小説『「悔いなき人生を」』
作者:ドリーム(ドリーム王国)

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 妻と離婚してから半年が過ぎた。30年も連れ添って来た仲だ。気にならないと言えば嘘である。
 ただ妻が別れると言い出すには余程の理由があったのだろう。人事みたいに言ってはいるが、その責任は
すべて自分にある事も知っている。
企業戦士とかなんかと都合のいい事を言っているが、俺は妻に対し裏切り行為を行っているのだ。
 いわゆる不倫という奴だ。そして妻にとって耐え難いことがある。それは今から17年前に遡る。
 その浮気相手に子供が出来たことだ。

 もちろん離婚騒動になったが、その相手は子供が5歳の時に病で亡くなってしまったのだ。
 俺は誓った、もう生涯浮気はしないと、だが残された問題がある。子供をどうするかと云うことだ。
 まさか自分の家に引き取る事も出来ない。結局はその女性の親が引き取ることになった。
 そりゃあ大変だった。相手の親からはどう責任を取るのかと責め立てられた
 だがその彼女は死を覚悟していたらしく両親と俺宛に遺言が残されてあった。

 『お父さんお母さん、私の身勝手を許してください。不倫であったけど私は後悔していません。洋輔さんと
出会い子供が生まれた事は何より幸せでした。私に愛する事と愛される事を教えてくれた洋輔さんを決して
攻めないで下さい。私達の大事な大事な大輔の父は洋輔さんなのですから…………』
 そのような事が延々と書かれてあったそうだ。
 私は養育費を支払い、高校を卒業したら後の判断は大輔に委ねる事とし双方で取り決めた。

 相手の親も渋々ながら承諾してくれたが最初は一切、大輔とは接触しないで欲しいと言った。
 彼女の遺言が効いた。もし親子関係を絶たれら彼女がどんなに悲しむか、それが理由だった。
 俺は時折だが親の責任を努めた。遊園地にも数度連れて行き、時々プレゼントをし父親の真似事をした。
 俺は家族を一度は裏切ったが、その後は妻と家族一筋に生きてきた。
 今の妻との間に二人の子供がいる。大輔よりも10歳以上、年上の子供がいる。
 ただ当時は二人とも小学生で、そんな事情を理解出来なかったかも知れない。

 俺は物事が理解できる中学生になった頃、二人の子供に過ちを説明して詫びた。
 嫌だと言っても中学生の二人は納得するしかなかっただろう。
 俺は長い時間を掛けて二人に非を詫び、今では理解の下に親子関係を保っている。
 しかし妻には長年に渡って溜まったうっぷんを爆発させたのだろう。
 だから俺は出て行った妻を黙って見守るしかなかったのだ。

つづく

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