第8話
side 平沢 唯
俺が13歳で憂が12歳の時の事。
時期は梅雨で雨がザーザーと降っていて、天気はものすごく悪い。雲は黒っぽい色に染まっていたのだ。
両親は数日前からロンドンに旅行すると言い、我が家には憂と俺だけなのだ。
「雨・・・すごく振ってる・・・」
「そうだね・・・」
憂と他愛の無い話を交わしていくと・・・
ゴロゴロ・・・
何と、雷までなる始末。憂は、少しばかり驚く。俺はというと・・・
「ひぃっ!」
雷が怖いのだ。何故また怖いのか分からない・・・前世では雷は怖くなかったのに・・・まさか、死因に関係あるのか?
ゴロゴロ・・・ピカッ!
ドーン!
「ひぃぃっ!!」
「だ、大丈夫!?お姉ちゃんっ!」
雷が近くに落ちて驚く俺を見て憂は俺を落ち着かせようと必死に抱きついて俺をあやしているのだが・・・
ゴロゴロっ!ピカッ!!
「ぅっ!ひぃぃぃ!」
頬に雫を垂らし、泣き続ける俺。俺は本当に雷が嫌いみたいなのだ・・・
「大丈夫だから・・・私が付いていてあげるから・・・ね?お姉ちゃん」
「ほっ、本当に?」
俺は泣きそうな声で憂に頼る。憂・・・ごめんな・・・
俺、憂に頼っているばかりで・・・ごめんな・・・憂。
ゴロゴロっ!
「ひぃっ!!」
「大丈夫!!大丈夫だから!!心配しないで!!お姉ちゃん!!」
憂は必死に俺を励まし、その日の夜は泣き疲れてぐっすりと眠ったのであったーー。
ーーーーーー
翌々日。
天気は見事に快晴。
ようやく落ち着いた俺は憂に『本当に大丈夫なの?』と心配してくれるので、俺は躊躇わずに弾ける笑顔で
「大丈夫だよ!憂が守ってくれたから!」
「お姉ちゃん・・・ありがとう!」
憂も弾ける笑顔で俺にお礼を言う。俺の方から心からお礼を言いたいのだがな。
とりあえず、俺はこの前の鬱憤(うっぷん)を晴らす為に、商店街の付近にある楽器専門店である『10GIT』にギターやベース等を下見をする。この行動は唯というキャラがというか俺なのだが高校生からギターを始めるらしいから今のうちに慣れていこうとした理由では無く、ただ単に音楽やバンドに興味があるからなのだ。まだ音楽に関する知識は身についていないのだがな。
そんな素人同然の俺は、軽そうで持ちやすそうなギターを適当に見た目だけで判断して、ずらっと並んでいるギターからとある赤いギターに触れてみたら・・・・
「っっっ!!」
ひどい頭痛がした。何故だろうか?あの死神の所為(せい)なのか?俺がイレギュラーな事をしようとしていたからか? すぐに離れると頭痛は引いていく。
不思議な事にギターのコードを覚える参考書は手に取ることには、反応がない。こんな俺を見てあの死神は嘲笑いしているだろうな・・・もう一度会う事が出来たら、デコピンでもしようかな・・・
はぁ、とりあえずコード覚えるかな・・・やれやれ。