第42話
三年生は卒業した。曽我部先輩は、生徒会長及び平沢唯ファンクラブ会長を和に任した。生徒会長は、やる気はあるらしいのだが、ファンクラブは少し嫌そうな顔をしていた事は、見なかった事にしよう。
そして、俺も三年生になった朝。
眠り眼をこすりながらも、洗面所に行き、顔を洗う。頭の寝癖も直し、ヘアピンを着ける。俺が料理当番なので、朝食を適当に作る。憂も、起きていて小さいポニーテールを完成させ、朝食を今か今かと待っている。
「は〜い。完成だよ〜憂」
「わ〜。いい匂い。美味しそうだよ。お姉ちゃん」
雑談を交わしながら朝食を食べ、制服へと着替える。全身鏡を見てチェックする。
「ふんす!」
今日も頑張るぞ、と気の抜けた気合いを入れ、憂と共に学校へ行く。
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学校に着き、律、澪、紬に会う。
「おはよ〜」
「おー!唯!私達は一緒のクラスだぞ!」
突然なんだろうか?いち早くクラス表を見たそうだ。行動が早いな。俺も、クラス表を見る。
「おー!本当だ!律ちゃんに、澪ちゃんに、ムギちゃんに、それに和ちゃんまで!」
軽音楽部全員集合プラス和に、俺は大興奮だ。ちなみに、憂は純、梓と一緒のクラスだそうだ。
「へへへー。一緒のクラスになれて、良かったな。唯」
「うん!律ちゃん!」
「唯となら楽しい一年になりそうだな」
「うん!楽しくさせるよ!澪ちゃん!」
「私も面白くするからね〜」
「うん!期待しているよ!ムギちゃん!」
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『3-2』の教室に入り、教師を今か今かと待っている。
「おーい和ちゃーん。」
「あら唯。一緒のクラスになれて良かったわね」
「うん!」
俺は、嬉しくて弾ける笑顔で教室を見渡す。
「私、このクラスに入れて良かったよ。律ちゃんに、澪ちゃんに、ムギちゃんに、和ちゃんがいるんだもん!」
「くすっ。私も、唯達と一緒のクラスになれて良かったわよ」
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しばらくすると、『ガラッ』と教室のドアが開き、先生が入るのだが
「「「さわちゃん!?」」」
一体何をどうしてやったのか知らないが、担任になっていた。なるほど、軽音楽部が揃った理由は山中先生だな、と納得する。職権乱用だな。
「こほん。三年二組担任の山中さわ子です。一年間よろしくね」
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入学式も終わり、自己紹介も適当に済まし、放課後。律は突然の
「明後日の新歓ライブに向けて練習だー!」
というのだが、
「え?今日、私と憂ギター持ってきて無いけど」
「私も練習が無いと聞いて、ベース持ってきて無いぞ」
「私もキーボード持ってきていないわ〜」
そう、練習をしないと聞いて、楽器は持ってきていない。
だが、律は
「あっ、そうか・・・でも、部室に行こうぜ!」
気持ちが半端なく分かる。俺も
「うん!私も賛成だよ!理由なんて要らないよ!あえて言うなら私達が軽音楽部だからだよ!」
「あっ、唯!それは私が言おうとした台詞だー!」
「ふっふっふ〜。律ちゃんや、まだまだのよぅ」
「くーっ!こしゃくな!」
そんな俺達のコントを見て、澪、紬も参加意志。
「あ、憂と梓ちゃんに連絡しなきゃ」
「あ、そういえば。部室に紅茶の予備置いてあるんだった〜」
「え?そんなのがあったのか?ムギ」
「うん!今日みたいな非常事態の為に用意してあるの〜♪」
紬のお茶が飲めるのか、いいね。ますます、部室に行きたくなる。
「あっ、憂と梓ちゃん。今から部室に行くんだって〜」
憂と梓との連絡を受け、律は
嬉しいそうに
「よーし。部室まで競争だ!」
「よしきたっ!りっちゃん♪」
「お、おい転ぶぞ。律。ムギ」
三人はどたばたと走る。俺は、きょとん、としていた。
ーーそうか、お前達も軽音楽部が楽しいのか。
俺も軽い足取りで、音楽室へと行く。俺達三年生の最後の高校生活を、面白く、楽しく、過ごせるのだろうか?それは、後から考えよう。