第9話
あれよあれよと日は経ち、俺は14歳になり中学3年だ。憂も俺に追い付くように中学2年生だ。
憂はもう俺に勉強を教えて欲しくないそうだ。別に困らないのに・・・寂しく感じるな。和も拒否していた。なぜかと聞いたら・・・
「だって・・・お姉ちゃんの時間もう奪いたくないから」
「私達は親友であると同時にライバルでもあるからよ」
憂ならともかく、和。俺をライバル視してくれるのはいいが、仲良くしようぜ。
「唯。進学する高校決まった?」
中学3年になったから進学すべき高校を決めている。
「うん。和ちゃんと一緒の高校だよ?『私立桜が丘高等学校』だよ」
「くすっ。また一緒ね。頑張ろう唯。」
『私立桜が丘高等学』を選んだ理由は、和と一緒に居たいから。
後、ここから近かったのでそれも理由としてもいいだろう。
「うん!頑張ろうね!和ちゃん」
「ええ」
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「そうか。あの和ちゃんと一緒の高校か。まぁ、唯は出来る子なんだから簡単なんだろうけどね」
恒例の家族相談を行っていた。
俺は父親からのべた褒めを恥ずかしながら受け流した。
「エヘヘー。ここから近いから通学は楽でいいよー。そうだ!憂も私と同じ高校に行こうよーいいでしょ?憂?」
でれでれしながら憂に促す。
「うん!私もお姉ちゃんと和ちゃんと一緒の高校行くよっ!」
憂はキラキラと無邪気に、本当にいい子だな。
「やった!一緒に頑張ろうね!」
俺も憂に負けず劣らずの笑顔を向ける。さてはて、今後はどうなるか楽しみだな。
ーーーーー
そして、月日は流れ今、卒業式の最中である。
早かったな、と俺は今までの出来事を思い出す。
俺は死んで、よく分からない世界にいて、死神だっけか?が俺の頭に話しかけ、何か知らないがこの『けいおん!』の世界に飛ばされて赤ちゃんの頃の平沢唯に憑依して・・・・
母親や父親。憂に和に、おばあちゃん。本当にいい人に会えた事を感謝している。
「ーーーこの三年間は充実していました。今度は高校へと進みます。ーーーー卒業生代表 真鍋和」
和は風紀委員会のトップに立ち、卒業生代表を任されていた。だが、任期を終えてただの卒業生だ。なぁ、和よ。泣いてもいいんだぜ?さっきから泣きそうじゃないか。周りはシクシク泣いていた。
俺は泣かないが。また会えるじゃないか。また会うその時までその涙は、とっておきな・・・・・
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「そうか、明日から高校かー。時がくるのが早いのな」
いつもの家族相談。父親は、のほほんとしている。
「あっ、そうだ。俺と母さんは海外に旅行するから家事とか、戸締まりとか、ちゃんとするんだぞ?」
またどっかに行くのかよ・・・この前行ったばかりじゃないか。
「うん。分かったよ。お土産よろしくね」
俺は家事はある程度できる。料理もたまに母親の隣に立ちレシピを盗む。だから料理も少しは出来る。
「あぁ、任せな。じゃ頼むな」
「じゃ、行ってくるね。何かあったら電話してね」
「「いってらっしゃいっ!」」
俺と憂は笑顔で手を振り親達を見送る。
「さて、夕飯の準備しよっか。憂も手伝ってね?」
「うん!分かったよお姉ちゃん!」
食事を済ませ、食器洗いも済ませ。風呂に入る。
「ふぅー・・・」
声が自然と出る。いつも付き合っている女声なので、別に違和感は感じない。
ゆっくりと足を伸ばしマッサージをする。
ぷにぷに。さらさら。男の時では思いもしない感触がする。髪質もサラサラだ。
「はぁー。本当に女なのなー」
自分の体に興奮しないし、和や憂にちょっかい出しても何も感じない。心までも女になるのだろうか。
「いよいよか・・・原作が始まるらしいな。明日から高校生なんだ」
なぜか、独り言が多い。かなり緊張しているんだろう。
「出るかー」
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目覚ましをセットし布団へとダイブし、俺は寝ようとしたが、第1話で何やら遅刻してしまうことを友達が言っていた事を思い出す。友達、本当にしつこくて何度も何度も同じような事を言うものだから覚えてしまったのだ。やれやれ。
「ってこれ、予知能力じゃねーか」
念のため目覚ましの電池を新品に替え、更に携帯のアラームも設定しょう。携帯は高校生になった記念ということで母親に貰ったが色はピンクだ。まぁ、いいけど。
「これでよし。じゃ寝るか」
俺は眠った。そういえば唯に、こういった男口調は似合わないな。女の子だし、ちょっと気を付けよう。
という事で、眠りについたのであった・・・