小説『俺は平沢唯に憑依してしまう。【完結済】』
作者:かがみいん()

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第6話

side 平沢 唯

平沢唯9歳。小学四年だ。

いやいや本当に色んなことが起きたな。毎回テストが全教科満点でその度に和に涙目で見てくるし父親は

「へー!また満点かー、偉いね!」

と言いながら俺の頭を撫でるし、憂は 

「ぽけー・・・」

うっとりした目で俺を見ている。自分の世界へトリップしたようだ。

ーーーーー
「おはよう。唯」

学校に着いて自分の席に座り、ぼけーとしていたのでちょっとびっくりした。

「お、おはよう和ちゃん。ってあれ?メガネかけてるよ?どうしたの?」

和の顔に赤いメガネがかけられている。

「夜遅くまで勉強してたのよ。ちょっとやりすぎて視力が落ちたみたい」

そういえばいつからか俺の事をちゃん付けでは呼ばなくなっている。ついでに口調も。学力ならともかく、せめて大人っぽくしようとしているのだろうか。


「あんまり気を詰めないでね。和ちゃん」

俺はというとまだ子供っぽい口調をまだやっている。いつ替え時にしようか迷っている。ひょっとしてずっとこのままかもしれないな。


「分かったわ。あ、最初は科学だったわよね?宿題は・・・って、もう済んでいるでしょうね」

うむ、確かに済んだのだがなぜそう言い切る?やはり友達だからか?

「あははっ、まぁねー」
俺は照れくさそうに頭を掻く。

「くすっ。ほら授業が始まるよ」

何か面白い事を言ったけか?おっと、先生が来たな。また退屈の授業が始まっていくのであ
る。

給食の時間だ。今日は、あげパンか。それに佃煮みたいなのと、キノコスープ。後なぜかガチガチに凍ったみかんゼリーだ。

「今日の問題さー、結構難しかったよねー。でさ、唯が先生に当てられてスラスラと答えてたのびっくりしたよー」

この人はクラスメイトの委員長でかなり社交的である。見た目は、ちょっと大人びいた印象がある。このクラスのムードメーカーでもある。

「いいやー、それほどでもないよー」
俺は人から褒められるのが、恥ずかしいので照れくさそうに頭を掻く。

「そうね。毎度毎度驚かせられるわね」
和は微笑み俺を見る。それはそうだろう。あれは高校レベルの問題だったんだ。先生も、

「ん?あれ?これ小学生レベルの問題じゃなかったような?」

と困り果てていた。

「た、たまたまだよー」

「はぁ・・・その台詞何回聞いていると思っているの?聞き飽きたわ」

和はジト目で見てくる。

「あははー。ところで何でゼリー固めるのかな?味があまり伝わってこないよ」

「分からないわよ・・・」
上手く話をすり替え給食を食べたのであった。


ーーーーーーーー

side 田井中 律

私と澪が友達になって数ヶ月が経ったある日の事。

読書感想文を宿題にしていた私達の四年生のクラスは各自、自由に本の感想を原稿用紙に書いて提出となったんだ。

で、最優秀作品が出たらその作品を書いた生徒が全校生徒の前で発表するというきまりがあり、私はそんなめんどくさい事をしたくないので適当に書いて担任の先生に提出した。

数日が経ち、その読書感想文の最優秀者がうちのクラスにいたので私達は『おおっ!』と驚きの声を上げる。

「最優秀者は・・・秋山 澪さんでーす。おめでとーっ、みんな拍手っ」

ワァァァ、パチパチと澪に向けてクラスの全員は歓声と拍手を送るのだけど・・・澪は・・・

「ええっ!?そ、そんなっ!」

顔を真っ赤にしてから、いやいやと顔を振る。私はこの数ヶ月間、澪の性格がよーく分かった。澪は怖がりで、人見知りで、恥ずかしがり屋で、負けず嫌いの四点セットだ。


なんだかんだで澪が代表して全校生徒の前で読書感想文をやる事になって澪は

「り、りっちゃん、代わってーっ!」

と泣きながら私にすがりつく。私はそんな澪にある提案を。

「よーし、私の家で特訓するぞーっ」

「ええっ!?」

私は澪の腕を引っ張り、我が家へと案内し、私の部屋に入らせて早速、特訓することに。

「え・・・えっと・・・そ、その・・・」


「声が小さーい!語尾を『だぜ』とか付けてみろーっ」

「え!?え、えっと、私は秋山 澪・・・だぜ」

こうして猛特訓に励み、澪は徐々に、ほんの徐々にだけどやる気を見せ始めた。

「わ、私はっ、この本を読んで思った事はーーーー」


そして、発表会当日。
澪は、また恥ずかしがって顔を赤くしていたけど、私はそんな澪に喝を入れる。

「澪っ、今までの私達の特訓をムダにするのかーっ!」

「りっちゃん・・・うんっ。頑張ってみる・・・だぜ」

「よーし、その意気だーっ!」

そして、全校生徒が運動場に集まり、澪はみんなが注目できるように壇上へと上がり、感想文を書いた原稿用紙を広げ、ゆっくり、ゆっくりと口を開く。


「ど、読書感想文。秋山 澪。わ、私が読んだ本はーーー」

澪は、最初は緊張していたけど、途中からスラスラと読んでいて私は、そんな澪にほっと胸を撫で下ろす。

だけど、澪はとんでもない事を言う事は私はまだ知らなかった。そう、澪は・・・

「ーーで、私も星の王子様と一緒にうさちゃんの乗り物に乗って、お菓子の家に行きたいですっ」

澪は・・・ファンシーな事に興味を持っていたらしいので、私は背中が痒(かゆ)くて痒くて堪(たま)らなかった・・・

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