小説『Realheart+Reader』
作者:藍堂イト()

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「ふぅわあぁ……。よく寝たぁ……。観覧車ってなんか眠くなるんだよねぇ〜!」

「そりゃ、今日朝早かったんだから、無理ねえよ……。で、俺たちは何で観覧車に?」

「……え、えっと。そ、それは……」

「それは?」

「そ、それは……。か、楓クンと二人きりで、過ごしたかったから……かな」

「っんな!?」


雪乃は俺の疑問に対して、顔を赤らめながら答えてきたため、俺もつい顔を真っ赤にして、恥ずかしくなって

しまった。

何故かいつもとは、調子の違う雪乃と俺は、遊園地を出るためにゲートに向かっている。


途中お土産屋さんがあったものの、俺らは正直疲れ果てて、一刻も早く帰りたかったため寄らなかった。


てか、会話が止まって沈黙が続くと雪乃の『はぁー。つかれた』と言う、心の声が聞こえてくるのだ。

だから、俺から「お土産屋さん行かね?」と、誘うことなどできなかった。



そして、ボーっとオレンジ色に染まった空を見ながら、会話もなしに歩いていると、目の前に三人組の高校生

くらいの男子が現れた。

俺はまったく見覚えのない人物だ。が、雪乃は今まで見たことないくらいに、驚いた表情をしていた。


「お。おお?もしかしておまえ、雪乃か?俺、覚えてる?ってか、覚えたくもないか!」

「……」


雪乃はがちがちと震えて、おびえた目をしている。この前の葛城の時と同じ目だ。

そして、雪乃から『なんで、こんな楽しかった日に……』と残念がる心の声が聞こえてくる。

俺は明らかに怪しいと思った。



「おい。アンタは一体?雪乃の何だってんだ?」

「あん。おまえこそ誰だ?てか、もしかして、お前雪乃の、彼氏かっ?へっへっへ。こりゃおもしれぇ」

「お前は一体何なんだと聞いてんだッ!」

「私をいじめてた張本人だよ。この前話した、人。名前は『須賀島辰樹(すがしまたつき)』

「なっ!?」


俺は驚いた。こいつが、雪乃のことを……

こいつの存在を理解した俺は、この前の理不尽すぎる話を思い出した。

そして、俺の心の中で怒りや葛藤がどんどん湧き上がってきた。


「お前が……雪乃を傷つけたやつッ!お前らみたいな、バカがいるから、雪乃がッ!」

「あぁ?お前の今のバカ発言は気にくわねぇな。おい、アイツを久々にいじめてやろうと思ったが、予定変更

だ。俺のことを馬鹿やろうと言ったことを、後悔させてやれッ!」


それに応じて、須賀島の隣にいた二人の、下っ端が鞄から出した、警棒のようなもので襲い掛かってきた。


おいおい。多勢に無勢ってひどくないか?しかも、武器まで持っている。物騒すぎである。

しかもそいつらは、俺に攻撃するのするのではなく、雪乃に襲い掛かったのである!


「あぶねぇッ!」

「っ!?ひゃうッ!」


下っ端の一人の振り下ろした、警棒を当たらないようにするため、雪乃を抱きながら、飛び込み、地面をごろ

ごろと転がる。

おいおい!あんなの食らったら、いじめ以前に死んじまうって!


そして、さらにもう一人の不良が俺の頭に警棒を直撃させてきた!

ぐっはあぁ!いってぇ。俺はあの時以来の、頭の激痛とともにたくさんの血がどくどくと流れ出てきた。

普通、人間ってこんなに血を出したらまずいだろ?


俺の予想に順ずるように、俺の意識はものすごくクラクラしてくる。そして俺はバランスが取れなくなって、

地面に倒れる。

そんな、ぶったおれてる俺に対して、不良はここぞとばかりに、ばんばんと警棒を打ち付けてくる。……まさ

に鬼畜である。


と、俺は不良たちにフルボッコされているその時……


「や、やめてっ!楓クンんをい、じめないでっ!私は……なんでもするからっ!」


雪乃は勇気を込めて、不良どもに文句を言っている。……勇気を込めて

しかも、雪乃から『こわい……。こわいよぉ……。でも、楓クンがっ!』っと恐怖しながらも、困惑しながら

も、俺を助けようとしている心の声が聞こえてきた。


……なのに。なのに、俺は何にもできてない。

くそっ!なさけねぇ。……なさけなさすぎるっ!起きろよ、俺。こんなとこで寝てねえで起きるんだ!


そして、もはや自分の意思ではなく、根性で起き上がった。


「楓クンっ!?」

「なにっ!?」


不良どもと、雪乃はまさに驚きを隠せずにいる。ま、今はそんなこと関係ない。

俺は、雪乃を助ける!そして、雪乃の過去の怨念を晴らすっ!……約束だからな。


「ふっ。どうやら、こいつを出すしかないらしい。……雪乃下がってろ。ぱぱっと終わらせる。」

「でも……」

「いいからっ!……たまには俺をしんじろ!」

「へっ。口だけは達者みたいだな。じゃもう一度、さっきのを叩き込んでやるぜッ!」


と言って二人の不良は再び俺のところに警棒を持って、つっこんんで来た。


……ふっ。脇ががら空きだぜっ!!!

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