小説『Realheart+Reader』
作者:藍堂イト()

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4+α四結散りゆく先は・翠編


「じゃーねぇ!今日は超楽しかったぁ。なんか戻るのやだしね」

「はははっあのメンバーじゃしゃーなしでしょ?ま、がんば!」

「りょうかーい!」


うちは友達のいるテントを離れてしぶしぶ、『形として』自分の班になっているところに向かった。もう、めんどう!

そして数十メートル先にある寝るだけのテントに向かった。


そして、うちはテントに向かっているときにあることに気づいた。そっちのテントの友達は寝袋にくるまって

いた。ということは寝袋で寝ろってことよね?

うち寝袋もってきたっけ?不安になりながらテントのところに行くとうちらのテントだけ支給品のランタンの

オレンジの明かりが光っていた。てか、人影がひとつ座っていた。やだ、こわぁ〜!ちょっとやめてよ!


テントの前に着いた。そしておそるおそるテントのジッパーを空けてみると独りの男の子が座っていた。て

か、確か……そうそう同じ班の楓だっけ?影が薄すぎて危うくわすれるとこだったぁ〜!

そして、あんまりにも怖かったから一応話しかけてみた。


「アンタなにしてんの?気持ちわるいから早く寝なさいよねッ!」

「お前寝袋ねーだろ?」

「っ!?」


なんでうちが寝袋忘れたことしってんのよ?もしかしてうちのかばんあさったとか?ほんとサイテーッ!ほん

と影が薄いだけじゃなくて、きもいわぁ!もう警察よびたいしねっ!

とりあえず事実を知るためにこのキモスに尋ねてみた。


「ねぇアンタもしかして鞄あさったの?きもいんですけど!」

「いやあさってなんかいないさ。お前散らかしっぱなしのままテント出て行ったろ?そんでそれを雪乃は親切

にかたずけてくれたんだ。ほんと雪乃に感謝しろよ。」

「あっそ。で、アンタはこんな夜遅く何のようよ?きもいこといったら訴えるからね?」

「ほい。これつかえ」


そういって楓は寝袋を差し出してきた。


「は、だれのよこれ?まさか誰かのやつ盗ってきたの?だったらサイテーね」

「そんなことあるか?これは俺のだ。」

「は!?じゃあアンタはどうすんのよ!」

「俺は別にカイロという心強い味方がいる。寝袋がなくたって別に平気だ。俺は眠い。寝るぞ」

「ちょっ!?」


楓はそういって男子用のテントの中に入ってしまった。うちは仕方なく不本意だけど寝袋の中にくるまった。

すると寝袋の中は入ったばかりなのにほんのりあったかかった。気になって中をのぞいてみると足元に湯たん

ぽが入っていた。


「ねえ。アンタなんでまったく協力もしない、うちみたいなやつにこんないろいろしてくれんのよ?」

「……」

「言っとくけどこれをしてもらったからって、明日からうちも参加して課題に取り組んだりしないからね?」

「別にそれが目的じゃない。」

「え?」

「お前は班員として無条件に選ばれた。班員ということは無条件に俺らの『仲間』なんだよ!」

「なんでうちなんかを仲間っていうんだよっ!?」

「仲間になる理由が他になんかいるのか?」

「ッ!?」

「俺らは一応おまえみたいなやつでも、『仲間として歓迎する』。別にそれでもいやなら明日の課題は抜けて

もかまわない。そうなったら3人でがんばるさ。……俺は眠い。これ以上はなしかけるなよ」

「……」


結局、楓はすぐに寝息をスースーとたてて眠ってしまった。うちは完全に班員が寝てから独り言をボソッと呟いた。


「雨那楓……。意外とやるじゃん」


うちはみんなが起きないようにゆっくりと静かに行動を開始した。

こんな私でも『仲間』と認めてくれた、唯一無二の『仲間』のために……

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