小説『俺は平沢唯に憑依してしまう。【完結済】』
作者:かがみいん()

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第102話

時は流れ、卒業式。
前日の教室ライブを行い、その悪行?を見かねた進路指導の先生は俺達に説教。はぁ、ちょっぴり怖かったぞ・・・

そんな憂鬱な気持ちを今日も引きづりながらも、俺愛用のヘアピンを二本頭に添え、フラフラとした足取りで今日も学校へと向かい、玄関先へと向かったのだが、三年生に手作りの花を・・・あれ何て言うんだっけ?造花?を一年や二年が贈っていた。
「おお〜、憂〜」
俺は造花を持った憂を発見し、憂に近寄る。憂には姉である俺に花を贈るようだ。

「はい、おめでとう。お姉ちゃん」
「ありがと〜。後で紅白まんじゅうをあげよ〜」
「ありがと〜お姉ちゃん」

そんな他愛の無い会話を交わし、ニコニコしていたら俺の友人達が姿を現す。その友人の名は澪、律、紬、和、梓だ。団子みたいな髪していた純はいない。
そんな友人と他愛の無い世間話を交わしつつ、俺達は自分の教室へ移動。
すると、とあるクラスメイトが色紙を持って俺の元へと駆け寄ってきたので、そのクラスメイトの話を聞くと、どうやら先生にクラス全員の一言ずつ伝えたい事を書いて渡したいらしいので俺はその色紙を受け取ることにした。

「後は軽音楽部だけだからみんな書いたら軽音楽部の誰かがさわ子先生に渡してね。きっと驚くから」
俺達はささっと色紙に一言思い思いの言葉を書きなぐり、俺が代表して山中先生に色紙を渡すらしい。
それとクラスメイトの案だが、黒板にさわ子先生に向けてのメッセージを書くという事も聞き、俺達はあっさりと承諾。
しばらく時間が過ぎ、卒業式がやってきたーーーー
ーーーーーーーーーーー
卒業式終了。
校長のありがたーい話や生徒代表のありがたーいお祝いの送辞や卒業生代表の和の答辞を聞き流し、腰を痛めながらも教室へと戻り、最後のHRを始めていく。

「みんな・・・卒業おめでとうございます。この先色々あると思いますが、くじけず頑張ってください・・・これで最後のHRを終了します」
山中先生は泣かずに淡々とHRを終了させた。多分、教師であるプライドが邪魔をして泣かない事を決意したんだろう。
クラスメイト達は俺を見て、色紙を渡せとアイコンタクトを送ってきたので俺は頷き、俺はその場を立ち山中先生は何事かと俺を見て首をかしげた。いい年した女がする行動とは思えないが、やつも一応乙女だろう。
「先生、贈るものがあります!受け取ってください!」
俺はそう言いながら山中先生にずんずんと近寄り、色紙を渡し山中先生はキョトンとしながらも色紙を丁寧に且慎重に受け取った。
「あ、ありがとう。大切にするわ」
これで山中先生ドッキリ第一部は終了。
で、ドッキリ第二部を執行するために、少しばかり時間を過ぎるのを待って、山中先生が出て行ったのを俺達が見て俺達は大急ぎで黒板にメッセージを書きなぐり、ものの数分で完成。

「後は、山中先生が見るだけだね」
会心の出来にクラス一同は頷き、その場を立ち去ったのであったーー。

ーーーーーーーーー
俺達軽音楽部は最後に我らが軽音楽部の部室である音楽室へと入り、後輩に贈る歌・・・『天使にふれたよ』の演奏の準備を施し、憂や梓を今か今かと待ち侘びていた。

しばらくすると、部室の扉が開き憂と梓の姿が現れるのを俺達は確認。
そんな憂と梓は
「こ、こんにちわ。そ、卒業・・・おめでとうございます」
「私からもお祝いの言葉を送りますね。みなさん、卒業おめでとうございます」
とお祝いの言葉を送ってくるので、俺達はありがとうと言い返し、憂と梓をただただ温かい目で見守っていたのだが・・・梓は目頭が熱くなったのかその眼には大量の涙が溢れていた。

「うぅっ、卒業しないでください・・・」
なんと、俺達に留年しろというのか?それは無理な話だ・・・今さっき卒業証書を貰ったばかりだからな。
「お、お姉ちゃんっ・・・わ、私も・・・悲しいよっ、寂しいよっ!いつも一緒に学校に行って一緒に部活やって・・・これからもずっとずっとこうだったらなってっ!」
憂も梓の涙につられ、その眼には大量の涙が溢れていた。う〜む、憂がそこまで言うのならば・・・学校の全てのガラスを叩き割って卒業を取り消してもらうか?いやいや、そんな行動をしてしまったら憂との信頼関係が無くなってしまう。

「私達はそんな後輩の為に歌作ったんだ・・・ちゃんと聞いていてね『天使に触れたよ』」
俺が代表して憂と梓に伝え、俺はみんなの準備がすでに整った事を確認し、律にカウントとってくれとアイコンタクトを送り、律は俺のアイコンタクトを受け取り、スティックを大きな音を鳴らしてカウントをとる。

「ワン・ツー」
〜〜〜♪♪
澪のベース。律の力強いドラム。紬の滑らかなピアノ。そしてリードギターである俺の音達は一つとなり、心地よいメロディが音楽室に響き渡る
〜〜♪♪『天使にふれたよ』

なぁ、思い出のヒトカケラに
名前をつけるならこうしよう
『絆』という僕らの宝物

この胸いっぱいいっぱい
詰め込められるほどに
過ごしたな きらめいた日々

着慣れた制服と大好きな君たち
空へとはばたく白いハト
明日へと続く道に
置いていくなんて僕にはできないな

でも、会えることができたよ。大好きな天使に
卒業が全ての終わりじゃない
これからも大切な仲間だから
僕らの約束の場で
待っているキミたち
いつまでも輝いている

なぁ、桜の木も少し
成長したみたいで
ゆっくりとしたスピードだけれど

きっとあの空は見てたよ
何度もくじけたことを
それでも前へ前へと進んだことを

ふわり放課後の教室に
こぼれた鳥の真っ白い羽根
ふわふわ積もるまで
このままでいれたらいいのにな

でもな、ふれた!愛すべき天使に
おかえりって言ってくれる
僕らの居場所は変わらない
メールの受信箱
マルと記したカレンダー
とびっきりの愛と勇気くれた
音楽にありがとうと

河原の道 駅のホーム
離れてても 空は一つだから
見上げて歌おう

でもな、会えた!すばらしい天使に
卒業はまだ終わらない
これからも大切な友達だから
大好きって言うのか?なら
すごい好きって返すよ
忘れ物なんてないよな
ずっと永遠に一緒だから

〜〜♪♪♪ジャー・・・・ン・・・

演奏が終了。二人は泣きやみ、大きく拍手を送る。俺達はそれを笑顔で見届け、ただただ拍手を受け続けていた。
俺は憂に渡したいものがあるので、憂をちょいちょいと手招きして、憂は首を傾げながらも俺の元へと近づいて、『何?』と言ってくる憂に
「これ、あげる。いつも二人で学校に行けるように」
俺のヘアピンを憂に与え、憂は目に涙を浮かばせながらも『ありがとう』と言い、俺はそんな憂をあやすように背を摩ってあげた。
「梓ちゃんには・・・ヘアピンいるかな?似合わなそうだけど・・・」
「ほ、欲しいです!って、似合わなそうだなんて言わないでください!」
梓にもヘアピンを与え、二人は早速ヘアピンを髪に留め、二人の表情はご満悦の表情。良かったな、貰うものがあってよ。

そんな二人に頭をポン、と添えて俺は優しい笑顔になり
「来年さ、私達の大学に来ない?そしたらさ、またバンドできるでしょ?だから、次会う時にはみんな大学生だよ。ね?いいでしょう」
二人は弾ける笑顔になって頷いた。ただ、次会う時が本当に大学生かどうかは分からないがな。

そんなこんなで俺達最後の軽音楽部の活動は・・・終了した・・・
ーーーーーーーーーーー
俺達三年生は帰宅する事にした。
俺達は途中まで一緒に帰ることにしたのだ。
「はぁ・・・今度から大学生か・・・実感しないなー」
「私もだよ・・・緊張するなー」
「大丈夫よっ!だって、梓ちゃんや憂ちゃんも頑張っているから私達も頑張らないと!」
三人の不安は分かる。だって、大学だなんて想像出来ないだろ?暮らしだとか勉強だとか。

だが俺はというと・・・
「うーん、女子大学生・・・なんかいい響きだ!」
変な方向に行っていた。誰か救ってくれないか?このアホな俺を。
「お、お前・・・何オヤジみたいな発言を・・・えーい!どうにかなれー!」
「そ、そういえばっ、私はパパの都合でセントクリストファー・ネイビスって所に転校するんだった」
「どこだ?!そこ!」
「セントクリストファー・ネイビスって西インド諸島辺りね?よく知ってるわね♪澪ちゃん」
セントクリストファー・ネイビスを知らない方はお好きにググって貰う事にするが、三人とも・・・というか紬以外はアタフタと慌てているのだが・・・そっとしておく事にした。

「よっしゃー!私達の音楽はこれからだ!」
『おお!!』
これにて、俺こと平沢唯の大学生活が幕を切って落とされるのであったーーー。
(※これにて高校編終了となります。それと、お知らせです。大学編をやると言っておきながら大学編はやらない方向になる事をここに報告します。これまでお世話になった方々には申し訳ありませんが、期待に背いてしまった事を深くお詫び申し上げます。)

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