小説『Realheart+Reader』
作者:藍堂イト()

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2+殻破りの邂逅の兆し


今日は冬休み明けということで、生徒のほとんどは休みボケして冬休み前にやった事が抜けまくっており、そ

れでは授業にならないからということで、先生はレクリエーションやらゲーム形式の授業とかをして、先に進

むような授業らしい授業はほとんどやらないことになっていた。


日々の授業が面倒くさくてたまらない俺は「これは授業をサボるチャンス!」と言わんばかりに机にだらりと

寝そべりながら授業をすごしていた……かったのだが転校生の雪乃咲夢(これでサクラと読むらしい。普通は

読めないよな?)が何故か俺に「寝るなぁ〜〜〜!」と執拗に大切な睡眠を妨げてくるために、俺はしぶしぶ

くだらないレクリエーションのような授業を無理やり受けることになった。



しかも席の隣同士で協力して行うゲームでは、普通でも無駄にやる気いっぱいなのに俄然テンションを上げて

「がんばろねっ!楓クン♪」と俺の腕に無理やり自分の腕を絡ませて俺にベタベタしてくる。しかも俺たちが

黒板に解答を書きに行くときに「これなーに?私じゃわかんないよ〜」と普通に頭いいくせに、俺みたいな赤

点だらけのお馬鹿さんにいちいち質問してくる。そして俺はもちろん見事に間違える。それに対して雪乃は

「楓クンまちがえたぁ〜!だっさいね、しょうがないから教えてあげようっ!」といちゃもんをつけて、また

腕を絡めて席に連れて行かれ無理やり間違えた問題について説明してくる。



俺はクラスのお世辞でもかっこいいとは言えない、通称Wモテキング(W=ワースト)の男子諸君に「貴様も抜

け駆けかっ!今までは俺らの仲間だったくせにかわいい転校生といちゃいちゃしやがって!!俺らにはどうせ

二次元の恋人しかいないんだ!」と切実な思いを喋ることなく、目で訴えかけてくる。もちろん俺はなりたく

てこうなったわけではないし、むしろ被害者として助けていただきたい。


俺はいつもだったら相手の腕を無為やり振り払って、俺の最大の力でそいつを拒絶していたはずだ。だが、雪

乃に対してはまったくそのような反感というものがわかなかった。何故か親しみやすい何かが全身にジンジン

と伝わってくるのだ。それは今の俺では到底理解できないことだった。


席に戻ってみると追い討ちを掛けるように、斜め前の席にいる悠太がこっちに振り向き、何かたくらんでいる

ときに見せる満面の笑みをしてきた。うっわあ……ほんとに気持ち悪い。なんか見ているだけでイラッと来
る。



「今まで実力を隠していただけあって驚きがでかいですなぁ〜。まさか、このギャップを生かして女子をバキューん!とは……やはり愛の伝道師様の考えることはちがいますなぁ〜」

「おいおまえからかってるよな??」

「そんな滅相もないっ!それより愛の大達人様の慈愛の集中砲火をくらった、とてつもない幸せもの雪乃咲夢さまがいらっしゃいましたよ!ささ、お二人方のどんな海峡よりも深い愛の力が織り成す、奇跡のスーパーショーを私めに見せてくださいまし」

「ちょっとおまえ黙ってろよっ!!俺らはそんなんじゃないって!!」


と、ふざけまくってる悠太を怒鳴り散らしたものの当本人はまったく反省しておらず、むしろウホウホいって

悪戯心を増幅させており、俺は悠太のふざけを抑止するのを諦めて再び机に寝そべって睡眠を始めた。こんな

奴の是正をやろうとしたら、堪忍袋が何個あっても100%足りない。



俺は時間割を見て楽勝だな、と久々に時間割を見てテンションが上がっていたのに、予想外の転校生の到来に

楽勝どころか超苦戦をさせられてしまった。まさに想定外の問題要素である。



だが、何はともあれ俺は長い長い授業の時間を死に物狂いで乗り切り、最後の難関である担任の玉郷(先生)

の延々と続く武勇伝、通称「ガン黒玉郷ちゃんの最後の断罪障壁(ラスト・オブ・ジャッジメント・フィール

ドver,玉郷)」を何とか乗り越えて俺は正真正銘の唯一無二のパートナーのもとへ急いで向かおうとした。


だが、俺が急いで靴をはいて玄関を駆け出そうとしたのに、誰かが玄関でポジションどりをして立ちふさがっ

ていたせいでこの学校という名の牢獄から脱獄するのに失敗してしまった。


驚いたことにその立ち塞がった人物の正体は腕を組んでどーんと構えている雪乃であった。俺は関係ないだろ

うと思って避けようとしたが、雪乃は完璧すぎるぐらいにしなやかなディフェンスで俺の行く手を阻んでき

た。どうやらターゲットは俺のようだ……



ちなみにこの「真のパートナー」の正体については後ほど説明するつもりである。(しょうも無いことです。

別に気にしないでください。by著者)


「楓クン捕まえたっ!よしせっかく出会ったんだから今日は記念日ね!たっくさんあそぶよ〜!」

「っちょまてって!お、俺かねねーからッ!」

「ふふふっ。私もお金は金欠。でも心配なしっ!とりあえず私に任せて、れっつらごー!」

「お、おいおいどういうことだよ!」


俺は結局こんな今時珍しいドジ&天然を持ち合わせた珍獣女子高生に腕をがっしりホールドされて俺は諦めて

雪乃についていくことになった。

しかも俺の腕を雪乃のわきの下で絡めてホールドされているために、そのいわゆる女子のやわらかさが俺の腕

に当たっているのだ。それを無理に動かすと静止状態のやわらかさに動きが生じることによって……(以後自粛)


無理やり雪乃に引っ張られてついて行った先には「ゆっくりハイム宇玉」と壁に書いてある、緑色の外壁の落

ち着いた雰囲気のアパートがあった。あいまいな記憶だが確か3ヶ月前くらいにできた比較的新しいアパート

だった気がする。なぜ知っているかというと、よく独りで休日に暇つぶしにこのアパートの先にあるコンビニ

いっていた。


その家からコンビニまでの最短ルートの途中にこのアパートが建ったから、思い出そうと思えば建設会社の名

前だって思い出せる。確か九条工務店である。


そして雪乃はこのゆっくりハイム宇玉の階段を俺を引っ張りながら登っていき、205室と書いてある部屋の

目の前に到着した。(何故か部屋のネームプレートは白紙だった)そして雪乃はワイシャツの第一ボタンの隙

間から鍵を取り出して、慣れた手つきで扉を開けた。

その鍵を取り出すしぐさがやけに色っぽかった。


「ささどうぞ〜〜〜!」

「やっぱりか……。ここまで来たんだし仕方ないか……お、おじゃましまーす」


雪乃のアパートの部屋は、カーテンがしてあって薄暗く、家具はピンク系で統一しており物がたくさんあるの

に整っているように見えた。

しかも大小様々のクマやウサギの可愛らしいぬいぐるみがたくさん置いてあり、やはりそこら辺は女子の部屋

だな、と少し関心してしまった。


雪乃は「そんなじろじろ私の部屋見ないでよ〜〜」と言いながら小さめの液晶テレビとWiiの電源をつけた。

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