第45話
新歓ライブを終えて、数日後の放課後。俺達は、音楽室の物置の掃除をしていた。何故かというと・・・
「ちょっとー!散らかしすぎじゃなーい!ちょっと整理しなさいよね!」
昔の軽音楽部の卒業生の私物だろうか?CDやらラジカセやらいろいろとごった返しなのである。
悪戦苦闘しながらも、掃除を終わらせ、何やら楽器が入っているであろう、大きなケースがあった。
「な、何でしょうね?コレ・・・」
梓はケースの中身に興味があるようだ。律は、ケースを開ける。
「オープン!・・・て、ギター?」
少し古くなったギターだ。だいぶホコリがある。パンパンと手で、はたく。
「なーんだ。つまんないのー!」
「え!?少しは興味は持ちましょうよ!」
軽音楽部らしからぬ律の発言に、梓は困った表情でツッコミ。すると、山中先生が入ってきた。
ガチャ
「みんな、頑張っている?ってあら?懐かしいわね。こんな所にあったんだ」
この古いギターは山中先生の物だろうか?ギターを見て、『懐かしいな』とつぶやいている。
「え?このギターは山中先生のギターですか?」
「うん。でも、もうダメみたいね。このギターを売って部費の足しにして頂戴」
山中先生の寛大な心で、ギターを売った金で部費にしていいとなったので、俺達は学校が終わった後。ホームセンターに整理する為の棚を購入した。その時、梓は真剣に亀を見ていた事は印象的だったな。その後、楽器専門店『10GIT』に行くことにした。
ーーーーーー
「すみません。このギター買い取り、お願いします。」
「はい。分かりました。」
楽器専門店に着いて、ギターを売る為、店員にギターを買い取りの為の査定をするので待って欲しいと言うので、ウロウロすること数分後・・・
「査定のお待ちのお客様。お待たせしました!」
査定が終わり、店員の近くに集まる俺達。
「このギターは五十万円で買い取って貰わせます。」
俺は耳を疑った。この店員は冗談を言っているのだろうか。
『ご、ご、ごじゅうまんえん!?』
見事な連携だ。紬と俺以外は声を揃えて発言。それは、何故?と聞いた所、このギターはなんでも大変貴重な素材で出来ている為だというのだ。ただ、保存状態が悪かったので少し値段が下がったというのだが、いくらなんでも五十万円は驚きだ。
「はい。こちらが五十万円です」
一万円札五十枚がどーんと出されて律は大切そうに受け取った。
ーーーーーーーーーー
帰り道にて、俺達は五十万円という大金を持っている為か、少し挙動不審だ。怪しいぞ。
「なーなー!美味しい物でも、食べて行こうぜー!何せ、大きなお金があるからなー!」
「え、それは部費だろ?無理だろ」
「あ、そうか」
律と澪のやりとりをボケーと見ている。憂、梓。まだ五十万円の衝撃を引きずっている。
「なぁ、このギター二万円ということにして、さわちゃんに黙っていようぜ!」
「だ、ダメだろ!ちゃんと話してから、対策を・・・」
「でも、五十万円だぜ?部費の話が無くなるかもしれないだろ?」
「そ、そうかもしれないけど・・・」
紬は、きょとんとしていた。金持ちだからだろうか。俺達凡人との金銭感覚が違うのだろう。
「一人当たり八万円、懐に入るぜ〜」
律の悪魔の囁(ささや)きだ。憂、梓、澪は金の魔力により、洗脳されていく。
「は、八万円・・・ご馳走がたくさん作れるよ・・・」
「ち、ちょうど欲しい物があるんですよね〜・・・」
「え、エフェクターが買える・・・」
ーーーーーーーー
翌日の放課後。音楽室にて、ティータイムを優雅に過ごしていた。すると、山中先生が入ってきた。
ガチャ
「あっ。みんないるわね。昨日のギターの買い取り、いくらだったかしら?」
みんなは、びくっとしていたが、律は笑顔で、
「に、二万円だよ。何でも、とても古いギターらしいんだ」
「あ、そうなんだ。古いんだ・・・あのギター・・・」
山中先生はしょんぼりとして、律に近づき手をずいっ、と伸ばし
「じゃ、買取証明書を見せて」
俺達は『ギクッ』と身体を震わせたが、紬はいつも通りでいる。
「え?か、買取証明書?」
「貰ったはずでしょ?さぁ、見せてよ」
ーーーーーーーー
「うそっ!?五十万円!?」
「な、何でも貴重な素材で出来たギターらしくて・・・」
強制的に奪い取り、四十八万円は先生の懐へと入った。さすがに五十万円は部費に出来なく、二万円はみんなで使っていいそうだ。二万円の部費で何をしろと・・・
二万円を何を使うかで、俺達は相談していく。が、俺は決めていたのだ。買うべき物をーーーー