小説『俺は平沢唯に憑依してしまう。【完結済】』
作者:かがみいん()

しおりをはさむ/はずす ここまでで読み終える << 前のページへ 次のページへ >>

第64話


夏フェスが終わり、とある夏の日。

澪は図書館にて勉強をしようと提案したので、俺、律は賛成した。紬は、フィンランドに旅行するらしいので、無理だと断った。いいな外国。

で、クソ暑い道を歩き、図書館に着いた訳だ。

「唯ー!こっち、こっち」

「はーい。」

澪は手招きし、律と共に図書館に入り、適当な場所に座り勉学に勤しんだ。


ーーーーーーーーーー

Side 中野梓

夏フェスが終わってある暑い日。私は外に居過ぎたのか、真っ黒に焼けちゃった・・・
ちゃんと日焼け止めクリーム塗ったのに、どうして焼けたのだろう?私の体質って一体・・・

唯先輩達は受験勉強の為、図書館で勉強するって言ったけど、受験生って忙しそうだな。
あ、ムギ先輩はフィンランドに旅行する、て言ってたけどムギ先輩は色々と分からない先輩だな・・・
ティーセットに高級そうなお菓子に・・・

とりあえず、先輩方に残暑見舞いのメールを送ろうとしていたけど、メールの内容が堅苦しくなってしまって、なかなか送れないんだよね・・・

ぶるぶる、と私の携帯が震え、携帯を開き、唯先輩からのメールが来たので、確認した。

そこには、唯先輩、律先輩、澪先輩が写っていて、勉強している所を唯先輩が撮っていた事が分かった。だって、唯先輩が一番大きく写っているんだもん。

「はぁ・・・」

私は小さくため息を吐いたけど、何でかな?唯先輩達が居なくて、寂しがっているのかな?

「私だって、頑張るもん!」

何をどう頑張るか分からないけど、とりあえずは・・・


ーーーーーーーー

「憂ー。スイカ持って来たよー」

「わぁ♪ありがとう。梓ちゃん」

憂の家に遊びに行こうとしたら、お母さんが『お友達の家に遊びに行くなら、コレ持っていきなさい』とスイカを押し付けた。

憂は台所に立って早速、スイカを真っ二つに切る。その半分を皿に移した・・・え!?

「え、憂。そのまま食べるの?」

「お姉ちゃんがね。こんなふうに切ったスイカを食べるのが夢だって♪」

弾ける笑顔で憂は笑っているけど、唯先輩が何だか子供っぽく思えるけど気のせいかな?

ふ、と台所の隅に出前をとったのか、出前の器らしき食器が見えた。今日は出前で済ませたんだ。

「えへへ〜。部屋の前に置いてきて、お姉ちゃんにスイカを置いているよ、て言ったらギターの曲調がね♪」

〜〜♪♪♪

あ、確かに聞こえる・・・て、受験勉強は!?
憂が言うには、ちょっとした休憩だそうで、二十分ぐらい弾き続けているそうみたいだけど、ちょっと休憩長くないかな?

「あ、憂。今日は、そばか何かを頼んだの?」


「うん。そうだよ。あと、天ぷらもあったから天そばだね」

え!?天ぷらも!?スイカと天ぷらは相性が悪いよ!
私は二階の唯先輩の部屋に行く為に、二階へと続く階段に足を乗せ、唯先輩に伝えないと、と必死に階段を踏む。
ーー唯先輩!

ーーーーーーーー


「はっ!」

私はいつの間にか寝ていた。私は憂に学校に行く約束の電話をして、ソファーに身体を休めていたから、寝てしまったんだと思う。
時計を見て、学校に集合する時間が近い為、せっせと着替えて我が家を出る。
何で、あんな夢を見たんだろう・・・


太陽で、ジリジリと私の肌に焼き付くような暑さを受け、まだ焼けるだろうな、と内心落ち込みながら集合場所に集まり、憂は私を見てきょとんとしていた。どうしたんだろう。
「え?誰?」

憂は、こてん、と首を傾げ私の事を『私』だと思っていないらしい。

「ゎ、私だよ。梓だよ」


「ええ!?や、焼けたね・・・」

憂は驚きの表情で私の身体を見渡す。私だって、驚きだよ。

何故学校に行くのかは、トンちゃんの餌やりの為。そして、トンちゃんの様子を見る事で憂もその事を聞いて賛成と言うので、憂と部室に行くんだ。

職員室に入り、部室の鍵を借りに行く。部室の鍵は職員室で管理しているから、職員室に行かないといけない。
周りを見渡すと、山中先生がうちわで扇ぎながら『いらっしゃ〜い』とのんびりとした声で言ってくるので、憂は学校に行く前に持ってきたゼリーを山中先生に渡し

「いつも、お世話になっています」


「あら憂ちゃん。ありがとうね」

出来た娘だ!と私は衝撃を隠せなく、驚きの表情をしてしまう。
山中先生は部室の鍵を渡す。
早速、部室に行かなきゃ!


部室に着き早速、トンちゃんに餌を与える。すると、トンちゃんは水面に上がり、鼻をピクピクさせて、私を見て笑っているような顔をしていた気がして、そんなトンちゃんを見て私は和む。


「梅と桃のゼリー。どっちがいい?」


「梅で」

憂はゼリーを渡し、一緒に食べる。あ、これ、美味しいな。
純も誘いたかったんだけど、田舎のおばあさんの家に遊びに行くと言って、たまに写メールを送ってくるんだよね。畑一面な背景だとか、コンビニすら無い事が自慢なのか、それに対しても色々とメールで報告してくる。

「あ、また純ちゃんからメールが来た。わ〜・・・本当に何も無いんだってさ〜・・・『じゃ、私も今度・・・』」

憂は純に返信しながら何かを呟いているけど、そっくりそのままその呟きを書き込んでいるみたい。何だか、憂は可愛い娘だなぁ。
はっ!私、何考えているの!?
私はブンブンと頭を振って今、考えていた事を無かった事にした・・・現実逃避だね・・・


ーーーーーーーー

トンちゃんの様子は何も異常が無く、急に暇になったから憂と映画を見に行く事にした。やっぱり、夏はホラー映画でしょ、と憂に提案したら・・・

「ホラー映画!?行く行く♪」

憂は目を輝かせて眩しい程の笑顔を私に見せて、映画館へと向かい受付のスタッフにチケットを貰い、私達はお金を払って指定された席へと座る。


すると、私達の前に澪先輩がいた。ええ!?澪先輩て怖いの嫌いな筈だけど・・・昨年の合宿の時、唯先輩の怪談話?を聞いて一人だけ気絶した澪先輩が?
そうか、克服しようとしているんだ。澪先輩、大人だなぁ。

映画はクライマックスになり一番怖いシーンであろう場面まで進み、主人公の女の人が怖い人形に後ろから襲い掛かろうとしていた。
私はとっさに目を反らしたけど、憂は目を釘付けにして見るし、澪先輩は微動だにしない。
澪先輩、もう克服したんだと思い、澪先輩の顔を覗いたら白目向いて気絶していた。

すると、澪先輩の懐から携帯の着信音が鳴る。

プルプルプルプル

み、澪先輩!映画始まる前に携帯の電源切らなかったんですか!?

プルプルプルプル

は、早く携帯をーー


ーーーーーーーーーー

「はっ!」

いつの間にか寝てしまっていた。私達はまだ部室にいて、憂も寝ていたみたい・・・
憂の携帯が震えていて、それに気付き憂は眠り眼を擦りながら携帯を開き・・・

「ぁ、お姉ちゃん♪」

憂は嬉しそうに返信をする。本当に姉想いの妹なんだなぁ・・・
憂が言うには、『今度の夏祭りにみんなと一緒に行こう』と唯先輩の提案に賛成した憂。ていうか、勉強はどうしたんですか・・・唯先輩・・・


ーーーーーーーー

憂と映画館へと向かい、憂は弾ける笑顔でホラー映画に関する看板をじっ、と見ていた。どれだけ怖いもの好きなんだろう・・・

「ぅ、憂。さすがにR-15のホラーはちょっと・・・」


「ぁ、ご、ごめんね。梓ちゃん。じゃ、こっちの感動するような映画にするよ」

良かった・・・私は怖いものは嫌いなんだけど、澪先輩程の怖がりでは無いよ。でも、本当に良かった。
憂が言った映画『ボクとポチ』は上映するまでの時間があるので、ショッピングに行って時間を潰す。私はお小遣いがピンチなので、アルバイト求人の雑誌を見て、どこかいいアルバイトは無いのかな、と迷っている所

「梓ちゃん。アレなんてどう?」

憂は外にある電柱に貼ってある、求人のアルバイトの紙を指を指す。そのアルバイトは商店街にある福引のアシスタントだから、私みたいな学生でも手軽に出来るアルバイトみたい。

「うん。早速、行こうか」


現地に向かい、何とかアシスタントのアルバイトになれた私。
次々と買い物客が福引券を片手に持って、ガラガラを回すんだけど・・・そういえば、このガラガラの正式名称は何だろう?いつか、唯先輩辺りに聞いてみようかな・・・

「私もお願いしま〜す」

「ムギ先輩!?」

え?何で?ムギ先輩はフィンランドに行った筈じゃ・・・

「私ね。この福引をする為に、一日早く、帰って来たの。でね私、このガラガラで七等を当てるのが夢だったの♪」

ムギ先輩は頬に手を当て、くねくねと動いていて、何だか嬉しそうみたい。ぁ、やっぱりコレ、ガラガラって言うんだ・・・
ムギ先輩はガラガラの持つ所を、ぎゅっ、と掴み慎重に回す。

カラン、と七等であるという証の白い玉が出てきた。と、いう事は・・・

「わぁ♪七等のティッシュだ♪」


ムギ先輩は何かがズレていて、はしゃぐけど、今さっきのムギ先輩は七等が出たから、残りの景品は・・・一等のフィンランド旅行券!

「次、梓ちゃんの番だよ。頑張って♪」

憂は私にガラガラを回して、と言わんばかりに、『どうぞ』みたいに私を誘導していく。
私もガラガラを掴み、回していくと『カラン』と一等である証の黄色い玉が出た。

「梓ちゃん。おめでと〜」

ああ、コレ夢だな。だって、福引で一等が当たるなんて、夢しかあり得ないもん。憂、ムギ先輩に頬をつねって、と頼み、つねらせたら、痛みが来ない・・・やっぱりだ・・・

「梓ちゃん。おめでと〜」


ーーーーーーーー

「・・・夢だよね」

私はベンチに座って寝てしまった・・・何で今日は寝てしまう事があるんだろう・・・
憂はソフトクリームを両手に持って、私の隣に座り、ソフトクリームを貰い一緒に食べた。

「梓ちゃん。寝ていたの?」


「う、うん。そうみたい」

冷たいソフトクリームを食べ終わり、そろそろ映画の上映なので、映画館に入り席に座る。


ーーーーーー

「うっ・・・感動しぢゃっだ・・・」

憂は涙を流しながらさっき見た映画の感想を言っていた。私は・・・椅子がフワフワしていたから、寝てしまったんだ・・・だから映画の内容は分からないんだ。
夢は見たけど・・・憂が出てきて、何だか憂じゃない憂だなと思ってたら目が覚めていた。
不思議な夢だな。


次の日。私と憂と純とで市民プールに行こうと提案していたので、クローゼットを漁り、水着や着替え等をバッグに詰め込んで我が家を出る。


集合場所に到着し、憂、純がいたので手を振りながら近づくけど、純が困った表情をしていた・・・まさか・・・

「誰?」

やっぱり・・・私って焼けた時、別人に見えるのかな?自分じゃよく分からないし・・・

「梓ちゃん。行こっか」

ジリジリと日が当たり、肌を焼くような暑さを耐えながらも、市民プールへと向かう私達。

で、到着し、水着へと着替えるんだけど・・・

「梓・・・見事なツートンカラーだね」

夏フェスで肌を露出するような服を着ていたから、大体真っ黒なんだ・・・
憂もチラチラと見てくるので、余計恥ずかしい。

「はぁ・・・じゃ、もっと身体焼こうかな・・・」

中途半端なツートンカラーよりも、黒く焼いた方が心が安定になるというか、何というか・・・でも、やってやるですっ!


開き直って遊ぶぞ、と決心した私。白いビキニの憂と緑のビキニの純に、この市民プールのアトラクションであるウォータースライダーの滑り口である場所へと、連れていかれちゃった。

「梓ちゃんから滑ってよ」

憂の提案だけど・・・高くて足が竦(すく)んじゃう・・・

「ちょっと待ったー!今年の夏は焼きそばスライダーが来るぜっ!」

「律先輩!?な、何でここに!?」

律先輩は受験勉強でここには、居ない筈なのに、ていうか何故焼きそばを?

「アレを見てみろ!梓!」

律先輩が指を差す方向に、唯先輩、澪先輩、ムギ先輩が焼きそばを持ちながら滑っている・・・な、何で!?

「律ー!もう一回だー!」

「私もー♪りっちゃーん♪」

「私も、もう一回だ♪コノヤロー♪」

唯先輩・・・怒りながら笑っている・・・怖いですよ・・・

「さぁ、梓の番だぜ!」

律先輩は私の頭に焼きそばを乗せて、ウォータースライダーの滑り口へと強制的に押して、私はウォータースライダーで滑っていく。

「きゃぁぁぁー!」

出口に出て、澪先輩達が私の着水地点付近にいた。
あ、危ない!

ーーーーーーーー

「・・・ちゃん・・・梓ちゃん」

「はっ!」

私はプールサイドで肌を焼いているうちに寝てしまった・・・
憂は寝ていた私を起こしてくれたけど、焼きそばスライダー・・・何で夢だと分からなかったんだろう・・・不思議だな。

「おー・・・見ない内に、そんなに焼けているなんて・・・」


「・・・見事でしょ?・・・はぁ、」

私の身体は持て余す事無く、小麦色で統一されていた。
そんな自分の体質に自己嫌悪だ・・・
夕方になるまで、ウォータースライダーで遊んだり、泳いだりして満足し、普段着に着替え、帰り道の図書館入り口前で唯先輩達と出会ったーーーーSide 中野梓 OFF


-65-
Copyright ©かがみいん All Rights Reserved 
<< 前のページへ 次のページへ >> ここまでで読み終える