第21話
学園祭でのライブが終わり、どっと疲れた。大成功だったな。
12月。身が凍えるような寒さを何とか出来ないのかと思案しながら俺は憂と学校に行っている途中である。憂と俺の学校は同じ方向にあるから出来る事なのである。
「うー。寒いね。お姉ちゃん」
「あー。そうだねぇ」
憂は防寒服として、制服とコートを重ね着にして、手袋で手をすりすりしながら歩いていた。そういえば、マフラーはどうしたのだろうか。この前していたはずなのだが・・・
「ねぇ、憂。マフラーどうしたの?」
「あのね。この前洗濯してたら、どこかに飛んじゃったの。あれ?手袋右手しか付けてないよ?どうしたの?お姉ちゃん」
む、よく見ているな。手袋はどっかに無くしたかもな。
俺はあまりにも寒そうな憂を見て俺が愛用している赤いマフラーをマフラーの半分の面積を憂に掛ける。
「ほら。風邪引くから。これで暖かいでしょ」
「わー!ありがとう。お姉ちゃん」
ぱぁぁと笑顔を見せる。よかったな。憂は俺の左手を握るが、何だ?何かようか?
「お姉ちゃんもこれで風邪引かないでしょ?」
「わー。暖かいよ。憂」
俺と憂は途中の別れ道まで、手を握りあっていた。憂は本当 に優しい子だ。
学校に着き、つまらない授業を適当に耳を傾け、放課後、音楽室へと体を震わせながら行く。俺ってどんな状況でも部活やるのな。
「おー。唯。遅いぞー」
「唯。早くこっちこいよ。寒いだろ?」
「唯ちゃん。モンブラン食べる?」
上から律、澪、紬の順で言ってくる。お前達も、何だかんだでこの部活好きなのな。今の俺には、その気持ちが凄く分かる。
「今度のクリスマスに軽音楽部のクリスマス会を開くぜ」
律は突然、そんな事を言うもんだからびっくりする。聞いてないぞそれ。
どこでやるかを相談しているのだが、律、澪、紬は何かと都合があるようだ。よって、消去法により俺の家となってしまった。親は、まだパリ辺りに旅行中で、家には帰らないので憂と二人きりなのだ。
俺の家は無駄に広いので、和も誘った。少し遅れるけどいいならと、了承した。
律のまた突然の
「プレゼント交換もしようぜ」
なんて、言うもんだから困る。はぁ、友達の所為で原作知っているけど、こういった細かい事は忘れた。
それで、俺は今、プレゼントを買う為に、和と大きなデパートで買う物を物色している。
「決まった?唯」
「まだだよ。和ちゃん」
和は何かを買ったようで、買い物袋を手に提げている。
どれを買おうかとキョロキョロし、ふ、とピンクのマフラーを見かける。
そしてある事を思い出す。
『ねぇ、憂。マフラーどうしたの?』
『あのね。この前洗濯してたら、どこかに飛んじゃったの』
そうだ。憂のマフラーだ。
俺は素早くピンクのマフラーを取り、会計を済ませ、和と一緒にデパートを出る。
買い物を済ませ、我が家へと帰り、憂に報告する。
「軽音楽部のみんなと、ここでクリスマス会するから料理とか手伝ってね。憂」
「え!?ここで!?まぁ、いいんだけど・・・私、一度でいいから軽音楽部のみなさんと会いたいって思っていたんだ!えへへ」
とても嬉しそうだ。俺がしょっちゅう軽音楽部の事を喋っていたから、何かと興味があるようだ。
「で?そのクリスマス会で何するの?」
「ん。プレゼント交換と一人一芸 だってさー」
そう、また律の勝手な決め付けにより、一人一芸もやらなければならない。はぁ、やれやれ。
「え、えー。一芸って私何も出来ないと思うんだけどなー。うーん」
首を傾げ、うーんうーんと唸っている。そんなに真面目に考えるなよ。そんなもの適当にやればいいと思うんだが・・・
クリスマス当日。俺と憂はクリスマス会の準備をしている。俺は料理をしている。七面鳥焼いたり、ケーキ焼いたり、サラダ作ったり・・・
憂のサポートのおかげで料理は出来た。うむ、上出来に仕上がっている。すると・・・
ピンポーンと軽音楽部との集合の時間と共に聞こえていたので、来たなと俺と憂は玄関へと向かう。
「「「おじゃましまーす」」」
律、澪、紬が来たようだ。憂は
「あなた方が軽音楽部のみなさんですね。いつも私の姉がお世話になってます」
人数分のスリッパを並べながらニコニコしている。
みんなは何だか俺、憂を見て驚愕(きょうがく)の表情な表情を向けるのだが・・・何だ?そんなに姉妹が珍しいのか?
ーーーーーー
「おぉー。すっげー料理!」
「あ、ああ。」
「すっごーい。みんな唯ちゃんが作ったの?」
上から律、澪、紬が言ってくる。まぁ、ゆっくりしてけ。
和もやっと我が家に来てくれて律は、全員集合したのを確認したら・・・
「今からプレゼント交換するぞー」
「「「おー」」」
律の提案により、プレゼント交換をしようと思ったのだが・・・
「ふふ。みんな何持ってきたのかしら?」
「「「さわちゃん!?」」」
突然の山中先生の登場。お前はどこから入ってきた?
「あ、警察ですか?不法侵入者です。助けてください」
「ち、ちょ。唯ちゃん!?冗談よね!?」
舌をべーと出し、通話状態じゃない事を先生に見せる。山中先生は、ほっとする。あ、ちなみに憂は見ていない。憂は・・・そんな事を聞くな。回答に困る。
憂は俺が今やった事に対し俺に絶望する。そんな事はさせない。させたくもない。
プレゼント交換をやり、憂には俺が買ったピンクのマフラー。俺には憂が買ったピンクの手袋が。その他は何だか個性的だったな。特に笑ったのは、山中先生が引き当てたびっくり箱だ。
一人一芸も予想外の盛り上がりを成し、クリスマス会は閉じていく・・・なかなか楽しかったな。