第57話
演芸大会当日になった。衣装は制服でいいんじゃないか、という提案により制服へと着替える。まぁ、ただの俺達の学校の宣伝だな。
「ぁ、お姉ちゃん。そろそろ行こっか。」
「そうだね。よし!頑張ろう!憂」
「うん!」
俺、憂は共に『ふんすっ!』と気の抜けた気合いを入れ、演芸大会の会場へと向かう。
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「わ〜・・・結構人がいるんだね〜・・・」
会場に着き、憂は人の多さに驚く。すると、軽音楽部全員プラス和、おばあちゃんが見えた。こっちに気付いて手を振る。
俺、憂は人の合間を縫いながら、近づいていく。
何とか集合し、雑談を交わす。
「憂。頑張ってね。唯先輩も頑張って下さい」
『うん!梓ちゃん』
「唯ちゃん。憂ちゃん。優勝商品は温泉旅行だから、二人一緒に行きなさいねぇ」
『うん。おばあちゃん』
等々。励ましのエールを受け取り、気合いを入れる俺、憂はギターのチューニングなどを確かめながら本番へと向かうのだ。
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「『では、次の方。『ゆいうい』のお二人でーす。舞台へどうぞっ!』」
司会進行をしてしたこの企画の首謀者であろう商店街の人が俺達を舞台へと案内する。
で、舞台に立ち俺達は適当にMCをする。
「『どうも。『ゆいうい』です。私達は姉妹で、この演芸大会に出場しました。いやー、緊張する?憂』」
「『うん。緊張するね〜。ドキドキするよ〜。お姉ちゃんは?』」
「『私は大丈夫。へのつっぱりはいらんですよ!』」
「『こ、言葉の意味は分からないけど、とにかくすごい自信があるね〜』」
わははは。と客が笑った。よし、ウケた。この漫才(?)は俺が提案したものだ。さっそく準備をする。
「『では、『ふでペン〜ボールペン』!』」
小声で『一、二、三』とカウントを取り、ギターを奏でる。
〜〜♪♪♪♪
俺と憂のギターが会場いっぱい、鳴り響く。
「『ふでペンふっふ〜』」
こぶしを入れながら、演歌っぽく歌う。老人達は笑顔で聞き惚れているようだ。
「『ーーーー♪♪♪』」
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演芸大会が終わり、俺達は参加商品を受け取った。どうやら優勝は出来なかった。でも、俺達は参加商品をおばあちゃんにあげる。
「え?いいのかい?貰っても・・・」
「うん。いいよ。おばあちゃんの為に参加したんだからね。本当は温泉旅行をあげたかったんだけどね・・・」
「ありがとうね。唯ちゃん。憂ちゃん」
おばあちゃんの感謝の言葉だけで俺は大満足だ。憂も嬉しそうに目を輝かせる。また、困ったら俺を頼っていいからな・・・
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演芸大会が終わり数日後の放課後。音楽室にて雑談を交わしながら、ティータイムを優雅に満喫する。
「なぁ、澪。来年の演芸大会『りつみお』で出ないか!?」
「私は『みおむぎ』がいいな」
「わぁ♪澪ちゃんと一緒だ♪」
「梓ちゃんも『ういあず』で出てみない!?」
「え・・・まぁ、考えとくよ・・・」
今はこの話題がテーマになり、ギャーギャー喚く。俺は・・・来年遠くに行くのだ・・・自分の『甘え』を捨てる為に・・・俺はこの『放課後ティータイム』の連中に依存している。もう、中毒だ。一度やってしまうと、やめる事は出来ないように・・・
俺は思い切って願書を進路指導の先生に提出した。先生は
『学園祭までなら後で取り消す事が出来るからな。それ以降は・・・不可能だ。』
『何故、学園祭までですか?』
『うちの学校に『国立雷鳴女子学院大学』の学長が学園祭に訪問されるそうだ。その時に平沢を紹介出来てかつこの願書を渡せるという事だ』
なるほど一石二鳥ということだな。でも、何故大阪からわざわざ?それに対して先生は
『その学長は俺の知り合いでな?俺が平沢の学力の情報を伝えると、『将来が楽しみな人材ですね。出来れば私にもっと教えて頂きませんか?』とおっしゃったんだ。だから学園祭に招待する事を提案したら了承を得た、という事だ』
なんとまぁ、好奇心旺盛の方でいらっしゃる。ていうか顔が広いなこの先生・・・
『まっ。とりあえず俺が願書を大切に保管するから安心しろ』
という事で願書は進路指導の先生の手元にある。だが、絶対に辞める事はしないからな。
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練習はせず、だらだらと過ごし我が家へ直行。部屋着に着替え胸のプリントに『地底人』と書かれた洋服を違和感無く着こなし、リビングでだらだらと過ごす。ニートだな。
「ぁ、お姉ちゃん。お醤油切らしちゃったから買い物行くね」
「お〜・・・いってらっしゃ〜い。その間に下ごしらえするからね〜」
「うん。お願いね」
憂は財布とエコバックを持ち、いそいそと家を出る。転びそうで不安になる俺。はぁ、シスコンだわ俺。
「やれやれ」