小説『魔法少女リリカルなのは〜心の剣と小さな奇跡〜』
作者:ディアズ・R()

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第十九話 日常×誕生





テスタロッサ一家救済から数日か数か月。
あれから俺は、寝ていた。
暇なんだよ。

「マスタ〜」
「夜空〜」
「おにぃちゃ!」
「にぃちゃ!」
「……んげ!?」

寝ていたら、急に体に何かが乗ってきた感覚がした。
目を開けると、シャイニング・ウィンドのエルウィンを小さい妖精化した見た目のジェシー(ジュエルシード)。
そして、猫版のリニスと海璃と海斗が俺の上に乗っていた。
ジェシーは、ジュエルシードの力でその見た目をしているようだ。
うちの家族は、妖精が居ても喜びこそするが恐れはしない。
ちなみに、ジェシーはこのままでも魔法オンリーでなのはとフェイトに圧勝できる。
俺は、飛べないから勝負にならない。
たかが摸擬戦でジェシーを使うのは、全力で止められているからまともな魔法戦はしたことがない。
とまあ、今はどうでもいいことだったな。

「なんだ?どうした?」
「もぅ、マスターったらわかってるくせに〜でも、そんなマスターも素敵♪」
「明日は、はやてちゃんの誕生日ですよ?誕生日プレゼント、パンを持っていく気ですか?」
「かいもの!」
「かいぉの!」
「あ〜パンじゃダメか……んじゃ、デパートでも行くか?」

という訳で、はやての誕生日プレゼントの為に沖縄まで来ました。
冗談だよ。
たかがはやての為に、なんでそんなとこまで行かなきゃいけないんだよ。
行くとしても、精々東京だろ。
東京バナナでも買って終わりだよ。
それか、京都で八つ橋でも買ってくるか。
まあ、適当にぬいぐるみでも買おうと思っている。
兎か、犬か……猫はないな。

「失礼な!」
「雌猫は黙っててもらえますかぁ〜?マスターの意見は絶対なんですぅ〜」
「……いい度胸です。魔法じゃ勝てませんが、肉弾戦なら勝てるということを証明してあげます!!」
「猫風情が、調子に乗るなですよ〜」
「「……死にさらせ!!」」

猫と妖精が取っ組み合いを始めたが、無視して海璃と海斗の手を取って家を出る。
霞さんと朧さんは、何故か新婚旅行と称して北海道に行ってしまった。
北海道に4泊5日の旅を俺が商店街で当ててしまったので、行ってしまったのだ。
プレシア一家が何故か隣に引っ越ししてきたので、安心して行っていまった。
余程の人外じゃなきゃ、家に侵入なんてできないけどな。
蛇足だが、プレシア一家はフランスパンとコッペパンをよく買っていく。
きっと、何かしらの思い入れがあるのだろう。

「海璃と海斗は、どんなプレゼントを買うんだ?」
「あのねあのね!おっきいの!」
「のいごろみ!」

ぬ、このままじゃ被ってしまうな。
どうしようか……もう、パンでいいか。
最高に美味いパン……昇天パンで。
い、嫌がらせとかじゃないから!
ホント!最近誕生日近いからってヘラヘラ笑ってるアイツの顔をどうこうしたいなんて……お、思ってないんだからね!!
……男がやっても気持ち悪いな。
リニスの五重プロテクトの掛かった隠しフォルダに入っていた如何わしいゲームに出ていた金髪ツインテールのツンデレという女の子は似合ってたんだが。
ちなみに、そのゲームの隣にもアから始まる米の国の極秘情報を守るファイヤーウォールの最奥に作成された隠しフォルダのショートカットがあり、そこには獣と人の交わりを濃厚に表現したゲームがあった。
きっと、リニスに好きな人ができたのだろう。
相手の安全でも祈ろう。
さて、変なこと考えてたらデパートについた。
霞さんと朧さんが、海璃と海斗の渡すプレゼントを予約していたようで、帰り際に引き取ることになっている。
俺が渡すのはパンだけど、何か別のものでも用意しておくか。
胃薬を手に取った。
……そっと戻した。

「あれすごい!」
「そごぉい!」
「ん?あぁ、あれか……もうあれでいいか」


◇◇◇◇◇


「ここを開けるんだ!はやて!!こんなことしても、誰も救われはしない!!」
「救われにゃい!!」
「しゅくわれにゃい!!」
「何の話しとるんじゃ!!」
「ぐはぁぁぁ!?お、俺をどうにかしても、第二第三の俺が……」
「どこの魔王や!!」
「グァァァァァ!!さて、ふざけるのはやめようか。明日だけど誕生日おめでとう」
「おめでとうございます」
「「おめでた〜」」
「年増〜」
「あんがとさん。海璃ちゃん、海斗君……それはちゃうで。ジェシーちゃん、叩き潰すで?」

海璃と海斗をはやてにおしつ、任せて家に侵にゅ、お邪魔する。
なのは、アリサ、すずかがすでにいた。
ホタルや姫は、明日来るそうだ。
ちなみに泊り予定。
ところで、リニス猫版が喋ったことに対して、なんで何もないんだろうか?
ジェシーは、妖精状態から人型になってるし。
……順応能力が高くなってる?
まあ、はやてのことはどうでもいいな。

「ニャー」
「わぁ〜リニスちゃんだ!」

数日前に家に押しかけてきたすずかとアリサに、リニス猫版を紹介して逃走したことがある。
「なのはが知らない男の子と歩いている!!」と言ってきたので、どうせクロノだろうと思い逃げた次第だ。
その次の日には、なのはがテスタロッサ一家とお茶をしているのを見られて押しかけられたので、なのはをシバキに行った。
デバイスが壊れようが、泣き喚こうがお構いなくジェシー起動でフルボッコにしてやった。
楽し……胸が張り裂ける思いだったよ。

「ッ!?」
「どうしたのなのは?」
「な、なんでもないの!ちょっと寒気がしただけなの!」

なのはのポケットにあるレイジングハートが、弱弱しく点滅しているのが見えたが、見なかったことにした。
時間は午後五時なので、夕食の準備でもしようと思う。
アリサとすずかの両親には、何故か即OKがでたらしい。
出遅れるなとかなんとか、忍さんと執事の鮫島さんがそう聞いたと言っていた。
なのはの男児二名は、如何にかしたいと言う桃子さんと忍さんに媚薬と何かを増強する薬の入ったジャムパンを渡して、その後どうなったのか知らない。
俺から渡したわけではない。
桃子さんと忍さんが、偶にはモニョモニョという相談をしてきたから用意しただけだ。
相談されてから数分で出したからと言って、最初から用意してあったなんて、そんなことはないのだ。
それはさておき、今日の晩御飯はチキンカレーとキーマカレーをナンで食べようと思う。
ナンはサクサクしてるのともっちりしてるのどっちがいいかな〜


◇◇◇◇◇


現在、23時45分。
寝たいな。

「折角のお泊りなんや、簡単には寝かさんで!」
「そうなの!もっと楽しむの!!」
「……眠い」
「そうだね。もうちょっとしたら寝たいかも」

パジャマにてリビングで布団を敷いて、紅茶を飲んでいる最中だ。
暇潰しにケーキを焼いたりしたので、寝れないのはそのせいでもある。
ちなみにパジャマは、なのはがピンク花柄、アリサがオレンジ水玉、すずかが紫蝶々柄、はやてが黒と白シンプルなパジャマだ。
男の俺は、灰色無地パジャマだ。
そしてなのは、元気な声を出しているが目が閉じてるぞ。
海璃と海斗はとうの昔に寝てる。
リニスとジェシーは、子供二人と一緒にいてもらってる。

「むぅ……やっぱり、小学生にこの時間はキツイわ……」
「もっと楽しむの!!もっと!……も……Zzz」
「私も寝るわ」
「ごめんね、はやてちゃん」

アリサとすずかはなのはを連れて、布団に入った。
残ったのは俺とはやて。
なので、はやてを寝(気絶)させることにした。

「何故手刀の構えを取るんや?無言で近づくんやない。や、やめ―――」
「ふむ、23時58分か……良い夢見ろよ、はやて」

はやてを布団に寝かせて、寝ようかと思ったが眠気が覚めてしまった。
なので、書斎的なはやての部屋で本でも読むことにした。
なにか良いパンのネタでも見つかるかな、と思ってな。
いつの間にか付いて来ていた玄さんを頭に乗せ、本を見に行く。
扉を開けた時、深夜零時ちょうどになった。
書斎に入ると一冊の鎖が巻かれた本が宙に浮かび、妖しい魔力を放ちながら黒く光っていた。

「玄さん、何かわかるか?」

玄さんは寝ていた。
どうしようか。
眼に魔力を集中すると、魔力がラインとして見える。
本を放置し、ラインを辿るとはやてと繋がっていた。
何故に?

「う〜ん……夜空のアホ〜うへへ〜女王様とお呼び〜」
「……」
「あいた!?」

はやての寝言を聞いて、無意識に蹴ってしまった。
俺は悪くない。
はやてが悪いんだ。

「……何が起きたんや?」
「オカルト好きか?」
「え?何が?」
「じゃあ、なんなんだろうな?」
「だから、何が?」

首を傾げているはやてを踏みつけていたら、先ほどの本がはやての前に現れた。
しかも光りだし上にドイツ語?を喋っている。
とりあえず、はやてを踏みながらなのは達を光から隠す立ち位置を取る。

「なんやなんや!?何がおこっとるんや!?」
「だまらっしゃい」
「ふぎゃ!?」

踏み心地の良いはやてをフミフミしながら、光を眺める。
光が治まると四人の人型がいた。
人の姿をしているが魔力を目に溜めていたので、その真実が眼に映っていた。
この四人は、人ではない。
魔力でその形を作ってる、そんな印象だ。

「我ら守護騎士ヴォルケンリッター」
「主が為に在り」
「全ての敵を打ち払い」
「主の望みを叶えましょう」
「え?何それ?中二病ですか?」
「痛い痛い痛いよ〜絆創膏渡したって。人一人包み込めるぐらい大きい奴」
「「「「……は?」」」」

ピンク、赤、金、白の四人の男女が痛々しいことを言いながら片膝をついていた。
はやてと一緒に馬鹿にしてやった。
後悔も反省もする気はない。

「……ハッ!?貴様!主から離れろ!!」
「主?……おぉ、はやてが中二病の仲間入りか」
「やめて!まだ小学生なんや!」
「この!」
「封鎖領域展開!!」
「お?」

ピンクが突っかかってきたと思ったら、金が何かを発動。
足元にいたはやてが消え、空間がズレたような感じがする。
眼に魔力を込めてみると結界の一種のようだが、初めて見るタイプだ。

「レヴァンティン!!」
「グラーフアイゼン!!」

ピンクと赤が剣とハンマーを、なのは達の様に召喚した。
こいつ等も魔法使いか?
だが、何か違う気がする。
とりあえず、何かをしようとしている白を潰しに向かうことにした。
足元から鎖が伸びてくるが、直感に従い動いて全てを避けきる。
それに驚愕したのか、白の動きが一瞬止まる。
その隙を逃さず、魔力で足を強化して一気に懐へ。
脳を揺らすように顎に掌底を当て、白を足場に天井に飛び上がる。
俺がいた場所を赤のハンマーが砕く。
天井に魔力で張り付いたが、ピンクが剣を鞭の様にして放ってきたので、避けて金の目の前に着地する。
何かをされる前に、鳩尾に叩き込むように魔力を込めた掌底を当て、壁まで吹き飛ばす。
魔力を流し込んで、魔力の安定つまり魔法を放つことをできなくさせたのだ。
一歩横にズレ、赤のハンマーを回避。
そのまま回し蹴りを腹に当て、ピンクの方へ蹴り飛ばす。
赤の影に隠れながら、ピンクへ向かう。
ピンクは赤を受け止めてしまい、喉元にパン切り包丁を突きつけられ硬直した。
どこに持っていたかは秘密である。
金が気絶でもしたのか、空間のズレが消えてピンクの下にはやてがいた。

「ぐほぉ!?」
「え?あ、主!?」
「一応言っておく、ザマァwww」

睡眠中三名、気絶中三名、慌てているの一名、悶えているの一名、笑っているの一名……それが、はやてのカオスな誕生日の始まりだった。
ちなみに、ジェシーとリニスは守護騎士達に気づいていたが、夜空任せでニコニコ中だった。

-20-
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