小説『男女戦争』
作者:UMA.m()

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新が進んでいると、また女性兵士に出くわした。
ライフルを構え、咄嗟に撃つ。
次々に現れる女性軍にライフルを連射しなぎ払った。
すると、一人の兵士が加勢してきた。
Aチームだ。

なんとか女性兵士達を一掃出来た。
新がそのまま進もうとすると、「待て!」と引き止められた。先ほどのAチームの兵士だ。
「お前、Cチームだな。これを持て。」
そう言って手渡されたのは、爆弾。
「なんだ?」新は不安そうに尋ねる。
「これを女軍の戦車によじ登って取り付けるんだ。そのあとはこのリモコンで起爆すればいい。」
そう言ってリモコンも手渡された。
「ちょ、そんな事できる訳・・・・・」新が言いかけたが、
「Cチームの癖に案外生き残っているようだからなぁ。お前の腕を見込んで言ってるだけだ。フン。」男は言った。
何が見込んだだ。どうせここまで生き残った俺に腹を立てて嫌がらせをしてるだけだ。
「いいか、まずはあそこの戦車を破壊するんだ。サボるなよ。サボったら容赦なく撃つからな。」男はそう言ってライフルを向けてきた。
クソッ!極力危険な事はしたくなかったのに、いらん邪魔が入った。
新は男を睨みながら戦車の方に向かった。
男はこちらを見て笑っている。

数人の女を相手にしながら戦車にたどり着き、動く戦車に昇り始めた。
「クソッ!!これじゃあ周りからいい的だ!!」新は周りを見渡す。
案の定、こちらに気づいた女兵士がこちらに向き銃を構える。
新も戦車にしがみつきながら素早く銃を構え、すかさず発砲する。
見事倒す事が出来た。
早くこの戦車を破壊しないと、またいつ狙われるか分かったもんじゃない。
新は急いで戦車に昇り、爆弾を設置する。
またも数人の女兵士がこちらに気づく。
すかさず応戦。戦車の上からライフルを連射する。
バタバタ倒れる女達。
「よし、早くここから離れよう。」新は戦車から飛び降り、戦車から離れた。

「よし、ここまでくればいいだろう。」新はリモコンのスイッチを入れた。

ドーーーーーーーーーーン!!!!!

見事爆発。戦車が停止した。
「よしっ!!」新はガッツポーズをした。
リモコンを捨て、またも進軍する。

いい調子だ。
このまま早く終わってくれ。
もうこんな馬鹿げた事を終わらせてくれ!!
新は強く願いながら進んだ。

すると、またまた女兵士だ。
「クソッ!!今日はよく遭遇するな・・・・・。」
銃を構えた瞬間、新に衝撃が走った。体が動かない。
その隙をついて、女兵士が撃ってきた。
弾は新の左腕に命中。
しかし、痛みの声一つ上げず、新はその女兵士を凝視する。呆然と立ち尽くした。
「くっ、今度こそ・・・・・」
女兵士は再び銃口を向けた。





「・・・・・ハルカ・・・・・なのか・・・・・?」
新は全身を震わせ、聞いた。
その言葉を聞いて、女兵士も動きが止まった。
「なんで・・・・・私の名前を・・・・・も、もしかして・・・・・」
新の目から大量の涙がこぼれ始めた。
「ハルカ・・・・・ハルカ・・・・・」

なんと、目の前の彼女は、正しく、新の娘、「ハルカ」だったのだ。

「父さん・・・・・父さん!!!!!」
二人は3年ぶりに見る顔を懐かしみながら戦場のど真ん中で抱きついた。
ハルカの長く綺麗だった髪も今はバッサリ切られ、見る影もなかった。
しかし、新にはすぐ自分の娘だと分かった。これも家族ならではの特権なのだろう。
「父さん!!怖かった・・・・・怖かったよう・・・・・」
新に抱きつき泣きしゃぶる娘を見て、新は涙をこらえ、優しく優しく答えた。
「怖かったな。怖かったな。ごめんな、心配させたな。」新はハルカの頭を撫でた。
まさかこんな所で会うなんて、やっぱり、ハルカもこの戦争に駆り出されていたんだ。
ハルカからは聞きたい事が山ほどある。自分から言う事も山ほどある。
当時中1だった娘、あれが3年前だから、今は本当なら高1ぐらいだ。
そう思うと、戦争に駆り出されいる彼女を見て再び可哀想になり涙が込あげた。
「無事で良かった。無事で良かった。もう絶対離さないぞ。」
新はより強くハルカを抱きしめた。
「苦しいよ。父さん。」

数分抱きついたままハッと、我に返る。
ここは戦場のど真ん中。こんなとこで感動に浸っていて、いつ撃たれるか分からない。
近くの林に逃げ込み、草むらに身を隠した。

「本当に良かった。お前が無事で。母さんは?母さんは無事なのか?」
「母さんは・・・・・分かんない。男女決別令の後離れ離れになっちゃって・・・・・」
「そ、そうか・・・・・」
安江と離れ離れになって、一人で今まで頑張ってたのか・・・・・
ハルカ、見ない内にたくましくなって・・・・・

「兄ちゃんは?兄ちゃんは無事なの?」
「あぁ。あいつはまだ東京にいる。無事だよ。」
「良かった・・・・・。」
「それにしても雰囲気変わったなぁ。もうお前も高校一年生か。髪もバッサリ切っちゃったなぁ。」
「軍に入らされる時強制的に切られたの。」
ハルカはいつも鏡の前で髪をといで、何より髪の毛を大事にしていた。
そんな彼女の髪の毛をバッサリ切るなんて、やるせない気持ちになった。

二人は戦争の事を忘れ、話ふけった。
そこには戦争の緊迫感はなく、僅かに家族のほのぼのとした空気が漂っていた。

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