第32話
side 平沢 唯
ある日の昼休み。
律は、学園祭が近いから昼休みも練習をしようと提案する。俺、紬は
「「いいよ〜」」
で、憂、梓、澪も呼び音楽室へと向かったが、何故か澪はイラついているようだ。
「ほらっ。練習しようぜー」
「・・・分かったよ」
澪は元気が無い。そんな澪を見兼ねたのか
「ほらポニーテー」
澪を元気にさせる為、律は必死に落ち着かせようとする。
「・・・やめろ」
「ほらっ。たこ焼きー」
澪の頬を丸くつねる。
「練習だろ!!」
澪は怒鳴った。乱れが、来ている。
「にひひー。そうだね。しよっか練習」
律は笑い、俺達は演奏の準備をして、スティックを鳴らし
「ワン!ツー!」
〜♪
だが、澪は演奏を止めた。
「・・・おい。律。ドラムが力強くないぞ」
「あ、ごめん。もう一度練習な。ワン!ツー!」
〜♪
俺達は演奏を再びやるのだが・・・澪はまた演奏を止め
「・・・おい律。いい加減にしろ」
「・・・あ、ごめん。今ちょっと私ダメだわ・・・また放課後練習なー」
律は音楽室を出ようとするのだが・・・
また、軽音楽部が乱れる。ゆっくりと。歯止めが出来ないように・・・
「あのな!律の思いつきでみんな練習をしているんだぞ!昼休みを使ってだぞ!」
「あー!ごめんねー!せっかくの和との楽しいランチ時間を邪魔して!」
「な、何で和が出てくるんだよ!」
律と澪の喧嘩で、紬、梓、憂はオロオロしている。後輩の前でみっともない。何でそんなにイラついていたのかは知らないが・・・
「だって、唯が誘ったお茶会で唯が『和』って出たら喜んでいたじゃん!」
「は、はぁ!!?意味が分からん!」
俺は俺達の事をほっといて私情による澪と律の喧嘩を見て頭に来た。俺は右足をおもいっきり上げ・・・
だぁん!!
と、地面を蹴り、全員俺の方を見る。本当に頭に来た。理性が飛んだ。
「・・・いつまでも、ぎゃーぎゃー。うるせぇんだよ・・・発情期ですか?コノヤロー・・・」
「「「「え!?」」」」
俺はギターをケースに入れ、バックを手に取り。
「えっ?えっ?ちょ、どこに行くんですか!?唯先輩!?」
「・・・帰るんだよ。早退する・・・」
「お、お姉ちゃん!?練習は!?」
俺はドアまで来て、ピタッと止まり、眉間にシワを寄せて、みんなを見て、みんなは、びくっとしていることが分かった。
「・・・練習?はっ。笑わせんなよ・・・この状況で、出来ると思うのか?・・・出来ねぇよな・・・という事で早退する・・・」
俺はドアを締め、外では『唯!』『お姉ちゃん!』『唯ちゃん!』『唯先輩!』と聞こえるが、スルー。
担任に早退届を出し、担任はどうしてだ?と聞くが、
「・・・重度のストレスにより、円形脱毛症になりそうだからです・・・すみません・・・」
担任に待て!と言われるがそそくさと我が家に帰る。(※注 ちなみに女性でもストレス等で円形脱毛症になるそうですよ。)
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side 平沢 憂
お姉ちゃんが澪さんと律さんの喧嘩を見て怒っちゃって部室を出てから部室はしん、としていたの。私、お姉ちゃんが怒ったの初めて見たから戸惑いを隠せていなかった。
「あ、あの・・・律さん?澪さん?」
私はあまりにも居心地が悪くてたえれすに澪さんや律さんの表情を見てお姉ちゃんが出ていった方角を見て固まっていたの。
確かに私だって、それに梓ちゃんも言葉を発せないほどに固まっていて私は
「あ、の・・・す、すみません!お姉ちゃんが・・・その・・・」
私はまだ頭が混乱してして何を話せばいいのか分からなくなっていて、オロオロしてしまっていた。すると律さんは俯きながら重い口を開いて
「・・・あ、そうだな。ごめん、憂ちゃん。謝るのは私達なのに・・・唯は・・・こんな情けない私達の喧嘩を見て・・・」
澪さんは『私の方から唯に電話するから・・・』と元気が無い声で私に伝え私はしっかりと頷いて、梓ちゃんは私達を見渡しながら
「あ、あの、今回の唯先輩の事ですが・・・許しませんか?」
私達は梓ちゃんの言葉に賛成し、私はお姉ちゃんの事が心配なので早退届を提出してお姉ちゃんは家にいると思うから説得してみるとみんなに提案し・・・
「憂ちゃん・・・唯ちゃんに私達は唯ちゃんの事は許すから、てちゃんと伝えてね・・・」
「はいっ!」
ムギさんの後押しで部室の扉を開きお姉ちゃんがいる所に走っていった・・・
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side 平沢 唯
俺は自分の部屋のベッドにダイブし、今さっきやった事を後悔した。俺がイラついたからと言ってあれはやって良かったのだろうか?みんな、驚いたし、本当に俺はダメな奴だ。自己嫌悪だ。
しばらく時間が経ち、俺の部屋のドアにコンコン、と音がなる。誰だろうか?学校はまだあるし・・・
『お姉ちゃん・・・入るよ・・・』
憂だ。早退したのだろうか?姉妹揃って何やってるんだかね。
俺は今、誰にも顔を見せたく無く枕を顔に押し付け、
「・・・どうぞ」
俺は少し小さい声だったが、憂には聞こえ、憂は俺の近くに来ているのだろうか?足音が近づいてくる。そして、俺のベッドに座り
「お姉ちゃんは優しいね・・・」
違う。俺は優しく無い。
「・・・違う・・・憂」
「ううん・・・私と梓ちゃんとムギさんの為に怒ってくれたんじゃないの?違う?」
「・・・・」
違う。頭に来たからだ。
「お姉ちゃんって怒るとき、ああいう喋り方するんだって・・・私、嬉しかったな〜」
「・・・嬉しい?・・・」
まだ、枕に顔に押し付け、憂の表情は見れない。俺の顔は今どういう顔しているかも分からない。
「そう、でねこの前。お姉ちゃんに黙って軽音楽部に入って、お姉ちゃんをびっくりさせたでしょ?で、今さっきのがお姉ちゃんの番だった訳なの」
「・・・」
「だから私達、話し合って、お姉ちゃんが怒った事を許そうって決めたんだ。えへへ〜」
俺を許すのか?勝手に怒って、勝手に出ていって、練習に来ない俺を?
「だから。ね?顔を見せてよ。みんな待っているから。お姉ちゃんの事、みんな大好きだから」
「ぐっ・・・うわあぁあぁぁあああぁぁ」
俺は、憂に抱きつき、泣いた、ひたすら泣いた、無我夢中で泣いた。泣かずには、いてられるか。
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俺は泣き疲れたのか、いつの間にか寝ていて、布団も、しっかりと・・・本当にダメな姉だな。
プルルルル
携帯が震え、電話相手は澪だ。
「・・・もしもし」
『唯?まだ怒ってる?』
「・・・全然。大丈夫だから心配しないで。澪ちゃん」
『そっか。ありがとうな。唯。私と律のみっともない喧嘩を止めてくれて。ごめんな』
「・・・ううん。こっちこそごめん。みんなをびっくりさせちゃった。」
『だからこの件は終わり。だから明日から軽音楽部に来いよ。絶対だぞ?唯。それじゃ。』
パタリと携帯を閉じ、また泣いた。本当にいい人達でよかった。俺は、泣き疲れ、寝た。本当に・・・みんな・・・ごめんな・・・