小説『俺は平沢唯に憑依してしまう。【完結済】』
作者:かがみいん()

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第43話

俺も、律、澪、紬の後を追う。だが、廊下で山中先生に出会ったので、今回の話を聞いてみる。


「山中先生でしょ?軽音楽部のみんなを集めたの」


「そうよー。私が仕組んだの」


仕組むって、職権濫用じゃねぇか。


「あ、そうだ。これから、部活勧誘でしょ?部室に秘密兵器があるのー!」


「秘密兵器?何です?それ」


秘密よ、と言いながらどこかに逃げる。まさか、『アレ』じゃないよな。


ーーーーーー


部室に着いたが、澪、律、梓、は困った顔をしている。どうしたのだろうか。


「ねー。どうしたの?」


澪は、『アレを見ろ』と指を指し、部室にある机に奇妙な六つの影がある。


「あー・・・」

机の上に、犬、猫、鶏、馬、豚、猿の着ぐるみが置いてある。


「私が最初に来た時にありました・・・」


「まさか・・・さわちゃんの仕業?」


梓、律は困っている。だが、憂、紬は


「わー♪可愛い♪」


「本当だ♪」


はしゃいでいる。無邪気だな。おい。


「これが、秘密兵器か・・・」


「秘密兵器?」


澪は俺の言葉に疑問に持ち、首を傾げる。


「うん。山中先生が、部活勧誘をするだろうって思っていたらしくて、この秘密兵器を・・・」


澪、律、梓は途方に暮れるが、憂、紬は


「平沢憂だニャー♪」


「琴吹紬だコケー♪」






着ぐるみの頭を被り、ノリノリである。そんな憂、紬を見て思わず

「「「「はぁ・・・」」」」


俺、律、澪、梓はため息である。


「あっ!他の部も勧誘しているぞっ!」


「早く行きましょう!憂もムギ先輩も、それ外してから!」


「ええ〜・・・可愛いのに」


「しょぼ〜ん・・・」


憂、紬は、しょんぼりとしている。俺は置き手紙を見つけた。着ぐるみの下に挟まっていたのだが。

「『これを着て勧誘しなさい。山中さわ子』うん。却下で」


「バッサリですね。唯先輩・・・」


置き手紙を破きゴミ箱へ放り投げ、早く行こうと促したが、途中で山中先生に会ってしまった。

「何で着ないのー!これは教師命令です!」


ーーーーーー


また職権濫用を使い、無理矢理着ぐるみを着させられた。
これでうまくいく試しが無い。
外に出て、勧誘をする。


「軽音楽部ですコケ〜♪」

「みなさん、いかがですかニャー♪」

「き、興味がある人は・・・音楽室までー・・・ヒヒーン・・・」

「し、初心者でも歓迎しますよー・・・ワンワン・・・」


「お、美味しいお菓子もありますよー・・・ブヒブヒ・・・」


「・・・・ウキ・・・コノヤロー・・・」


「「唯が怒った!?」」
「お姉ちゃん♪」
「唯ちゃん、格好良いわ〜♪」
「唯先輩・・・コノヤローって・・・」


山中の道楽に付き合い、イラつきながらも、勧誘に勤しんだ。
道行く人々に軽音楽部に関するビラを配りたいのだが、人々は恐怖を感じてか、俺達を見て引きついた顔をしている。山中め、新入部員が入らなかったら覚悟しておけよ。


「はいよ!軽音楽部ですよー♪コケー♪」


「新入部員募集中ですニャー♪」

「き、気軽に見学してくださーい・・・ヒヒーン・・・」


「よ、よろしくお願いしまーす・・・ぶ・・・ブヒッ!」


「今なら特製ケーキが待っているいるよー・・・ワンワン・・・」

「・・・コノヤロー・・・」


「って唯先輩!まだ怒っているんですか!?いつもの優しい唯先輩に戻ってください!怖いです!」





ーーーーーー


一時間程、粘ったが誰も受けとりもせず、時間の無断となった。で、音楽室にてミーティングをする。


「誰も受け取らなかったね〜」


憂の、のほほんとした声で俺は、本気でこう言う。


「当たり前でしょ。奇妙な着ぐるみからビラを受け取るなんて、根性があるよ。」


「「「確かに・・・」」」


澪、律、梓は頷く。紬、憂は


「でも、バイトみたいで楽しかったわ〜♪」


「くすっ。そうですね。ムギさん♪」


のほほんコンビは、何も感じられないのだろうか。


「なぁ、何か案無いのか?澪。」






「着ぐるみを脱いで普通にビラ配りかな・・・でも、それだと他の部と同じような事をするような物だから、何かインパクトが・・・」

律、澪はうーんと唸っている。憂と紬は、まだキャッキャッはしゃいでいる。梓はそれをジト目で見る。俺は、突然閃いた。体験入部して、その部の勧誘方法を真似したらどうだろうか?そんな提案をすると・・・


「なるほど!その勧誘方法をパクるんだな!唯!」


「『学ぶ』と言って欲しいな。律ちゃんや」


こうして、ビラ配り班、体験入部班に分かり、軽音楽部の勧誘を進める。


「三人一組で班作るから、まずビラ配る人、挙手を」


憂、澪、紬が手を挙げる。


「なるほどー。じゃ、私と唯と梓が見学班なー!」


こうして、軽音楽部の勧誘の為に、俺達は動きだす。



ーーーーーーー


憂、澪、紬は制服に着替えビラを配る為、外へ。俺、律、梓は、他の部活動の勧誘方法を探る為、あちらこちらへと、体験入部する。

今、俺達は柔道部に体験入部していた。


「そこの人、ちょっと来て」


何故か、俺が呼ばれた。ぼけ〜としていたからかもしれない。だらだらと近づき、呼ばれた人の前に立つ。


「ちょっと投げてみない?」


ちょっとで投げれるものだろうか?とりあえず、ファイティングポーズを取ってみる。


「・・・ちょっとそれ、空手の構えだけど・・・ま、いいか」


無意識だったがそうなのだろうか?『来なさい』と言われたので掴んでみる。


「カウ・ローイ!」


「それ、ムエタイの技でしょ!」


ボケながら投げる。上手くいかないな。


ーーーーーーーー


柔道部の体験入部を終えても、特にこれといった勧誘方法が見当たらない。という訳で成果無し。いち早く音楽室に向かい、みんなを待つことにした。


「唯先輩、律先輩、何も成果が無かったのですが、いいのでしょうか?」


梓は、しょんぼりと俯く。仕方無いだろ。


「うん。でも、澪ちゃん達を信じようよ」


「そうだぜ!澪達なら何とかうまくいくだろ!」


根拠は無い。でも、梓は『はいっ!』と返事した。



ーーーーーーーー


数十分後、澪、紬、憂が来た。
澪達によると、たくさんビラを配ることに成功したという。


「いっぱい配ったよ〜♪」


「ムギさんの言う通りです♪」


紬、憂はニコニコとしていて、嬉しそうだった。澪は、こっちの成果が気になり質問する。


「そっちはどうだった?」


「特に成果無し」


「どの部も私達とやっている事がほとんど同じなんですよ」


「体験入部者と見学者はたくさんいたよ。」


澪は、そうかと納得。するとドアが開かれた。

『いらっしゃいませ!』


入部希望者だろうと期待したのだが、


「なんだ、さわちゃんか・・・」

「空気読まないね・・・」



山中先生だ。俺達に無理矢理着ぐるみを着せた悪者がいた。


「何よー。ひどいわよ。律ちゃん。唯ちゃん」


プンプンと怒っているが、怒りたいのは俺達だ。


「山中先生の所為で一時間も、時間を潰したんですよ」


「そうだぞさわちゃん!何だあの着ぐるみ!」


「え?インパクトが欲しいかなって思って・・・」


「いりません!」


「澪先輩の言う通りです!全然受け取って貰えなかったんですよ!」


「そんな〜・・・不評か〜・・・じゃ、新歓ライブの衣装を決めましょう!オススメはゴスロリ風の衣装よ!」


このアホ、分からないのか、俺、律、澪、梓は


『制服でいいです!』


一致団結だ。だが、紬、憂は


「私、着たいな♪」


「私も着たいです♪」


山中先生に洗脳されたのか、笑顔で着たいと言っているので


「・・・制服でいいだろ・・・コノヤロー・・・」


「「ぅわ♪うん♪」」


憂、紬は、嬉しそうに、制服でいいと言うが山中先生は


「じゃ、ミニスカフリルメイドは?」


懲りないアホだ。全員で『制服で!』と言うと、降参した。

すると再びドアが開かれた。


ガチャ

『いらっしゃいませ!』

「って、和かよー・・・」


生徒会長の和が、入ってきた。


「え?何?衣装の打ち合わせ?」


「うん。でも、もう済んだよ。和ちゃん何か用なの?」

「あ、うん。新歓ライブの軽い打ち合わせに来たの」


和は、いろいろと大変そうだなと思う。生徒会長だもんな。あ、それよりも、気になる事がある。


「律ちゃん。生徒会に講堂使用届け提出した?」


部活申請用紙や学園祭の講堂使用届けを出し忘れるという事件があったので、律に聞く。


「へっへー!提出したもんね!しかも、和に!」


それは、安心した。少しは進歩したな、としみじみに思う。


「今日のHRに提出したけど、もっと早く提出してね?律」


「わー!?澪ー!和がいじめるー!」

「自業自得だ。律」


「ガーン!」


やはり、律は律だった。和は、演奏する曲目を聞いていたので、


『わたしの恋はホッチキス』、『ふでペン〜ボールペン〜』、『いちごパフェが止まらない』、『ふわふわタイム』となった。
後は新歓ライブを成功させるだけだ。

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