小説『「悔いなき人生を」』
作者:ドリーム(ドリーム王国)

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「悔いなき人生を」?

 病院から帰り、幸造に息子が結婚するらしく忙しくなりそうなので予定を変更して東京に帰ると伝えた。
 幸造はおめでとうと言ってくれた。まだ半年近くもあるしもう少し泊まって行けと引き止めたが、しかしいつまでも
長居する訳にも行かない。息子の孝之が近い内に彼女に会ってくれと言ってる。
 やはり東京に戻らなければならない。娘の香織とも話し合い孝之の婚約を祝ってやらないと思っている。
 寂しがる幸造と翌日の朝、互いの肩を抱き合い次の再会を楽しみに八戸を後にした。
 たった一週間たらずの旅だったが、一ヶ月分にも相当する楽しさを味わえた事が嬉しかった。

 東京に帰ったが、窓が見えるスカイツリーの高さは変わっていなかった。しかし素晴らしい眺めだ。
 二週間後、孝之から電話が入った。明後日、婚約者を連れて行くとの事だった。
 ボロアパートでは孝之にも婚約者にも申し訳ない。錦糸町にあるホテルのレストランを予約した。
 久し振りに俺は背広を来た。背広ほ着るとサラリーマン時代を思い出す。
 それと同時に気持ちまでシャッキと締まる思いがする。
 アパートに来た香織と一緒にレストランに向かった。

 「ねぇ、お父さん。お兄ちゃんのお嫁さんになる人どんな人かなぁ。ドキドキするわ」
 「そうだなぁ、お前の義理の姉さんになる人だもんなぁ」
 「そうかぁ私に姉さんが出来るんだわ。今度はワクワクして来たわ」
 屈託のない娘の喜ぶ顔が可愛いかった。久し振りに子供達との再会……しかし家族が一人足りない。
 ふっとそんな事が過ぎったが、香織に悟られまい空を見上げた。
 真っ青な空の色が眩しいくらいだ。こんな青空の下で披露宴が出来たらいいのと。

 最近の結婚式は洋風が好まれるらしく。昔と違い結婚式も随分と様変わりしたようだ。
 俺達世代の頃は神殿で行われた。今は結婚式場にある教会で式を挙げるか、キリスト教会で行なう方が多く
なった。教会から出ると周りに出席者が花びらを巻いて祝福してくれる。青空の下で披露宴だ。
 芝生の覆われた中庭で披露宴よりパーティ形式なのか? まさに青空の下での結婚披露宴だ。
 「お父さん? どうしたの」
 「あっいや。青空を見ていたら、こんな空の下で結婚式が出来たらいいなぁと思ってさ」
 「えー! 私とおんなじ事を考えてたの? やっぱり親子だね」
 娘は嬉しそうに笑った。やがてホテルに着いた。時計を見たら約束の5分前だった。
 やや緊張しながらも、ホテルのロビーでレスランの予約してある事を告げた。


つづく

-9-
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