小説『俺は平沢唯に憑依してしまう。【完結済】』
作者:かがみいん()

しおりをはさむ/はずす ここまでで読み終える << 前のページへ 次のページへ >>

第103話

side 平沢 憂
お姉ちゃん達が卒業して、私立翔南女子大学へと入学してお姉ちゃん達は学校が提供している寮で一人暮らしをするというメールでの報告を初めて見た時はびっくりしちゃった。
電車とかで毎日我が家からの通学に困るという事で寮生活を決心したお姉ちゃん。澪さんや律さん、ムギさんも寮生活を始めるそうで、みんな大人だな〜なんて思う毎日。

我が家で私一人だけという事を気づいてくれたお父さんとお母さんは毎日家にいるそうです。だから、心配しないで、勉強しててね?お姉ちゃん。
私は自分の髪型をポニテールにして、お姉ちゃんに貰ったヘアピンを添える。うん、完璧♪

「憂〜、ずっと家事とかで疲れているから私がやるわね〜」
「うん♪ありがとうお母さん」
両親もいるからずいぶんと生活リズムが変わってしまった。毎日私やお姉ちゃんが家事をしていたから無意識に掃除だとか料理だとかをやっちゃう私にやさしくやらなくてもいいんだよって言ってくれるお母さん。

「お〜、憂。いい子にしてたか?唯もいい子にしてたか?」
「うん、お姉ちゃんはいい子にしてたよ〜。私は・・・どうかな?」
お父さんにちょっと子ども扱いされちゃったけど、久しぶりに子供みたいに接したいのでお父さんに甘えちゃう。ところでお姉ちゃんはお父さんやお母さんといっぱい思い出作りしたのかな?大丈夫かな?寂しくないかな?

「憂もちゃんとやってるみたいよ〜。掃除も隅々までしてて楽だわ〜」
「おー、そうかそうか。よし、高い高いしよう!」
「や、やめてよっ。恥ずかしいよっ」
お父さんは手をワキワキと動かして私を持ち上げようとするんだけど、恥ずかしくて断っちゃった。

「ほら、学校でしょ?行かないと遅刻しちゃうよ?」
「あ、そうだね。着替えてくる」
「憂ーっ、見ない間に成長したなー色々!」
「うっ!じゃ、じゃあね!」

お父さんから冗談を言われたけど、お姉ちゃんみたいには成長していないもん。お姉ちゃんが卒業したのに私のワガママでずっと居て欲しいって子供みたいな事言ったもん。

ーーーーーーーー
制服へと着替え、朝食を食べ終わり学校へと向かい、玄関先の掲示板に人だかりが。
そういえば、クラス分けがあるんだった。それに私は三年生だったね?えへへ〜

「あ、憂。おはよー」
「おはよー。梓ちゃん」
「私には?ねぇ、私には?梓にも居たの?なんて言われたからさちょっとショックなんだけど」

梓ちゃんの影からふてくされた表情を浮かべた純ちゃんがひょいっとジャンプして登場。な、なんでそんな所に居たの?分かんなかったよ・・・
「お、おはよ〜純ちゃん」
「全くもう・・・って、アレ?二人ともヘアピンつけてたっけ?」
純ちゃんは私達の髪についてあるヘアピンに興味津々みたい。私はお姉ちゃんに貰ったヘアピンだという事を純ちゃんに話したら。
「い、いいなぁ〜。私も欲しいな〜・・・あ、でも、この髪じゃヘアピンした時、髪にまとわりついて痛いんだよね」
純ちゃんは自分の髪を触りながらも自分の髪に不服があるようです。うーん、なんとか出来ないかな?

「さっき、クラス表見てみたんだけどさ。私達全員同じクラスだってさ。憂と純と私とで三年二組」
「ま、マジで?やったー!!あの唯先輩と同じクラスだー!!」
「あ、あの・・・お姉ちゃんは今大学生だよ?」
純ちゃんはお姉ちゃんと同じクラスだった事が嬉しいようではしゃぐ純ちゃん。でも、私も嬉しいかも♪

「ほら二人共、早く教室に行こっ♪」
「う、うん。って、憂は何でそんなに機嫌いいの?」
私達はせっせと三年二組の教室へと移動し、自分の席を確認して各々、座って担任の先生を待つ事にしたの。

ふと私の隣の席の人物を見ると・・・梓ちゃんだ!良かった〜。純ちゃんは・・・ずっと先の席にポツンと座っていたの・・・頑張ってね純ちゃん。

とりあえず、隣の席にいる梓ちゃんと雑談を交わしていく事にした。
「あ、梓ちゃん。隣だねよろしく」
「そうだね。これはたまたまかな?」
そんな他愛の無い会話をしていくと
「待たせたわね!」
三年二組の教室の扉をガラッと開き、山中先生が登場した事に私は驚いた。な、なんで先生が?

「ふふふっ♪なんだかんだでこの三年二組の担任になりました山中さわ子です!よろしくね!みんな」
この三年二組の担任が山中先生だという事を知った私のクラスメイト達の反応はもちろん大はしゃぎ。

「やったー!よろしくね!さわ子先生!」
「さわ子ー!大好きー!」
クラスメイト達はいつまでもキャッキャッとはしゃぎいつまでも落ち着かない様子で朝のHRは終わったのーーー。

ーーーーーーー
時は流れ、放課後。
私はいつもの習慣で軽音楽部の部室である音楽室へと軽い足取りで向かい、音楽室のドアノブを掴み、部室へと入って

「お姉ちゃ〜ん。来たよ〜・・・あっ、そっか・・・いないんだった・・・」
いつもの癖で今でもお姉ちゃん達がいる事が当たり前で思わず挨拶しちゃったけど・・・やっぱり寂しいな・・・ううん、もう私達でもちゃんとやらないとお姉ちゃんに怒られるもんね。『なにやってんだコノヤロー』って♪えへへ〜

私はポニーテールを解き、髪留めをお姉ちゃんと同じように髪に留め、手鏡を見てみたら見た目は完全にお姉ちゃん。私とお姉ちゃんって本当にそっくり、まるで双子だねって昔一文字おばあちゃんに言われたからね。

私は席へと座り、掃除当番で遅くなっている梓ちゃんを今のままの髪型で待つ事にしたの。せっかく、お姉ちゃんみたいになったしこのままでいいかな〜なんて思っていたりする私。私って、めんどくさがり屋さんかな?

しばらくすると部室の扉が開き、梓ちゃんの姿が見えた。

「すみません、遅れました・・・」
梓ちゃんもお姉ちゃん達がいると思ってお詫びの言葉を入れながら入室。そんな梓ちゃんは私の姿を見てかっと目を見開いた。

「あ、唯先輩。他のみなさんはどうしたんですか?」
梓ちゃんは私のことをお姉ちゃんだと勘違いしていたんだけど、そんなに似ているのかな?私たち姉妹は・・・
梓ちゃんは私のことをお姉ちゃんだと誤解しているようなので私のほうから
「私だよ、梓ちゃん。憂だよ」
「あっ!!そ、そっか。この前卒業したばかりだしね・・・いる訳無かったのに」
梓ちゃんはがっかりとした表情でいつもの席へと着席し、『はぁ・・・』とため息を吐くしか無い梓ちゃん。
でも・・・いつまでもこんな調子じゃダメだから、私は新歓ライブの打ち合わせを梓ちゃんとする事に決め、口を開いたの。

「あのさ、今度の新歓ライブはどうするの?」
「へ?ライブ?たったの二人で?出来ない事は無いと思うんだけど、少し難しくないのかな?」
「うっ・・・!で、でも、やってみないと分かんないよ?」
実際に二人組のバンドはいるらしいけど、私達はそんなに上手じゃないし、不安が募るばかり。うーん、どうしたらいいのかな?

「じゃ、ビラを作って掲示板に貼ったり、一年生に渡したりしたらいいんじゃないかな?」
「うん、そうしよっか」
私の案を梓ちゃんは賛成して、白紙にギターの絵や軽音楽部に関する事のデザインを構想を練って案を出し合いながらもチラチを描く事にしたの。

「うーん・・・一応描けたけど・・・演奏もやっぱり必要なんじゃないかな?憂」
「そうだよね〜。二人ともギターだし、そんなバンド聞いたことないけど・・・」
「いるよ?DEPAPEPEって言うバンド名で二人組のバンド。しかもその二人はギターだよ?」
「本当に?!!」
梓ちゃんが言うにはDEPAPEPEというバンドは2002年にユニットを結成、路上ライブを中心にインディーズではアルバム3枚をリリースし、計10万枚を売り上げて、2005年にアルバム「Let's Go!!!」でメジャーデビュー、インストゥルメンタルのアーティストのデビュー曲としては日本音楽史上初のオリコンベスト10にランクインして、「インストミュージックをポピュラーに!」を目標に活動しているバンドだってさ。すごいよねプロって。

「でもさ、私達プロじゃなくてもさ、いけるよ。だからやってみようよ。ね?憂」
「う、うん。緊張するけど頑張ってみるね?梓ちゃん」
「で、曲なんだけどさ・・・何にする?」
「う、うーん・・・その前に生徒会の人に講堂使用許可書を提出しないといけないじゃないの?あとは何曲歌っていいのかとかさ」
「あ、そっか。私、取りに行ってくるね!ついでに何曲歌っていいかもね」

いつもは律さんが用意していたから私達は全然講堂使用許可書とか用意していなかったの。うーん、これから私達がしっかりしないといけないのにお姉ちゃんに怒られるよ『ちゃんと先輩らしくしてろコノヤロー』みたいに♪えへへ〜。
ーーーーーーーー
しばらく時間が過ぎ、梓ちゃんは紙を持って部室へ入室。
どうやら講堂使用許可書を貰ってきたみたい。あ、ちなみにまだお姉ちゃんみたいな髪型でずっといました。だから・・・

「あ、唯先輩。今回は三曲でした・・・って、違ったー!!あれは憂だった!!って、憂いつまでその髪型なのー?!」
また私の事をお姉ちゃんだと勘違い。
「へ?ご、ごめんね?梓ちゃん」
「はぁっ・・・私も馬鹿だったよ。さっき唯先輩がいないって分かっていた筈なのにさ・・・」
「う、うん・・・そだね」
「もう・・・で、三曲演奏する訳なんだけど・・・『ふわふわタイム』、『U&I』、そして最後に先輩達が残してくれた『天使にふれたよ』でいいよね?」
「うん、それでいいかな?」
『天使にふれたよ』の楽譜は私や梓ちゃんの為に渡してあったので今私達の手元にあったの。リードギターとサイドギターのパートの二つ用意してくれたんだっ。

「よし、さっそく『ふわふわタイム』で演奏の質を確認しようか。二人に減っちゃったから音が寂しくなっちゃうかもしれないけど・・・」
「う、うん・・・そうかもしれないね」
私達はギターを構え、お姉ちゃん達が最初に作った『ふわふわタイム』を演奏。パートはいつもサイドのパートしているからそのパートを私が弾いていたんだけど、梓ちゃんはというと・・・

〜〜〜♪♪♪♪
「あ、あれ?梓ちゃん?それいつものパートじゃない?リードの部分はしないの?」
「へ?あ、ああ〜。そっか、じゃ私がリードやるから憂はいつものサイドね」
「は〜い」
もう一度演奏をすると
〜〜〜♪♪♪
歌いだしの部分に差し掛かっても誰も歌わなかったの。私は歌いながら弾くのは無理だし・・・そうだ、梓ちゃんに頼もう!
「ね、ねぇ。歌わないの?」
「へ??私が歌うの?」
「そうだよ?私、歌いながら弾くなんて無理かもしれない・・・」
「あ、そっか・・・よし、私が歌うね?」
「うん、ごめんね?助かるよ」

もう一度演奏すると
〜〜♪♪♪
「き、キミを見ているとっ、いつもハートドキドキっ」
「ちょ、ちょっとストップ梓ちゃん。一旦落ち着こう?ね?」
梓ちゃんは歌い始めると演奏も少し乱れて歌声も乱れたの。それを見かねて私は思わず止めちゃったけど・・・おごがましいかな?

「・・・うわー!!?」
「ど、どしたの?!!」
突然梓ちゃんは絶叫。それに驚くしかない私。一体どうしたの?
「私、ちょいちょい唯先輩の事馬鹿にしてた事に今猛烈に後悔しちゃってるー!」
「へ?ど、どゆこと?」
「だ、だって・・・唯先輩って記号も読めなかった時もあったし演奏も澪先輩や私に聞いているのを見てさ・・・私、唯先輩のことよく『記号もギターに関する事もよく分かってなくてよく演奏できるもんだな〜』なんて思っちゃったりしてたんだよ!」
「あ、あ〜。お姉ちゃんギター初めて少ししか経ってなかったから・・・」
「それもあるかもしれないけど、でも初心者とは思えない上手さなんだよ?実際は初心者だった・・・はぁ・・・唯先輩って才能を持ってる天才だったりして・・・」
「絶対音感持ってるって言ってたよね?きっとそれのおかげじゃ・・・」
「はぁ・・・もういいや。とりあえず、『U&I』も『天使にふれたよ』も練習しよ?このままじゃネガティブになって練習する気も起きないよ・・・」
「が、頑張ってね?梓ちゃん」

-104-
Copyright ©かがみいん All Rights Reserved 
<< 前のページへ 次のページへ >> ここまでで読み終える