小説『俺は平沢唯に憑依してしまう。【完結済】』
作者:かがみいん()

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第58話

時は流れ夏。太陽が元気がよろしいせいか、猛暑日が続くのだ。したがって、防音対策を施している音楽室はさらに熱が籠(こ)もり、サウナと化す。


「あち〜・・・」


「暑いなー・・・」


「・・・太陽、引っ込め・・・コノヤロー・・・」


『唯!?』「唯ちゃん♪」「お姉ちゃん♪」
「・・・太陽に言っても、太陽は引っ込みませんよ・・・」


暑さのあまりにイラつく俺。梓は俺が怒っているのに慣れたのか、弱々しいがツッコミを入れる。ツッコミ担当なのか?梓は。


「澪。そんなに暑いなら髪まとめたらどうだ?」


律は澪の髪をいじり・・・


「・・・?ツインテール?梓みたいだな」


澪は梓みたいなツインテール姿になり、律はとんでもない事をほざく。


「・・・うーん。澪には似合わないなー・・・」


澪はイラつき律の首をきゅっ、と絞める。


「・・・やったのはお前だろ・・・」


「み、澪しゃん・・・ぎ、ギブ・・・」


律を懲らしめて澪は満足したのだが暑さの為、ストレスを感じているのかそわそわしている。


「・・・あぢゅい・・・」


「だ、大丈夫?お姉ちゃん」


憂は俺の心配をして、うちわで扇ぐが・・・生温い風がくるので意味が無い。


「憂・・・扇ぐの止めて・・・暑さで風すらも暑いよ・・・」


「そ、そうなんだ。うーん。窓も開けているし・・・これじゃ、何も出来ないよ・・・」


憂はガッカリし、どうやってこの暑さをどうにかしようと思案しているのか、右手をグーにして額に当て『うーん』と唸っていた。本当に優しい娘だな。


「あっ!トンちゃんが!」


梓は亀に餌をやろうとして水槽へと向かうが、亀に何らかの異常があるのだろうか。梓は、あたふたしている。
亀の様子を見ると、白い羽衣みたいなのを身に纏っていた。なんだ脱皮じゃないか。と思ったのだが、梓はよく知らないらしいので何らかの病気かと勘違いしているようだ。


「梓ちゃん。これは脱皮だよ」


「へ!?脱皮!?亀でもするんだ・・・や、スッポンモドキか・・・」

梓は『ふむふむ』と今得た知識を頭に叩き込む。紬は亀を飼っていたらしく、俺に『よく知っているね〜』と褒める。それにより俺は・・・嫌でも『でへへ〜』と照れる。


「ぁ、参考書にも書いてありました。・・・『脱皮をすると大きくなり成長するので、早めに大きめの水槽などを用意しましょう』。あの、水槽どうしましょうか?」

今のままでも十分大きめの水槽なのだが、念のために用意したほうが良さそうだな。


「ぁ、私。大きめの水槽持っているけど・・・重くて持って来られないわ〜」


紬は何かと準備万端だな。しかし、それが持ってこられないか・・・


「んじゃ。さわちゃんに頼もうぜ。さわちゃん、車で学校に通勤しているから、車出して貰おう!」

律は山中先生を利用するかのような発言をした。まぁ、俺も賛成だけどな。
俺と律は山中先生を利用する為、職員室まで直行する。何故俺も一緒に同行するかというと、あのサウナよりもまだ廊下とかがマシだった訳だ。

職員室に着き山中先生を呼び出したいのだが・・・


「ん?山中先生は用事があるからって、帰ったぞ。何か用なら俺が伝言を伝えようか?」


「ぁ、用事なら仕方ないですね。律ちゃん。行こっ」


「ああ。そうだな。でも、珍しいよな〜・・・さわちゃんがなー・・・」


職員室を出て、音楽室へと向かい山中先生は不在だった。その事をみんなに伝えると


「へぇ、そうなんだ〜。でも、すぐには成長しないんでしょ?水槽は後回しでいいよね?お姉ちゃん」


「うん。そうだよ。だよね?ムギちゃん」


「ええ♪そうよ唯ちゃん♪」


という訳で亀の水槽の件は後回しとなった。ていうか紬は何故そんなに嬉しいのだ?そんな事を聞いてみると・・・


「亀の事を知っている人は少なくって、亀の話が出来なくって寂しかったから・・・でも、唯ちゃんが知っているから話が出来て嬉しかったの〜♪」


紬は頬に手を当てくねくねし、照れる。
確かに亀の事なんて知る人は少ないかもな。


ーーーーーー


この日は暑くて練習をする気力が無く、早めに下校した。それにしても暑い。太陽は『まだだ。まだやれるよ』とでも言いたいのか、更に温度を上げやがる。太陽系の太陽の性能はまるで化け物だな。


「・・・あぢゅいよ〜・・・」


「・・・お姉ちゃん。大丈夫?・・・私も暑いよ・・・」


憂も暑さに堪えてだれる。憂も弱い所もあるんだな。


「みおえも〜ん・・・何とかしてよ〜・・・」


「・・・誰が、みおえもんだ。何とも出来ないぞ・・・」


「・・・本当に暑いですよねー・・・」


全員参っているか、と思っているのだが紬はニコニコしながらだらけない。よく出来る娘だな、と思ったら。


「うふふ♪みんな、だらってしていて面白いのよ〜♪」


何ともまぁ、ドS発言だな。みんな参っている姿を見て笑っているもんな。
しばらく歩いて行くと、山中先生を発見した俺達。


「あれって、さわ子先生だよな?」


澪はみんなに確認する。数メートル先に挙動不審な山中先生を見つけ、怪しむ俺達。


「あれってもしかして・・・はっ!さわちゃんに彼氏か!?」


『ええ!?』


律のとんでもない発言に俺以外は驚きの声を上げる。なんでそう思うんだよ・・・


「だって、あんなに周りを気にしているんだぜ?という事は自分の知り合いに、ばれたくないから必死に見渡すと思うんだ」


律の的を得たような得てないような発言をするが、こういった冴えた発言は律らしくないな。
山中先生はいつもと違う帰り道へと直行し、律は


「よーし。尾行しようぜ!」


なんてほざくから、もちろん『嫌だ』と言いたいのだが、紬は


「わぁ♪尾行したいです!」


目を輝かせ、びっと挙手をし参加意思を見せ、律は『よし!ミッションスタート!』と高らかに手を上げ、紬は『いえーい♪』とノリノリで拳を上げ、山中先生を追う澪は『ま、待てよ!律、ムギ!』と言いながらも律達の元へと向かう。

俺、憂、梓はぽつん、と置いてきぼりにされた訳だ。


「ど、どうする?お姉ちゃん。梓ちゃん」


「・・・うーん・・・どうしょっか?梓ちゃん」


「え!?え、えーと・・・律先輩達が心配ですし・・・とりあえず、行きましょうか?唯先輩」


確かに律達は、というか律は何かやらかしそうで不安だ。紬も無邪気にはしゃいでいたし、澪は流されるから澪もノリノリになるだろうな。
梓、憂は心配し、律達の元へと向かう。俺も重い足取りで仕方なくも、律達へと向かう。やれやれ。

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