小説『俺は平沢唯に憑依してしまう。【完結済】』
作者:かがみいん()

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第1話

俺は意識を失ってから何日たったのだろうか?
気が付くと、ふかっと感触が背中に感じる。
俺は布団で寝ているんだなとなんとなくわかった。

目を開けると見知らぬ天井。白をベースとした景色が視界いっぱいあった。

「ッッッッ!ぅえぇぇぇん!」

な、なんだ今の泣き声は!?だいぶ俺の近くから聞こえてたような・・・

「はいはい。オムツ替えましょうね」
見た目は20代前半の女性が俺に駆け寄ってくる。

な、なにするんだ!?
その女性は、俺が履いているオムツを替えていた。

「ッッッッ!ぅえぇぇぇん!」
かなりびっくりしている。俺は赤ちゃんになっていた。

「オムツ替えましょうね大丈夫恐がらないのよ」

オムツ?俺にいっているのか?

「もうすぐあなたは、お姉ちゃんになるのよー」

お姉ちゃん!?ということは俺は・・・!?

「はい終わり。頑張ったね。唯」

唯・・・ということは!

「うふふ♪家族が増えて平沢家がにぎやかになるのね」

そうか俺は平沢唯に憑依したようだ。しかも赤ちゃんに・・・
俺の前途多難の赤ちゃんライフが始まろうとしている・・・

ーーーーー

完全に心が折れるかもしれない。
俺はそう思うしかないのだ。だってそうだろ!大の大人が母乳を吸わされているんだよ!?びっくりだよ!

でも俺は赤ちゃんである。何か言おうとしたら・・・・
「ぅ・・・ぁっ・・・だ」

・・・・完璧に赤ちゃんだ。喋りたいことが喋れない苦しさは異常なほどだ。すると見た目20代後半だろうか、ちょっとハンサム風な男性が駆け寄り

「あぁ♪やっぱり唯かわいいよ」

いきなり俺を抱き上げ頬擦りしてくる。なんか、ひげがじょりじょりと感触がある。

「ッッッッ!うぇぇぇぇん!」
うん。泣きたくなるのは分かる。


すると母親が来て
「こらっ!唯をいじめないの!」

俺を父親?から奪いとり俺を慰めている。

あぁ、なんだか暖かい。眠いな。俺は赤ちゃん特有のスキルを発動し眠ってしまう。

「あらあら。もう寝たのね」


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しばらく寝ていたようだな、外を見ると夜になっていた。
まだ寝てたいので寝ようとしたらすぐ近くからなんだか声がするな。

「・・・ッッッッ!ぁッ」
ふむ、どうやら青春の声が聞こえている。こんな近くでやると俺がびっくりするじゃないか。

「ッッッッ!うぇぇぇぇん!」
ほらびっくりしたじゃん。

「あ、あなた。唯が・・・ひぃーっ!」
もうゆっくりしてくださいよ。


ーーーーーーーーー


赤ちゃんライフが2年経った。
平沢唯、3歳になりました。
妹の憂も生まれて2年経っていつも俺の近くにいる。

「んねぇ。ねぇ」
・・・ひょっとして俺に待てと、言っているのか?
とりあえず座って待つ。

「エヘヘー」
俺に抱きつき無邪気に笑っているなにが面白いか、いまいち分からないが俺も笑おう。
「エヘヘー」

「あらあら二人共仲良くて、いいわよね」
母親は笑顔で言ってくる。なんだかこの人が笑っているだけで世の中が幸せになるような印象がある
「あ、そうそう。唯ちゃん、憂ちゃん。公園にいきましようか」

ん?公園か・・・ちょうどいい。この辺の地理は分からないから、返事しよう。

「「いいよ」」
俺と憂は同時に返事した。やはり姉妹か。

「うふふ。じゃ、いこっか」
俺は母親の左手を、
憂は右手をつなぎ家を出る。歩くこと、12・3分経っただろうか
俺は地理を覚えるのに必死で、周りをキョロキョロしているのを母親は
「唯ちゃん。探し物でもあるの?」
 
いや、そうではないが・・・
正直、地理を覚えると3歳が言える内容ではないため

「んーん。めずらしいきゃ・・・から」
ふむ、まだ舌ったらずなので、言葉を噛む。歯痒い(はがゆい)。

「うふふ。そうなの。あっ、ほらあそこが公園よ」

そこにはブランコなどの遊具がたくさんある。すると憂が

「わーー!あしょぼっ」
大はしゃぎで砂場に向かった。
やはり憂も2歳なので舌ったらずだ。

俺も行くとするか。母親は近くにいた保護者の集団に行き、何かを話し込んでいる。
「おみゃみゃごとしよっ。おねぇたんっ!」
やれやれ大学生がおままごとか。友達が聞いたらかなり馬鹿にするだろう。いや末代まで語り継がれるだろうな。

「うん!」

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羞恥心いっぱいのまま、おままごとを終え、俺と憂は母親と手を繋ぎ我が家へと帰る。
「また、あしょぼーねぇ!」

あぁ、またおままごとしような。
「うん!いいにょ・・・いいよね?ママ!」

うむ、この前母親がママと言いなさいと、かなりしつこく言ってくるので俺はママと言っている。本当に恥ずかしいな。

「ええ、いいわよ」

母親はニッコリ笑って俺達を見つめてくれる。やはり母は強し、だな。

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