第34話
試験も終わり、学園祭も近いことから、練習に熱が入る。
「おー。いい感じじゃん!」
「ああ、そうだな」
律、澪は満足そうに頷いた。
すると、山中先生が何やら衣装を持ってきて
「やっほー!みんな頑張ってるー?」
俺達は山中先生が持ってきた衣裳に興味深々だが、澪、梓は
「ひいっ!あれ着て演奏するのか?」
「普通に制服でいいと思いますが・・・」
澪は慌て、梓はジト目で山中先生を見る。俺も制服がいいのだがな。憂、紬、律は
「わー。可愛いー。」
「本当だね〜」
「お、これなんか澪に似合うかも!」
律は澪を着せ替え人形にするかのように澪にいろんな衣装を身体に当てる。
抗議した中、軽くて演奏がしやすい浴衣へと決まってしまった。やれやれ。
「さ、唯ちゃんも着て」
山中先生は、いつの間にか全員を着替えさせた。一体どうやったんだよ。
「リハーサルも兼ねてその衣装で演奏しなさい!」
と、山中先生の職権乱用を使い、俺達は浴衣のまま、演奏をやった。はぁ、やれやれ。
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次の日。俺は風邪を引いた。俺だけが見事に風邪を引いた。みんなどうして、ピンピンしているのか謎なのだが。学園祭も後少しなのに。山中め、覚えていろ。
「お姉ちゃん〜。大丈夫?」
俺は部屋で寝ていて憂に看病して貰っている。
「あ〜。憂〜。風邪うつるからダメだよ〜」
「ううん。私、お姉ちゃんの為なら風邪、うつってもいいよ」
なんとも、優しい妹だ。いい子に育っているよ。お父さん、お母さん。
「私のパート、憂に任せるから。大丈夫、憂は上手だから。ッッゴホッ」
「お姉ちゃん・・・待っているからね。風邪が治る事。だから今は寝ていてね。」
「うん。あ、学校の時間だよ?憂。行っておいでよ。私は大丈夫だから。ッッゴホッ!」
「う、うん。じゃ、冷蔵庫にみかんゼリーとかあるから食べてね?」
憂は俺の部屋を出るが、心配し俺を見るが俺は『大丈夫』と言って、憂を行かせた。さて、寝るか。
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学園祭まで後、三日後となった日、学校の放課後の時間に、ティッシュを手に持ち、音楽室へと入った。俺は
「やっほ〜ぅ」
と言いながら、入ってきたが律は
「激しくデジャブだ!」
と言ってきた。何の事だろうか。律が言うには、憂が一人二役で、俺を表現したのだそうだ。
憂が出ていっては俺が居て、俺が出ていっては憂が居て、という不思議な体験に、みんなにばれた、というのだ。
「あ、お姉ちゃん・・・まだ熱があるよ!?」
「「「え!?」」」
俺の額に手を当て、憂は困った顔をする。
「唯。学園祭まで、来るな」
澪の突然の言葉に耳を疑う。
「唯。風邪が治ってから、私達と演奏するんだ。学園祭で」
「う、うん。」
「だから、唯。唯が居ないと私達はダメになるんだ。唯は『放課後ティータイム』の一員だからだ!」
「澪ちゃん・・・うん分かった!」
「頑張って治しましょう!唯先輩!」
「うん!梓ちゃん!」
「風邪が治ってから、お菓子食べようね〜唯ちゃん」
「うん!食べようね!ムギちゃん!」
「そうだぜ。唯をみんな待っているからな!」
「うん!律ちゃん!待っててよ!」
こうして、我が家に帰り、風邪が治るように、必死に寝たり、飯もしっかりと食べ、薬も飲んだりした。待ってろよ。みんな!
ーーーーーー
学園祭当日の朝。俺は、すっかりと元気になり、学校にいる山中先生に電話した。
「もしもし、山中先生?」
『あ、唯ちゃん!元気になった!?』
「ええ、おかげさまで」
『そう、そしたら、職員室に来なさい。』
「あ、はい。分かりました。」
ーーーーーー
学校に着き、山中先生が次なる衣装を俺に渡した、懲りない奴だ。
「先生?一体コレは何でしょうか?」
俺はニコニコして、山中先生の頬をつねった。
「い、いふぁい、いふぁい!」
山中先生は涙目になったので、離してあげた。
「もうっ!・・・でね、この前の浴衣を改良して、中を温かくする素材にしてみましたー!」
「あなたは、アホですか?この前の衣装をそれにしたら私は、風邪を引かなかったんですよ?ごめんなさいは?」
俺はニコニコして、山中先生の頬をつねった。
「い、いふぁいいふぁい!ごめんなふぁい!」
ああ。恨みが晴れた。
ーーーーーーーーーー
で、山中先生と音楽室に行き、
澪達と雑談、そして、講師へと行って、俺達は
「こんにちは!軽音楽部です!」
学園祭ライブを行っていた。もちろん、ギターは忘れていない。
「最初の曲『カゲのアシアト』!」
律がスティックを鳴らし
「ワン!ツー!スリー!フォー!」
〜♪
律のドラム、澪のベース、紬のキーボード、俺、憂、梓のギターが講堂に響く。
君といたあの時間はなんなんでしょうか
幻想?そんなつまらない物は僕は信じない
現状?僕と君のカンケイはなんでしょうか
愛情?僕は君のことが忘れられないだけなのです
もうすぐ会えなくなる?君の突然コトバを僕は君のアシアトを頼っていくだけなんだよ
僕と居たあの時間はなんだったんでしょうか
矛盾?そんなコトバは僕には届かないよ
異常?僕はそんな君の世界なんて知らないよ
運命?そう僕は君のことを信じていたいのです
もう会えない?そんな君の突然のコトバを君のアシアトを辿り着けるだけだよ
〜♪
ワアアア、と歓声が響く。
俺は、MCなのでまた喋る。
「私達軽音楽部は、必死に頑張りました!」
そうなんだ。憂、梓が入った途端にな。
「私達はお菓子とかいっぱい食べて、練習をあまりしなかった日もあるけど、それでも頑張りました!」
ああ、そうさ。頑張ったとも。
「だから今、ここにいることが私達『放課後ティータイム』の『最高の思い出』になるのだから!」
ああ、そうだとも。みんないきいきしているんだからな。
「次の曲『ふわふわタイム』!」
〜♪
また、俺達の音色が講堂に響く。〜♪
君を見ているとーーーー
その想いはーーーーーー
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『ふわふわタイム』を歌い終わった。だが、
〜♪キーボードの紬が鳴らす
〜♪律がドラムを鳴らす
〜♪澪がベースを鳴らす
〜♪憂、梓がギターを鳴らす
ああ、もう一度な。分かったよ。
「もう一回!『ふわふわタイム』!」
〜♪
ああ、お願いーーーー
ドリームーーーー
〜♪
ーーーーーー
『ふわふわタイム』を演奏している時に思い出したんだ、憂と梓が入部したときのこと
『(律)なあ、武道館でライブというのはどうだ』
また、本末転倒の事を・・・と思ったんだが・・・
『(梓)え、ええ!?武道館でライブですか!?』
そりゃ、無いよな。て思うよな。
『(紬)大丈夫よ!梓ちゃん。私達ならやれるわ!』
紬の何の根拠も無い発言だが、
『(憂)そうだよ!梓ちゃん!私達ならできることだよ!』
憂も、意思表示。まじかよ。
『(澪)ほら。みんなこうやって前向きに考えているぞ?梓』
澪までもか、と思う。でも、俺も
『(唯)大丈夫だよ!梓ちゃん!やれば出来る!!』
梓は
『(梓)くすっ。はい!私も何だかやれる気がしました!』
こうして、俺達は武道館でライブ!という無理難題な目標が出来たが・・・俺は・・・この連中ならやれるのでは?やってくれるのでは?と思ったんだ。根拠は無いけど、それでも、俺は
『(唯)大丈夫!みんなの演奏だから自信が出てくるんだよ!』
みんなにこう言い聞かせた。大丈夫だから、と願いを込めて、本当に、律、澪、紬、憂、梓、山中先生に出会えてよかったーーーー
〜♪
ああ、カミサマーーーー
ドリームタイムーー
お気に入りのーーーー
今夜もーーーー
ふわふわーーーー
〜♪
ーーーーーーなぁ、少しいいだろ?
この軽音楽部に依存しても、可笑しくないだろ?みんな個性が強いんだぜ?
姉想いの妹『平沢憂』
ムードメーカの『田井中律』
怖がり恥ずかり屋の『秋山澪』
のほほんとした『琴吹紬』
上手すぎるギター『中野梓』
な?面白いだろ?何も共通していないけど、息がピッタリと演奏ができるんだ。
ーーだから、俺は軽音楽部の夢を最後まで見届けたいんだ。それまで、いいだろ?