小説『Realheart+Reader』
作者:藍堂イト()

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その後も俺らは残りの課題(数学・英語・理科・社会・技術)を班員それぞれに得意分野を生かして、さくさ

くクリアしていった。

ちなみにその中で一番印象深かったのは『理科』である。


なぜなら、理科は静電気の実験を4人で行う(静電気を4人で受ける)というものだった。そして、静電気を

くらったときの雪乃の「ひいぅ!」という声がやけに、そそった。

って、俺はなにを考えているんだ。本当に俺は悪い方向に陥れられている。


そして、7つのうちの6つの課題をクリアしたときにはすでに日はくれ、タイムアップの5時に近づいていた。


最後の課題は俺の得意な四字熟語(国語)だった。班員全員で和紙の色紙に今回の自然教室の感想を筆で書く

というもの。


時間がなかったので俺以外のみんなはありったけの四字熟語を思い出して、ベストなものを書き出していた。

残る俺は、よりマニアックな四字熟語を書いて、「楓クンものしりだね〜!」といわれることを期待して、誰

もわからないような四字熟語を思い出そうとした……


そして、思い出したマニアックな四字熟語を書き出しているそのとき……


『じりりりりりぃ!』

「えっ!?」


タイムアップの5時を知らせる、チャイムのような、目覚まし時計のベルが鳴り響いた。

俺が四字熟語を書き終えたときには、すでにベルが鳴り終わり5時を過ぎていた。


「しまった……」


……俺のせいで、課題クリアは失敗。『俺のせいで』。

俺に一気に罪悪感がのしかかり、無意識で俺はみんなに謝辞をした。


「ごめんみんな俺のせいで……」


俺が俯いていると、翠がこちらに話しかけてきた。


「ほんと楓のせいだしね〜」

「……」

「でっもー、昨日うちが協力しなかったのもあるから、おあいこってところぉ?」

「おまえ俺に大富豪勝ちまくったから、これで勝率はプラマイゼロだぜッ!」

「楓クンにはいろいろ貸しがあるから、まぁ許してあげようっ!」

「みんな……」


俺は目頭がかぁーっとして、つい涙がこぼれそうになった。実はみんなこの景品にかける思いは強かった。

雪乃の場合、「映画券でこんど楓クンとでーとしてやるぅ!むにゃむにゃ」と寝言をいっていた。

悠太は「ふっ。景品で彼女を振り向かせてやるしなっ!」っと森の茂みでぶつぶつ呟いていた。

翠の場合「さっきのサンドウイッチのお詫びにあげパンでもあげようか……」と、友達の悲鳴を聞いて俯いていた。



だからこそ、この景品は協力して手に入れたかった。なのに俺の非、ミスでそれの達成ならずして終わった。

それなのにみんなは俺のことを攻めなかった。そのやさしさにほんと無意識で涙がこぼれてくるのだ。

しかも、俺に伝わってくる感情は3人そろって、俺の非を協力して包み込む、暖かいものだった。


俺はそんな仲間ができたことに感謝しながら、バスに乗り、家路を進んでいった。



……ちなみに、その翌日「さぁ、昨日の分を払ってもらおうか?」と3人そろっておれに押しかけてきて、俺

は3人分の揚げパンを買ってあげることになった……。

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