小説『魔法少女リリカルなのは 悪魔も泣き出す転生者』
作者:トンボ()

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今回は少し長めです。
修正完了しました。
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3、初仕事と傷心と出会い

地球のある国の夜。黒い絵の具で塗りつぶしたように真っ暗な森の中で月の光を閻魔刀の刃が反射していた。白い髪と青い目を持つ男の手で振るわれた閻魔刀はすさまじいスピードと切れ味で黒いローブの様なものをまとった人ではない異形の存在、ヘル・プライドを切り裂く。
切り裂かれたヘル・プライドは砂になり赤い結晶レッドオーブを残して消滅した。

「歯ごたえがないな」

白い髪の男、ホークアイを起動し魔法を使って大人の姿になった克也はレッドオーブを吸収し、閻魔刀を鞘に納めながらそう言った。


ホークアイを初めて手にしたその日。克也は食事をしながら自らが住んでいる家の地下に特別なちょっとした事務所の様な部屋とトレーニングルームがあることを聞き、そこでのトレーニングを終えた後に便利屋を始めることを決めた。
いずれは他の次元世界からの依頼を受けられるようにするつもりだったがミネルバからこの地球にも一つ悪魔がこちらの世界に来るためのゲートのような役割をしているものがあると聞き、ひとまずこの地球で仕事をすることにした克也はミネルバにこう尋ねた。

「この世界にいくつ悪魔が来るためのゲートがあるかわかるんならどこにあるかもわかるんじゃないか?」

「いいえ。私は今自分がいる世界にゲートがあるのか、それとも無いのかくらいしかわからないわ。女神といっても万能じゃないのよ」

「そりゃあ、万能だったら俺が来る必要はないもんな」

「ええ。でも前に言ったように私たちはいろいろなサポートが出来るわ。言い忘れたけど私はアイテムも作れるの」

「へぇどうやって?」

「悪魔と倒すと現れるレッドオーブをあなたは無意識に吸収することが出来るんだけど。そのレッドオーブを使って錬金術でアイテムを作るわ」

聞かされていなかった能力を聞いた後に克也は便利屋をすることを三人に告げ、四人で便利屋をすることにした。
そして今回の依頼は自分たちに舞い込んできた依頼の中で初めての『当たり』だった。

「お疲れ様ですマスター。あとはあの石柱を破壊するだけです」

悪魔のいる魔界とこの世界をつなぐゲートの役割を果たしていた石柱に歩いて近づいていく。

「決め台詞でも言いますか?マスター」

「動かない石柱が相手だし、決め台詞は毎回言うものじゃないから今回は言わない」

そう言って克也は閻魔刀を抜刀し石柱に背を向け、後ろ手に納刀する。チンという音が響いた瞬間石柱は真っ二つになった。

『兄さん終わりましたか?』

克也がいる結界を維持しているイリスが念話で話しかけてきた。

『ああ。今終わった』

すでに念話を使えるようになっていた克也はそう返した。

『では、あとはこっちに来ている悪魔を倒すだけですね』

『ああ。だからもう少しの間、結界を張っていてくれ』

『わかりました』

そう言って二人が念話を終わらせ等とした瞬間、

「マスター。それなりの敵がいます」

とホークアイが言った。

「俺も気配を感じた」

克也が追う言った瞬間に遠くから黒いローブの様なものをかぶった異形が消えた後にまた現れるということを繰り返しながら向かってきた。
その異形は同じように黒いローブをまとっているヘル・プライドよりも大きく、その姿は人間がイメージする死神そのものだった。

『イリス悪い。もう少し時間がかかりそうだ』

『こっちもその悪魔の気配を感じました。ヘル・バンガードですか?』

『ああ。まずはこいつをかたずける』

『わかりました。気を付けて』

『ああ』

二人の念話が終わったときヘル・バンガードはすぐに戦闘を行える距離に近づいていた。

「ホークアイ。この近くにほかに悪魔はいるか?」

「私たちがいるこの結界の中にはまだ何体かいますが、この戦いを邪魔できる距離にはいません」

「わかった。今はバリアジャケットだから服の心配もしなくていいし俺たちの邪魔をする奴はいないとさ」

克也は目の前に迫ってきていたヘル・バンガードの横切りをバク宙のようなジャンプで後ろに跳ぶことで回避し、そう言った。Devil May Cry 4のネロの服をイメージして作られたバリアジャケットを纏った克也の動きはまさに黒い超人と呼ぶにふさわしいものだった。
それに応えるようにヘル・バンガードは雄叫びを上げる。

「さあ。ショウタイムってやつだ」

そう言い。克也は幻影剣をはなつ。幻影剣はヘル・バンガードの胴体を貫き、その隙に克也は高速でヘル・バンガードに近づき閻魔刀を鞘に収めたまま右から横に薙ぎ払う。
ヘル・バンガードは手に持っている鎌でガードするが衝撃を殺し切れずに吹き飛ぶ。

「Come on!(来いよ)」

そう言って挑発する克也に吹き飛ばされたヘル・バンガードはヘルゲートを使い瞬間移動をして克也の右側面からその手にもつ巨大な鎌を振り回しながら突進してくる。
しかし、克也はそれの常人の身体能力では到底不可能であろうジャンプでかわしヘル・バンガードの無防備な背中に幻影剣を三連続で叩き込む。

「すごいですね。マスター」

「ダンテと修行したんだ。これくらいできて当然さ。それにしてもやはりある程度の悪魔だと幻影剣だけではちょっと無理か?」

「無理ではないと思いますが時間がかかっちゃいそうですね。やはり魔力による攻撃だけでは効きづらいんでしょう」

克也はホークアイとそんな話をしながらヘル・バンガードの攻撃を横転や瞬間移動で回避する。そうしているとヘル・バンガードが大振りで鎌を振り上げた。

「Too easy!(チョロいな)」

そう言って克也はヘル・バンガードの鎌を切り、一歩前に出つつ閻魔刀を逆手に持ちヘル・バンガードに突き刺す。
ヘル・バンガードはヘル・プライド等よりも大量のレッドオーブを残し内部から破裂し消滅した。

「お疲れ様です。マスター」

「ありがとな。今の奴くらいのはまだいるか?」

「いいえ。あとは下級悪魔だけです」

「そうか。わかった」

しかし、このときはまだ克也もホークアイもそしてイリスも実戦の本当の恐ろしさには気が付かなかった。





「ごめんなさい。兄さん」

「申し訳ありません。マスター」

仕事を終え、家に帰ってそうそうにイリスとホークアイに謝られた。理由はさっきの仕事だ。

「気にするなって言っているだろう。一番責任があるのは俺だ」

そう。ある意味失敗ともいえる結果になった一番責任は俺にある。

「でも、克也に助けてもらったのになんなのよそいつら」

「落ち着いて。ミネルバ」

向うでのことを家で留守番をしていた二人に言ったときからミネルバはずっとこの調子で、ガイアがなだめている。
しかし、体から怒りのオーラとでもいうべき黒いオーラが出ているところを見るとガイアも怒っているようだ。

「いいさ。気にするな」

「でも」

「俺が気にするなと言っているんだ。気にするな」

そうだ。彼女たちは気にしなくていい。なぜなら俺が言われたことは全部事実なのだから。

「ありがとう。俺の為に怒ってくれてるんだろ?」

ミネルバとガイアにそう言う。

「イリスもそんな泣きそうな顔をするな。俺は大丈夫だから」

「……でも」

「良いんだよ。気にするな。それと、敬語が外れているな。俺はそっちの方がいいからこれからもそうしてくれ」

三人の中でイリスだけはずっと敬語だったからな。

「そんなことより!!」

「ごめんミネルバ。ちょっと出かけてくる」

そう言って俺は逃げるようにリビングから玄関に向かう。

「……夕食までには戻ってきてね」

「ああ。わかってる」

ガイアの言葉にそう返して俺は当てもなくこの家がある街、海鳴市を散歩することにした。






克也くんが出て行った家では何とも言えない空気が流れていた。

「……ごめんなさい」

「謝らないで下さいイリスさん。悪いのは私です」

イリスとホークアイは再び自らを責め始める。

「悪いのはあなたたちじゃないでしょ」

「そうよ。あなたたちは悪くないわ」

ミネルバと私はそう言って声をかける。

「……でも、私は兄さんを支えようって言ったのに」

そう言って今にも泣きそうな顔をするイリス。

「過ぎたことは仕方ないわよ」

「ガイアの言う通りよ。時間を巻き戻して無かったことにすることなんて私たちにもできないんだからこれから気を付けるようにすればいいわ。だからホークアイも自分を責めない」

「……はい」

多少、落ち着きを取り戻したミネルバが言ったことで二人は口に出して自分を責めることを止めた。

「……じゃあ克也くんにもうこんな思いをさせないようにみんなで努力しましょう。それでいいわね?」

私のこの言葉でとりあえずこの話題はひとまず終了した。





「……はぁ」

俺はため息をつきながら一人この街を歩いていた。ため息の原因はわかっている。仕事の時に言われたあの言葉だ。


バケモノ


俺は弱いな。覚悟をしていたはずなのにこんなにショックを受けるなんて。俺と違い常に右腕が人のそれとは違うネロはもっと辛かっただろうに。
そう思いながら自分の両手を見る。

「化け物か。わかっているさ」

そう呟いた俺は自分が今、公園にいることに気が付いた。
公園に来るなんて何年振りだろうな。
そう思っていると一人の茶色の髪をツインテールにした少女がブランコに座り、泣きそうになっていた。
その子を見たとき俺はどうも放っておけなくなり、その子に声をかけることにした。

「どうかしたのか?」

「……」

少女は俺の存在に気が付かなかったのか驚いたような表情をして俺を見た。
だが何も喋ってくれなかった。

「俺と話したくないんなら別にいいが、無視するとはずいぶん無礼な奴だな」

「……言われたから」

「何?」

「お母さんに知らない人と話しちゃだめだって言われたから」

その母親がいないところでも言いつけを守っているなんてずいぶん真面目だな。
だが、それはいくらなんでも極端すぎると思うぞ。

「そうかい。だからって無視していいわけじゃないと思うぞ」

「……でも」

強情な奴だな。しかたがない。

「俺の名前は黒崎克也だ」

「え?」

「名前を知っているんだからもう知らない人じゃないだろ。お前の名前は?」

「……私は高町なのは」

これが俺とこの少女、高町なのはの出会いだった。

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やっと原作キャラを出せました。感想お待ちしております。

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