小説『魔法先生ネギま! 【R−18】』
作者:上平 英(小説家になろう)

しおりをはさむ/はずす ここまでで読み終える << 前のページへ 次のページへ >>

【 第3話 中学生になりました 】






 木乃香に陰陽術を教え始めて2年が経った。

 最初はまったく魔力の扱いが出来ず、体内の魔力に振り回されて基本の魔力運用も出来なかった木乃香も、今では火、水、風、雷、光、闇の六属性も使いこなせるようになっていて、接近戦でも戦えるようにと柔術や合気道から、クラウスが生まれた星で最強の剣と称された王宮剣術と薙刀の扱いも教えていた。

 もともと人を傷つける事が嫌いな木乃香だが、生まれによって自分が知らない相手から狙われている事を理解し、万が一の時に自分の周りの大切な人たちに危害が及ばないように、覚悟を持ってクラウスから自衛の術を学んでいたのだ。

「このか、明日から中学生だな」

 ダオライマ魔法球に建った神殿の隅に設けられた石畳と石柱に囲まれた訓練場の中央で、和紙の呪札を媒介に魔力の使い方の練習をしていた。

「そうやね〜」

 火を連想させる文字と、水を連想させる文字をそれぞれ記した呪札を巫女装束の袖から二枚取り出し、呪札に魔力を流して野球ボールサイズの火球、水球を自分の前方に出現させて、ランダムに移動する訓練用に造られた【修練用木人くん1号、2号】に放ちながら応えた。

 火球は木人くん1号の胸に付けられた弓道の的を模した的の中心を示す、小さな赤い丸に当たり、的を焦がし、もう1つの水球は木人くん1号の反対側にいた木人くん2号の頭部に付けられた的の中心に命中し、後方へ吹き飛ばした。

「入学式には着いてきてくれるんやろ〜?」

 邪魔にならないように影の中で訓練の様子を観ているクラウスに尋ねながら木乃香は次々に現れる木人くん3号、4号、5号達に火球と水球を放ち、的の中央に当てていく。

「ああ、影の中で見ているよ」

 クラウスが呟くと木乃香は嬉しそうに笑みを浮かべた。

 木乃香の父親、近衛詠春は関西呪術協会の長を務めているため、東の魔術協会、つまり麻帆良学園でイベントごとには参加出来ず、入学以来、クラウスが学園のイベントごとに付き添っていたのだ。

 もはや木乃香の中でクラウスは師匠であり、友達であり、家族であり、一番身近にいて、一番大切な存在となっていた。

「うふふっ」

 ご機嫌の木乃香はさらに袖から風と雷の呪札を取り出して火と水の呪札に合わせて自分周り、四方の空間に貼り付け、火球と水球に加え、風球と雷球を出現させて次々と現れる木人軍団を駆逐してゆく。

 そして訓練の終わりにと、数十体木人くんが集合し、10メートルはあろうかという巨大木人くんに合体し、巨大な拳(木球)で木乃香を殴ろうと巨大な右腕を振りかぶってきた。

 ゴォォォォ!! っと風きり音が響かせ、人間が当たれば命を奪い、跡形もなく潰してしまうだろう威力を内包した拳が木乃香に迫るが、木乃香は冷静に四方に展開していた呪札を袖にしまい、【縛】と書かれた呪札を4枚取り出して、巨大木人くんの両手両足に投げた。

「式布! |縛(ばく)っ!」

 木乃香の呟きに応えるように、呪札から青白く太いローブが飛び出し、木乃香に迫っていた右腕に絡み付き、力を殺し、左腕と両足も動けないように縛り付けた。

「止めやでぇ〜!」

 木乃香は素早く袖から火の呪札を3枚取り出して空間に三角形になるように貼り付け、呪札の魔力に流し、同じ火属性の呪札を共鳴させて、叫ぶ。

「式布! 火炎、大火炎〜!!」

 木乃香の叫びと同時に3枚の呪札の中央から火炎放射器のような、それでいて火炎放射器の数十倍もある巨大で強力な炎の柱を放ち、巨大木人くんを炭に変えた。

 すでに訓練場には巨大木人くんの炭しか残っていなかったが、木乃香は戦闘態勢のまま周囲を警戒し、なにかを感じ取った木乃香は一瞬で背後を向いた。

 一見するとなにもない空間だが、木乃香はそこに隠れているモノに気づいていた。

 木乃香は左足を一歩前に踏み出し、左足を踏み出す際に発生した力を右腕に乗せ、真っ直ぐ前方に突き出し、|掌底(しょうてい)を放った。

 何もない空間に放たれ、空を切るかと思われた掌底は、ガッ! っという音と共に止まり、木乃香の正面、5メートルほど前方でドガガッ!! っと言う音と共に砂埃が宙に舞い、砂埃が舞った場所から体の正面に18と数字が書かれた木人くんが現れた。

「ふぅ〜……、他にはおらんようやね」

 木乃香は改めて周囲を確認してからゆっくりと息をはき、戦闘態勢を解いた。

 そこまでの動作を終えて、木乃香の影からクラウスが現れた。

「やっぱり、その姿もええな〜」

「そうか?」

 現れたクラウスに抱きつく木乃葉。

 現在のクラウスは体を変身させて木乃香と同じ13歳の姿になっていて、木乃香よりも10cmばかり背の高い、美しい容姿の少年だった。

「なんか同い年の男の子みたいでええんよ」

 クラウスはごろごろと猫のように擦りついてくる木乃香に苦笑を漏らしながら頭を撫でた。











 ダオライマ魔法球から出て翌日、麻帆良学園中等部の入学式が執り行なわれ、新しい校舎の教室へと向かった。

 木乃香は中学一年生の新しいクラスで、親友でルームメイト、ツインテールが特徴の|神楽坂 明日菜(かぐらざか あすな)と、同じく親友の触覚のようなアホ毛を生やしたパルこと、|早乙女 ハルナ(さおとめ はるな)と|宮崎 のどか(みやざき のどか)と同じクラスになった事と京都で初めて出来た友達の|桜咲 刹那(さくらざき せつな)と再開した事を喜んだが、他のクラスメイトを見て表情を強張らせた。

『クラウスくん。このクラスって……』

 担任になった高畑 タカミチ(たかはた たかみち)がHRをしている時、木乃香が【念話】を使用して自分の影の中にいるクラウスに話しかけた。

『ああ、このかも気づいたか』

『うん……。なんて言うか……、すごいクラスやね』

 木乃香は気づいていた。

 新しいクラスメイト達の異様ともいえる異色さに……。

『くくくっ、まるで問題児ばかりを集めたクラスみたいだな』

 クラウスが笑い声を漏らしながら呟いた。

『ひどいな〜、みんなええ子たちばかりなんよ』

『まあ、それは同意だな』

 新生活に希望と期待を感じて、二人で笑い声を漏らした。











 中等部生活初日の放課後――。

 木乃香は教室から出て行く刹那の後を追った。

「まっ、待ってせっちゃん!」

「……っ、す、すみませんお嬢様っ!」

 廊下を走り、刹那に追いついて木乃香が話しかけようとするが、刹那は謝罪の言葉を残して走り去ってしまった。

「せっちゃん……」
 
 木乃香の寂しそうな、悲しそうな声が放課後の喧騒に空しくかき消された。

『このか……』

 木乃香にクラウスが声をかける。

 頭に響いたクラウスの言葉に木乃香は、はっと俯かせていた顔をあげた。

『なんで、せっちゃんはウチをさけたんやろぉ……』

『俺はあの子、刹那を知らんからなんとも言えんが、おそらくこのかを嫌っている訳じゃないと思うぞ』

『そうなんかなぁ?』

『ああ、表情から嫌悪の気持ちは感じられなかったし、むしろ、すまなさそうに謝っていただろう。なにか理由があるんだろう』

『理由……かぁ……』

 木乃香は無言で刹那が走り去っていった方向を見つめた。











 木乃香が中等部へ入学してから、一年が経ち、中学二年生になり一ヶ月ほどが過ぎた頃――。

 刹那との関係はまるで進展していなかったが、図書館探検部と占い研究会に入部し、新たに綾瀬 夕映(あやせ ゆえ)と友達になり、それなりに楽しい中学生活を送っていた。

「なあ、クラウスくん。お願いがあるんやけど?」

 ダオライマ魔法球でいつもの訓練を終えて、神殿の居間に設置したソファで休んでいた時に、木乃香がクラウスに声をかけた。

「どうしたんだこのか?」

「あんな〜」

 木乃香はいつもの変わらない笑顔……、いや、木乃香に近しい者から見れば、若干頬を朱に染めていた。

 もじもじとソファに寝転んだクラウスの顔の前に立って、木乃香は思い切って口を開いた。

「え〜っとな……、…………してくれへん?」

 あまりにも小さな声で、常人なら聞き取れないほどの声量だが、人外のクラウスにはしっかりと聞こえていた……。

 だがしかし……、木乃香の発した言葉の内容にクラウスは尋ね返していた。

「なに? 今なんて言ったんだ?」

 木乃香は顔を真っ赤に染め、思い切って呟いた。

「だからな……、オナニーの仕方教えてくれへん?」

「…………」

 木乃香と出会って数年、「股から血が出てもうた〜」と生理の始まりを見せられた時以来、久しぶりにクラウスの思考が停止した瞬間だった……。














<後書き!>

 あれっ!?

 執筆した全作品通して今回の戦闘シーンが一番まともじゃないか!?

 ていうか、戦闘シーン率が少なすぎている……。

 チートすぎてすぐ終わったり、そもそも戦わなかったり……。

 ま……、まぁ、

 まっ! いっか!

-4-
<< 前のページへ 次のページへ >> ここまでで読み終える




魔法先生ネギま!(1) (講談社コミックス―Shonen magazine comics (3268巻))
新品 \420
中古 \1
(参考価格:\420)