小説『魔法少女リリカルなのは〜心の剣と小さな奇跡〜』
作者:ディアズ・R()

しおりをはさむ/はずす ここまでで読み終える << 前のページへ 次のページへ >>

第十四話・艦長×制裁





なんか凄いメカメカしい、というのが最初の感想。
意外と汚い、というのが今の感想。

「もっと掃除しろよ」
「……忙しいんだ」
「なのは。あんまり触るなよ」
「わかったの!」
「……とりあえず、一緒に来てくれ。あと、君とそこの猫は変身魔法を解いたらどうだ?」
「それもそうだね」
「歩くのが面倒なので断ります」

ユーノが光ったと思ったら、気の弱そうな少年がいた。
そしてリニス、初めて会った時はできる女って感じだったのに、こんなになって……
とりあえずユーノに足払い。

「うわぁ!?い、いきなり何するの!?」
「いや、特に意味は無い」
「……まあ、いいけど」

俺の周りの奴らは適応が早いな。
いや、ユーノは諦めが早いのか?

「ユーノ君、男の子だったんだ……」

ユーノが、俺の後ろにいるなのはを見て青褪めた。
振り返ってみるも、ニコニコしているなのはだ。
首を傾げつつも、ユーノに向き直る。

「な、なのは?その、隠してたわけじゃないんだよ?だから―――」
「ユーノ君……あとで、OHANASIなの」
「……はい」
「あ〜もういいか?ならついて来てくれ」

クロノが歩き出したので、俺達もついて行く。
後ろからついて来る四人は、何で何も喋らないんだろうか?
なのはと喋りながら歩いていたら、一つの扉の前に着いた。
クロノが入ったので、それに続く。
入った部屋は……畳だった。

「なのは、火付けようか」
「火種が無いの」
「安心しろ、クレイモアなら持ってる」
「何で持ってるかは聞かないの」
「良い子だ」
「はいはい、二人ともやめようね〜」
「そんな危ない物を持つんじゃありません!」

俺がポケット(四次元ポケットではない)から取り出したクレイモア(普通のポケットには入らないし、入れたくない)を、ユーノが回収。
手際良く分解した。
こいつ、慣れてやがる!
そしてリニスはペシペシすんな。

「こんにちは。私は時空管理局提督で、この巡行艦アースラの艦長、リンディ・ハラオウンです」

部屋の中心付近に座っていた女性がそう言った。
初めて見る(・・・・・)女性だが、どこかで会った気がする。
覚えていないと言う事は、どうでもいい相手だったのかな?
なのはに任せよ。

「何かしら、今泣きたくなったわ」
「提督、相手の時間もあるので用件を」
「クロノまで冷たい……くすん」
「気持ちわ―――」
「んん!さて、貴方達を呼んだのは他でもないわ」

最後まで言えなかったか。
泣き真似をしていたリンディさんは、俺の言葉を最後まで聴く前に真面目な顔に戻った。
所で、何でお茶に砂糖入れてんだ?

「ロストロギア・ジュエルシードについてよ」
「詳しくない。リニスにパス」
「管理局嫌いです。なのはちゃんにパス」
「ユーノ君に頼まれたの。だからパス」
「皆酷い!」
「何やってんだか」
「はぅ〜」
「……水無月、か」
「チッ」

ユーノはMだから、こういう無茶振り大好きなはず。
なんだかんだ言いつつも、説明するし。

「えっと、ジュエルシードは僕達スクライア一族が発見して、管理局に渡しに行く途中に事故があって、この地球の日本、特に海鳴市にジュエルシードが落下してしまったんです。何とか僕だけで回収しようと思ったんですけど、ジュエルシードが現地生物に取り憑いて、僕だけでは回収が不可能になりました。そこでこちらの高町なのはに協力してもらって、何とか回収している状態です」
「そう、貴方の判断はとても素晴らしいわ」
「だが、同時に無謀でもある」
「その心は?」
「……危険だからだ」

クロノにメッサ睨まれた。
怖くはないが、少し真面目に聞こうと思う。
カレーパン食いたい。
いや、真面目に聞いてるよ?
真面目に聞きつつも、こんなことを考えてるだけなんだ。
誰にかわからない言い訳を頭の中で言っていたら、何時の間にか話が進んでいた。

「後のことは、私達管理局が何とかします」
「今更かよ」
「……ですので、高町さん。もうジュエルシードを探す必要はありません」
「後は自分達で何とかするってさ。そろそろ帰るぞ」
「は〜い。あれ?でも、このまま任せちゃうと、フェイトちゃんと会えない?」
「……貴方、私のこと嫌いでしょ?そうなんでしょ?」

涙目になりながら、俺を見上げるリンディさん。
見た目若いからいいけど、歳を考えろよ。

「まあ、いいわ。高町さんもいきなり言われて混乱してるだろうから、数日後にでもこれからどうするか聞かせてもらうわ」
「つまり、もう少し手伝ってくれってことか?分かり易過ぎだろ」
「……もう、いや」

本格的に泣き始めてしまった。
おい、この場で唯一大人。
泣くなよ。
頭を撫でて慰めてみた。

「あ、クロノ君とリンディさんって親子なの?」
「今更だな。親子であってる。アレを見てると、親子を辞めたくなるが……」

何故か縋り付かれた。
服に涙と鼻水が……

「私だって、私だってね、クロノよりも年下の女の子を、騙してまで協力させたくないのよ?でもね、今ここにいる最高戦力がクロノで、あの金髪の子とまともにやって、勝てるわけ無いじゃない?なら、互角に戦ってたあの子を頼るしかないでしょ?そうでしょ?そうと言ってよ、バー○ー……」
「俺はバー○ーじゃない。てか誰だ?でもまあ、間違ってはいないな。クロノ弱そうだし。てか弱かったし」
「……」
「クロノ君……ドンマイ!」
「諦めたらそこで試合終了だって、漫画に描いてあったよ!」
「全ては弱いのがいけないのです。強くなりなさい」

クロノが壁に手を付いて落ち込んでいる。
リンディさんの涙目、なかなかそそらおっと失礼、流してくれ。

「名前、教えてもらえる?」
「水無月夜空だ」
「そう……また高町さんと来てもらえるかしら?」
「ん〜なのは一人だと心配だし、多分来るんじゃないか?」

何故か嬉しそうなリンディさん。
飴と鞭を使って友好度が上がった感じだな。
上がったのが愛情でないことを祈る。

「あ、そうそう。貴方達はどうするのかしら?どうやら、魔法の事も管理局の事も知っているみたいだし、協力してもらえるかしら?」
「管理局に協力する義理はありません……と言うより、何時までくっ付いてるつもりですか?噛みますよ?」
「僕は、なのは次第かな」
「不干渉で」
「お、同じく」
「……なのは達次第だな」
「協力ね……ま、暇な時ならいいかな」
「分かったわ。発情期の雌猫でもあるまいし、邪魔よ」
「喧嘩売ってるんですね?いいですよ、買ってあげます。表出ろやクソビッチ」
「上等だわ。野良猫風情には、しっかりと上下関係を教えなきゃいけないようね」

何故かリンディとリニスが部屋から出て行った。
かなり殺気立ってたが、いいのか?
何の組織が知らんが、仮にも提督だろ?
犯罪者にならなきゃいいが。

「……最悪、今日のことは忘れてかまわない。それじゃあ、ここに来た時にいた場所に行こうか。それと、ジュエルシードは渡しておいて貰えるかな?」
「だが断る!」
「同じく!」
「……一応理由を聞いてもいいかな?」
「持ってくるの面倒」
「コレが無いとフェイトちゃんに会えないかもしれないから!」

そんな事を話していたら、リニスが帰ってきた。
服がボロボロで、実にエロい。
まあ、普通に美人だが中身が残念系になってきていることを考えると、ただのコスプレにしか見えない。

「仕留め損ないました……次は喉笛を噛み千切ってやります」

口元を三日月形に歪めながらそんな事を言うリニス。
誰だこいつ?

「そう言えば殴ってないの!」
「抉り込む様に捻りを加えるんだぞ」
「わかったの!」
「加減、無しか……」
「魔力を、集中……」

疲れ切った顔のクロノと向かい合う様に立つなのは。
なのはは、拳に魔力を集める。
特訓の成果か、徐々に魔力が集中する。
まあ、なのは自体がヘッポコだから死にはしないだろ。
死には、な。

「砕け散るの!!」

ドォォォォォンッ!!

「ゴホァ!?」

拳(捻り有り)を腹に喰らったクロノが吹き飛び、いろいろ壊してピクリとも動かなくなった。
ふむ、なのはでもコレだけ威力が出るのか。

「むぅ〜拳が光るほど集められないの」
「ホントの意味で抉る事になるから止めとけ」
「ハッ!これなの!帰ってレイジングハートとお話なの!」
【Yes master】

なんだろう、ここで止めないとヤバイ魔王が誕生する気がする。
まあ、いいか。
被害がないならなんでもいいし。

「なのは、明日はやての誕生日の事で話すから、しっかり空けとけよ」
「はやてちゃん誕生日なの!?」
「まだだから。何処でやるかとかを話すだけだからな?」

いろいろ壊したが、元からそんなに綺麗じゃなかったし、気にしない方がいいな。
帰るか。

-15-
<< 前のページへ 次のページへ >> ここまでで読み終える




魔法少女リリカルなのはtype (タイプ) 2012 AUTUMN 2012年 10月号 [雑誌]
新品 \0
中古 \1397
(参考価格:\820)