小説『俺は平沢唯に憑依してしまう。【完結済】』
作者:かがみいん()

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第59話

山中先生を尾行し商店街の着いた俺達。数メートル先にまたキョロキョロと挙動不審の山中先生に律は。


「やはり彼氏待ちだな。間違いないぜ」


またもどーでもいい発言だ。いいじゃないか彼氏の一人や二人。いても別にいいのではないか。


「そういえば・・・先週、さわ子先生はコソコソと電話をしていたのを見たぞ」


澪は顎に手をつけ、推理してますよアピールをする。やはり流されたな。


「わぁ♪澪ちゃん、探偵さんみたい♪」


紬はズレていて、興奮する。お前は子供か。


「あっ!動いたぞ・・・追うぞ、ムギ」


「ラジャー♪」


律、紬はコソコソと動くのだが、俺は別にばれてもいいので、堂々と歩くのだが・・・


「ちょっ、唯先輩。ばれますよ!」


「そうだよ。お姉ちゃん。隠れなきゃ」


梓、憂はイキイキとして俺の腕を掴み、隠れさせようとする。お前等も流されてどうするよ。


「あ、やっぱり周りを気にしてるぞ・・・この行動を考えると、さわちゃんは・・・」


「すごぉい!りっちゃん本物の探偵さんみたい♪」


律の推理していますよアピールを見て紬は無邪気に、はしゃいでいる。


「じゃ、牛乳とパン買ってきなきゃダメだよね?お姉ちゃん」


「え?何で?憂」


憂の発言がよく分からず説明を欲するが憂は無邪気に


「だって、張り込みには牛乳とパンだ、てテレビで言っていたもん♪」


憂は刑事ドラマが好きなようで、目を輝かせる。ていうか、そんなに長く張り込まないぞ。


「やっぱり彼氏だな」


「・・・もうソレでいいから、帰ろうよ〜・・・」


律はどーでもいい事にはやる気満々になり、めんどくさい事にはやる気が全く無いという迷惑な性格により『まだ張り込もうぜ!』と親指を立て目を輝かせる。もう好きにしろよ。


「まさか先生に恋人発覚ですか・・・」


「ぁ、そういえば。先生は独り身で寂しい、て言ってましたね。澪さん」


「さわ子先生にも色々あるんじゃないかな?」


梓、憂、澪は先生に恋人がいるとは、みたいな反応をする。あまりにも失礼では無いのか?山中先生は異性には疎いとでも言いたいのだろうか。


「なぁ、澪。色々ってなんだ?教えてくれよ」


「へ!?」


律は『色々』という発言を気にして、というか澪をいじる為に『わざと』聞いてくる。その証拠に律はニヤニヤしている。


「い、いや、ち、違う!私はそんなつもりは・・・」


「え?『そんなつもり』?どんなつもりだったんでしょうか?澪さん♪」


「ぅ、憂ちゃんまで!?」


「確かに澪は美人だし、そういう話は一つや二つ。あってもおかしくないと思うんだけどなー」


「確かに。おかしくないと思います」


「り、律!梓!」


女子は他人の色恋沙汰が非常に大好物なのだ。甘いお菓子にも目をくれずほどな。という話をどっかで聞いた事がある。現に、こうやって山中先生の尾行の事は忘れている程だからな。


「ジー・・・」


「む、ムギ!み、見るなぁ!」


あー・・・やはり女子高生だな、としみじみに思う。ガールズトークに花を開かせる。
すると山中先生に近づく女性が現れ何やら山中先生と話をしているようだった。


「律ちゃん。恋人じゃないみたいだよ」


『え!?』


俺の発言に驚く恋を夢見る娘達。山中先生の事はすっかり忘れていたようだ。しかし、またも山中先生を見張る。


「ぁ、いや・・・先生の相手が女の人ということが・・・」


「ムギ。深読みしすぎだ」


紬はとんでもない事をほざく。先生が百合の趣味があるとは全然思えないし、思いたくもない。
山中先生はその女性と共にどこへやら、歩いていく。


「ていうか、まだ尾行するんですか?もういいでしょ?」


「いやっ!まだだ!相手の事をもっと知らなくてはーっ!」


梓は山中先生の尾行をやめたいのだが、律は更に尾行をしたいとほざくのだ。いい加減にしろよ。


「り、りっちゃん!先生達はどこかに行っちゃうわっ。追いましょう♪」


「ムギ先輩がノリノリだー!」


「えへへ。行こっ。梓ちゃん♪」

「う、憂までも・・・」



少女探偵団はこうして山中先生達を更に尾行するのであった。
ていうか、俺もかよ・・・


ーーーーーーーー


山中先生と謎の女性は仲良く?ファミレスに入り、律の『突入だっ!』と親指をファミレスの方に向け合図し、紬は『ラジャー♪』と無邪気に敬礼する。不安だらけな探偵団だな。

見張ったんだが、特にコレといった面白い情報を掴めないのか律はイライラしている。


「・・・別に、怪しい動きは無いよなー・・・」

「律。私達が一番怪しくないか?メニュー表で顔を隠しているし・・・」


俺達はメニュー表で顔を隠すという、見張っていますよ感がビンビンと伝わる。俺は堂々と顔を隠さずに先生の動きを見る。


「うふふ。探偵さんみたいで本当に楽しいわ♪ぁ、先生、ファミレスから出ていったよ。どうしよう?りっちゃん」


紬は目を輝かせ次の指令を早く伝えろとワクワクしているようだ。本当に無邪気だな。


「よしっ!さわちゃんを更に尾行だっ!」


『おーっ!』


俺以外全員高らかに拳を上げる。澪、憂、梓は完全に流され、律に洗脳されたのかイキイキとしている。


「ほらっ!お姉ちゃんも『おーっ!』て♪」


「・・・ぉー・・・」


仕方なく拳を小さく上げ、参加意思を見せ憂は『えへへ♪』と無邪気に笑っている。はぁ、仕方ない。許してあげるか。


「ねぇ、誰を尾行するか私に教えてくれない?」


『わっ!』


山中先生と共に行動していた謎の女性が俺達の目の前に現れた。ていうか、謎では無いけどな。普通の女性だからな。ただ金髪に染めている?だけだからな。


ーーーーーーーー


「へぇ・・・そうだったの」


場所は変わり、とあるおでん屋に女性と共に山中先生や尾行していたことを話す。
この女性の名は『河口 紀実』。我らの学校の卒業生。OGであり、山中先生と共に軽音楽部をやっていたそうだ。
その他にもメンバーがいたようだが、結構演奏の腕があるらしい。

「ぁ、そうだ。せっかくおでん屋に来ているんだし、私のおごりでみんな食べてもいいわよ♪」


何と心遣いがよろしいお方だ。俺達は『気を使わなくても』と反論したのだが『いいから、いいから』とオレンジジュースを六人分注文し、屋台の主である気前のいいオッサンは『へいっ』と元気に声をあげる。


「ぁ、あのっ!が、ガンモドキをっ」


紬はガンモドキを注文し、オッサンは紬の目の前の置いてある皿にガンモドキを入れる。
紬は『わぁ♪』と訳分からない事で興奮している。なんでそんなに嬉しいのだ?


「私ね。一度でいいからガンモドキを食べたいって思って♪夢だったの〜♪」


頬に手を当てくねくねと動く。果てしなく小さい夢だな。
河口さんは『ほら。あなた達も♪』と言うので、俺も負けずと『はんぺん』を頼む。
律は『お前はオヤジか』とツッコミを入れるが、何がおかしいのだ?はんぺんのよさを知らんのか?
憂も『はんぺん』を頼み、『えへへ〜』と俺を見て笑う。
憂はやはり分かっているんだな。
河口さんは微笑み、俺達の耳を疑わせるような発言を発した。その発言とは・・・


「実は、さわ子。結婚するんだ」

『ええええ!?』
「や、嘘でしょ?河口さん」


俺以外は驚きの声をあげ、俺は嘘だと見抜く。河口さんは『どうして、そう思うのかしら?』と聞いてくるので俺の考えを、いや『推理』を河口さんに言う。


「山中先生が結婚する、という嬉しい事があるにも関わらず、いつも通りに私達に接触しているのは、あり得ないのです。先生は有頂天になってそういった素振りなんて、出来ないと思うからです。違いますか?河口さん」


俺以外は河口さんに『そうなのか?』と顔を伺う。河口さんは、ふと笑い


「正解。さわ子の性格もよく知っているね。」


みんなは『なんだ嘘か』と何故かほっとしているようだった。
河口さんは本題を伝える為にきりっとした顔つきで俺達は真剣に話を聞くことにした。

「実はねーーーーーー」

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