小説『魔法少女リリカルなのは〜心の剣と小さな奇跡〜』
作者:ディアズ・R()

しおりをはさむ/はずす ここまでで読み終える << 前のページへ 次のページへ >>

第二十話 設定×紹介





はやてをひとしきり笑った後、とりあえずピンクと一緒にはやてを介抱した。
介抱し始めた時は睨んでいたが、介抱し終わる頃には名前を教えてもらえる程度に信頼されたようだ。
ピンクはシグナムというそうだ。
ヴォルケンリッターの烈火の将で、剣の騎士らしい。
ヴォルケンリッターは、闇の書の主を守る守護騎士の総称らしい。
闇の書の主は、はやてのようだ。
ただ、魔力のラインが足に絡まっているのが不自然に見える。
どうなるかわからないが、様子を見るしかないと判断した。

「さて、どうするか」
「何をや?」
「何をだ?」

俺の呟きに、はやてとシグナムが揃って首を傾げる。
あまり時間はないので、簡単に説明する。
このままじゃ、なのは達に何を言われるかわからない。
隠れさせるにしても、今日一日は家の中で誕生会だろう。
姫やホタルなども来るはずである。
なので、このシグナム達四人の素性を偽らなくてはならないうえに、どうにかして家に留めなくてはならない。
戸籍もなければ、行くあてもないのだから。

「そう言えばそうやな」
「も、申し訳ありません!」
「気にせんでええよ〜」
「……それ、私のセリフちゃうか?てか声マネ上手くない!?」

何度も聞いてる声なら、真似出来なくてどうするよ?
これぐらいできないと、宴会で生きられないぞ!
冗談はさておき、適当な設定をでっちあげることにした。
白はザフィーラというそうで、犬になれるらしい。
ペット決定。
金髪はシャマルというそうだ。
適当に修道着でも着せてみようか。
赤いのはヴィータらしい。
遠い親戚の子でいいよな。
シグナムは、ヴィータの付きそいで。
全員、後数分したら起きると思うので、シグナムに説明を任せた。
ちなみに、敬称は面倒だから省くことにした。

「任せておけ!」
「ちょっと待ちいな!!そんな設定でいいわけあるか!!」
「シャマルのことか?安心しろ。那美さんが持ってる筈だから」
「そこちゃうわ!!微妙に気になる那美さん情報やけど、今はどうでもええんや!!なんでシスターが家にくんねん!!」
「……はやてが呪われてるから?」
「なんでやねん!?」

いいツッコミだ。
世界を狙えるぞ。
まあ、無理があるのはわかってる。
じゃあ、こうしよう。
家のパン屋に来た。
はやてと同じパンを食べた。
一緒に瀕死になった。
仲間意識が芽生えた。
誕生日が近いと聞いたシスターは、プレゼントを持ってはやての家に行くことに。

「完璧じゃね?」
「……それは、無理があるんじゃないのか?」
「いや、いけるかもしれん……」
「え?」
「だろ?」
「もう、時間が無いんや。それでいくで!」
「なら、リアリティーを出すためにこのパンを一緒に食べてもらおうか」

取り出したるは、リンディさんから貰った地球外の激辛調味料をふんだんに使った【ビックパン〜超新星爆発味〜】。
どこから出したかは、聞くなよな?
見た目は、ほんのり赤いメロンパンだ。

「大丈夫、カラクナイヨ?」
「……お、起きてか―――」
「う、私……」
「じゃあ、逝ってみよう!!」
「やめグムゥ!?」
「なんむぅ!?」

一つのパンを二つにして、はやてとシャマルの二人の口に突っ込んだ。
最初は抵抗していたが、徐々に力が抜けていく。
顔が赤を通り越して真っ青になっているが、死にはしないから大丈夫だ。
シグナムがオロオロしているが、そろそろ残りの二人が起きる頃だ。

「ん?」

はやてとシャマルが何かを訴えかけてくる。
だが、喋れない二人は視線だけで語る。
水をくれと。

「どうした?口で言ってくれないと、わからないよ」

ニマニマしながら、二人を見下ろす。
絶望を感じたような表情が、なんとも……

「もっと食べたい?しょうがないな〜」

全力で首を横に振っているが、見なかったことにしてもう一つ同じパンを取り出す。
這いながら俺から遠ざかろうとする二人の背中を踏みつけ、口に捻じ込む。
文章にしたら、微妙にエロく感じるのは俺だけだろうか?
だけど、実際にこの場面を見ると……拷問中にしか見えないな。
そんなことをしていたら、残りの二人が目を覚ましたようだ。

「うぅ……何が……」
「グゥ……顎が、外れてるようだ……」
「起きたか!時間が無い。主の為にも今は―――」
「ッ!?テメェ!!ぶっ潰してやる!!」
「―――何もするな」
「ハァ!?何言ってんだよシグナム!!」
「……理由は、ホントに主の為なのだな?」
「あぁ」
「なっ……クソ!」

ヴィータが親の仇でも見るように睨んでくるが、ザフィーラは俺を観察するように見てくる。
シグナムがどうするか視線で訴えかけてきたので、設定の説明をするように合図した。
小さく頷いて、ヴィータとザフィーラにこれからどうするかの説明を始める。
結構大きい声で騒いだのに、なのは達は起きる気配がない。
よく見ると、結界が張られていた。
ジェシー辺りだろう。
今はありがたい。
足元で悶える二人にコーラを渡す。
ここで豆知識。
辛めのカレーを食べた後に炭酸を口に含むと、口の中が凄いことになる。
試してみるといい。
それを踏まえたうえで、どんなモノを食べた後に炭酸を飲もうとしているか、その結果は……

「ッッッ!?ッ!?ッッ!?」
「……」

何度も体験したことのあるはやては何とかもっている様だが、今回が初めてのシャマルは一発で再度気絶。
元々限界だったのに、止めを刺した感じだ。
まあ、悲鳴が無いだけマシか。
そして、やっぱり文字にすると微妙にエロく感じるな。

「HAHAHAHAHA、大丈夫か♪」
「……パン屋とは、恐ろしいんだな」
「飲み物飲んだだけで、なんであんなになるんだよ……」
「……少し、鼻がヒリヒリするぞ」

説明が終わったようで、後ろから三人の声が聞こえた。
振り向いたら、ザフィーラが居なくなって犬がいた。
デカい、犬がいた。
てか、狼に見える。

「それは犬か?それとも狼か?」
「犬だな」
「犬だよ」
「おおか……犬だ」

とりあえず、このメンバーでは男の発言力は最低だというのがわかった。
シグナムがシャマルをザフィーラの上に乗せ、打ち合わせ通り四人とも外へ行く。
はやてのコレクション?の腕時計を渡して、午前10時頃に戻ってくることになっている。
そんなこんなで、四人が出て行ったのではやてを眠らす。
まだ、午前2時だぜ?
いや、もう二時間も経ってたのか?
俺も寝よ。


◇◇◇◇◇


いつもの癖で、午前5時に起きてしまった。
折角なので、久しぶりにジョギングでもしようと思う。
全員を起こさないように、静かにはやての家から出る。
服は着替えるのが面倒だったので、パジャマに上着を羽織っている。
流石に早朝だけあって肌寒い。
軽く走って、神社に到着。
草笛を鳴らすと、どこからともなく狐の久遠がやってきた。

「くぅ〜夜空久しぶり!」
「あぁ、久しぶり」

最近ずっとパン作ってたからな〜
地球外の調味料の豊富さに、嗤いながら新作パンを作ってたのは良い思い出だ。
とりあえず、久遠に油揚げパンを与える。
油揚げの食感と味を再現したパンという、シンプルなパンだ。
美味しそうに食べる久遠を見ていると、和むな〜
リニスとは違うな。
那美さんは出張中らしく、明日まで帰ってこないそうだ。
という訳で、久遠を連れて帰ることにした。


◇◇◇◇◇


久遠と夜空が戯れていた時のリニスとジェシー。

「狐と猫を比べるんじゃありません!!」
「どったの〜?」
「ハッ!?いえ、何でもありません。何か、見下されたような……」
「よかったね〜」
「良くないですよ!?」
「♪猫@人♪さん、合唱希望者ですよ〜」
「むむ……この方ですか。この方は音程が少し低過ぎるので、今回は拒否させていただきましょう。舞い踊る妖精天使さん、準備の方はどうです?」
「雑に舞い笑ながら踊る妖精世界の撃滅天使様⊂(≧Д≦)⊃……これが私のネームです。間違えるな発情期中の駄雌猫」
「長いんですよ、あなたの名前は……羽虫風情が喚くな」
「……」
「……」
「「合唱の録音終わったら、覚えとけよ?」」

ニコニコしながら、殺気をぶつけ合う二人は……ダブル歌姫として、動画サイトで人気になっていた。
ちなみに、二人ともご主人様やマスターという言葉を歌詞に混ぜるので、顔どころか名前も知られていない夜空は鬼畜認定されていたりする。
仲は悪いが、なんだかんだでつるむ二人?であった。


◇◇◇◇◇


午前7時はやて宅に帰宅。
はやてはまだ寝てる?ようだが、なのは、アリサ、すずかはすでに起きていた。
なので、朝食の準備を始める。
簡単にホットケーキで。

「簡単ではないと思うわ」
「だね〜」
「うにゃ〜」

久遠を頭に乗せながら、三人を見るとすずかとなのはが随分眠そうだ。
アリサは朝に強いのか、特に眠気を感じさせない。
眠そうな二人には顔を洗いに行かせ、アリサから朝食を食べてもらう。

「全員が揃ってからでいいわよ」
「冷めるぞ」
「別にいいわよ」
「冷めるんだぞ」
「……私の勝手でしょ」
「冷めちゃうんだぞ!?」
「……わかったわよ。ハチミツあるかしら?」
「ほい」

説得?してアリサに朝食を食わせる。
次のホットケーキを作っていく。
今日は?が多い気がするな。
まあいいか、はやての誕生日だし。

「そう言えば、夜空って好きな子とかいるの?」
「ん?いきなりどうしたんだアリサ?」
「気になったから聞いただけよ。勘違いするんじゃないわよ!!」
「いや、何を勘違いするんだ?にしても、好きな相手ね……特にいないな」
「そ、そう……」

なんでアリサは嬉しそうなんだ?
俺が彼女無しなのが、そんなに嬉しいのか?
別にいらないけどさ、人に言われると気になってくる。
彼女、ねぇ。

「彼女なんていつかできるさ」
「あっそ。ま、まあ、誰もいないようなら、私が―――」
「すっきりしたの!夜空君、朝ごはん頂戴!!」
「私も〜あれ?アリサちゃんどうしたの?」

何か言おうとしたアリサは、なのはとすずかに邪魔されて真っ赤になって震えながら俯いていた。
なんて言おうとしたんだ?
まあ、とりあえず朝食を準備するか。

「なのは、すずか……後でゆっくり話し合いましょうか」
「え?え?」
「ア、アリサちゃん?落ち着いて、ね?」
「落ち着けるかぁぁぁ!!」

騒がしい三人だな。
……いつも通りか。
さて、そろそろはやてでも起こすか。
はやてを椅子に座らせ、食事を目の前に置く。
すると……

「……ぅん?ふぁ〜ご飯……いただき、ます」

起きて食べ始めた。
ここにいる全員が食べ始めたので、リニス達も呼ぶ。
とんでもなく賑やかになった。

「モグモグ」海璃
「ムグムグ」海斗
「ハチミツとって欲しいの」なのは
「ジャムとってくれんか」はやて
「ほら」夜空

ハチミツをなのはに、イチゴジャムと書かれた赤いジャムをはやてに渡す。
当然の様に、イチゴジャムな訳はない。

「アンタ……鬼ね」アリサ
「夜空君はやっぱり夜空君だね」すずか
「にゃ〜」(おかわり)リニス
「くぅ〜」(おかわり)久遠
「お?メロンソーダ見っけ〜」ジェシー

悶えてるはやてを横目に、リニスと久遠にホットケーキを持ってく。
玄さんに食べさせながら、俺も食べる。
お、意外と美味くできてる。
初めてにしては上出来だな。
そろそろ午前10時だな。
アイツらが上手くできるか、楽しみだな〜


◇◇◇◇◇


呼び鈴が鳴る。
俺が出る。
ちょっと遊びたくなった。

「誰だ?」
「や、八神はやてさんのお宅でしょうか?私達は、親戚の……」
「ほう、ならば合言葉は?」
「え?」
「合言葉は?」
「えっと、合言葉?」
「合言葉だ」

ヒソヒソと会議し始める。

「……そんなのあったか?」
「いや、知らね」
「同じく」
「何も聞いてません……何も……」

シャマルっぽい声が、少し泣いてそうな雰囲気だ。
まあ、悶えてたからな。

「あ〜すまないが、合言葉なんて知らない」
「知ってるよ。だって無いもん」
「……水無月、夜空」

怒気を含んだ声で、威嚇して来る。
しょうがないので、鍵を開けて家に入れることに。

「……あまり、ふざけないでくれ」
「だが断る」
「お前なぁ……」
「まあ、落ち着け。朝食でも食べるといい」

イチゴジャムのサンドウィッチを三人と一匹の口に突っ込む。
無言で非難する四つの視線を無視して、はやて等の元へ戻る。
うまく誤魔化せるかな〜
ダメだったら、アレを食わせよう。

「ピンクの人がはやての二次元嫁のシグナム、赤の子がはやての親戚の子のヴィータ、金髪ははやてのパン友のシャマル、最後に犬。質問は認めない。文句があるなら、まずはこのパンを食え」
「問題無いの」
「問題無いわ」
「問題無いよ」
「……問題があってもいいんだぞ?ホントに良いのか?後で後悔しても知らないぞ?」
「「「no problem」」」
「Oh……」
「なんで英語なんや?」

そんなの俺が知るか。
折角用意したのにな〜
シャマルに食わせるか。
ニコニコしながらシャマルに近寄る。
引き攣った笑みのシャマルが後ずさる。
独特な歩法で死角を動き、シャマルの背後に立つ。
反射で振り向くシャマルの口に、【パンの命短し恋せよ御客】を突っ込む。
一口サイズなので、一瞬躊躇って食べ始めた。
何故か顔が赤くなるシャマル。
何故だ?

「……何入れたんや?」
「ロマネ・コンティ」
「「えぇぇぇ!?」」
「どこかで聞いたことある気がするの」
「私も、どっかで聞いた気がするわ」
「全員食べなさい。大丈夫。起きた時には、何も覚えてないから」

はやて宅にて、夜空以外全員酔い潰れた。
どうしてそうなったのか、どうやったのかは誰も知らない。
そんなこんなで、お昼になった。

-21-
<< 前のページへ 次のページへ >> ここまでで読み終える




魔法少女リリカルなのはViVid (6) (カドカワコミックスAエース)
新品 \588
中古 \1
(参考価格:\588)