小説『Realheart+Reader』
作者:藍堂イト()

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5+四人組の綻び解ける邂逅



二日目の朝……。昨日寝袋を貸したはずなのに、俺の体の周りは何かに包まれており、何故か異様なまでに暖

かかった。さらに寝袋にあるはずのない、ふわふわした柔らかさのようなものがあった。

……まさか雪乃がこんな朝っぱらから俺に仕掛けてきたのかっ!?


俺は正直怖かったので、ゆっくりと視線だけ送ってみた。女子なのは確定なのだが何処か雪乃とは違う雰囲気

だった気がした。というか雪乃の華奢な体つきとはぜんぜん違った。そして目をこすって、もう一度よく見てみた。


そしてなんとそこには、昨日までつっけんどうになって俺らのことは無視で、ほとんど他のところに行ってい

た翠が何で俺の真後ろにいるんではないか!翠は一人用の寝袋の中で縮こまりながら俺の背中にぴったりとく

っついている。


俺は真相を探るため俺は恐る恐る話しかけてみた。


「あのさ……どうした?」

「うーん。もう朝?」

「ッ!?」



俺は朝っぱらから本当に驚いた。その翠は『うーん』と艶かしい声音で、さっきまで後ろを向いていた体をひ

っくり返して、こちらに抱きついてくるかと思うような、体制になったのだ!そして寒いのだろうか、俺の体

にすりすりとしてくるのだ!おいおい昨日までは俺らに超反発的だったはずだろ?どんだけ昨日の作戦効いた

んだよ?



「おまえ、昨日寝袋貸したはずだろッ!?それはどうしたんだよ?」

「これだけど?」

「……いきなりなんで俺のとこにいんだよ?」

「だって、楓はうちをいつでも大歓迎っていったじゃん?」

「……普通それでも徐々にこないか?普通……」


俺は戸惑いながら、昨日言ったことをできるだけぼかした。今思うと俺はものすごい恥ずかしいことを言って

いる。まったくこれだから夜の寝ぼけたときに、何かするのはよくないのである。

その必死のぼかしか、それともこのいきなりな翠の超接近気味な距離が不満だったのか、俺らの会話に目を覚

ました雪乃はほっぺを大きく膨らませて、機嫌を損ねている。


「もう、貴女はなんなのよっ〜〜!?べたべたしてないで、『私の』楓クンから離れなさいよねッ!」

「ちょい、雪乃……。おまえ今私のもの発言しなかったか?」

「楓クンはだまっててッ!」

「ぐびゃびゃ!」


雪乃は俺の鼻頭をつまんで、普通行くはずのない方向に、俺の鼻の軟骨を曲げてきた。俺はあまりにも痛すぎ

て涙が出てきて、もはや反論することもできなかった。そしてその無抵抗の俺を差し置いて、雪乃は翠を寝袋

から抜き出した。


そして翠が寝袋から抜けると、一気に背中の辺りが寒くなった。てか、翠は雪乃以上にやわらかかった……


って俺はなにを考えてんだっ!まったく正常を取り戻せ!

てか、俺は雪乃に会ってから変わってしまったかもしれない。悪い方向に……


雪乃は俺の寝袋から抜きとった翠と口論をし出してしまった。

そんな二人にまったく手がつけられなくなった俺は結局、相手がいなくなったので、とりあえず悠太を起こし

に行こうとした。

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