小説『魔法少女リリカルなのは 悪魔も泣き出す転生者』
作者:トンボ()

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4、少女とその家族との対話

「それで、高町はなんで泣きそうになっていたんだ?」

俺は目の前の少女、高町なのはにそう言う。夕方の公園で一人で泣きそうになっていたんだから友達か家族が問題だと思うんだが。

「……何のこと?私は泣きそうになってなんかないの」

高町は俺にそう言ってきた。涙があふれそうな眼をしていた顔に無理やり作ったような笑顔を浮かべて。その顔を見た俺は両手で高町の顔をはさみ、

「むぅぅ」

餅のように高町の頬を押す。そして、

「痛い、痛い」

今度は餅を引っ張るように高町の頬を摘み横に引っ張る。

「やめてよ黒崎くん」

高町が涙目でそう言ってきたので引っ張るのをやめて、手をはなす。

「うう……何をするの黒崎くん」

「別に、なんか嫌な笑顔だったからな」

「な、何を言ってるの?私は普通に笑っていただけだよ」

そう言ってまた笑顔を作る高町。
だが俺の言葉に動揺しているのかその笑顔は高町の本当の笑顔を知らない人間であったとしても解るくらいのぎこちない作り笑顔だった。

「そうか。だったら言わせてもらうが、お前人形みたいだな」

「ふぇええ!に、人形?」

おかしな声を上げながら高町はそう言った。よく見ると少し顔が赤くなっているようだ。確かに俺が今言った言葉は褒め言葉にも聞こえるから恥ずかしくなってしまうのも無理はない。
だが俺は決していい意味で言ったわけじゃない。

「ああ。だってどんなことがあっても笑顔なんて人形みたいだろ?」

「え?」

「夕方の公園で一人でブランコを漕いでいるんだ。誰がどうみたって何か悲しいことがあったはずなのに、何もなかったなんて言って笑顔でいるなんて人形みたいだ」

「いい加減にしてよ!私は普通だって言っているのにどうして私に関わってくるの?何も知らないのに偉そうに言わないで」

高町は自分の内に秘めていた感情が爆発したのであろう。泣きながらそう言ってきた。

「確かに俺は何も知らないさ。でも俺は何回もどうしたんだって聞いたぜ。それでも言わなかったのは高町だろ?」

「でも、私にはどうすればいいのかわからないの。お父さんが入院してからみんな大変そうにしているんだもん」

俺はそう言った高町の背中をさすりながら言った。

「我慢することは大事だが我慢しすぎることはよくない。だからたまにはこうやって自分の感情を表に出して誰かに相談したり、家族に甘えたりしな。そして、寂しいんならちゃんと家族にそう言いな」

そう言うと高町は俺に抱き着くようにして顔を埋めながら泣き続けた。俺は高町が泣き疲れて眠るまでずっとそうしていた。
高町を救えたような気がして自分自身の傷ついた気持ちも少し救われたような気がしたから。





「人形みたいだな」

偶然出会った黒髪で青い目をした同じくらいの歳の男の子黒崎克也くんは私に人形にみたいだと言ってきた。最初はほめてくれたのかなって思ってものすごく恥ずかしかった、けど違ったの。克也くんの話を聞くうちに私は思った。


あなたはなにをしっているの?
何も知らないくせに。


「いい加減にしてよ!私は普通だって言っているのにどうして私に関わってくるの?何も知らないのに偉そうに言わないで」

そうだ、私が笑っていればみんないい子だと言ってくれる。
だからもうそんなこと言わないでよ。そう思った私に克也くんは私が何も言わなかったと言ってきた。
克也くんの言う通りだ。私は克也くんに何も言わなかった。

「でも、私にはどうすればいいのかわからないの。お父さんが入院してからみんな大変そうにしているんだもん」

そう言った私の背中を克也くんはさすってくれた。
そして、克也くんは私に我慢しすぎるのはよくないと言ってくれた。そんな克也くんの声を聞きながら私は泣き疲れて眠ってしまうまで克也くんにしがみついて泣き続けた。





「眠っちまったか。しょうがないな」

さっきまでしがみついて泣いていた高町を見てそう言った。さすがにこの公園に置き去りにするわけにはいかないので高町をおぶって高町の家を探すことにした。
しばらくして高町の実家が翠屋という喫茶店だということがわかり、翠屋が何処にあるかを尋ねたときに言われた、送ろうか?という誘いを迷惑をかけたくなかったので断りそこに向かった。
途中で一度家に帰って家にいるミネルバに聞くのが一番早かったのではないかと思ったが、ミネルバが知っているとも限らないし、見つかったので気にしないことにした。そうしていると翠屋が見つかったが辺りはすでに薄暗くなっているので高町の家族が心配しているかもしれない。

「すいませーん」

「いらっしゃいませ。申し訳ありませんが本日は……」

そう言って翠屋のドアを開けた俺に大学生くらいの女の人が声をかけてきた。高町と同じ茶髪をロングヘアーにした女性は高町が成長した姿という印象だったのでおそらく高町の姉だろう。

「ごめんなさい客じゃありません。この子を届けに来ました」

「えっ!なのは」

茶髪の女の人がそう言うと彼女の手伝いをしていた黒髪で三つ編みに結った眼鏡をかけた小学生くらいの少女があわてて駆け寄ってきた。

「公園でちょっと一緒に遊んでいたら眠っちゃって。こんなに遅くなってしまったのも俺がここを見つけるのを手間取ったせいなので怒らないで上げてください」

「そうなの。わざわざ届けてくれてありがとう」

そんなやり取りをしていると黒髪で中高生くらいの男が現れた。

「どうしたんだ?ってなのは!いったいどうした」

「静かにしてあげてください。高町は今寝ていますから」

「……なんだお前は」

高町を見てあわてて駆け寄ってきた男は俺にそう言ってきた。
何故か少し殺気のようなものを感じるが、俺が高町に何かしたと思っているのだろうか?

「やめなさい恭也。この子は寝ちゃったなのはをここまで届けてくれたのよ!そういえば自己紹介がまだだったわね。私はこの子たちの母親の桃子よ」

「私は美由紀。なのはのお姉ちゃんだよ」

「……なのはの兄の恭也だ。一応、礼は言っておく」

「……黒崎克也です」

桃子さんが三人の子持ちの母親だという事実に固まり、返事が遅れてしまった。

「じゃあ俺はこれで」

「ちょっと待って」

帰ろうとした俺に高町をテーブル席の椅子に寝かせた桃子さんが声をかけてきた。

「なんですか?」

「よかったら今日のお礼に一緒に夕食でもどう?」

「今日は家族が待っているので遠慮させてもらいます」

桃子さんとそんな話をしていると

「じゃあ母さん、俺は道場で稽古をするから先に帰るよ」

唐突に恭也さんがそう言って帰ろうとした。

「ちょっと恭ちゃんそんな調子じゃいつか体壊しちゃうよ」

「そうよ恭也。無理はだめよ」

桃子さんと美由紀さんはそう言って恭也さんを止めようとするが、

「うるさい!!ほっといてくれ!!」

恭也さんの大きな声が店内に響き店内は静まり返る。
自分自身が言ったことに恭也さんは一瞬驚いたような顔をしたあとに申し訳なさそうな顔をしながら絞り出すような声で言った。

「……ほっといてくれ。俺はもっと強くならなくちゃいけない。父さんに教えてもらったこの剣術で」

なるほどね。さっきからなんかピリピリしていると思ったらそう言うことか。

「とんだ茶番ですね」

俺の発言に店内の空気が凍りつく。
人の家庭の事情に首を突っ込むつもりはなかったがそれでもついそう言ってしまった。

「……今、なんて言った」

「とんだ茶番だと言ったんです。聞こえませんでしたか?」

今回はどうしても黙っていられなかった。

「貴様!」

「恭也、落ち着いて」

「君も早く謝って」

美由紀さんが俺にそう言ってくるが俺こう続けた。

「謝りませんよ。恭也さんが言っていることは滅茶苦茶なんですから」

「何だと!」

「だってそうでしょ。あなたは自分のことを気にかけてくれた家族に対して怒鳴ったんです。つまり自分で守りたいって言った大切な人を自分で傷つけたんですよ。なのに誰かを守れるようになりたいなんて、言っていることが滅茶苦茶じゃないですか」

「っそ、それは…」

俺の言うことに思うところがあったのか恭也さんは動揺しながらそう言った。

「言わないでおこうと思いましたがやっぱり言います。高町は言ってましたよ、みんな大変そうにしてどうすればいいかわからないって、最初は、ほんとは悲しいはずなのに無理に笑顔を作って何でもないって言っていましたけどね」

「そんな、なのはが……」

恭也さんは驚いたようでそう言った。桃子さんと美由紀さんも高町のことを気づけなかったのがショックみたいだ。

「誰かを守るために強くなることはいいですけど、その強さを得るために一番大切なものを傷つけることはしないでください。今のあなたのやり方じゃ強さと引き換えに一番大切なものを失ってしまいますよ」

俺の言葉に恭也さんは声が出ないようだ。

「……部外者の俺が偉そうに言いすぎましたね。じゃあ、俺はもう帰ります」

そう言って俺は出口に向かい歩き出す。

「……待ってくれ」

恭也さんは俺にそう言った。

「なんですか?」

「俺はなのはに何をしてやればいいんだ?教えてくれ」

「私たちからも頼むわ」

何だ、そんなことか。桃子さんも俺になんか頼む必要無いのに。

「そんなことは自分で考えてください」

「っく!」

「今日、高町にあったばかりの俺なんかよりもみなさんの方がいい答えを見つけられますよ。まぁ俺から言えることは一つだけです」

「それは?」

「これからは少しはあいつの話を聞いてあげてください。そうしなければ何もわからないでしょ?あとはみなさん次第ですよ。もっともだからと言ってくれぐれも高町を甘やかしすぎないで下さいよ」

そう言って俺は翠屋を出て行った。

「ありがとう」

翠屋を出て行こうとする俺に桃子さんがそんな言葉をかけてくれた。

「恭弥さん」

「……なんだ?」

「自分のことを大切にできない人に誰かを守るなんてできませんよ」

「ッ!!!」

そういって俺は翠屋を後にした。

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二次創作ではもはや定番ともいえるシスコン兄貴との対決ですがあえて避けました。
原作キャラの口調がおかしいようでしたら修正するのでご連絡ください。

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