小説『魔法少女リリカルなのは〜心の剣と小さな奇跡〜』
作者:ディアズ・R()

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第二話・散歩×実力





「う〜む。やっぱり狐だな」
「クゥ〜♪」

いつぞやの神社で出会った狐を、餌付けしている。
最初は警戒して近づいてこなかったが、今では膝の上だ。

「今日は良い天気だな」
「クオン」
「このまま眠りたいな」
「クゥ〜」
「そう言えば、お前の名前ってなんだ?」
「くおん」

ん?なんか発音が。

「今喋らなかったか?」
「ク、クゥ〜」

弱々しく否定の声を上げる狐。
気のせいか。
狐の頭を撫でてやり、パンの入った紙袋を渡す。

「いるかわかんないけど、お前のご主人様と一緒に食べな」
「クオン♪」
「じゃな」

神社から出た時に「ありがと」と聞こえた気がした。


◇◇◇◇◇


久遠のその後。
神社の巫女をしている神咲那美の元へ行き、パンの入った紙袋を差し出す久遠。

「あら?久遠、これどうしたの?」
「クゥ、もらった」
「そっか〜じゃあ、くれた人には御礼言わないとな〜」

久遠はパンをモグモグしている時に、あの男の子の名前を聞いていない事に気が付いた。
でも、喋ると嫌われるかもしれないから、悩む久遠であった。
那美に頼めば、簡単に解決できる悩みである事だと気付かずに。


◇◇◇◇◇


もうすぐ、学校に行かなくてはいけないらしい。
前世では大して楽しくなかったが、今回は楽しめるだろうか?
まあ、暇潰しにはなるか。
ところで、殺気立ってる車椅子の少女が目の前にいるんだが。
こいつ、誰だ?

「唇がヒリヒリして大変やったんやからな!」
「……一つ良いか?」
「なんや」
「誰だ?」
「……その喧嘩かったるわ」

車椅子で、俺の爪先を轢こうとしてくる。
轢かれる前に、踏んでやった。

「イッ!?」
「反省はしているが、後悔はしていない」
「お、おま!普通車椅子乗ってる相手の足を攻撃するかいな!?」
「俺は一般人だが、普通じゃない」
「くぅ〜覚えときぃ!!」

逃げる様に去っていく車椅子少女。
覚えとけと言われても、名前も知らないんだが。
何故か戻ってきた。

「パン、買いに来たんやった」
「そうか」

何とも言えない空気になってしまった。
俺の作ったパンを一個おまけしておいた。
ついでに、見た目は普通のタマゴサンドだが、本当は辛子とマスタードを挟んだだけの黄色いサンドも入れておいた。
食べる所を見れば、良いリアクションが見れそうだ。

「またな、車椅子」
「それ名前にすんのかいな!?はやてや!八神はやて!」
「夜神疾風だな」
「絶対違う漢字やろ!?今日は勘弁してやるわ!次は覚えとき!」
「さっきも言わなかったか?」
「うっさい!」

八神は、去っていった。
アイツには、久しぶりに会った気がするな。
よくよく考えると、今年はなかなかに濃厚な年だな。
明日は何をしようか。
魔法でも使える様になろうか。
うん、そうしよう。


◇◇◇◇◇


魔法の練習に良さそうな所を、アイスを食べながら探して無人の倉庫まで来た。
そしたら何故かリムジンが、襲撃されながらこちらに向かってきた。
とりあえず倉庫の中に隠れて、様子を伺ってみることにした。
ガリ○リ君、美味いわ。
襲撃者は、十六名。
銃器で武装している。
日本どうした?
それとも、海鳴市がヤバイのか?
リムジンの運転手であろう、執事の様な男性が頑張っている。
アイスを食べ終わり、棒を確認したらアタリだった。
元孤児として、唯で貰える物は、どんなことをしてでも貰う主義だ。
施し?哀れみ?結構結構。
もう一個アイスを食べに行こうとしたら、砕けた。
アタリの棒が。
どうやら、襲撃者の一人が撃った弾が、運悪く当たってしまったらしい。
アタリだけに。
無残な姿になったアタリの棒を見下ろしていたら、自分の中の何かが切れた。
自身の足を魔力で強化し、一瞬でアタリの棒を撃った男の前に立つ。
いきなり現れた俺に驚いたのか、その身体が硬直する。
待ってやる義理も無いので、そのまま両腕の骨をへし折る。

「ぎゃあぁぁぁぁぁ!?」
「黙れ」

喉を蹴り飛ばす。
当たった感触から、喉が潰れた様だ。
痛みから気絶した男を一旦放置して、他の奴等を見据える。

「この、ガキ!!殺せ!!」

襲撃者共が、銃を発砲しまくってくるが、全て避ける。
銃口の向き、目線、指の力の入れ方を見れば、何所を撃とうとしているのか、どのタイミングで弾が放たれるのかが分かり、魔力で強化された身体能力を持ってすれば、簡単に避けられる。
銃弾を避けながら、近くにいた男に向かう。

「なんで!?なんであたらな―――」

最後まで言わせずに、足を払い、上に投げ飛ばす。
全員の視線が、一時的に投げられた男に向けられる。
その隙を逃さず、殲滅にかかる。
腕の骨や足の骨が、折れていたり砕けていたりするかもしれないが、生きている。
殺すと、親に迷惑がかかるから。
何よりも、リムジンの人達に見られてるんだもの。
殺人現場を目撃されたら、ヤルしかないじゃない。

「クソ!クソ!クソがぁぁぁ!!」
「うるさい」

叫んでいた男の顔面を蹴り、上を向いた顔に踵落とし。
口と鼻から血が出て、靴に血が付いてしまった。
まあ、帰り道の公園で洗えば良いか。
全十六人を重症及び気絶させ、最初の男の財布から百円を奪い取る。

「さて、アイス買いに行くか」

もともと、それが目的だし。

「少年。少し待ってもらえないだろうか」

歩き出そうとしたら、呼び止められた。
リムジンから出てきた、ナイスガイ。
きっと金持ちだろう。
金持ちには悪人が多いから、あんまり関わりたくないな。
足長おじさん的な人なら、大歓迎だ。
ぜひ孤児院に寄付してくれ。

「助けて貰ったのだ、礼をさせて欲しい」

すいません。
アイス代を手に入れる為にやりました。
ホントすいません。
冷や汗が出てきやがった。
金を取ったところ、見てないよな?

「アンタ、さっき何か取ってなかった?」

リムジンから出てきた、金髪で勝気そうなお嬢様が言った。
余計な事を!!
しょうがないので、全力で逃げることにした。
何か聞こえた気がしたが、聞かなかったことにした。


◇◇◇◇◇


バニングス家の会話。

「いきなり走り出して、なんなのよ!」
「落ち着け、アリサ。それにしても、優秀な子だったな」
「えぇ、そうでございますね。それと、一瞬でしたが、あの男の財布から硬貨を一枚取っていました。あの男が何かしたのでしょう」
「あぁ、そっちは別に良い。出来れば、アリサの護衛をしてくれれば良かったのだが」
「ま、まあ、壁ぐらいにはなりそうね」
「アリサお嬢様も、お気に召したご様子ですね」
「また、会いたいものだ。鮫島、調べられるだけ調べておいてくれ。それと、代わりの車と警察もな」
「かしこまりました」
「顔もまあまあだし、戦ってる時とか冷たい感じがしたけど、か、かっこよかった、かも……」
「ふむ。どうせなら許婚にでもなってもらうか」

何故か、夜空玉の輿フラグが立った。


◇◇◇◇◇


霞さんと朧さんの結婚記念日が明日なので、プレゼントを買いに来た。
アルバイトという形でお小遣いを貰っているので、結構貯まっている。
なので、二万ほどするペアルックのネックレスを買った。
店員に二万出した時、凄い驚かれた。
まあ、子供っぽく「けっこんきねんびのぷれぜんとなの!おにいちゃん(存在しません)にあっちの(ソファなどの家具がある方を指差して言う)をかってくるから、こっちのをかっておけっていわれたの!」と言ったら、笑顔でプレゼント用に包装してくれた。
ちょろいな。
ウエストポーチに入れ、帰ろうとした。
紫髪の姉妹っぽいのが、ナンパされてる。
いや、傍から見れば唯のナンパに見えるが、男四人の動きに違和感がある。
まるで、何かを隠し持っている様な動きだ。
姉妹が、人気の無いビルとビルの間に連れ込まれた。
近くまで行き、聞き耳を立ててみる。

「なんなんですか貴方達は!」
「ククク、なぁに、唯のハンターだよ」
「っ!?すずか!逃げなさい!」
「お姉ちゃん!?」
「逃がすわけ無いじゃないか。貴様等の様な化け物は、皆殺しにしないと!!」

正直訳が分からないが、ヤバそうなので助けることにする。
男達はそれぞれ、ナイフ、鎖鎌、銃、液体の入った複数のビンを持っていた。

「それはダメでしょ」
「やらせん!!」

銃を持った奴の腕を力任せに引き千切り、騒がれる前に首筋に手刀を叩き込んで、気絶させる。
その行動をしてる間に、上から男性が落ちてきて、ビンを持った男の額を木刀で強打した。
木刀の振り方から見て、剣道ではなく剣術をやっている者だろう。
誰かは知らないが、敵は同じ様なので視線で合図する。
俺は壁を走って、鎖鎌を持っている方に向かう。

「化け物の使徒か!!」

訳の分からない事を叫んで攻撃してくるが、簡単に避けられる。
ちょっと弱すぎる気がするが、走った勢いのまま、男の額に膝蹴りを叩き込む。
気絶するように脳を揺らしたので、どうなったか見ずに振り向くと、ナイフを砕いて、木刀が頭を強打している所だった。
とりあえず、近づいてハイタッチ。

「君、若いのに随分やるじゃないか」
「いえいえ、アナタこそ」

お互いに褒め合いながら、展開に着いて行けずに、呆然としている姉妹の方へ行く。

「月村だったか。大丈夫か?」
「高町君?う、うん。大丈夫」

どうやら知り合いのようだ。
見た目的には、高校生のクラスメイトかな。
しかし、高町か……アイツ元気かな。

「とにかく、早くここから離れよう」
「そうだね。行くよすずか」
「うん」

高町さんが先に行き、月村姉妹がそれに続く。
俺も、後片付けをしてから追いかける。
あんな弱い奴らが、銃器などを持っていられるのは、何かしらの組織があるからだろう。
そして、組織には組織の裁き方がある。
前世の教訓だ。

「何をしていた?」

少し威圧しながら言ってくる高町さん。
殺したのかどうかを聞いているのだろう。

「事後処理です。殺してませんよ?」

殺されるでしょうけどね、と心の中で付け加える。
近くの喫茶店に入り、席に着く。
ふと、店内のそこら中から視線を感じる。
改めて今いるメンバーを観察する。
高町さんは、鍛えられた肉体を持ち、顔もイケメンといえる。
月村姉は、美人でスタイルもよく、雰囲気で何処かの令嬢の様に感じる。
月村妹は、美少女で可愛らしく、子供の筈なのに大人びて見える。
コレは注目されるわけだな。
本人は気付いていないが、艶のある黒髪で、のんびりとした雰囲気を出しているのに、何処か大人びている不思議な美少年である。

「さて、一応自己紹介をしておこう。その後は、何故襲われていたのか話してもらうぞ?」
「……聞いたら、助けたことを後悔するわよ?」
「後悔等しないさ。二人の命が守れたんだ。誇りこそすれ、後悔は無い」
「そう……わかった。話すわ」
「お姉ちゃん……」
「大丈夫よ、すずか」

話なげぇ。
明日の準備をしないといけないんだが。

「じゃあ、まずは自己紹介だ。俺は高町恭也だ」
「私は月村忍。こっちは妹の」
「月村すずかです」

あ、俺か。

「俺は、あ!」
「「「あ?」」」
「ヤッベ!?ケーキの準備してない!!」

サプライズだから買ってくるのじゃ間に合わないし、予約も入れてない。
作らないと!

「用事があるので、失礼します!!」
「「「えぇ!?」」」

材料も買わないと!
二人が寝た後、作らないと間に合わない!


◇◇◇◇◇


夜空が帰った後の三人。

「……帰ったな」
「……帰ったね」
「……帰っちゃった」

何とも言えない空気になっていた。

「あぁ〜真面目に話すのが、馬鹿らしくなってきたな」
「ふふ、そうだね」
「折角だ。家まで送るよ。またあんなのが来るかもしれないからな」
「じゃあ、お願いするね?」
「ありがとうございます」
「気にするな」

結局話はせずに、帰る三人。
月村家を見て、恭也が驚いたのは言うまでもない。

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