小説『魔法少女リリカルなのは〜心の剣と小さな奇跡〜』
作者:ディアズ・R()

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第一話・転生×出会い





転生して、五年ほど経った。
結局俺は、孤児だった。
まあ、前と違って拾われたけど。
水無月家に拾われた。
父親が朧(おぼろ)、母親が霞(かすみ)、妹が海璃(かいり)、弟が海斗(かいと)で、俺が夜空。
なぜ夜空なのかと言うと、夜に空から落ちてきたからだ。
俺からしたら、足を滑らせて、屋根から落ちた所を助けられた。
つまり、水無月家は命の恩人。
なぜ屋根にいたかは、気にしなければどうと言うことは無い。
それにしても、よく育てる気になったよな。
ちなみに、パン屋だ。
命の恩人達の仕事を手伝いたいが、如何せんまだ子供だから。

毎日走りこみをしている。
話が繋がってないが、気にしなければいい。
体力作りは大事だぞ。

そう言えば、転生してすぐの頃、変な異物感が身体にあった。
多分魔力というものだろう。
ゼロで良いと言ったんだが。
まあ、あるならあるで鍛えるんだがな。
こういう力は、一度カラにして回復すると増えるとどこかで聞いた。
最初はそうしていたんだが、如何せん効率が悪い。
全部出すのに二、三時間使った。
と言う訳で、今は別の鍛え方をしている。
全身に魔力を廻らせ、使っていない魔力は強引に圧迫して負荷をかける。
常に魔力を纏い続け、纏っている魔力を完全に体の一部として魔力を一切外に漏らさない。
多分、今の俺からは魔力を感じられないだろう。

とまあ、魔力の事はこれぐらいにして、今は走りこみ中だ。
現在、隣町の海鳴市に来ている。
遅くに帰っても、空から落ちてきたせいか大抵の事では驚かれないし、怒られない。
公園を横切って神社に向かっていると、怒鳴り声が聞こえた。

「みんなに私のきもちはわからないよ!!」

五人の少年少女の内、一人の少女が泣きながら走っていった。
ケンカかな?
まあ、ケンカするほど仲が良い。
雨降って地固まるってな。
子供の内はそんなもんだろ。

そのままランニングを続ける。
神社に着いたので、ポケットに入っている十円を賽銭箱に投げ、御参りしておいた。
帰ろうとしたら、狐と目が合った。
野生の狐に出会うなんて珍しい。

「どうでもいいか」

無視して帰ろうとした。
林の方から、誰かの泣き声が聞こえる。
前世の癖で、泣き声を聞くと慰めたくなる。
と言う訳で林に突撃。
林で泣いていたのは、さっきの少女の様だ。
転んだみたいで、膝から血が出ている。

「大丈夫か?」
「ひっく、ふぇ?」

むぅ……こういう子供を見ると、助けたくなる。
近くまで行き、背中を向ける。

「ほら、背負ってあげるよ」
「……いいの?」
「早くしないと帰るぞ?」
「い、今のるの!」

いそいそと、俺の背中に乗る少女。
ちゃんと乗ったのを確認して、歩き出す。

「あ、あの、おもくない?」
「ん〜普通だな」
「うぅ〜そこはおもくないって言うところなの!」

そんな決まりがあるのか!?
知らなかった。
て、そんなわけ無いだろ。

「あんまりうるさいと放置するぞ?」
「ごめんなさいなの」

少女を家まで送る事になった。
少女の名前は、高町なのはと言うそうだ。
どこかで聞いた気がするが、思い出せないな。
家に送るまで、少しだけ話を聞かされた。
聞いたんじゃない、聞かされたんだ。
父親が怪我をして意識不明で、兄は鬼気迫っていて、姉と母は忙しそうにしているらしい。
そんな中で、自分が必要なのかわからなくなったそうだ。

「それで、俺になんて言って欲しいんだ?」
「ふぇ?」
「お前は必要ない子じゃない、とでも言えばいいのか?馬鹿かお前は?」
「バカじゃないもん!」

高町が、俺の頭をポカポカ貧弱パンチで叩く。
痛くも痒くも無いな。
いくらなんでも、弱すぎだろ?

「自分の価値ぐらい、自分で決めろ。それでもダメなら、周りを頼れ。家族でも友達でも何でもいい。それができないなら、自分の価値なんて考えるな。考えるだけ時間の無駄だ」

静かに、俺の言葉を聞く高町。
説教臭くなってしまったが、とりあえず高町の家に着いた。
喫茶店と道場がある。
良い家住んでんな。

「ここなの」
「立てるか?」
「うん」

高町を降ろす。
さて、帰るか。

「あの!」
「ん?」
「また、会えるかな?」
「さぁな。まあ、運が良ければ会えるんじゃないのか?」
「……また会えたら、名前でよんでほしいの!」
「気が向いたらな」

手をヒラヒラし、喫茶店から離れる。
少し遅くなってしまったので、ダッシュして家に向かう。
午後七時になってしまったが、帰宅。
第一声が、「遅かったのね?ご飯もうすぐできるから待っててね〜」だ。
心配しないのかよ。
いくらなんでも、拙いだろ。
まあ、楽でいいけど。


◇◇◇◇◇


なのはのその後。
自分の気持ちを家族に言い、元の家族関係に戻れた。
だが、家に居てもボーっとすることが多くなった。

「……みなづき、よぞら」

そんななのはを見て、盛り上がる母娘二人。

「お母さんお母さん!水無月夜空って、男の子名前かな?」
「その可能性が高いわ!ぜひ会ってみたいわ〜」

そんな二人の会話を聞いて、なのはを見守る兄一人。

「なのはは、渡さんぞ……」


◇◇◇◇◇


ジャムパンとコッペパンとミルクパンを作ってみた。
パンのチョイスに、理由は無い。
アン○ンマンのパンでも作ろうかな。

「いらっしゃいませ〜」
「へいらっしゃい!」
「夜空、それはパン屋じゃないぞ?」

霞さん、俺、朧さんの順に喋った。
やっとパン作りの許可が出たので、少しテンションが上がってるんだよ。
ちなみに、今入ってきたお客さんは車椅子に乗った少女。
見た目は清楚な感じで、本性は活発と見た。
これでも、人を見る眼はあるんだよ。

「どれも美味しそうやな〜」
「おにぃちゃ」
「にいちゃ」
「ん?どうした?海璃、海斗?」
「あのおねぇちゃへん」
「しゃべりかたへん」
「ああいうのは聞かなかった事にして、普通に接してあげるのがいいんだよ?それが大人のマナーだ」
「わかたぁ!」
「きかなかったことにする!」

素直な二人の頭を撫でてあげると、嬉しそうにされるがままになる。
視線を感じて振り向くと、車椅子の少女が何とも言えない表情で見ていた。

「怒るべきなんか?それともツッコムべきなんか?」
「笑えばいいんじゃないかな?」
「笑えるか!」

結局ツッコムのか。
喋り方からいっても、関西人だな。
もう少しからかうか。

「パンをお求めでしょうか?」
「え?ま、まあそうやけどってパン屋に来てパン以外に何をかうんや!?」
「それはもちろん、ジャムとか……」
「あ、そういうのも売ってるんやったっけ?」
「漫才の相棒とか」
「んなもん買うか!」
「原点回帰でフランスパン」
「結局パンや!?」
「パン屋だけに」
「うっさいわ!」

なかなかに楽しいな。
喉が渇いたので、ビンの牛乳を飲む。
車椅子少女にも、全力で振って炭酸を抜いた後のビンのコーラを渡す。

「あ、ありがとな〜……………やってくれるやないか」
「唯の冗談だろ?ほれ、こっちが本物だ」

少しキレかけていたので、コーヒー牛乳と交換する。
まだ何か疑っているのか、なかなか飲もうとしない。

「別に何もないぞ?それとも金を盗られたいか?」
「やっぱり、タダで貰うのは……」
「じゃあ一万で」
「いただきます」

値段を言ったら、即答して飲み始めた。
海璃と海斗も飲みたそうにしていたので、フルーツ牛乳をあげる。
可愛らしい笑顔で飲み始めて、俺も笑顔になる。
ちなみに、このビン牛乳たちは自分で作った。
俺が子供に配っている。
パンを選んでる最中は、子供は暇だからな。

「意外と美味いやないか」
「とかけまして」
「え?」
「ととく、その心は?」
「え?え?」
「どちらも「あ」とは言わない」
「なんやねん!?」
「そんなのこっちが聞きたい!」
「逆ギレ!?」
「パンはこちらでよろしいでしょうか?」
「何時の間にか選ばれとる!?」
「俺の辞書に、選ぶまで待つと言う言葉はない」
「横暴や!」

何か言っているが、会計を無理やり済まさせる。
選んだパンは四つで、相手の言動、目線、性格から自己判断で選んだ。
一個ネタとして、ホットチリサンド(唐辛子入り)を入れておいた。
次来るか分からないが、どんな反応をするか楽しみだ。

「またのご来店、お待ちしておりま〜す」
「あんま来たくないわ〜」
「……チッ早く帰れ」
「今ボソッと帰れって言わんかったか!?」
「他のお客様のご迷惑になりますので、お早目のご帰宅をお願いいたします」
「丁寧に言っとるけど帰れって事やん!」
「愛してるぜ」
「唐突すぎるわ!」

何故か顔を赤くして帰って行った。
意外と面白い奴だったな。
名前聞いとけばよかったか。

「夜空君、楽しそうね〜」
「ああいう子が友達になってくれればいいんだがな」
「おにぃちゃ、えがお〜」
「わらってる〜」

どうやら、自分が考えている以上に楽しかった様だ。
今度会ったら名前聞いとくか。


◇◇◇◇◇


はやてのその後。
帰宅した八神はやては、早速パンを食べることにした。

「まったく、勝手に選ぶってどういうことや?ホントに……あ、美味いわ。なんや、良いの選んどるやん。ん?これ赤いけど、なんや?」

その日、八神家から絶叫が響いた。

-2-
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