小説『Realheart+Reader』
作者:藍堂イト()

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「あっ翠さん!このカ……」

「うちそっちで夕食食べてくるから。じゃ」

「えっ?」

「おいちょっとまてよ!せっかく……」


俺が言いたいことを全部言い終わる前に翠はテントを出て行ってしまった。ちっ、なんなんだよ!せっかく雪

乃がカレー作ったてのに!

俺はほんとにムカムカして、翠にあげるはずのカレーの皿も自分のところに置いた。


てか、翠が「そっちで食べるから。」と言ったときになんか感じたことのある感情がよぎった。……そうか、

今のは反抗期の子供が親に対してうざったがるのとおんなじ感じだ。

俺はカレーを食いながら、夕食を食べにくる親の気分がわかった気がした。



俺らはカレーとサラダをおいしく食べ終わり、3人あわして『ごちそうさま〜〜』と言って間接的に雪乃に

『おいしかった』と伝えた。


そして悠太は「夜が、女の子が俺を呼んでいるっ!私がこのメッセージを裏切るわけにはいかんっ!」とかい

ってそろそろとテントを出て行った。ま、悠太の場合は両頬をビンタで真っ赤にして帰ってくるだろうがな……


そして、あたりをきょろきょろして二人きりということを確認した雪乃は顔を真っ赤にして恥ずかしがってい

る。そして、それが伝わってきて俺の顔もかぁーっと火照ってきた。これは俺の感情じゃないんだからね!

そして、しばしの沈黙が続きそれではまずいと思ったのかゆっくりとおどおどしながら、しゃべりかけてきた。


「あ、あのさ……ふ、ふ、二人きりだね」

「ああ。てか、この前のアパートの時もそうだったろ?」

「そだけどさ……。へへへ……チャンスかも」

「ひいぃ〜」


俺は驚いた。雪乃は錯乱したようにへへへと笑い出した。そして俺はなにをしでかすんだ?と身構えている

と、雪乃のは俺によっかっかってきた。そして……


「あのさ、今日寒いよね。」

「え、え?あ、ああ。そ、そうかにゃ?」

「ふふふっ。誰もいないしさ、私をあっためて?」


と言って雪乃は俺の正面に来て、俺の股の間にシャコシャコと座り上目遣いにこちらをのぞいてきたっ!

俺はマジで心臓がバックバクしてきた!てか、雪乃の鼓動が伝わってくる!てか、やわらけぇ〜〜!


そして、無言で雪乃は俺の唇に自分の唇を近づけてきた。そしてあともう1センチくらいで唇と唇が重なる……

……そのとき


「いやー今回はちょいとしくじって、両頬にビンタとみぞおちに蹴りを思いっきり食らったけど、俺は諦めな

いッ!……ん?」


ほんとにナイスタイミングで悠太がテントの中に入ってきた。唇がものすごい距離にあるときに。

そして悠太は、ハハハッといって手を振ってテントを出た。


「俺はデリカシーの塊みたいな男だから、このことは俺の心の中にしまっとくぜ!では、もっと深く熱いとき
をエンジョイしてくださいな!」


俺は悠太がテントを出てからもしばらく硬直しながら、顔を真っ赤にさせていた。

そして、俺らの硬直を緩和しようと雪乃がささやいた。


「私たちなんもしてなかったよね?」

「ああ、これは組み技の練習だ。今のはノーカンなはず。」

「んじゃ気を取り直して、悠太クンをよんで大富豪をしよう〜〜〜!」

「いえ〜っい!」


と言って雪乃はトランプを配り始めた。本当に雪乃の切り替えの早さがなかったら、俺らはこの先ずっとそっ

ぽを向き合っていた気がする。てか、なんで女子と二人で組み技の練習をしなくちゃいけないんだろうか?


俺は外でタバコをすっている真似をしている悠太を呼び戻して大富豪を再開した。てか、こいつはこんなタバ

コをすっている真似で『ハードボイルド』を気取っていたらしい。俺の頭に港で葉巻を吹かしながら、みかん

箱を片足で踏んでいる悠太の姿が頭をよぎった。


そして、さっきのことはすっかり忘れ、大富豪で大笑いをしているといつのにか10時を回っていた。明日は

早く起きて4人で今日吐き出した分の揚げパンを取りに行かなくちゃ行けない。ということで俺は雪乃と悠太

が寝たことを確認して、ミッションを開始した。


あと、これはもちろん独りで課題をクリアしようとか、馬鹿なことではない。そんなことしても疲れるだけで

ノーカンである。



こうして俺は独りで『四結接合作戦』の下準備に取り掛かった。

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