだよな。

「まあそっちにもいろいろ秘策があるだろ? 田中さんとか三時間先にとばす銃弾とか…」

「……???」

あれ?

超が不思議そうな顔をしてる、なぜだ?

「田中サンのことは既にハカセと協力して準備できているネ。でも、その三時間先に飛ばす銃弾というのは何カナ?」

「ははぁ…、隠しておきたい気持ちもわかるが、俺には……」

「ほ、本当に知らないヨ! そんなものがあればもっと楽に計画が進められるヨ!」

あれ?

マジ……。

「カシオペアは?」

「念のために三つ……はっ!」

「なるほど、一つは実験用としてネギ君に渡すんだろ」

「そこまで……、もう勝ち目が無いヨ」

なんだか超がかなり落ち込んでしまった。

う、う〜む、あの銃弾があるからこそ超の計画は成功しかけるようなものなのにな。

「とにかく、俺は手伝えない。いっそ他のイレギュラーを説得してみたらどうだ?」

「転回サンはダメだったヨ……。クロがきっと協力しないと思うと言われてしまったネ」

「あらら、他のイレギュラーって…」

「人里と呼ばれている者にもコンタクトを取ったケド、興味が無いの一点張りだったネ…」

まあ人里はエヴァを越えるのに必死だからな。

ある意味魔法が暴露されても問題ないほうの人だからな。

「イレギュラーは全滅か……」

「? 彼はカウントしないのカ?」

「彼?」

「一十百ネ、彼も私の知っている未来にはいない人だったネ」

転生者ではなく影響者の方だな、たぶん。

「一十百は魔力、気が無いんだからカウントしても……ちょっと戦力外かなぁ。この頃、魔法陣を駆使して魔法を使ってたけど」

「ま、魔力無しで魔法を使えるのカ!!」

「スライムの魔力を借りて魔法を使ってるだけらしいよ。無から魔力を生み出してるわけじゃないさ」

「ソ、ソウカ……。でも、興味深くはあるネ。ためしに誘ってみるヨ」

「あはは、猫の手も借りたいほどピンチなのか?」

「借りられれば猫でも構わないヨ!!」

こりゃダメだ。

完全にテンパってる。

知的な超はどこに行ったんだか、はぁ。


「という訳で、ぜひ手伝って欲しいネ!」

「ふぇぇ? 何で僕?」

マジで、説得してるよ。

いいのか?

「エヴァ、いいのかアレ?」

「私はどちらでも構わん。一十手伝ってやるのはいいが、私の執事であることは忘れるなよ。仕事をサボるようなら、手伝わせん」

エヴァは自分のことをちゃんとやるなら手伝ってもいいってことか。

「う〜ん……」

「お願い出来ないカ?」

「…わかりました! お手伝いしましょう!」

「本当カ!!」

「はい! 以前からいろいろ助けていただいた事もありましたし、恩返しということで。それに…」

「それに?」

「頑張ってる女性を見捨てるわけにはいかないですから」

「!!っ」

うわぁ、紳士的発言が一十百から飛び出したよ。

「エヴァ、いいのか?」

「クックック、面白くなってきたな。一十手伝うからにはしっかりやれ。私の執事が腑抜けと思われぬようにな」

「ハイ!」

なんだか今回の麻帆良祭の最終日の敵が一人増えた。

まあ、一十百ならあまり脅威は……

「それと一十、ポチ以外なら超の計画に手伝わせてもいいぞ。ゼロとかさよとかは手伝ってくれるんじゃないのか?」

「あ、そうですね。いろいろ声をかけてみます!」

そういって一十百は走り去っていった。

「あ、アルェ? なんだか面倒なことになりそうだぞ…」

「クロラー、覚悟するがいいネ。私はやり遂げて見せるヨ! 彼と彼が連れてきてくれる協力者によって!」

そういって超も肉まんをいくつか持ちながら先に行ってしまった。

なんだか暗雲立ち込めてきたぞ……。

「エ、エヴァ……なんかヤヴァイ気がしてきた」

「クックック、相手が超だけなら楽だっただろうが、一十が加わったことによって少し…いやかなり常識はずれの敵になったな。油断をすれば、負けるだろうな」

「や、やっぱぁり…」


二日ぐらいして何の変化も見られなかった。

それでもなんだかいやな予感がしたので、超の研究室まで行ってみることにした。

まだ行っても平気だよな。

「心配になってきたようネ」

「そりゃ、なぁ。主に超お前さんの精神力が」

「十百サンの協力者に人間が一人もいなかったヨ……。どういうこと?」

「そんな事言われたってな……」

「まあそれはともかく、既にいろいろと試していることがあるネ」

「試していること?」

「これ以上は流石に言え…」

「超さん、この魔法陣ですけど、身体に負荷が大きすぎます。それに…あっ、クロラージュさん、こんにちは」

「なるほど。魔法の力が弱まった超に魔法陣のようなものを書いて魔法を擬似的に使わせる作戦か」

「タ、タイミングがわるかた…ネ」

くすくす、超の表情がころころ変わるのは見てて面白いな。

本来なら不敵な笑みを崩さないはずなのに。

「超さんの考えたこの科学式魔法陣は人体に使うにはちょっと危険すぎますよ。魔法を使えることは出来ますけど、ものすごい激痛に悩まされることになりますから」

「そ、それはわかってるネ! これは最後の手段ヨ!」

「わかっていません!」

おうゎ、珍しく一十百が語気を強めたな。

「超さん、計画は最後に超さんが見て、見届けて完成なんです。それまでは絶対に倒れたり、諦めたりしてはいけないんです。だからこそ、最後の手段も無事に使えるものにしないといけません」

「……そうだったヨ。見届けて、完成を見届けなくてはいけないネ!」

なんだか超の表情が緩まったな。

なんだかんだでやっぱり思うところがあったんだろうな。

一十百が敵なのは辛いが……これでよかったんだろう。

「クロラー、私は道を誤らないネ! 安心して挑んでくるとイイ!!」

「おう、まあ頑張れよ」

なんだか心配事が減った気がす……

「なるほど田中さんのビームをこうすれば…」

「猫に不可能はないのだよ」

「ゆっくり改良していってね!!!」

……ぁぁ、なしてこうなる。

「超、頼むから道、誤るなよ」

「わ、わかってるヨ」

まあ、たぶん大丈夫だろう。



Side 一十百

麻帆良祭まであと一週間です。

最終日に向けて次々と難題を片付けていっています。

まず、超さんの使おうとしていた科学式魔法陣の改良についてです。

もともとこの科学式魔法陣は普通の魔法陣よりも出力が低いんです。

それゆえに反発力が弱く激痛を伴うだけで魔法を使うことが出来るものなんです。

本来だったら、反発力が強すぎて……腕が吹き飛んでしまったりとか大変なことになりかねません。

そこで、開発中の魔法陣を上手く使い、なおかつ出力を上げ、反発力を減らす魔法陣を千作することにしたんです。

麻帆良祭のときに魔法が使えればいいと超さんが言っていたので、麻帆良祭限定の魔法陣を作成しました!

何でも世界樹の大発光があるらしくそのときに沢山の魔力が放出されるらしいんです。

それを利用する魔法陣です。

この魔法陣なら反発力は無しで、出力もかなりでます!

ただ、もともと魔法にかかわる人じゃないと使えないのが欠点です。

超さんはご先祖様に魔法使いがいるらしいので使えるはずです。

これで超さんの作戦が一歩進みました。


次に田中さん?って人の改良をしています。

本当はT-ANK-α3って言うらしいんですけど……。

一体だけ特別に改良してもいいと言われたんで、僕の知識をフル活用して改良してます。

これはハカセさんと協力して完成させることができました!

他の田中さんと区別するために名前をT-ANK-αIと呼ぶことにしました。

服装も白い騎士っぽいものに変えて、魔力を電撃に変換する剣を持たせました!

その名もタナカイさんです!

でも、少しだけ口が悪くて……、なぜかハカセさんの命令を上手く聞いてくれないらしいので僕がメンテナンスをしています。

「マッタク、アノダメ博士メ」

「そんな事言っちゃダメですよ、ハカセさんも大変なんですよ」

「十百ガイナケレバ私ハデキナカッタノダ! アノダメ博士ハ何モシテナイ」

「オヤ? 調子はどうアルか?」

「あ、超さん。バッチリですよ、タナカイさんもバッチリです!」

「ダメチャイナ、モウ少シ成長シテイレバ嫁候補ダッタノダガ、ヤハリダメダナ」

う〜ん、超さんにもこんな感じなんですよね。

ゼロさんとは上手くいったんですけど…。

「十百サン、コレ壊していいカ?」

「だ、ダメですよ〜」

「十百モワカッテイルヨウダナ。サスガ、ダメチャイナ」

「そ、そうじゃないですって〜」

「十百サン、やっぱり壊すアル。コレは壊さなくてはいけないアルよ!」

そういって超さんはスパナを持ち出してきちゃいました。

「超さん、私も手伝います!」

ハカセさんまで〜。

「覚悟するネ!」

「馬鹿にしたことを後悔してもらいます!」

「マッタク、ダメ。ダメ、ダメ、ダメー」

ブオンとタナカイさんの魔力電磁剣さんだ〜せ〜ば〜が起動した音がしました。

「タナカイさん! それは…」

「出力30%、ダメナヤツハ、ダメ!」

確かその剣って田中さんのビームを拡散させて放つようなものにしておいたはずなので身体に被害はなさそうですけど……。

「ううっ、この程度でやられると思わないで欲しいアルよ!」

「対近接戦用の武装をしている私が負けるはずは、無いです!」

「……あ、お二人とも無事でよかったです。身体には被害が無かったみたいですね、服はボロボロですけど」

「「えっ……?」」

「マッタク、ダメナ奴ハ脱ゲテモダメダナ」

「えっと、あの、下着が無事だったのは不幸中の幸いですね」

「「/////!!!!」」

お二人とも顔を真っ赤にして出て行っちゃいました。

このままだとタナカイさんがスクラップにされちゃいそうで……。

う〜ん……。


「と、十百サン、さっきのことは忘れて欲しいネ…」

「ま、まあ事故ですから」

「それよりも、例の銃弾の開発は出来そうカナ?」

「任せてください! プロトタイプをちゃんと作りました!」

これが今回僕に任せられた最重要項目、相手を三時間くらい先に飛ばす銃弾の製作。

何でもクロラージュさんが言っていたらしくって、もし使えれば計画が有利に進むらしいんです。

でも、時間跳躍なんてさすがに無理……と思ってたんですけど、超さんの持っていたカシオペアっていう時計型のタイムマシーンのようなものを応用して製作できたのが……

「コレです!」

形は普通の銃弾、ライフル弾くらいの大きさで黒塗りの銃弾です。

「効果は、しっかり三時間後に飛ばせたアルか?」

「もう少しです、3、2、1、はい!」

目の前にいきなり空き缶が現れます。

「おお! 本当に完成したのカ!! すごいアルよ!!」

「えへへ、擬似的に魔力を飽和させた空間で試しましたから、麻帆良祭でもバッチリ使えますよ」

「しかし、よく時間が足りたアルね。莫大な計算量を必要としなかたアルか?」

「エヴァさんに手伝ってもらいましたから。なんとか終わりました」

「?? エヴァンジェリンサンはそこまで頭がいいのカ?」

「そ、そうじゃないんですけど、別荘を借りたんです」

「??? よくわからないガ、ともかく完成したアルね!」

「はい。あとはハカセさんに頼んである量産機が完成すれば完璧です」

「………十百サン、ありがとう」

「ほぇっ! お礼を言うのはまだ早いですよ。この計画が成功してからです」

「そう、アルね。もうひと頑張りアル」

「はいっ!」



Side クロラージュ

超の計画がどのくらい進んでいるのかはよくわからないが、そちらばかり気にして入られなくなってきた。

何と言っても麻帆良祭の一日目から二日目にかけて行われる、まほら武道会の準備をしなければいけないからな。

もしも原作どおりなら呪文詠唱は出来ないんだよな。

「あれ? それって俺に有利じゃないか?」

「何の話だ?」

時間が無いので別荘で訓練していたらエヴァが来たようだな。

「いや、例えばだ…、今まで普通に魔法を使ってた奴と俺が戦ったとして、その戦い中は呪文の詠唱がなしってことになると、かなり有利だよな」

「何を言いたいのかさっぱりわからんが…、まあいきなり無詠唱のみで戦えということになれば、かなり貴様が有利になるだろうな」

だよなぁ。

となると、まほら武道会ではまあまあの記録が残せるんじゃないのか?

うむむ……。

よし、勝てる相手と勝てない相手を分類するか!

もしも原作どおりなら勝てないのは……、エヴァ、タカミチ、クウネル…てかアルビレオ、あとは刹那とブルー、龍宮くらいか?

ギリギリなのは、ネギ君と小太郎君とイエローくらいだろ、他は勝てるはず。

つまり、この勝てないメンツがトーナメント表の右側にいって、俺が左側なら決勝までいけるんじゃないのか!

これは、かなりのクジ運に左右されるな。

油断してるとネギ君とか小太郎君とかにも負けかねないな。

なんとかして実力の底上げをしないと……。

「ほう、随分と気合が入っているな。そこまでして一十に負けたくないか?」

「それもそうだが、別の目的があるからな」

「別の目的? また貴様の言うロマンとか言うやつか?」

「う〜ん、ちょっと違うな。まあとにかく実力者と戦うことになるんだよ」

「そうか」

なにやらエヴァが悩んでいるような表情をしているな。

なんだろうか?

俺の訓練のことか?

だいたいエヴァが悩んだ後の訓練は過酷を極めるからな……。

正直、逃げ出したい。

「エ、エヴァ…どうした?」

「いや、別荘の一角がな…すさまじいことになっていてな」

「??」


エヴァに案内された場所は別荘の個室のひとつだ。

「この部屋か? 中に何かいるのか?」

「まあ、見てみればわかる」

恐る恐る扉を開けると……。

部屋の中には…

「え? な、何だこれ?」

紙、紙、紙!

まさに紙の山が出来上がっていた。

部屋が紙の束で包まれているようなそんな状態だ。

それに、その何千…いやもう億枚くらいの紙にはびっしりと不思議な公式やら魔法陣やらが書かれている。

そして、一枚たりとも理解できない……。

「まあ、これを見るに一十なんだろうが、これほど力を入れた何かがあるんだろう。何か心当たりは無いか?」

「う〜ん、一十百の行動はまったく理解できないから……うん?」

そう思って机の上を見ると、黒い銃弾が一つ転がっていた。

おい、おいおい、ま、さか……。

「何だそれは? 一十が銃を使っているところなんて見たことも無いが」

「これは、まさか……」

「心当たりがあるんだな」

「ま、まあ。うん」

超は作れてないって、知らないっていっていた。

だから、きっと三日目の計画は楽に終わると思っていた。

それが今、一十百の手によって覆された。

間違いなくこれは強制次元跳躍弾……。

まさか、一十百が作り上げるなんて……。

「うん? 何だこのメモ」

銃弾の下においてあったメモを読んでみる。

「え〜となになに“強制次元跳躍弾(永久追放ver)、これに当たった場合はたぶん三千年とか三億年くらい先に飛ばされてしまうもの。帰ってこれないから、危ないので使わないようにしてください、一十百”……」

「…………」

「…………」

「…………」

「……一十百、一言いいか? 危ないなら作るなぁぁぁぁぁああああ!!!」



「あれ? 何か呼ばれたような気が……、気のせいですね」

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