小説『俺は平沢唯に憑依してしまう。【完結済】』
作者:かがみいん()

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第28話

俺、憂、紬は今、肝試し中である。仕掛け人の律は何処かに隠れ、俺達を驚かせるという。そのやる気を軽音楽部に活かせないものなのか。


「えへへー。何が出てくるんだろうねー。お姉ちゃん。ムギさん」

「さあー?どうだろうねー?憂」


「きっと面白い事をするはずよー。憂ちゃん。唯ちゃん」


今肝試し中なのか?と思うような緊張感の無い、のほほんとした俺達だった。


すると、別行動していた梓、澪ペアの方から・・・


『キャーーー!』


と悲鳴が聞こえた。この声からして澪だ。とんでもない嫌な予感していた俺達は


「この声、澪さんだ!行ってみない!?」


「そ、そうだね。行こう。憂」
 

「唯ちゃん、憂ちゃん。急ごうよ!」


ーーーーーーー


side 秋山 澪

律の提案で肝試しをやる事になった私達はペアを作り、律が驚かせ役をするらしいけど・・・
私のペアは梓だ。

「まったく、律はまだまだ子供だなー。高校生にもなって肝試しなんて」

「ちょ、手が痛いです。澪先輩・・・」

梓の為にしっかりと手を握っているんだ。梓は意外と怖がりかもしれないからなー。うん、うん。私は結構先輩らしい所もあるじゃないか。

「だ、大丈夫ですから、手を離してください。痛いです」

「梓、心配しなくてもいいからな。この私がいれば百人力だ」

「や、そうじゃなくて・・・」

梓は変にプライドが高いのか知らないけど、ちゃんと正直に話せばいいのに。まったく梓は。

すると・・・

ガサッ・・・ガサガサっ

「ひぃっ!!」

草むらから何かが出てきそうな音にものすごく驚いた私。いいや、ちょっとだけ驚いたかな?ははっ、律め。まだまだ詰めが甘いぞ?

「みぃぃつけぇぇたぁぁ」

草むらからユラユラと成人女性らしきお化け?が出たので思わず・・・


「キャーーー!」


ーーーーーーー

side 平沢 唯

俺達は澪、梓の所に行き澪は倒れ、梓は涙ぐんでいる。一体どうしたんだろうか。


「み、見つけたー」


山中先生だ・・・一体何で此処にいるんだよ。


ーーーーーー


「はー。良かったー。みんなと合流出来て、今まで迷っていたんだからね」


事の始まりはこうだ。みんなをびっくりさせる為に内緒でこの合宿に参加するというのだ。はぁ、来るなら普通に来いよ。


「で?肝試しやっていたんだって?いいな私もやりかったなー」


山中先生の乱入のせいで、肝試しは無くなり憂は何かとしょんぼりしている。よし決めた。


「肝試し潰れたから私、怪談話するね!」


「え!?怪談!?」


憂は食い付き目を光らせるが澪は、『ひぃっ!』とビビって身体を震わせる。


俺、憂、律、梓、紬、澪、山中先生は円になり、部屋の電気を消し、ろうそくに火を点け、ろうそくの火のみしか俺達の周りを灯さない。


「さぁ、始めなさい。唯ちゃん」


「や、止めようよ。唯」


澪は涙目で見ているのだが、俺は憂の為にしたいんだ。我慢してくれ。 


俺は、パーティー用の黒いヒゲを顔に貼り・・・


「あー!稲川さんだー!お姉ちゃん。真似するの!?」


憂は大はしゃぎ でまぶしいほどの笑顔だ。ちなみに稲川さんとは憂のお気に入りの怪談話をする人だ。

「へ、へぇ、ノリがいいのね。唯ちゃんって。知らなかった」


「えへへー。・・・えー、実はある人の体験した話なんですけどもね?」


「う、うわ始まった。って、何故敬語!?」


「それはですね。稲川さんは敬語で怪談するからですよ。律さん。さ、お姉ちゃん続けて」


「はい。ある日にー、東京都の在住のサラリーマンは残業で夜遅くまで会社に残っていたんですよねぇー。
やっと仕事が終わった、と会社を出て歩いて家に向かおうとしていたんですって。
会社から、家までにあるシュウマイ屋があったんですよねぇー。
そのシュウマイ屋は人肉でシュウマイを作っているという噂があって、誰も近寄らなかったんですって。

『(澪)ひいっ!』『(梓)ひっ』


しかしですねぇ、帰り道に他に食べ物を買う所もありませんし、お腹も減っていましたから、そのシュウマイの店でシュウマイを買うことにしたんですよねぇ。

『(山)な、なかなか本格的ね』


シュウマイを買って歩き出すと、シュウマイが入った袋の中からすごく良い匂いがしてきたんですよねぇ。

その匂いに、男は我慢できなくなって『一つぐらい食べてもいいだろ』と思って、袋の中からシュウマイが入った箱を出したんですよ。


フタをあけて、すぅーと中を見ると・・・。

シュウマイが一つなくなっていたんですよ。

男は、驚いて怖くなった、ただ単に店の人が入れ間違えただけだ、と冷静に考えてまた歩き出したんですよ。

『(憂)で、それで?』

するとー、またシュウマイが食べたくなって、箱を取り出してみると・・・。
また一つシュウマイがなくなっているんですよ!

『(梓)(澪)ひいっ!』

どういうことでしょう!?
さっき確かにあったはずの個数がなくなっているんです。
入れ間違えじゃないんです。
何故!?
男は動揺したんです。
しかし、考えすぎない方が良い、とまた歩き始めたんですよ。
『(律)・・・ぅ』
もしかしたら・・・また一つ減っているかも・・・。
『(紬)わぁ・・・』
そう思い、恐る恐るフタをあけて見ますと・・・。

今度はシュウマイが2個減っていたんですよ!


男はもう怖くなりました。


「うわぁぁぁぁぁぁぁぁ」


男は、全速力で家に向かい、
家に着くと、すぐにカギを閉めて、一息ついたんですよ。


結局シュウマイはそのまま持ってきてしまったんです。

やはり、このシュウマイは呪われている?やはり、人の肉でシュウマイを!


男は怖くなったんですけど、もう一度だけシュウマイを見てみることにしました。


フタをあけます。

『(澪)ひいっ!くる!』


シュウマイが全部なくなっているんですよねぇー。


男はもう声が出ないくらい恐怖感があったんだそうです。


すると、フタ から何かが落ちました。何だろう!?


男は、箱のフタを見てみますと・・・・
買った数だけのシュウマイが。

『(梓)ひいっ!』

シュウマイはただフタについていただけだったんです。」


「「「え!?」」」

「これにて『恐怖のシュウマイ』を終わります。えへへー。どうだった?」


俺はヒゲを取り笑顔でみんなを見るすると・・・


「あ、あははははは。なんだよー唯ー。いひひひひ。さっきまで恐がっていた私返せーあはは!」


俺の怪談話は憂にも、受けたので良かった。澪は・・・気絶していた。やれやれ。

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